内蔵プライバシースクリーンなどビジネス機能重視の13.3型2in1「HP Elite Dragonfly」は賢者の選択

日本HPは、法人向け13.3型コンバーチブル2in1「HP Elite Dragonfly」を2019年9月18日に発表、同11月末より出荷をはじめ、2020年1月にカスタマイズモデルの販売を開始した。販売価格は139,800円から(1月14日時点の台数限定キャンペーン価格)。

HP Elite Dragonfly(以下Dragonfly)は堅牢性の高いマグネシウム筐体を採用し、重量約999gのモデルと、約1.13kgで最大24.5時間動作の大容量バッテリ搭載モデルを用意。また、WWAN対応モデルが2020年1月以降販売開始予定となっており、モバイル用途に適した13.3型コンバーチブル2in1と謳われている。

今回、Core i7-8565U/16GBメモリ/512GB PCIe NVMe SSD/WWAN対応というスペックの実機を借用したので、本製品の実力を検証してみよう。

高度なセキュリティ機能を搭載した13.3型コンバーチブル2in1

Dragonflyは記事執筆時点(1月14日)で、3種類の500台限定キャンペーンモデル、4種類のスタンダードモデルが用意されている。キャンペーンモデルは34,000~38,000円の割り引き対象になるが、ハードウェアの構成はいっさいカスタマイズできない。一方、スタンダードモデルはCPU、メモリ、ストレージ、バッテリ容量を変更可能だ。

製品のおもなスペックは、CPUがCore i3-8145U/Core i5-8265U/Core i7-8565U、メモリが8GB/16GB(LPDDR3-2133)、ストレージが128GB SATA SSD/256~2TB NVMe SSD/Intel Optane Memory(16GB+256GB/32GB+512GB)、バッテリが2セル38WHr/4セル56WHhとなっている。

ディスプレイは13.3型タッチ、スタイラス対応のフルHD(1,920×1,080ドット)光沢液晶。ワイヤレス機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0に対応。生体認証はWindows Hello対応の顔認証と指紋認証に標準で対応する。

スタンダードモデルはかなり割高感を感じるが、本製品にはセキュリティ機能としてAIでマルウェアを検知/ブロックする「HP Sure Sense」、MBR(マスターブートレコード)を修復する「HP BIOSphere Gen5」、BIOSが改ざんされても自己回復する「HP Sure Start Gen5」、ブラウザやOfficeアプリを仮想マシン内で実行する「HP Sure Click」、ウイルス対策ソフトやOSのセキュリティ機能を維持する「HP Sure Run Gen2」、システムを正常な状態にリカバリする「HP Sure Recover Gen2」、BIOSから内蔵ストレージのデータを完全消去する「HP Secure Erase(NIST 準拠)」、セキュリティロックケーブルを接続する「ナノセキュリティロックケーブル用スロット」などが搭載されている。Dragonflyはこれらの機能が必要なユーザー向けの13.3型コンバーチブル2in1なのだ。

法人向けモデルらしからぬデザイン性、新旧インターフェイスを装備

DragonflyはCNC削り出しのマグネシウム筐体を採用。カラーは光沢感のある「ドラゴンフライブルー」が使われており、法人向けモデルらしからぬ質感、デザイン性が実現されている。

本体サイズは304.3×197.5×16.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量は38WHrの標準バッテリモデルが約999g、56WHrの大容量バッテリモデルが約1.13kg。バッテリ駆動時間はカタログスペックで標準バッテリモデルが最大16.5時間、大容量バッテリモデルが最大24.5時間と8時間の差がある。利用スタイルに応じて慎重に選びたい。

インターフェイスは、本体右側面にThunderbolt 3×2、3.5mmヘッドセットジャック、HDMI、本体左側面にUSB 3.1 Type-A、ナノセキュリティロックケーブル用スロット、Nano SIMカードスロット(WWAN対応モデルのみ)が用意されている。

Thunderbolt 3は、USB Power Delivery、DisplayPort映像出力に対応しているが、他社製USB Power Delivery対応ACアダプタを接続すると、充電は可能だがHP製アダプタの使用をすすめる通知が毎回表示される。

全方位集音機能、ノイズキャンセリング機能を実現したトリプルマイク、顔認証&指紋認証システム、Webカメラ用プライバシーシャッターを搭載し、新旧のインターフェイスを備えたDragonflyは、モバイルノートPCとしてスキのない作りだ。強いて要望を挙げるとすれば、状況に応じてACアダプタやモバイルバッテリを置く位置を選べるよう、Thunderbolt 3端子を左右に搭載してほしかったくらいだ。

クラムシェル型と変わらない堅牢性、防滴機能が付与された新型キーボード

多くのコンバーチブル2in1をリリースしてきたHP製品だけに、その作りはこなれている。ノートブックモード、メディアモード、テントモード、タブレットモードへ変形する360度回転型ヒンジの動きはスムーズで、ディスプレイを実測203度開いた時点でキーボードは無効化される。

またコンバーチブル2in1でありながら、12万時間を超えるHP独自テストと、MIL-STD-810Gテスト19項目をパスしたタフネス性能を備えている。実際に試用してみた実感としても、クラムシェル型ノートPCと堅牢性は変わらないという印象だ。

