値段以上の価値がある! 画面を着脱できる2画面スマホ「LG G8X ThinQ」を使いつくす

ソフトバンクが12月6日に発売したLGエレクトロニクス製スマートフォン「LG G8X ThinQ」。スリムかつハイエンドな本体に、付属の専用カバー「LGデュアルスクリーン」を装着すると2画面スマホになるという“合体”モデルだ。

さらに驚きなのは、税込みで5万5440円という、ハイエンドモデルとしては圧倒的に破格な本体価格だ。同スペックのハイエンドスマホが8万円以上の価格設定となっていることを考えると、このモデルは10万円は超えてもおかしくはない。

この記事では、ギミックとコストパフォーマンスの両面で“二重”の驚きもたらしたLG G8X ThinQ(以下G8X)の実像に迫る。

単体でもメインスマホとして使いやすい

まず、G8Xの2画面ギミックから見ていこう。

このモデルを撮影した写真で目にするのは、LGデュアルスクリーンを装着してサブスクリーンを開いたときのものが多いと思われる。しかし、G8Xの本体自体は、6.4型有機ELディスプレイ(1080×2340ピクセル)、ハイエンド機種向けのプロセッサである「Snapdragon 855」、超広角撮影に対応するデュアルカメラ、4000mAhの大容量バッテリーを搭載しつつも、厚さを8.4mmに抑えたスリムなハイエンドスマホだ。

それでいて、ボディーはIPX5/8等級の防水性能とIP6X等級の防塵(じん)性能を確保し、おサイフケータイ(モバイルFeliCa)やフルセグ(地デジ)といった日本独自の機能もしっかり搭載している。Qi規格のワイヤレス充電も利用可能だ。

ただし、LGデュアルスクリーンは防水性能を確保していないので注意しよう。

これに、LGデュアルスクリーンを装着することで、6.4型の有機ELディスプレイが1枚増設されて「2画面スマホ」になるというわけだ。

デュアルスクリーンの装着は簡単だが……

装着は簡単で、ケースのUSB Type-Cコネクタを本体のUSB Type-C端子に差し込むようにして取り付けるだけで済む。柔らかい素材のスマホケースを着ける感覚でOKだ。

デュアルスクリーン側のディスプレイにはノッチはない。ディスプレイ側は360度回転させることも可能で、1画面で動画などを楽しむ際には本体を支えるスタンドの代わりにもなる。

デュアルスクリーンを装着した状態だと、ややずっしりとした大きさと重量感になる。例えるなら、「Newニンテンドー3DS LL」のような感じだ。

このデュアルスクリーンの外側には、画面を閉じた状態でも情報を見られる小型のサブディスプレイも搭載されている。

大きく重たいためか、デュアルスクリーンを装着中に本体を充電する場合は、USB Type-Cコネクタを持つ充電アダプターに、マグネット脱着式のアダプターを取り付ける必要がある。このアダプターは、本体を引っ張るとかんたんに外れるようになっている。USB-Cケーブルが重たくて太い場合も外れやすいのは「ご愛敬」だ。

ケース側にバッテリーにはバッテリーは搭載されていないので、面倒ならケースから本体を取り外し、充電アダプターをUSB Type-C端子に直接差し込んで充電するのもアリだろう。

実際に使ってみた印象では、外出時はスリムな本体だけで使って、室内の落ち着ける場所では2画面で使うのがベストであるように感じられた。

一番の理由は重量にある。本体だけなら約193gで済むが、デュアルスクリーンを着けると約331gと、手に持って使う際にどうしても落とす不安を覚える重さになってしまう。外で立って使うと、2画面を落ち着いて活用しづらいというのもある。

2画面スマホ自体は、古くから何度か各社から発売されている。最近ならサムスン電子の「Galaxy Fold」も近しいコンセプトのモデルといえる。

2画面スマホ(やGalaxy Fold)の欠点は、持ち歩くには大きく重たいことにある。だが、G8Xは2画面目を脱着できるので、利用シーンに合わせて「スリム」と「2画面」を使い分けられるので便利だ。メインのスマホとしても購入しやすい。

なお、デュアルスクリーンを紛失した場合の対応だが、日本では「付属品」となっているため、アクセサリーとして購入することはできない。LGエレクトロニクスによると、何らの方法でデュアルスクリーンを単体購入できるようにすることを検討しており、その際はアクセサリー扱いで販売している国・地域とあまり変わりない価格で販売する予定だという。ちなみに、米国での販売価格は199.99ドル(約2万1700円)だ。

2画面で「ポケモンGO」「ドラクエウォーク」を同時に遊ぶ

デュアルスクリーンの魅力だが、一番分かりやすいのは位置情報ゲームの同時プレイだ。人気の「Pokemon GO(ポケモンGO)」も「ドラゴンクエストウォーク」も、それぞれの画面で同時に動かしてスムーズに操作できる。

全画面ゲームアプリを同時に2つ動かせるのは魅力だ。

もちろん、ブラウザを同時に2つ開いて価格比較、メールを見ながら添付ファイルを確認、動画を見ながらSNS実況……と普段使いでも便利に使える。Androidのデュアルスクリーン機能と組み合わせることで、2画面で最大3つのアプリを操作できる。もちろん、2画面を1つの大画面とみなしての操作も可能だ。

デュアルスクリーンを装着すると画面上にアイコンが表示される。これをタップすることで、表示モードを切り替えられる。バッテリー消費を抑えたい場合は、デュアルスクリーンをオフにすることも可能だ。

