グーグルの「Pixel Slate」は、iPad ProやSurfaceの有力な対抗馬になる

グーグルがChrome OSを搭載したタブレット端末「Pixel Slate」を発表した。同社いわく「まったく新しい体験」を目指して開発されたというこの端末は、明らかにアップルの「iPad Pro」やマイクロソフトの「Surface」シリーズの対抗馬になる。まずはその機能や性能について解説しよう。

ここ数年、新形態のパーソナルコンピューターたちがノートパソコンの現状打破に挑んできた。

2-in-1はノートパソコンと同等と言えるのか? キーボードが取り外せるデタッチャブル型PCは、タブレットと呼べるのか? タブレットは新しいノートパソコンなのか?

デスクトップパソコン用のチップとモバイル用OSを合わせれば、われわれのPCに対する考え方を大きく変えるための“レシピ”が手にはいる。そしていま、そんな新形態のPCたちに「Pixel」シリーズの新機種が加わった。

10月9日(米国時間)にニューヨークで開催されたイヴェントで、グーグルは着脱式キーボードとChrome OSを搭載した「Pixel Slate」を発表した。この新端末は「タブレット型ノートパソコン」や「スマートフォンを大きくしただけのスマートフォン」ではなく、「まったく新しい体験」になるよう設計されたのだと、プロダクトマネジメント・ディレクターを務めるトロンド・ヴュルナーは壇上で強調した。

グーグルは初のChrome OSタブレットであるPixel Slateのために、カスタマイズされたタッチ機能を開発したという。端末はユーザーの使い方によって「ラップトップモード」か「タブレットモード」に切り替わり、そのユーザーインターフェース(UI)においてはGoogleアシスタントが活躍している。

持ったときの感覚に配慮したデザイン

アップルの「iPad Pro」やマイクロソフトの「Surface」シリーズに対抗するにあたり、グーグルはChrome OSに全力を注いでいる。この新しいタブレットからは、そんなことが伺える。

グーグルは過去にも、Chrome OSベースの「Pixelbook」や、ハイエンドで実験的なAndroid端末「Pixel C」を発表した。Pixel Cについては発表2年後に販売停止を決めたが、Pixelbookはいまも販売が続いている。

今回発表されたPixel Slateは12.3インチディスプレイを搭載しており、 10インチディスプレイだったPixel Cよりもサイズは大きくなっている。液晶の解像度は3000×2000ピクセルで、グーグルによるとこのカテゴリーの端末では最高の画素密度を誇るという。

まだ長時間実機を触ったわけではないが、ぱっと見では画面は確かに明るく素晴らしかった。グーグルが採用した低温ポリシリコン液晶には、高画質を可能にするという利点もある。

Slateのボディはアルマイト加工のアルミ製で、ディスプレイにはゴリラガラスが採用されている。厚さは7mmで、重さは721gだ。12.9インチのiPad Proよりもわずかに厚く、若干重いことになる。

持ったときの感覚を考えて角は丸みを帯びており、重さは中心から均等に配分されている。グーグルいわく、ちゃんと手で持てることにかなり配慮してデザインしたという。

同社の新型スマートフォン「Pixel 3」と同様に、Pixel Slateもまた広角レンズのフロントカメラを搭載している。ヴィデオ通話の際に、部屋にいる全員がカメラに映るようにだ。このフロントカメラには、グーグルのヴィデオチャットアプリにちなんだ「Duo Cam」という名前までついている。

前面のスピーカーは音がよくなるようにチューニングされており、本体上部にある電源ボタンは指紋認証センサーとしても機能する。充電はUSB-C端子で、グーグルによると1回の充電で12時間利用できるという。ちなみにLTE通信には未対応だ。

価格はCPUに合わせて4種類

グーグルはSlateの内部構造について興味深い動きを見せた。Pixel SlateはCPUの違う4種類のモデルがあり、それによって価格は大きく変わる。

CPUにはインテルのCeleronプロセッサーか、第8世代Core m3、Core i5、Core i7まで揃っている。最も安いのはCeleron、メモリー4GB、SSD 32GBを備えた599ドル(約68,000円)のモデルで、最も高額なのは第8世代Core i7、メモリー16GB、SSD 256GBを備えた1,599ドル(約18万円)のモデルだ。

この599ドルには、Pixel Slate専用のキーボードは含まれていない。バックライト付きの真っ黒な専用キーボードは199ドルで購入可能だ。iPad ProやSurface Pro用と同様に、キーボードは折りたたみのカヴァーとしても機能する。

装着はマグネット式で、接続部には同社のクイックスナップ・コネクターが搭載されている。ほかの機種と同様、キーボードの電力はタブレットの内蔵バッテリーから供給される。

Pixel Slateのキーボードがほかと異なるのは、キーが丸い点だ。ほかのPixel端末でアプリのアイコンが丸いことに合わせたのだろう。なかなかファンキーなデザインだが、タイピング時の正確さという点でこれがどう効果を発揮するのかを確かめるのが楽しみだ。

Pixel Slateで興味をそそられるのは、そのUIだ。Pixel Slateは、専用キーボードに接続するとインターフェイスが変わり、おなじみのChrome OSのデスクトップモードになる。キーボードを取り外すと今度はアプリが全面に表示される「アプリスクリーンモード」に変わり、画面上方ではGoogleアシスタントがアプリをオススメしてくれる。

グーグルは、タブレットで扱いやすくなるようChromeのブラウザーもリデザインしたという。ブラウザーのタブはドラッグ操作で移動させることができる。デスクトップモードの操作と似ているが、画面の大きなタブレット専用にデザインされている。

また、Pixel Slateにはスプリットスクリーンモードも搭載された。画面が大きいことの利点だ。

アナリストたちは、PC市場全体に比べてデタッチャブル型PC市場の今後を楽観視しているが、最近ではタブレット市場全体で弱点も見え始めている。それにタブレット市場におけるリーダーは、間違いなくiPad Proをもつアップルだ。グーグルのPixel Slateが、スレート型端末にわくわくを取り戻してくれるのか、注目したい。