Apple Vision Pro唯一の問題は「ソーシャルではない」こと

この言葉は、地球上のすべての人、特にApple(アップル)で働く人たちの心には響かないかもしれない。未来はAIやその他のイノベーションがすべてだと主張する人もいるかもしれない。 とはいうものの、アップルがTwitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)のようなソーシャルメディアアプリを今までに作ってこなかったのは不思議だ。iPhoneは社会の隅々まで完全に支配しており、私たちは1日中、携帯電話でソーシャルメディアアプリを起動している。しかし、一流のテック企業として、ソーシャルメディアは本気で取り組む領域ではないようだ。 先週、アップルが「Vision Pro」ヘッドセットを発表したとき、それはさらに明白になった。ほとんどすべてのデモや、新しいデバイスを実際に試した人たちの中で、ヘッドセットを1人で装着し、座って、ほとんどコンピュータのように使うという感覚がある。 それは、MacBook(そしてIBMには申し訳ないが、多くの意味でパーソナルコンピュータそのもの)を発明した会社として納得のいくものだ。しかしMeta(メタ)のQuest VRヘッドセットのデモを見ると、人々はほとんど常に、インターフェースを通じて、あるいはグループで、互いに関わり合っている。これは意図的なもので、特にマーク・ザッカーバーグが先週(WWDC2023開催日と同週)、会社のイベントでアップルの新しいヘッドセットについて述べたコメントを考慮すると、明らかだ。 長い引用だが、ここで彼のコメントを振り返ってみよう。 「メタバースと我々のあり方に関する私たちのビジョンは、基本的にソーシャルなものです。人々が新しい方法で交流し、新しい方法で親しみを感じるというものです。私たちのデバイスは、自身がアクティブになり、物事を遂行するためのものでもあります。それに対して、彼らが見せたデモはどれも、人が1人でソファに座っているものでした。それは、未来のコンピューティングのビジョンかもしれませんが、私が望むものではありません。私たちの取り組み方には、本当に哲学的な違いがあるのです。そして、彼らが何を出し、どのように競争しようとしているのかを見て、私はさらに興奮し、さまざまな意味で、私たちのしていることは重要であり、成功するのだと楽観的になりました。楽しい旅になりそうです」 社会的な触れ合いは、私たちの未来の一部になるだろう。なぜなら、テクノロジーは常に社会のニーズを反映するものだからだ。私たちは社会的であるようにできている。 フェイスブックやInstagram(インスタグラム)を利用しているとき、コメントや「いいね!」を見るのを待ちながら、常にフィードの読み込みを繰り返してしまっているのは、そのためだ。私たちはみな、つながりを求めているのだ。この事実が、マーク・ザッカーバーグを信じられないほど金持ちにしたのだ。 アップルは、生産性と創造に対する人間の欲求に焦点を当てているようだが、それも私たちをほとんど同じくらい駆り立てるものだ。ノートパソコンを使うというのは、非常に個人的なものだ。何よりもまず創造し、時には人と交流する。iPhoneを初めて紹介した故スティーブ・ジョブズは、このデバイスが音楽を聴くためのiPodのようなものであり、同時に私たちのつながりを助けるものであることを強調している。 コンピュータの歴史も、私たちが使っているガジェットの多くも、個人の生産性を高めるという土台から始まっている。このテーマについては、これまでにも何度も取り上げてきた。ここ10年で、テクノロジーは「ソーシャルファースト」を優先するように切り替わっただけだ。 このことがメタとアップルに意味するのは、最終的にどちらのパラダイムが勝つことになるのかを決めなければならないということだ。私たちは、現実世界でもオンラインでも交流したい、ソーシャルでありたいという願望を持っている。私たちはかつてないほど社会的につながっているわけではないと主張する人もいるだろう。アップルは、生産性と創造性を重視しているのだ。