2画面を1つの大画面として利用したい場合は、メイン画面にアプリを表示した状態でデュアルスクリーンメニューから「ワイド表示」を選べばいい。

デュアルスクリーンをより活用できるのは、ゲームアプリの操作だ。最初の位置情報ゲームはもちろん、スマホRPGなどを攻略サイトの情報を確認しつつ楽しむといった操作もしやすい。

昨今のハイエンドスマホらしく、G8Xにはゲームプレイを補助するランチャーも搭載されている。デュアルスクリーン装着時は、もう1つの画面をゲームコントローラーにできる、他のスマホにはない機能も用意されている。これも場合によっては便利だ。

仕様としては、Androidが標準対応するゲームパッドの仕様を、タッチ画面で各種ゲーム向けにアレンジして搭載している。そのため、ゲームパッドにさえ対応していれば、アプリ側で特別な対応は不要だ。

ハードキーほど確実な操作を約束するものではないが、格闘ゲームやアクション、リモートプレイ系のゲームも楽しめる。レースゲームやRPGなど、ゆっくり遊ぶタイトルならもっと便利にプレイできるだろう。

ゲームパッド非対応のタイトルに関しても、ゲーミングスマホのようにカスタムコントローラーで専用の疑似ゲームパッドを作って操作できる。

ハイエンドゆえに非常に高い処理性能

先述の通り、G8XのプロセッサはSnapdragon 855。メインメモリは6GB、内蔵ストレージは64GBを備えている。その実力を「Antutu Benchmark」の総合テストと「PCMark for Android」のストレージテストで数値化してみよう。

Antutu Benchmarkの結果は、総合で40万ポイント超。Snapdragon 855を搭載するだけに、非常に良い結果となっている。

PCMarkによるストレージテストの結果は、シーケンシャルリード(連続読み出し)が毎秒800MB、シーケンシャルライト(連続書き込み)が毎秒150MBとなった。こちらもスマホとしては高速だ。

メインメモリの容量はハイエンドスマホとしては基本ラインにあるが、内蔵ストレージに関してはやや少ない。ただし、microSDスロットを備えているので、ストレージ容量は補える。

DAC搭載で高音質な音楽再生を実現

LGエレクトロニクスのハイエンドスマホといえば、高音質を実現する「Hi-Fi Quad DAC」の搭載が魅力の1つ。G8Xもご多分に漏れず、ESS Technology製のDACを4基搭載している。

「DAC」は「Digital Analog Converter」の略で、デジタル音声信号をヘッドフォンやイヤフォンで再生できるアナログ音声信号に変換するチップのことを指す。G8Xでは、DACやヘッドフォン出力に用いるアンプ(増幅器)をスマホとしてはハイグレードなものにすることで、一般的なヘッドフォンやイヤフォンはもちろん、数万円クラスのハイエンドなヘッドフォンやイヤフォンの性能も引き出しやすくしている。

実際にSHURE製のハイエンドイヤフォン「SE535 LTD」(実売価格6万円前後)をつないで音楽を再生してみた所、標準の出力では一般的なスマホと同様に音の広がりやバランスが微妙だったものが、Hi-Fi Quad DACを有効にした途端に音の広がりや響きが一気に変わった。ハイレゾ楽曲を中心に聴くなら、デジタルフィルターを「ナチュラル」や「クリーン」にすると、よりオーディオプレーヤーらしいクリアな音を楽しめる。

オンキヨーの「GRANBEAT」のようなオーディオ特化モデルを除けば、高価格帯のヘッドフォンやイヤフォンの性能を引き出せる、たぐいまれなるスマホといえる。ハイレゾ音源の再生にも最適だ。

なお、Bluetoothオーディオについても高音質コーデックである「aptX HD」「LDAC」に対応している。

カメラも2画面対応 夜景も超広角もキレイに撮れる

G8Xのカメラは、アウト側が1200万画素センサーと超広角の1300万画素センサーのデュアル構成で、イン側が3200万画素のシングル構成だ。ハイエンドスマホで最近盛んな「多カメラ競争」には加わっていないが、AIでのシーン認識には対応しており、暗所にも強い上に超広角撮影もできる。ハイエンドスマホとして文句ないカメラ性能を備えている。

デュアルスクリーンを装着した状態でカメラを起動すると、撮影時に片方の画面で写真プレビューを表示できる。インカメラでの自撮りの際に、片方の画面を暗所ライトとして活用することも可能だ。

写真画質も、夜景はキレイな上、屋内撮影でもノイズは少なく、ポートレートや超広角も楽しめるなど不満はない。派手な機能はないが、堅実なカメラだ。

2画面にもなって基本性能も高い お買い得なオススメ製品

G8Xは、2画面の驚きはもちろん、シーンに応じて画面を分離できる便利さを備え、単体でも非常にハイレベルな仕上がりとなっている。これが、税込み価格5万5440円(ソフトバンク直営店価格)で販売されていて、場合によってさらなる割引を期待できることは非常に驚きだ。

さらに、過去の2画面スマホとは異なり、G8Xは2画面と1画面を使い分けられるので、メインスマホとして購入する際の障壁がほとんどない。これまで「マニア向け」とされてきた2画面スマホだが、マニアではないヘビーユーザーにもヒットするかもしれない。特に、ソフトバンクの「ウルトラギガモンスター+」を家族や同居人3人以上で契約して、他社より安価に動画の見放題やゲームを楽しんでいるヘビーユーザーにはうってつけのスマホだ。

現在ソフトバンクを契約している人はもちろん、「快適な動画見放題の環境を整えたい」という人は、他社からの乗り換えついでに購入しても良いだろう。

「キャリアを乗り換える予定はない」という人も、一部の販路を除いて契約なしでも購入できるので、興味のある人はソフトバンクショップなどで実機に触れてみよう。