Ryzen+RTX 2060+144Hz液晶搭載で12万円台! 高コスパゲーミングノート「G-Tune E5-D」

デスクトップ向けコンポーネントで高コスパを実現

マウスコンピューターのゲーミングパソコンブランド「G-Tune」より、ゲーミングノート「G-Tune E5-D」が発売された。

本機の特徴は、高いコストパフォーマンスに尽きる。ノートパソコンながらデスクトップ用のRyzen 5 3500を搭載し、GPUもGeForce RTX 2060を搭載しながら、価格は税別129,800円と格安だ。

デスクトップ向けコンポーネントを採用し、高性能化や低価格化を狙ったゲーミングノートパソコンは、同社のラインナップにも時折登場する。今回はどんな製品に仕上がったのか、実機で確かめていきたい。

液晶以外も充実・最先端の構成

先述のとおり、CPUはデスクトップ向けのRyzen 5 3500を搭載。チップセットもデスクトップ向けのAMD B450となっている。GPUはGeForce RTX 2060、ストレージは512GBのM.2 NVMe SSDと、ゲーミングデスクトップパソコンとしてもミドルクラス程度のスペックはある。

さらに液晶は144Hzの高リフレッシュレートに対応。ネットワーク周りも最大2.4GbpsのWi-Fi 6と有線LANも備え、USB Type-Cも完備。これだけそろって税別12万円台に収まっている。

カスタマイズメニューを確認すると、CPUは1ランク上のRyzen 5 3600も選択可能。メインメモリは最大64GB、SSDは1TBにそれぞれ増量できる。さらに最大2TBのSATA接続のSSDやHDDも追加可能となっており、2基のSSDを搭載した構成にもできる。

デスクトップ向けコンポーネントを使用したことで、安くて高性能となり、いいことづくめのようだが、注意が必要な点もある。筐体サイズは、厚さが33mm、重量が約2.71kgと、最近のゲーミングノートパソコンとしては大柄だ。またバッテリ持続時間は公称値で約1時間とかなり短い。このあたりの一般的なノートパソコンとの違いは理解しておく必要がある。

デスクトップ向けRyzenの性能は?

次は実機の検証に移る。まずはベンチマークテストを試してみた。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2506」、「3DMark v2.12.6964」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 7.0.0」。

本機にはカスタマイズツール「Control Center 3.0」がプリインストールされており、そのなかにある「Power Modes」で4種類のパフォーマンス設定ができる。標準は「エンターテイメント」で、ほかに「パフォーマンス」、「省電力」、「静音」がある。ベンチマークテストは、「エンターテイメント」と「パフォーマンス」の2つで行なった。

気になるデスクトップ向けCPUのパワーはと言うと、それほど秀でた値ではない。そもそもRyzen 5 3500は16,000円台で購入できる安価なCPUであり、SMT(Simultaneous Multithreading)非対応なので、ノートパソコン向けのCPUと比較して特別優秀なわけではない。とは言えノートパソコンの筐体に組み込んで性能が下がっているということもなく、本機の高いコストパフォーマンスにおおいに貢献しているのは確かだ。

グラフィックスも含めたベンチマークでは、GeForce RTX 2060の力をしっかりと発揮している。本機のディスプレイはフルHDだが、144Hz対応なので、ベンチマークテストのスコアはフルHDでもかなり高い評価であってほしいところ。

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」では最高の「非常に快適」の評価。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では、フルHDだと「快適」。フレームレートはゲームや設定画質によって大きく変わるが、今時のゲーミングノートパソコンとしてはまず文句の出ないレベルだ。

動作モードについては、「パフォーマンス」のほうがおおむね数%高い値が出ており、とくにグラフィックス周りで伸びが大きい。そこまで大きな差ではないが、ツールで簡単に切り替えられるので、少しでも性能を稼ぎたいときに使いたい。

バッテリ持続時間の計測は、画面の明るさ50%、NVIDIA Battery Boostはオフで計測。公称値よりは長く持ったものの、アイドル状態でも2時間弱となり、昨今のノートパソコンとしては短い。ちょっとした移動用か、UPS代わりになるくらいの気持ちでいるほうがいい。

ストレージはADATA製「XPG SX6000 Pro(SX6000PNP)」が使われていた。リードで2GB/sを超えるなど十分に高速で、使用感も良好だ。

大柄でも各所が堅実な作り

続いては使用感を見ていく。筐体のベースカラーは全面ブラックで統一されており、天面はツヤ消しのフラット形状。G-Tuneのロゴが白く描かれている以外に装飾はなく、ゲーミングパソコンであることを主張しないデザインだ。

