iPhone Xからどこまで進化した?iPhone XS Maxのカメラ性能をプロカメラマンがチェック

カメラで選ぶ!最新スマホレビューにてさまざまなスマートフォンのカメラをレビューしていただいた、iPhoneカメラマン三井さんによるiPhone XとiPhone XS Maxの撮り比べレビューをお送りします。

「HUAWEI P20 Pro」や「Mate 10 Pro」などが搭載していた、「ボケ味」を変化させられる機能がついにiPhoneにもやってきました。アップルらしいのは撮影前ではなく、撮った後にその処理を行うところ。シャッターを切る段階では撮影に専念させるという思想がきちんと残されています。今回は、そんなiPhone XS Max(XSのカメラ機能のMaxと同等)のカメラ性能を、iPhone Xと撮り比べてみました。

なお以下の本文中で、括弧内の発言は、特別に記載がない限りは三井公一さんのコメントです。

新しく加わった機能で最も注目を集めたのが「被写界深度コントロール」機能です。f値(小さいほど浅い=ボケる)をシミュレーションして、大口径で明るいレンズを使用したレンズ交換式カメラのような写真に仕上げます。

「ポートレートモードで撮影後、カメラロールの写真下に表示されるスライダーを「f1.4」にすれば背景が最もボケ、「f16」にするとピントが深くなるようになっています。デフォルトでは「f4.5」となっているのが興味深いですね」

なお35mm換算で52mm相当という焦点距離はiPhone Xと変わりません。背景との分離がiPhone Xと比較してやや向上し、細かい部分でもおかしくない程度になったのがうれしいところです。ただテーブルに置いたグラスなどまだまだ苦手な被写体も残っていますので、撮影時には注意が必要です」

続いて、「スマートHDR」機能を試しました。

「もうひとつの新機能は「スマートHDR」です。肉眼で見た印象により近い絵作りをしてくれるので、失敗写真がほとんどなくなることと思います。輝度差が激しい場合でも白飛びや黒つぶれを抑えてくれるのが心強いですね。同じようなシチュエーションで撮り比べてみると、雲部分の写り具合や洋服の発色も異なっているのがわかります。なおこの機能はデフォルトではオンになっていないので、設定-カメラ-HDRと辿って機能を有効にすることが必要です。ただ被写体によってはやや作り物っぽい絵になってしまう場合があります」

自撮りや人物撮影などで被写体を「盛る」機能は今や当たり前になってきましたが、iPhoneでは頑なに自然な仕上がりを維持していました。しかし、時代の流れには逆らえず使用者には(特に女性にとっては)嬉しい、綺麗な仕上がりになるようチューニングが進みました。

「人物のスキントーン描写が向上したことも見逃せません。Android機の「美肌モード」ほどではないが、皮膚の描写がiPhone Xよりもスムーズになった印象を受けます。特に低照度下では色白に写るので女性受けしそうですね」

「標準カメラはiPhone Xの28mm相当から26mm相当へとワイド化されています。したがって前モデルと同様な距離感で撮影したい場合は、一歩踏み込む必要があります。またコントラストと色味がやや強めになったのが興味深いですね。メリハリ感を高めて、Android機に対抗しようという姿勢が垣間見えます。」

「暗所性能も少しだけ向上ししました。上の写真がiPhone XS Maxで、下の写真がiPhone Xです。「HUAWEI P20 Pro」のような「ハッキリクッキリ」ほどではないですが、A12 Bionicチップ 次世代Neural Engineの恩恵でノイズ感も減り、クリア感というかヌケ感が見てとれるようになりました。一方、極端な暗い場所ではちょっと分が悪い印象も受けます。」

「使っていて何よりもうれしいのはレスポンスが向上したことでしょう。A12 Bionicチップ 次世代Neural Engineの影響で、ポートレートモードでバンバン撮影していてもiPhone Xほど速度低下を感じることが少なくなりました。このような遊び盛りの子どもと家族との記念写真などではなかなか思うように撮れませんでしたが、iPhone XS Maxだとさほど苦労せずにいい瞬間を捉えることができました。今後iPhone XRや、カメラ性能に力を入れたAndroid機が続々と登場してくると思いますが、それらが全て揃ってから出力された写真を見て判断し、購入を決めても遅くはないかもしれませんね」

A12 BionicチップのNeural Engineは、多くの撮影シーンで、綺麗な写真を手軽に撮ることができそうです。この夏以降に発売の様々なスマートフォンカメラが揃い踏みするタイミングが楽しみです。