Intel、第11世代Coreプロセッサーを正式発表。「Intel Evo platform」のブランドも導入

米Intelは2日(現地時間)、オンライン記者会見を開催し、「Tiger Lake」(タイガーレイク)のコードネームで開発してきたモバイルCPUを、「第11世代Coreプロセッサー」として正式に発表した。

また、第10世代Coreプロセッサー(Ice Lake、アイスレイク)の発表時に導入した、ノートパソコンのモダン化の取り組み「Project Athena」について、Tiger Lake世代では「Intel Evo platform」というブランド名を導入することもあわせて明らかにした。

キャッシュ階層が強化されたCPUと新開発のGPUを内蔵

Tiger Lakeの詳細に関して、Intelは8月半ばに開催したArchitecture Day 2020で公開しており(Intel、次世代モバイルプロセッサ「Tiger Lake」の詳細を明らかに参照)、CPUとなるWillow Cove、GPUとなるXe-LP、そしてAI用NPUとなるGNA 2.0などの複数のプロセッサを内蔵し、それぞれが第10世代Coreプロセッサーに比べて強化されている。

【表1】今回発表された第11世代Core(Tiger Lake)と第10世代Core(Ice Lake)の違い(Intelの資料より筆者作成)
第11世代Coreプロセッサー 第10世代Coreプロセッサー
開発コードネーム Tiger Lake Ice Lake
製造プロセスルール 10nm SuperFin 10nm
CPU Willow Cove Ice Lake
L2キャッシュ(CPUあたり) 1.25MB 512KB
LLC(全体) 12MB 8MB
Control Flow Enforcement 対応
GPU Xe-LP Gen11
EU数(最大) 96 64
メモリ DDR4/LPDDR4 DDR4/LPDDR4
GNA GNA 2.0 GNA 1.0
Thunderbolt/USB Thunderbolt 4.0/USB4 Thunderbolt 3.0/USB 3.0
PCI Express Gen 4 Gen 3

CPUのWillow CoveはL2キャッシュが従来製品の512KBから1.25MBへ、L3キャッシュも12MB/24MBに増強されている。ただし、今回発表された最初のモデルではL3キャッシュは最大12MBとなっている。キャッシュ強化によりOfficeアプリ利用時の性能が前世代と比較して20%向上しているとIntelは説明している。

GPUは、モバイルだけでなく、HPCもカバーできるように単体GPUとして開発したGPUアーキテクチャ「Xe」に基づく統合型GPU「Xe-LP」が内蔵されている。Xe-LPは実行エンジンが従来モデルの64基から96基に増やされ、16MBのL3キャッシュを内蔵しているなどの内部リソースの強化が図られ、Ice Lakeに内蔵されているGen 11 GPUの2倍の性能を実現している。なお、Xe-LPの正式名称は「Intel Iris Xe Graphics」となり、EUが48基と半分になるローエンドモデルは従来と同じく「Intel UHD Graphics」となる。

このほか、AIの推論アクセラレータとなるGNAは第2世代となり、ThunderbotのコントローラがThunderbolt 4へ進化している(Thunderbolt 4に関してはIntel、USB4準拠の「Thunderbolt 4」を次期CPUに搭載参照)。