手に持つと、やはりそれなりに重みがある。天板が硬質で持ったときの柔さはないので、持ち運び自体に不安を感じることはないが、抱えたときには分厚いなと感じる。最近はゲーミングパソコンでも薄型化が進んでおり、33mmの厚さは一昔前の大きく重かったノートパソコンを思い出させる。

ディスプレイは144Hz対応で描画は滑らか。非光沢液晶で色味は派手ではないが、コントラストははっきりしている。視野角も広く、あらゆる角度で色相の変化は見られなかった。パネルのタイプはスペック上で言及されていないが、TNパネルではなさそうだ。

キーボードはテンキーありだが、筐体サイズが大きめなこともあって、配置には余裕がある。カーソルキーが平たい形状になっている以外は、オーソドックスな配置で使いやすい。ストロークはノートパソコンとしては標準的ながら、硬めのキータッチにしっかりしたクリック感がある。キーの端を押しても全体がきちんと押し込まれ、引っ掛かるような感覚はまったくない。

タッチパッドは標準的なもので、2つのボタンも独立している。注目はタッチパッドの左上部分に内蔵された指紋センサー。Windows Helloに対応し、指紋認証でWindowsにログインできる。指紋の読み取り感度もほぼミスなく良好だ。

キーボードはバックライト搭載。専用ツール「LED Keyboard」でカスタマイズもできる。キーボード全体のライティングを一括変更するかたちで、色は数色から選択でき、明るさも4段階に調整可能。しばらく操作がなければ消灯する機能もあり、消灯までの時間も自由に設定できる。

また別の専用ツール「Flexikey」により、キーボードやマウスのマクロを設定したり、特定のキーを無効化したりできる。設定はプロフィールとして保存して切り替えもできる。

スピーカーは筐体底面の前方左右に内蔵されている。小型のスピーカーだけに低音はほとんど出ていないものの、中高音は落ち着いた音質で、人の声はしっかりと聞こえる。また音の出所がうまくぼかされており、ほどよいステレオ感も出ている。全体として聞き疲れしないようなチューニングで、ゆったり動画鑑賞したり、軽めのゲームを遊ぶのに向いている。なお音質はプリインストールソフト「Sound Blaster Cinema 6」で調整も可能だ。

エアフローは底面吸気、背面と側面から排気。高負荷時は背面から勢いよく温風が出るので、向かい側に人や熱に弱い物があるときには注意したほうがいい。

騒音については、低負荷時には微かにファンの回転がわかる程度で気にならない。高負荷時の騒音はかなり大きくなるだろうと想像していたが、ゲーミングノートパソコンの範疇を飛び出すほどではない。音質もおもに低めのファンノイズで、甲高い耳障りな音はひかえめだ。スピーカーの音を大きめにすれば十分聞こえるし、ゲームプレイ時にはヘッドフォンをすればとくに問題にはならないだろう。

排熱処理もうまくできており、高負荷時でもキーボードの左半分にはリストレスト部を含めてほとんど熱が伝わってこない。右側もほんのり温かくなる程度で済んでいる。デスクトップ向けコンポーネントを使うことで排熱はかなり多いはずだが、一般的なゲーミングノートパソコンと比べてもかなり快適な部類だ。

さらにこだわりたい人には、専用ツール「Fan Speed Control」で、CPUとGPUのファンの回転数を個別にチューニングもできる。

デスクトップパソコン代わりに使いたい人へのゲーミングノートパソコン

本機にひととおり触れてみて感じるのは、全体としての素性の良さだ。デスクトップ向けコンポーネントを使ったことによるコストパフォーマンスの高さのみならず、液晶やキーボード、排熱処理など、各所がハイレベルにまとまっている。「処理能力と価格以外はあきらめてね」と言っても戦える製品だと思うが、そんな妥協をしないところにG-Tuneのブランドのらしさを感じる。

唯一の弱点というべきバッテリ持続時間も、より大容量バッテリを搭載しよう……なんて考えれば、コストが上がって重量も増す。本機は奇抜な構成を狙ってやっているわけで、バッテリがもたないことを理解した上で選ぶべきだ。

となるとターゲットはわかりやすい。場所を取るデスクトップパソコンは持ちたくないが、高性能なゲーミングパソコンが欲しい人。あるいは何かしらの理由で持ち出し、電源が取れる場所で高性能なパソコンを使いたい人。それらのニーズを、なるべく低価格で実現したい人、ということになる。

本機をノートパソコンでくくると「大きくて持ち運びに向かない」というのがデメリットとして見られるだろうが、そんな目線では本機の良さはわからない。「ミドルクラスの超小型ゲーミングパソコンに144Hz対応液晶と補助バッテリがついてきた」というくらいの認識であれば、性能も価格も納得の1台になるはずだ。