きちんと動作してる? バッテリーへの影響は? 接触確認アプリ「COCOA」にまつわる疑問をチェックしてみた!

ITライター・山口真弘のアプリレビュー
きちんと動作してる? バッテリーへの影響は?
接触確認アプリ「COCOA」にまつわる疑問をチェックしてみた!

「COVID-19」こと新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言が解除になり、経済活動はもちろん、プロスポーツやコンサートなど大規模イベントが再開されようとしています。もっとも、日々発表される陽性者の数を見る限り、決して終息が見えてきたわけではなく、まだまだ予断を許さない状況が続いています。

そうした中で期待がかけられているのが、厚生労働省がiOS/Android向けに提供する接触確認アプリ、通称「COCOA」です。この7月中旬から本格稼働が始まったこのアプリは、過去14日間のうちに、自分の1m以内に15分以上一緒にいた人が陽性と判定された場合に、「濃厚接触があった」という事実を教えてくれます。

前述の大規模イベントでも入場者にインストールを促すケースが多いこの「COCOA」、今回はこのアプリについてよく挙げられる2つの疑問について、実機を使って検証を行ってみました。

アプリをインストールしたけど無反応。きちんと動作しているの?

過去14日間に陽性の人との接触があれば、その事実を通知してくれるCOCOAですが、接触がなかった場合はまったくのノーリアクションですし、インストールして日数が経過していないうちは、なおさらその確率は高いことになります。勧められてインストールしたものの、きちんと動作しているのか確認が持てない人も多いのではないでしょうか。

COCOAの動作状況を客観的にチェックするには、Bluetooth LEのビーコン(信号)を検出できるアプリを別のスマホに入れ、実際に確認してみるのが手っ取り早い方法です。今回はAndroid向けに配布されている「Beacon Scope」を用い、筆者がiPhoneにインストールしたCOCOAのビーコンが検出できるか、また街中でCOCOAユーザーがどれくらい見つかるか、チェックしてみました。

「COCOA」のメイン画面。陽性者との接触を確認できるほか、自身が陽性者となった場合の登録が行なえます

陽性者との接触がない限りこの表示のままです。ちなみに実際に接触があると「件数」と「相談フォーム」が表示されます

サーチアプリ「Beacon Scope」で表示されるビーコンのプロパティに「Exposure Notification」という文字列があれば、それはCOCOAである証です。検出対象デバイスからの距離(Distance)が明記されているので、自分が所有しているスマホから出ているビーコンを、他のものと見間違えることはないでしょう。

さて、自分のスマホでCOCOAがきちんと動作していることが確認できたら、今度は人が多い場所、例えば駅などに足を運んでみましょう。駅構内で「Exposure Notification」を含むビーコンを検索すると、あっという間に何十件ものビーコンが検出されます。検出範囲はビーコンが届く範囲、つまり半径10メートル程度はありますので、それだけの数が見つかっても何ら不思議ではありません。

今回は都内のローカル駅で、通勤ラッシュが一段落した平日午前10時台にチェックしてみましたが、起動してすぐにヒットした約30件のうち、およそ7割はCOCOAのビーコンでした。多くのユーザーがこのCOCOAをインストールして使っていることがわかります。

「Beacon Scope」。Android端末にインストールすることでBluetooth LEのビーコンを検出できます

駅構内で起動したところ。COCOAのビーコンは「Exposure Notification」という文字列があるのですぐにわかります

一方で、街中で人が多い場所、例えば休日のショッピングストアで本アプリを起動しても、駅構内ほどはヒットしません。サンプル数が少ないのであくまでも参考ですが、やはり駅を利用しているユーザーは電車内での感染を警戒するためかインストール率も高く、行動範囲が近所にとどまるユーザーはその逆というのが、現在の傾向であるように見えます。

もっともこの1~2ヶ月、感染経路不明の陽性者は以前にも増して増えつつあります。そんな中「行動範囲が広くないから」あるいは「面倒だから」「手間がかかるから」といった理由でインストールを拒んでいるユーザーや、そもそも本アプリの存在を知らないユーザーに、本アプリをどれだけ広めることができるかが、今後の課題ということになりそうです。

COCOAをオンにしていると、どのくらいバッテリーを消費するの?

COCOAが登場してすぐの頃に広まったのが、インストールするとスマホのバッテリーの消費が激しくなるという噂です。実際にそうした症状が起こっているならまだしも、本アプリに使われている「Bluetooth LE」と、従来の「Bluetooth」との違いを認識しておらず、Bluetoothをオンにする=バッテリーを食うと脊髄反射的に判断している人が多く見受けられたのは残念でした。

Bluetooth LEの「LE」はローエナジー(Low Energy)の略で、速度を抑え、かつ信号が到達する距離も短めに設定することで、電力消費を抑えられることが特徴です。本アプリのように、位置情報も個人情報も含めない小規模なデータを、低速かつ短距離でやりとりするにはぴったりです。

Bluetooth LEを採用したIoT家電の中には、数ヶ月間の電池の交換不要をうたう製品もあるほどで、電力消費量が大きいBluetoothデバイスを思い浮かべて「バッテリーがみるみる減る」と類推するのは、的外れ以外の何物でもありません(そもそも最近のBluetooth 5.0デバイスは、それほど電力消費量は大きくありません)。

もちろんそうはいってもバッテリーに与える影響は皆無ではないので、どのくらい減るのか実験してみました。手持ちのAndroid 10スマホで、アプリあり・なし、Bluetoothオン・オフをかけ合わせた4つの状態それぞれについて、バッテリー残量100%の状態から4時間放置し、どのくらいバッテリーが減るかをチェックするという実験です。Wi-FiおよびLTE回線はいずれもオンのままにしています。

各2回ずつ実験を行って分かったのは「どの状態もほとんど違いがない」ということです。今回は特定のスマホでしか検証しておらず、端末およびOSなどの要因で挙動が異なる可能性はありますが、これが4時間ではなく半日であったとしても誤差といって差し支えないレベルで、神経質になる必要はなさそうです。

各ステータスごとに、4時間後にスマホのバッテリー残量が100%からどこまで減ったかを各2回ずつ検証。最大は92%、最小は87%で、なぜか「アプリあり×Bluetoothオン」がもっともバッテリーの消費が少ないという結果が出ています

ただし、ネットでこのCOCOAのバッテリー消費にまつわる報告を見ていると、筆者のようにほとんど影響がないユーザが多くを占める一方、みるみるバッテリーが消耗したという報告も少なからず見られ、どうやら二極分化しているようです。今回の筆者の検証では見つからなかった未知の要因があるのかもしれません。

もっともその場合、本アプリに限らず、Bluetooth LEを利用するほかのアプリでも似た症状が起こる可能性が高く、もしそれがスマホの古さに起因するのなら、これを機会に新機種への買い替えを検討してもよいかもしれません。アプリが安定するまでもう少し様子は見てもいいかもしれませんが、なにせ命を守ることにつながるアプリですから、買い替えのきっかけとしては決してオーバーではないでしょう。

以上、COCOAにまつわる2つの疑問点を検証してみましたが、本アプリは利用者が増えれば増えるほど、精度が上がっていくタイプのアプリです。まだ現時点では陽性者の報告フローにおいて一部に不具合があるようですが、かといってインストールしておくことにデメリットはありません。

その不具合もこの1ヶ月で多くが取り除かれ、十分に実用レベルになってきました。これまで様子見だった人も、そろそろインストールを考えるタイミングになってきたと言えそうです。

「COCOA - 新型コロナウイルス接触確認アプリ」のインストールはこちらから