Windowsで振り返る2019年、そして2020年の姿

例年、この時期には年末と年始に掲載する記事を1本ずつ用意しておき、それぞれ「1年を振り返る」「来年のMicrosoftやWindowsはどうなるのか」といったまとめや予測のようなものを行っている。

ただ、2020年のMicrosoftは比較的トピックが多いと見込まれており、今回は少し変則的だが、「行くモノ来るモノ」「2020年のMicrosoftとWindows」「もう少し先のMicrosoft」という形の3本構成で年末年始をまとめたい。

というわけで、まずは「行くモノ来るモノ」をテーマにまとめていこう。

行くWindows7、来るWindows 10

最初の話題は「行くモノ」である。ずばり「Windows 7」だ。既に何度も述べられているが、Windows 7の延長サポートが2020年1月14日に終了する。もう3週間を切っている状態で、比較的高価な「Windows 7 Extended Security Updates(ESU)」を購入しない限り、以後のアップデートは受けられない状態になる。

もしESUを購入してサポート継続の手続きを行っていない場合、Windows 7の利用を継続しようとすると、サポートが終了した1月15日以降は全画面での警告が表示されるようになる。これは毎月第2火曜日に配信されている定例のセキュリティアップデートに含まれる「KB4530734」の文書の中に記されているもので、ドメインに参加している、あるいはKIOSKモードで動作しているPCを除いた全てのWindows 7のエディションにおける画面に表示されるようだ。

なお、現在の日本国内におけるWindows 7の稼働状況だが、先日、日本マイクロソフトの関係者と雑談していたところ、「正確な数字はいえないものの、かなり目標値に近い水準を達成している」と一定の成果が得られたことを報告している。

かつて、Windows XPのサポート終了騒動で大わらわだった経緯もあり、今回の同社は2年以上前から、かなり入念に準備を続けてEOS(End Of Service)のその日を待っている。

StatCounterの2019年11月時点のデータによれば、Windows 10のバージョン別シェアは64.64%、Windows 7は27.49%となっているが、以前のWindows XPのときに「この種のシェア情報よりもXPの国内シェアは実際には少ない」といった話も聞いており、前述の関係者のコメントと合わせれば、日本国内におけるWindows 7のシェアは既に2割を切っている可能性が高いのではないかと筆者は考えている。

個人ユーザーはPCの買い換えを促す必要があり、それが最近TV CMでも見かける「モダンPC」のキャンペーンにつながっている。日本マイクロソフト的には、むしろ「法人でのPC利用状況」をいかに見ていくのかが重要であり、そこでの目標はある程度達成できたと考えているようだ。

Windows 7のEOSが見えてきたところで、現行のWindows 10は間もなく大きなマイルストーンに到達しようとしている。先日、Microsoftは9月後半のタイミングで全世界でのWindows 10の稼働台数が「9億台」を突破したことを報告したが、その次のマイルストーンとなる「10億台」が間もなくやってこようとしている。

当該の関係者によれば、「おそらく1月中に何らかの形で発表できる。可能であれば日本国内に関するデータも」ということで、マイルストーン達成前後でこれまでベールに包まれていた情報の一端が解禁されることになるかもしれない。

Windows 10 Mobileにロスタイム?

このWindows 7のEOSに先立つ形で、「Windows 10 Mobile」のサポートが2019年12月10日終了した。Microsoftが用意しているFAQによれば、「同日時点でセキュリティ関連を含む全てのアップデートや無料サポートの提供が終了し、今後はサードパーティー経由あるいは有償で提供されるサポートに移行する」となっている。

いろいろ使いにくい部分は多かったが、それなりに利用していたWindows 10 Mobile(含むWindows Phone)には相応の愛着はある。ただ、今後のサポートが望めない時点でデバイスとしてはこれで終了となる。

一方で、Neowinなどが指摘しているが、同日付でWindows 10 Mobile向けに配信されたセキュリティアップデートの中に下記のような文章が含まれており、「あれ? 2019年12月10日時点でサポート終了したんじゃなかったっけ?」と、「2020年1月14日にサポート終了」の表記を見て疑問に思ってしまう。

おそらく、これはサポート期間のロスタイムでも何でもなく、単に文章の日付を書き間違えてチェックが漏れただけだと考えられるが、たまにこういう情報が出てきて少しユーザーを混乱させてくれるから面白い。

例えばNeowinが同じ記事でも指摘しているが、「2020年1月14日に延長サポートが終了するWindows 7向けのChromium Edgeが翌1月15日にリリースされる予定」という、なんとも奇妙な構図があったりする。Windows 7向けChromium Edgeが、このタイミングでリリースされる意義を筆者はよく分かっていないが、幅広い製品ラインアップを抱えるMicrosoftならではの妙なのかとも思ったりしている。

Chromium Edge利用の注意点と旧バージョンへのアクセス方法

前項でも少し触れたが、次の話題は「Chromium Edge」だ。WebブラウザのレンダリングエンジンをBlinkベースのChromiumに変更した新しい“Edge”は、2020年1月15日のタイミングで製品版(Stable版)に置き換えられる。

