Ice Lakeで成熟度アップ! レノボ製ペン付き2in1「Yoga C940」レビュー

完成の域に達したYogaのスタイル

ここではレノボ・ジャパンが11月末に発売した14型2in1「Yoga C940」をレビューする。360度回転式ヒンジを備えるほか、デジタイザペンを標準搭載する製品だ。税別直販価格は149,800円から。

なお、今回レノボから国内版Core i5モデルと英語版Core i7モデルを借りている。後者は国内では取り扱われないモデルであり、写真などの紹介はCore i5モデルを中心に行なうことにするが、Ice Lake世代のCore i7ということで、その性能はCore i5と合わせて見ておく価値がある。なので、ベンチマークでは後者の数値も入れることにしている。

YogaのなかにはCシリーズとSシリーズがあり、Cシリーズはややカジュアル、Sシリーズはモバイルにストイックな軽量モデルといった印象だ。CシリーズはUSB Type-A端子を1基搭載しているが、Sシリーズはより薄く軽いがType-Cコネクタのみになる。

Yoga Cシリーズのなかには14型液晶ディスプレイのC940のほか、旧モデルで13.9型液晶ディスプレイのC930、そして13.3型液晶ディスプレイのC630がある。Yoga C940は最新かつCシリーズ中でもっとも液晶ディスプレイが大きなモデルと言える。

Yogaの特徴はやはりフリップスタイルの2in1である点だ。液晶ディスプレイの開度によって4通りのスタイルで活用できる。ちなみに、こうした外観デザインでは、C930からの大きな変更はない。

筐体はアルミニウム製で質感もよい。カラーリングは「マイカ」。シャンパンゴールドに近い色だろうか。ややマット感のある塗装だが、光が当たる部分は鈍い光沢がありシックな印象だ。天板左上に大文字「YOGA」ロゴがあるが、レーザー刻印のようで色味の統一感があってよい。

本体サイズは320.3×215.6×14.2mm(幅×奥行き×高さ)。先に触れたとおり、Yoga S940(319.3×197.4×12.2mm)と比べると多少大きく多少厚い。ただし14.2mmという厚みはモバイルノートとして見ても十分すぎるほどスリムだ。フットプリントも狭額縁液晶ディスプレイのおかげで非常に小さく、喫茶店にある丸テーブルのようなせまいスペースでも十分に余裕がある。

Yoga C940はこの厚みでありながらデジタイザペンを収納できる。この「アクティブペン」は細すぎるということがなく、しっかりホールドできるから、タブレットモードでちょっとしたメモ、あるいはお絵かきするのに最適だ。スペック表に仕様は書かれていなかったが、おそらくWebサイトにあるLenovo Tablet 10 Active Penと近いものだろう。こちらの筆圧検知レベルは4,096段階となっている。

インターフェイスは左側面にUSB 3.1 Type-A×1、Thunderbolt 3(Type-C、DisplayPort出力対応、Power Delivery対応)×2、マイク/ヘッドフォンコンボジャックを置き、右側面はヒンジ寄りに電源ボタンを置くのみだ。デジタイザペンの収納位置は電源ボタンのすぐ裏にある。HDMI端子を搭載していないが、これはThunderbolt 3のDisplayPort出力機能を利用することになる。無線LAN機能はWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)止まり。有線LANは非搭載。

重量は約1.35kg。実測では1.381gだったが誤差の範囲と言えるだろう。

メインストリームを狙った、使いやすさ重視のスタンダードなデザイン

14型液晶ディスプレイは解像度がフルHD(1,920×1,080ドット)。2in1なので発色、視野角の広いIPS駆動方式を採用しており、画面は光沢コートが使われている。もちろん10点マルチタッチにも対応。タブレットとして見ると解像度が低めだが、CPUやGPU性能を考えるとフルHDならムリがない。グラフィック用のメモリもメインメモリからシェアするため、その節約という意味でも4Kパネルよりもよい選択と言えるかもしれない。

液晶ディスプレイの上部ベゼル内には720pのWebカメラが内蔵されている。狭額縁なのだが、スマートフォンで言うノッチが逆に上部に突き出るようなデザインでWebカメラを収めている。なお、スライド式のプライバシーシャッターを備えているので、気がつかないうちに映像が外部に流れるような被害を防ぐことができる。

キーボードは84キーの日本語配列。Home/End、PageUp/PageDownがFnキー併用で十字キーに割り当てられているが、全体的な配列は標準的だ。主要なキーの横幅はほぼ同じで、最上段のキーと上下キーが縦方向を圧縮している。キーピッチは約19mmと標準的。アイソレーションでストロークはやや浅めだが、タブレットモード時にキーボードが裏面に来たときの違和感を抑える上での構造だろう。

