新型コロナウイルス対策の在宅勤務で人気のオンライン会議アプリ「ZOOM」は、Facebookアカウントを持っていない人のデータもFacebookに送信している

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、自宅作業を強いられる社会人が世界的に増加しており、多くの人々がリモートワークのために「FreeConferenceCall.com」のようなオンライン会議ツールを使用しています。オンライン会議ツールの「ZOOM」も新型コロナウイルスの感染拡大により爆発的に利用者が増加したツールのひとつなのですが、同ツールのiOSアプリ版ではプライバシーポリシーに明記されていないにもかかわらず、Facebookアカウントを持っていないユーザーであってもデータをFacebookに送信されてしまうことが判明しました。

Zoom iOS App Sends Data to Facebook Even if You Don’t Have a Facebook Account - VICE

https://www.vice.com/en_us/article/k7e599/zoom-ios-app-sends-data-to-facebook-even-if-you-dont-have-a-facebook-account

Hey Zoom, don't send our data to Facebook without consent | iMore

https://www.imore.com/even-during-crisis-facebook-zoom-are-collecting-your-data

Facebookのソフトウェア開発キット(SDK)を使用すると、アプリに機能を簡単に実装することができます。しかし、FacebookのSDKを利用したアプリの場合、アプリからFacebook側にデータが転送されることが明らかになっています。通常、この種のデータ転送が行われる場合、サービスのプライバシーポリシーには「Facebookにデータが転送される」という旨が記されるのですが、ZOOMの場合、そういった文章は一切見つけることができないとテクノロジー系メディアのMotherboardが報じました。

なお、問題のiOS版ZOOMアプリはApp Storeのビジネス部門で1位となっている、非常に人気の高いアプリです。

「ZOOM Cloud Meetings」をApp Storeで

データ保護やプライバシー関連の専門家であり、ZOOMのプライバシーポリシーを分析したパット・ウォルシェ氏は、「これは驚くべきことです。(ZOOMの)プライバシーポリシーにはFacebookにデータを転送する旨は何も記されていません」とコメントしています。

さらに、Motherboardがアプリのネットワークアクティビティを分析したところ、iOS版のZOOMアプリを起動すると同アプリはFacebookのグラフAPIに接続することが判明。このグラフAPIは開発者がFacebookとの間でデータをやり取りするために用いられるものです。

ZOOMアプリはまず、アプリ起動時にユーザーがアプリを起動したことをFacebookに通知します。さらに、ユーザーが接続しているタイムゾーンや地域などの位置情報、ユーザーの使用しているモバイルキャリア、ユーザーが利用している端末が作成したAdvertising Identifier(広告識別子)などをFacebook側に送信する模様。

FacebookはMotherboardに対して「我々のSDKを使用する場合、顧客データの収集・共有・使用法については、特にサードパーティのアプリでは十分に目立つ方法でユーザーに通知するよう求めており、それが正しく実行されていることを我々は保証します。Facebookはアプリから情報を収集し、その情報を使用して分析サービスやターゲット広告を提供するケースがあります」とコメントし、正しい警告が行われた上でデータ収集が行われていることを強調しています。

しかし、ZOOMのプライバシーポリシーには「Facebookのプロフィール情報を収集する可能性がある」とは記されているものの、Facebookアカウントを持っていないユーザーであってもFacebookにユーザー情報が送信される可能性があるという記述は一切ありません。代わりにプライバシーポリシーには、「サードパーティのサービスプロバイダーや広告パートナーは、ユーザーが製品を使用すると自動的にユーザーに関する情報を得ます」と記されているそう。これに対してMotherboardは、この一文からFacebookアカウントを持っていない人もFacebookにデータを収集されてしまうと考えることは「難しい」と非難しています。

なお、MotherboardはZOOMにコメントを求めたそうですが、記事作成時点では返答が得られていません。加えて、Motherboardは「ZOOMには他にもプライバシーに関する潜在的な問題が散見されます」と、ウェブカメラを乗っ取られてしまう可能性がある点を補足しています。