2つのパッケージタイプが用意され、TDPはより広いレンジで表示

第11世代CoreプロセッサーのSKU(製品ラインナップ)構成は、以下のとおり。

【表2】第11世代CoreプロセッサーのSKU(UP3)
プロセッサナンバー CPUコア/スレッド LLC キャッシュ 内蔵GPU GPU EU数 メモリ オペレーティングレンジ(cTDPレンジ) ベースクロック Turbo時最大(シングル) Turbo時最大(全コア) グラフィックスTurbo時最大
Core i7-1185G7 4/8 12MB Intel Iris Xe 96 DDR4-3200/LPDDR4x-4266 12~28W 3GHz 4.8GHz 4.3GHz 1.35GHz
Core i7-1165G7 4/8 12MB Intel Iris Xe 96 DDR4-3200/LPDDR4x-4266 12~28W 2.8GHz 4.7GHz 4.1GHz 1.3GHz
Core i5-1135G7 4/8 8MB Intel Iris Xe 80 DDR4-3200/LPDDR4x-4266 12~28W 2.4GHz 4.2GHz 3.8GHz 1.3GHz
Core i3-1125G4 4/8 8MB Intel UHD Graphics 48 DDR4-3200/LPDDR4x-3733 12-28W 2GHz 3.7GHz 3.3GHz 1.25GHz
Core i3-1115G4 2/4 6MB Intel UHD Graphics 48 DDR4-3200/LPDDR4x-3733 12-28W 3GHz 4.1GHz 4.1GHz 1.25GHz
【表3】第11世代CoreプロセッサーのSKU(UP4)
プロセッサナンバー CPUコア/スレッド LLC キャッシュ 内蔵GPU GPU EU数 メモリ オペレーティングレンジ(cTDPレンジ) ベースクロック Turbo時最大(シングル) Turbo時最大(全コア) グラフィックスTurbo時最大
Core i7-1160G7 4/8 12MB Intel Iris Xe 96 LPDDR4x-4266 7~15W 1.2GHz 4.4GHz 3.6GHz 1.1GHz
Core i5-1130G7 4/8 12MB Intel Iris Xe 80 LPDDR4x-4266 7~15W 1.1GHz 4GHz 3.4GHz 1.1GHz
Core i3-1120G4 4/8 8MB Intel UHD Graphics 48 LPDDR4x-4266 7~15W 1.1GHz 3.5GHz 3GHz 1.1GHz
Core i3-1110G4 2/4 6MB Intel UHD Graphics 48 LPDDR4x-4266 7~15W 1.8GHz 3.9GHz 3.9GHz 1.1GHz

従来と大きな違いは、Uシリーズ、YシリーズというTDP(Thermal Design Power)による製品のカテゴライズがなくなり、パッケージにより分類が行なわれていることだ。従来のUシリーズ(TDP 15W)に相当するのがUP3という大きいほうのパッケージに基づいた製品で、一般的なサイズのノートパソコン向けとなる。Yシリーズ(TDP 9W)に相当するのがUP4パッケージで、UP3より小型になっており、タブレットや2in1型デバイスに適したものとなる。

UP3はTDP枠が12~28Wに設定されており、パソコンメーカーの選択により、その範囲内で熱設計ができるようになる。従来のUシリーズでも、TDPは15Wとなっていたなかで、cTDPの仕組みでTDPを12~25Wに設定できるようになっていた。今後はそのcTDPのほうが動作レンジとして公式スペックになっていくということを意味する。UP4のほうも同様で7~15Wの間でパソコンメーカーが製品にあった熱設計枠を選べるようになる。

このため、とくにUP3のほうはベースクロックがIce LakeのUシリーズに比べ、やや高めに設定されている。もちろんこれは動作レンジが28Wに設定されたときのベースクロックとなるので、同じCPUでも搭載製品によって変わってくる可能性がある。

またIntelは、Tiger Lakeで採用した、10nmの改良版となる10nm SuperFinのメリットによりクロック周波数が高めに設定できると説明しており、その効果もあるようだ。

Project Athena向けに新ブランド「Intel Evo platform」を導入

Intelはすでにパソコンメーカーへの出荷を開始しており、搭載製品もいくつか発表されている。Intelによれば、すでに150以上の製品化が決定しており、Acer、ASUS、Dell、Dynabook、HP、Lenovo、LG、MSI、Razer、Samsungなどから搭載製品が年末商戦をターゲットにして出荷される見通しだ。

Intelは以前第10世代Coreプロセッサーと同時に、Project Athena(プロジェクトアテナ)と呼ばれるノートパソコンのモダン化を発表した。IntelはProject Athenaを実現するための要求仕様を公開しており、それに合致した製品をProject Athena対応パソコンとしてメーカーがアピールすることを認めていたが、これまでブランド名などは使わずにProject Athenaというコードネームを利用してきた。

対して今回の第11世代Coreプロセッサーでは、その要求仕様の第2弾を策定し、それに合致した製品が名乗ることができるブランド名として「Intel Evo platform」を用意した。今後Project Athenaに対応した第11世代Core搭載ノートパソコンは、Intel Evo platform対応が謳われることとなる。