前述のとおり、オプションで4,096段階の筆圧を感知するワコムAES方式を採用した「HPリチャージブルアクティブペンG3」が用意されている。替え芯に軟らかいタイプが7本(内1本は装着済み)、硬いタイプが4本同梱されており、好みの硬さのペン先を選べるのはうれしい配慮だ。

防滴機能が付与された新型キーボードは、キーピッチ18.7mm、キーストローク1.5~1.7mm。「-」、「^」、「¥」キー以外は等幅にそろえられており、どのキーにも自然に指が届く。打鍵感には剛性があり、打鍵音も比較的低めだ。

好みが分かれそうなのが最上段の列。「共有またはプレゼンテーション」、「通話応答」、「通話終了」キーが配置されているため、最上段には17個のキーが並んでいる。たとえば「Surface Laptop 3」の場合、最上段のキーは15個なので、2つ多いわけだ。

筆者はファンクションキーをほとんど使わないので気にならなかったが、たとえば日本語変換でファンクションキーを多用しているユーザーには、最上段のキーが小さすぎてタッチタイピングしにくいように思う。

モバイルノートPC用ディスプレイとしては標準以上の広い色域

Dragonflyには、13.3型タッチ、スタイラス対応のフルHD光沢液晶が採用されている。今回借用した実機には、内蔵プライバシースクリーン機能「HP Sure View」が搭載されているが、本機能は2020年1月以降で提供開始予定だ。

パネルの色域はHP Sure View搭載、非搭載ともに非公表だが、ディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたところ、sRGBカバー率98.6%、Adobe RGBカバー率73.2%という値が出た。モバイルノートPC用ディスプレイとしては標準以上の広い色域が確保されていると言える。

試用していて気になったのが視野角の狭さで、今回の貸出機にはHP Sure Viewが搭載されているが、この機能をオフにしていても明らかに視野角がせまい。1人で使っているぶんには視野角の狭さが問題になることは少ない。しかし、複数人で画面を見ながら作業をするのには向いていなさそうだ。

一方、サウンド面については、オーディオブランド「Bang & Olufsen」が監修したクアッドスピーカーを特等席のキーボード両側面と底面手前に搭載しているだけに、高音は伸びやかで、低音にも迫力がある。音量も13.3型ノートPCとしては十分な大きさだ。最大音量ではやや無理に音を出しているような印象があるが、80%ぐらいの音量であればミュージックビデオの鑑賞に耐える品質だと思う。

Core i7-8565U搭載機としては処理能力はやや低め

最後にベンチマークを走らせてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2153」

バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」

3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6846」

CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」

CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」

3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」

ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」

比較対象機種としては貸出機と同じく「Core i7-8565U」を搭載した「ThinkPad X1 Yoga(2019)」と「XPS 13」を採用した。なお、それぞれの機種でベンチマークを計測したさいのOS、ベンチマークソフトのバージョンが異なるので、あくまでも結果は参考として捉えてほしい。

まず処理能力という点で、Dragonflyはほかの2機種に差をつけられている。CINEBENCH R15.0のCPUスコアで、ThinkPad X1 Yogaの約85%、XPS 15の約78%に相当する578 cb、CINEBENCH R20.060のCPUスコアでThinkPad X1 Yogaの約84%に相当する1,160 ptsにとどまっている。

PCMark 10の総合スコアでも、ThinkPad X1 Yogaの約91%に相当する3,871にとどまっているので、OS、ベンチマークソフトのバージョン違いとは関係なく、実際の処理能力がほかの2機種に届かないことは間違いない。

しかし、ストレージ速度はシーケンシャルリード(1M Q8T1)が3,250.101MB/s、シーケンシャルライト(1M Q8T1)と1,988.560MB/sと好成績を記録した。実際、OS、アプリの体感速度として待たされる感はほとんどない。

バッテリ駆動時間は計測したソフトが異なるので比較しないが、ディスプレイ輝度50%の設定において、PCMark 10 Modern Office Battery Lifeで10時間40分と、軽々10時間の大台に乗った。計測条件が異なるため公称値には届かないが、モバイル用途で十分なバッテリ駆動時間を備えていると言える。

気になったのが発熱。キーボード面は最大42.8℃と比較的低めだが、底面の通気口で最大50.5℃とかなり高い表面温度を記録した (室温20.1℃で計測)。膝上で長時間利用するさいには、バッグや雑誌の上に置いて作業したほうがよさそうだ。

セキュリティを重視する方にとって賢者の選択と言える1台

HP Elite Dragonflyはコンシューマ向け製品と比べると高価だ。しかし、基本スペックはコンシューマフラグシップモデルと同等で、スマートな外観から想像する以上の堅牢性を備え、さらにビジネス用途に求められる高いセキュリティ機能がふんだんに盛り込まれている。セキュリティ機能は機密情報を扱うビジネスの現場では必須だし、またプライバシーの漏洩を防ぎたいというコンシューマユーザーにも魅力的だ。

Core i7-8565U/16GBメモリ/2TB SSDというフルスペック構成では、税別371,800円となるので個人的にも手は届かない。だが、スペックをある程度割り切って比較的安価な台数限定キャンペーンモデルを購入するというのは、セキュリティを最重要視するユーザーにとって賢者の選択と言えるだろう。