iPadを「ホワイトボード代わり」に活用するワザ

iPadOS 16.2で、新機能のフリーボードに対応した。Apple Pencilでの手書きやフォント、図形などを統合して扱える(筆者撮影)

9月に配信が始まったiPadOS 16だが、一部の新機能は実装されていなかった。中には、最新OSの目玉といえそうなものも含まれている。手書きのメモや入力したテキスト、図形、画像などを自由に配置でき、あたかも会議室にあるホワイトボードのように共同編集できる「フリーボード」は、そんなアプリの1つだ。同アプリは、12月に配信がスタートしたiPadOS 16.2の新機能として、iPadはもちろん、iPhoneでも利用できるようになった。

M1チップ、M2チップを搭載したiPad Air、iPad Proの、外部ディスプレーサポートもiPadOS 16.2の新機能だ。元々、iPadは外部ディスプレーへの出力に対応していたが、あくまでメインの画面と同じ内容を出力するだけのミラーリングにとどまっていた。これに対し、iPadOS 16.2では、マルチディスプレーをサポート。HDMIケーブルでディスプレーをつなぐと、外部ディスプレーをセカンドディスプレーとして活用できる。

ステージマネージャと組み合わせて使うと、あたかもパソコンのよう。iPadの画面を少々小さく感じていた人や、iPadの処理能力を生かして仕事に活用している人には、うれしい新機能といえるだろう。今回は、iPadOS 16.2で加わった新機能を中心に、その使い方や設定テクニックを紹介していきたい。これらを使いこなせば、iPadをもっとワークフローに取り入れやすくなるはずだ。

文字や絵を自由に書けるフリーボード

iPadOS 16.2で加わった新アプリが、フリーボードだ。その名のとおり、ユーザーが自由に書き込めるホワイトボードのような使い勝手が特徴。手書きと図形を組み合わせたり、画像を貼り付けたり、そこにキーボードで打ち込んだ文字を乗せたり、さらには付箋を付けたりと、さまざまな要素を加えていくことができる。さながら、会議室に設置されたホワイトボードといったところだ。

アナログのホワイトボードとの違いは、ウェブサイトへのリンクや、iPad内に保存した画像を自在に貼り付けられるところにある。手書き機能は「メモ」アプリにも搭載されているが、縦方向だけでなく、横方向にもスクロールしていける。従来のメモアプリは、キーボード入力を前提に手書きなどの機能を付け加えたものだが、フリーボードの方向性は真逆。図形などの配置も自由にでき、メモアプリのように「行」という制約にとらわれることなく書き込みができるのが、このアプリならではの魅力だ。

同アプリはiPhoneにも対応しているが、Apple Pencilを使って手書きできる点で、どちらかといえばiPad向き。iCloudを使えば、端末をまたがってデータを同期するため、iPadで作成した手書きのメモを出先でiPhoneを使ってチェックしつつ、微修正を加えるといった使い方ができる。iPadでは手書きに専念しつつ、文字入力はiPhoneでするというような使い分けをしてもいいだろう。

アナログ的な方法でアイデアをまとめることができるフリーボードだが、操作方法は直感的だ。画面上部に「ペン」「付箋」「図形」「文字入力」「画像」のボタンが表示されているため、ボード上に加えたいツールを選択する。「ペン」を選ぶと、画面下にペンのツールが表示されるため、書き込みたいペンを選び、あとは自由に文字や図形を書くだけだ。「スクリブル」にも対応しており、手書きの文字をフォントに変換することもできる。

フリーボード内に貼りたいウェブや画像があるときには、一番右の「画像」ボタンをタップする。カメラや写真アプリから画像を取得できるほか、「挿入元」を選ぶと、「ファイル」アプリを使ってPDFファイルなどを埋め込むことも可能だ。また、ピンチイン・アウトすると、縮尺が変更される。全体を俯瞰したり、細部をチェックしたりといった操作が簡単。レスポンスもよく、少し使えばすぐに慣れることができるはずだ。

使い勝手は会議室のホワイトボード

会議室などに置かれたホワイトボードには、複数の人が集まって、さまざまな要素を書き加えていくことができる。フリーボードにも、そんな共同作業の機能が搭載されている。iCloudを通じてボードを共有することができ、集まった全員でアイデア出しをすることが可能。クラウドを経由してはいるものの、あたかも目の前にホワイトボードがあるかのようだ。

共同で編集するには、iCloudでデータを同期している必要がある。iPadをアップデートした直後は、同期がオフになっていることもあるので、まずはこの設定を有効にしておきたい。「設定」アプリの最上部にあるアカウント名をタップして、「iCloud」を選択。次の画面で「ICLOUDを使用しているAPP」という項目の下にある「すべてを表示」をタップして、「フリーボード」のスイッチをオンに変更しよう。これで準備は完了だ。