注意点としては、1月15日にStable版がリリースされた時点で、「RS4」こと「Fall Creators Update」に該当する「Windows 10(バージョン1709)」以降のバージョンのWindows 10では、「Windows Update」を経て自動的に旧EdgeのChromium Edgeへの置き換えが進むことだ。

詳細は、Microsoftが公開するサポート文書に記されているが、Chromium Edgeは旧来のEdgeと違ってOSからは切り離されており、機能アップデートも従来の半年(あるいは1年)ではなく「6週間単位」程度が想定されている。

そのため、現在サポートされている4種類のOSバージョンに対して3段階でアップデートを適用することで、Chromium Edgeが機能するよう少しずつ変化が加えられており(下記参照)、最終的にChromium EdgeのStable版がリリースされることで変更が有効になる。

Chromium Edgeへの移行後は、アイコンやピン留めしたEdge本体が新版へと置き換えられ、基本的には過去のデータも含めて新環境へとそのまま移行する。ただし、過去のEPUBサポートなど引き継がれないものもあり、この点では注意が必要だ。

なお、ここままでは旧EdgeがWindows Updateとともに利用不可となってしまうため、Microsoftからいくつか関連文書が提供されており、企業ユーザーなどで必要な場合には事前対策が可能だ。

1つは「Blocker Toolkit」で、Windows UpdateによるChromium Edgeへの自動移行を防止する。ただし自動アップデートを防止するだけであり、手動でインストールした場合には無効だ。

もう1つは「旧Edgeの呼び出し方法」で、Chromium Edgeがインストールされた場合に旧Edgeを上書きするのではなく「隠す」状態になることを利用した仕組みで、β版で開発を行っているデベロッパー向けの機能として残されていたもの。参考となる文書の手順に従い、Group Policy Editorで値を書き換えることにより、サイド・バイ・サイドでの2つのEdgeの同時呼び出しが可能となる。

これらの関連文書が公開された12月17日のタイミングで、MicrosoftではChromium Edge向けのExtensionsの登録受付を開始している。また同日には、ARM64版Chromium EdgeのDevチャンネルでの配信がスタートしており、やや出遅れる形になったものの、Windows on Snapdragonの本格稼働に向けた動きが進展しつつある。

Windows Insider Programが大きく変化した2019年

ここまで、2019年と2020年を境に列挙してきた「行くモノ来るモノ」のシリーズだが、最後を締めるのは他ならぬ「Windows Insider Program」だ。

数々のアップデートが行われてきた2019年のWindowsだが、OSの大型アップデート(機能アップデート)のリリースサイクルの変化とともに、同プログラムにおける“Ring”の役割が大きく変化している。

具体的には、過去1~2年ほどほとんど機能していなかった「Slow Ring」と「Release Preview」について、今春のリリースのタイミングで前者が「最新リリースの(比較的)安定動作版」、後者が「正式リリース前のビルドの動作検証」という形で明確な役割が与えられたことだ。

今回、「19H2」こと「Windows 10(バージョン1909)」が実質的な修正アップデートに留まった経緯上、ユーザーが最新環境を試せるアップデートはFast Ringを通じて提供される「20H1」の開発ビルドであり、Slow Ringとの差別化が図られた。

一方で、従来までFast Ringと区別して提供されていた「Skip Ahead」は2019年11月5日の「Build 19018」のFast Ringへの提供開始とともに廃止された。そして12月16日のタイミングで、今度は最新ビルド「Build 19536」をFast Ringに提供することを発表している。

興味深いのは、ビルド番号がこのタイミングで一気に500番ほど飛んだことだ。

これは、「20H1」で扱われるバージョンを離れたということを意味している。通常のサイクルであれば、これまでFast Ringに提供されていた「20H1」の開発ビルドの提供が落ち着いたタイミングで“次”に移行していたものが、「バージョン2004」とされるWindows 10の次期バージョンの開発が、最終段階に突入するとみられる2020年3月までは、まだ3カ月近くある。

Microsoftでは「RS_PRERELEASE」の表記についての意味合いを説明しているが、2019年の開発状況を考えれば、Fast Ringに提供された最新ビルドはいわゆる2020年後半にリリースされる「20H2」ではなく、「21H1」となる可能性が高いのではないかと筆者は考えている。

「20H1」と「20H1」は「Manganese」と内部で呼ばれるバージョンであり、位置付け的には「大規模な機能アップデート版」と「その修正版」であった「19H1」と「19H2」の関係に近い。ゆえに同社が「RS_PRERELEASE」で最新機能を次々とFast Ringでリリースしていくとすれば、やはり「21H1」に近い位置付けになるのではないだろうか。2021年はArm版Windowsに大規模な機能アップデートが加わるといううわさもあり、その点での期待も高い。

まとめると、Neowinがいうように、Windowsの位置付けや開発スタイルが変化したのと同時に、Windows Insider Program自身が大きく変化したのが2019年ということなのかもしれない。次回はこのFast Ringに提供された最新リリースも含め、「2020年のMicrosoftとWindows」をもう少しだけ整理していく。