タッチパッドはかなり大きい。左右クリックボタンが一体化したタイプだ。ほか、パームレスト部では右上に指紋認証センサーを備えている。

低コストを考慮した控えめスペックだがその分多くのユーザーにマッチする

Yoga C940のCPUは、Core i5-1035G4。冒頭で説明したとおりIce Lake世代のコアであり、10nmプロセス製造で統合GPU機能がIris Graphicsになる。動作クロックはベースが1.1GHz、Turbo Boost時が3.7GHz。どうもIce Lakeは同じ第10世代のComet Lakeや第8世代Kaby Lake Rなどと比べるとベースクロック側が低く抑えられている印象だ。

なお、せっかくCore i7モデルも手元にあるので、ベンチマークの前にIce Lake世代のCore i7とi5の違いもまとめておこう。

Ice Lake世代のCore i7とi5は、ともに4コアでHyper-Threadingに対応し、8スレッドの同時処理が可能という点では同じ。動作クロックの違いはマーケティング要素やダイの品質考えられるが、キャッシュは2MBの差がある。

ほか、Iris Plusグラフィックスでは実行ユニット(EU)数が異なる。Core i7は64EUだが、Core i5は48EUで4分の3に削減されているということになる。動作クロックも若干異なるので、グラフィックス性能には比較的大きな影響があるだろう。

メモリは8GB。スペック表ではLPDDR4Xとされており、クロックは不明。ただし、GPU-Zから見ると1,600MHz表記なのでLPDDR4X-3600あたりと思われる。LPDDR4Xは通常のDDR4-2666などと比べると大幅に高クロックで、その分メモリ帯域も広く、SandraのMemory Bandwidth Benchmarkでは35.25GB/s程度のスコアを記録している。

1つ注記するならば、メモリ容量が8GBというところが気になる。もちろんメインストリームユーザーなら8GBで問題ないと思われるが、写真補正やRAW現像なども行なう性能志向のユーザーには少々足りなくなってきており、16GB以上のオプションも欲しいところだ。

ストレージはこのサイズのモバイルノートでは当然、M.2 SSDになる。接続はPCI Express 3.0 x4でNVMe 1.3対応。容量は256GBだ。最近のノートPCでは512GBが主流になりつつある。モバイルノートPCではSSDの換装が難しくなってきており、その点を考えると大容量SSDのオプションは欲しい。スペックを全体的に見ると、メモリとストレージが最低限という印象がある。

Ice LakeのCore i5はKaby LakeのCore i7を上回る

ベンチマークは冒頭で紹介したように、Core i5搭載のYoga C940日本語版(以下JP)と、Core i7搭載の同英語版(以下US)、Core i7搭載の前モデルYoga C930の新旧3モデルで比較した。使用したベンチマークソフトは、まずULの「PCMark 10」、同「3DMark」、MAXONの「CINEBENCH R20」、ペガシスの「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、The HandBrake Teamの「Handbreak」だ。

なお、Ice Lake搭載モデルでは、3DMarkのDirectX 11/10/9関連テストがエラーで落ちる症状が発生し、このスコアが取れていない。ところがPCMark 10 ExtendedのFire Strikeテストは問題なく動作しているので、DirectX 11性能はここを見ていただきたい。

CINEBENCH R15のスコアはIce Lakeの性能を端的に表している。とくにCore i7同士を比較すると、Ice LakeのC940(US)のほうがクロックが低いにもかかわらず、シングルスレッドは1.35倍近く、マルチスレッドでは1.45倍近く高いスコアだ。

そして注目はCore i5のC940(JP)。クロックも当然低いことに加えてキャッシュ容量でもCore i7の4分の3になるが、Kaby Lake世代よりも高1.35~1.25倍のスコアを出している。こう見ると、Ice LakeによってKaby Lake世代が過去のものにされた感がある。

PCMark 10のスコアも、基本的にこの並びになる。つまりC940(JP)は前モデルのC930(i7)よりも総合で1.2倍ほど高スコア、C940(US)はC930(i7)の1.38倍だ。もちろんIris PlusによってGamingシナリオのスコアが大幅に向上しているところもあるが、おもにDigital Content Creationシナリオで向上が見られる。

C940(US)に関しては、EssentialsやProductivityシナリオにも向上が見られるが、C940(JP)に関してはCore i5ということもあり、ほかはC930(i7)と同程度。ただ、Core i5でCore i7相当の性能+グラフィックスの大幅向上なので素性がよい。

3DMarkに関しては、まずPCMark 10のFire Strikeを見ると、C930(i7)のIntel UHD Graphics 620に対し、C940(JP)の48EUのIris Plusで750ポイント程度向上、C940(US)の64EU版Iris Plusで1,400ポイント近く向上している。もとのC930(i7)が1,023ポイントでしかないため、C940(JP)で1.7倍、C940(US)なら2.3倍も高スコアだ。

DirectX 12の3DMark側のTime Spyに関しては、負荷が高くIris Plusの領分ではないと思われるが、C930(i7)の467ポイントに対し、C940(JP)は726、C940(US)は941ポイントと、こちらも1.5倍、2倍のスコアを記録している。