次に、共同で編集したいボードを開き、画面上部にある「共有」ボタンをタップする。共有方法は、メッセージでもメールでもLINEでもいい。共有時に、「参加依頼された人のみが編集できます」という文言をタップすると、共有範囲や権限を変更できる。不特定多数の人に一斉送信したいときには、「リンクを知っている人はだれでも」に変更。作成したボードを編集できないようにしたい場合は、「閲覧のみ」に権限を変更しよう。

メッセージやメールといった普段使っているアプリで、簡単に共有することが可能だ(筆者撮影)

共有が終わると、共有ボタンの隣の人型のアイコンが有効になる。ここでは、改めて権限を変更したり、共同で編集している人と連絡を取り合うことができる。連絡方法はメッセージアプリやFaceTime。FaceTimeでビデオ通話をしながら、フリーボードを編集することも可能だ。お互いの顔を見ながら、1つのフリーボードに手書きしていくのは、まさに会議室のホワイトボード。フリーボードがリモートワークでのオンライン会議にうってつけのツールといえるのは、そのためだ。

ただし、FaceTimeとは異なり、WindowsやAndroidのユーザーには共有することができない。そのため、現状では、iPhoneなりiPadなりにデバイスを統一しておく必要がある点には注意が必要だ。また、iOSやiPadOSは、どちらも最新バージョンである16.2にアップデートしておかなければならない。ユーザーが限定されてしまうのは難点だが、使い勝手はいい。iPadユーザーなら、試してみて損はないアプリといえるだろう。

ステージマネージャが外部ディスプレーに対応

iPadOS 16.2でもう1つ見逃せない機能が、マルチディスプレー対応だ。iPadOS 16は、あたかもパソコンのようなユーザーインターフェイスで最大4つまでアプリを同時に起動できる、「ステージマネージャ」を採用した。各アプリが自動で配置されるなど、パソコンとは少々使い勝手は異なるが、Safariでサイトを見ながらメモを取りつつ、メールをチェックするといったように、並行して複数の作業をするのに便利な機能だ。

ただ、11インチ前後のiPad AirやiPad Proは、いかんせん画面が小さすぎる。アプリを3つ以上開くと、1つひとつが小さくなりすぎたり、アプリが背後に紛れてしまったりと、どうしても使い勝手には限界があった。このような画面サイズの制約を取っ払うのが、外部ディスプレーによるマルチディスプレーへの対応だ。元々、この機能はパブリックベータ版のときに搭載されていたが、完成度を高めるため、iPadOS 16配信時に削除されていた。その機能が、iPadOS 16.2でついに復活した格好だ。

対応モデルは、M1チップないしはM2チップを搭載したiPad AirやiPad Pro。サポートするディスプレーの解像度は6Kまでで、接続にはHDMIケーブルを用いる。iPadOS 16.2がインストールされたiPad Proと外部ディスプレーをHDMIケーブルでつなぐと、ステージマネージャを外部ディスプレーで使用するか、画面をミラーリングするのかの選択肢が表示される。ここで「ステージマネージャ」をタップすると、外部ディスプレー側にドックのみが表示されたiPadと同じホーム画面が現われる。

外部ディスプレーを、どこに置くかは設定で変更できる。「設定」アプリの「画面表示と明るさ」を選択。外部ディスプレー接続時のみ、ここに「配置」という項目が表示される。ここをタップすると、iPad本体の画面を外部ディスプレーの上下左右どこに置くかを決めることができる。ドラッグで、iPadと書かれた画面を動かしていくだけで、操作方法はわかりやすい。

例えば、外部ディスプレーをiPadの上に置いた場合、カーソルをiPadの画面上まで持っていき、さらに上方向に移動させると外部ディスプレー側を操作操作できるようになる。

また、各アプリの上部に表示される「…」をクリックした際に表示されるメニューに、「ディスプレーに移動」(iPad側でクリックした場合)や「iPadに移動」(外部ディスプレー側でクリックした場合)が表示される。これを選ぶと、ディスプレーをまたいでアプリを移動させることができる。その他の操作方法は、iPadを単独で利用しているときと同じだ。

外部ディスプレー活用で、大半の仕事をiPadでこなせる

筆者は、24インチのワイドディスプレーを使ったが、横幅が11インチのiPadより広くて使いやすい。横長にしたSafariとメールを置いておきながら、メモ帳を十分な大きさで表示し、サクサクとテキストを書いていくことができる。やはり、ステージマネージャを使うなら、画面は大きいほうがいい。

グラフィックスの処理能力を求められることもあり、M1、M2チップを搭載したiPadでしか利用できない機能だが、対応モデルを持っている人は、利用する価値が高い。Macに勝るとも劣らない、高い処理能力を生かすには、必須の機能といえるだろう。写真や動画を処理するためのアプリもサクサク動く。パソコンでしかできないことはまだまだ残っているが、外部ディスプレーを活用すれば、大半の仕事はiPadだけでこなせるようになるはずだ。