AI、自動運転、メタバースの未来がNVIDIA GTC 2022で垣間見える

開催が来週に迫るNVIDIA(エヌビディア)のGPU Technology Conferenceの2022年秋版(GTC Fall 2022)は、AIやメタバースの活用に興味のある人にとっては、またとない機会になるだろう。また同時に、NVIDIAの創業者兼CEOであるジェンスン・ファン(黃仁勳)にとっても、3DグラフィックスとAIのパイオニアであるNVIDIAの最新のチップとソフトウェアの進化を披露する機会でもある。GTC Fall 2022は、米国時間9月19日から22日まで開催される無料のオールバーチャルイベントで、ファンのキーノートは2日目の米国太平洋時間20日午前8時(日本時間2022年09月21日午前0時)に開始される。

NVIDIAは、PCゲーム用グラフィックスカードでは依然としてトッププレイヤーではあるものの、ビデオゲームが同社のチップの主要ターゲット市場であった時代はとうの昔に終わっている。NVIDIAのプラットフォームは医療研究、金融サービス、産業制御、クラウド、そしてもちろん自動車に至るあらゆる場面で活用されている。

またNVIDIAのエンジニアは、シリコンの設計だけにとどまらないことも行っている。同社の社員2万5千人のうち8割をエンジニアが占め、その半数以上がソフトウェアに携わっている。行っているのは、単にデバイスドライバのコーディングにとどまらない。自動車分野では、NVIDIAはDRIVE Hyperion(ドライブハイペリオン) スタックの一部となる完全自動運転システムを開発した。企業や開発者は(メルセデス・ベンツが2024年の新車プログラムに計画しているように)そのスタック全体を利用することも、その一部を取り出して自社のシステムに統合することもできる。また、NVIDIAは、デジタル・インストルメント・クラスター、ドライバー・モニタリング、およびその他のインフォテインメント機能向けの、完全ユーザー・エクスペリエンス・ソフトウェアスタックを備えている。

しかし自動運転にせよ、医療研究にせよ、重要な要素の1つは人工知能だ。データセンター、ロボット、自動車に搭載されたNVIDIAのチップが提供する計算能力は、過去10年間のAIの進歩の多くに重要な役割を担ってきた。NVIDIAを搭載したサーバーで埋め尽くされたデータセンターでは、機械学習モデルを学習させるために何百万枚もの画像を処理している。

今回のGTCでは、NVIDIAのエンジニア、研究者、同社のプラットフォームを利用するほぼすべての業界のユーザーによる200を超えるセッションが開催される予定だ。NVIDIAの技術を使った開発プロジェクトに興味があるなら、ここからGTCに登録できる。今回も参加費は無料で、イベント終了後もセッションはオンライン上で公開され続ける予定だ。

自分の関心が自動車関連に特化していたとしても、一見関係なさそうなものの中にも関連性の高いセッションがある可能性が高いので、セッションカタログ全体は熟読する価値がある。例えばNVIDIAの自動運転シミュレーションプラットフォームであるDRIVE Sim(ドライブシム)は、Omniverse(オムニバース)をベースにしているが、このOmniverseは、レイトレーシングなどの技術を活用して、自動運転車のテスト用にフォトリアリスティックかつ物理的に正確な環境を作り出すものだ。これらの環境を無限に変化させて、さまざまな照明、天候、道路条件をテストしたり、環境内の他の道路利用者のさまざまな組み合わせを配置したりすることができる。

また、同じOmniverseのプラットフォームは、工場や倉庫、完全な都市のデジタルツインを作成するためにも使用されている。他のアプリケーションでOmniverseがどのように使われているかを理解することで、開発者は自分のドメインでOmniverseがどのように使えるかを、より良く理解できるかもしれない。

医療と自動運転もクロスオーバーする可能性がある。人体そのものや、刺激に対する反応をモデル化する研究は、自動運転の開発者にとっても貴重なものだ。乗り物を直接的にコントロールできない人は、乗り物酔いを起こしやすくなることがある。このような生理的な反応を理解し、そのモデルをAV(自動運転車)シミュレーションに組み込むことで、乗り物酔いのリスクを低減し、より快適な乗り心地を実現する制御戦略の改良につなげられる可能性がある。

もちろん、GTCのハイライトはジェンスン・ファンのキーノートだ。NVIDIAの最新の新発表を聞くことができる機会であり、なにより彼はいつも楽しいプレゼンターだ。