エンコードテストは、ここまでのベンチマークに比べると伸び率が高くなかったが、それでもC930(i7)比でC940(JP)が1.07倍、C940(US)が1.19倍ほど高フレームレート。こう見るとそこまでインパクトはないが、今回はC930(i7)で処理に2時間(VP9変換)かかる映像を用いたため、C940(JP)で10分ほど、C940(US)で18分ほど短縮できている。

ゲームテストはドラゴンクエストX ベンチマークソフト、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク、World of Tanks enCoreを用いた。バランスというところもあるが、Core i7同士で比較すると、Iris Plusを搭載するC940(US)は高負荷な設定時ほど向上幅が高く、2倍以上の向上を見せている。

ただし、十分なフレームレートが得られるドラゴンクエストX ベンチマークソフト、中画質以下ならプレイ可能なWorld of Tanks enCoreでは2倍の性能で楽しめるが、やや重いファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、プレイ可能な30fps前後の域で見ると、1.9倍ないしは1.7倍程度になりそれ以上に負荷の重い設定と比べると向上率が落ちる。GPU側ではないところにボトルネックが生じているのだろう。

C940(JP)では、まずドラゴンクエストX ベンチマークソフトはC940(US)ほどの向上が見られず、C930(i7)比で1.2倍程度にとどまった。これはどの画質設定でもほぼ同じだ。

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークは、負荷の重いところで1.63倍程度と十分な向上が見られるが、プレイが快適なラインで見ると1.5倍程度になる。それでも、1,280×720ドット、せいぜい標準品質(ノートPC)が現実的なC930(i7)に対し1つ上の画質の1,280×720ドット、高品質(ノートPC)に引き上げることができるのはよい結果だ。

World of Tanks enCoreに関しては、1.7~1.43倍で、プレイ可能なラインは中品質がギリギリ、最低品質がメインになると思われる。

CrystalDiskMark 7.0.0で比較をすると、C940(JP)に関しては、256GBという小容量でありながら速度的には512GBのC930(i7)と同程度かつシーケンシャルライトに関しては600MB/s台から2.3GB/s(Q8T1)、1.8GB/s(Q1T1)と大幅に高速化している。ただ、もっとも速かったのはC940(US)だ。C940(JP)とC940(US)は同じSSDの容量違いであり、512GBのC940(US)は256GBのC940(JP)のものよりランダムリード/ライトが向上している。

バッテリ駆動時間はPCMark 10のバッテリベンチマークから、Modern Officeシナリオで計測している。結果はC940(JP)が10時間35分、C940(US)が11時間27分、そしてC930(i7)は6時間10分だった。Ice Lakeを搭載するC940はどちらも10時間を超えており、モバイル性能の向上が実感できる。その上で、従来同様にCore i7のほうがCore i5よりも長時間駆動可能であるようだ。

なお、Modern Officeシナリオはまずまず負荷がかかるため、JEITA 2.0で計測されているC940(JP)の公称値約23時間と比べると半分以下だ。とはいえ10時間超のバッテリ駆動時間があれば、一般的な業務であればまる1日、ほぼカバーできるのではないだろうか。

このように、Ice Lake世代のYoga C940は、前モデルKaby Lake世代のC930をCPU、GPU、バッテリといったさまざまな面から向上を見せている。とくに、Core i5を搭載する国内で販売されるC940に関しても、それぞれ見ていくとCore i7を搭載する前モデルを上回っている。

ただし、こうして比較してしまうと(もちろんコスパという点では別の考え方もあるが)Ice LakeのCore i7を搭載するモデルもラインナップに添えてほしい印象だ。

YogaスタイルにIce Lakeでアップグレードされた性能が加わり鉄板モバイルへ

Yoga C940は、Yogaという完成されたデザインにな大きな変更がないものの、Ice Lake世代のCPUにアップグレードされたことで、処理能力、モバイル性能を大幅に向上させている。

完成されたデザイン、シーンに合わせてさまざまなスタイルに変化できることは、ビジネスでの立ち話ではタブレットへ、クラムシェルやテントなどは対面商談や出張時のホテルで映像を楽しむようなシチュエーションなどで便利だ。

レビュー中、デザイン面でここがいいなと感じたのは、地味ながらWebカメラの出っ張りだ。液晶を開く時のひっかかりとなり、最近ありがちなデザイン一辺倒で爪を使わないと液晶を開けないものよりもよっぽどよい。

一方のIce Lakeによる性能の向上は、かんたんなゲームや映像編集などの重い処理で効果があることに加え、通常のウィンドウを開く操作、Webページをレンダリングするような操作でも少しレスポンスがよくなった印象を受けた。

レスポンスは計測が難しいためあくまで体感での印象だが、Ice Lakeで性能が向上したことで、各バランスもよくなったのではないかと思う。そしてバッテリ駆動時間。ここも非常に大きく向上している点だ。PCMark 10のバッテリテストのように、休みなく処理を続けることは少なく、多少の息抜き時間を考慮すれば10時間が12時間、13時間へと伸びる。

このように、Yoga C940は2in1モバイルノートとしてさらに成熟したと言えるだろう。