ファーウェイ「Mate X」を使って大満足--外折りが便利、カメラ性能も上々

華為技術(ファーウェイ)の「Mate X」の実機をようやく、十分な時間使ってみることができた。サムスンの「Galaxy Fold」、Motorolaの「Razr」と並ぶ、中国メーカー発の折りたたみ式スマートフォンである。パリで、これを使って丸1日を過ごしてみたのだが、率直に言って、この折りたたみ式「Android」端末は相当クールだ。

分かりやすいところで、実際の折りたたみの構造から話を進めよう。Mate Xの柔軟なOLEDスクリーンは、スクリーンを外側にして全体が折れ曲がる。サムスンのGalaxy Foldは、本と同じようにスクリーンを内側にして折れ曲がるし、Razrは昔ながらのクラムシェル型携帯のように口が閉まる感じなので、そのどちらとも違う。つまり、折りたたんだ状態でも8インチディスプレイの全体を使えるということだ。Galaxy Foldと違って、Mate Xには内側ディスプレイというものは存在しない。

これで、スクリーンの設計やヒンジの仕組みはどれが一番いいかという比較の話もできるようになった。だが、今回は純粋にMate Xについての記事なので、この端末のどんな点が素晴らしいか、今までに分かったことをお伝えしよう。

何といっても、折りたたみディスプレイの印象は圧倒的だ。スクリーンが外側に折れ曲がるとき、画像にどんな歪みも生じないことに驚かされる。それに、インターフェースは何を表示しているときでも、正しいアスペクト比のまま瞬時にサイズが変わることも気に入った。2019年の初めに、Mobile World Congress(MWC)で初めて目にしたときにも、未来的なものを目撃しているという衝撃を心の底から感じたものだ。それから何カ月かたち、その間に発表されたGalaxy Foldも使ってみた今でさえ、このMate Xの折れ曲がり方から受ける感動は薄らいでいない。

きっと分かってもらえると思うのだが、Mate Xは、開封した瞬間から何度でも開いたり閉じたりを繰り返してみたくなる。友だちも試したがるだろうし、同僚も、あるいは町で偶然居合わせた知らない人も、きっと試したがるはずだ。

もちろん、この折りたたみスマートフォンの素晴らしいところは、町なかで注目を集められることだけではない。折りたたむと、大きいスクリーンがほぼ半分になって、6.6インチディスプレイになる。「閉じた」通常のスマートフォンの状態でも、特に大きなファブレットを除き、ほとんどのファブレットのサイズを上回るのだ(スクリーンをフルに使えるのは、開いたときだけ)。そのため、動画や写真の見栄えがとてもいい。特に大きいのは、表示の邪魔になるノッチが一切ないことで、これについては、また後でも触れる。

「スマートフォンモード」で使うときのスクリーンが大きいので、閉じた状態のGalaxy Foldよりずっと便利だ。Galaxy Foldを使い始めてから何カ月かたつが、外側スクリーンは4.6インチと狭く、入力がとても難しいと感じることがある。そのため、結局ほぼいつも大きく開いたタブレットモードで使っている。自分が持っているのは、本当に折りたたみスマートフォンだったっけ。それとも折りたたんで簡単に収納できるタブレットだったっけ、と自問したくなるくらいだ。

一方、Mate Xなら、そんな疑問に悩むこともない。使いやすいデザインで、Galaxy Foldより幅が広いのだが、閉じた状態ではMate Xの方がはるかに薄い。ジーンズのポケットにもMate Xの方が簡単に収まるし、賑やかなパリの通りを歩いているときにも全く邪魔にならなかった。

気になるのは、外側に折りたたむので、背面のスクリーンが常に露わになっている点だ。ポケットの中で鍵やコインによって傷が付く心配もある。使われているプラスチック素材は、筆者が使っている間はかなり頑丈そうだったが、何カ月も何年も使っていても同じとは言い切れないし、きっと傷付きやすさを気にしてばかりいることになりそうだ。サムスンも、スクリーン破損がいくつも発生したために最初のGalaxy Foldのオーダーをすべてキャンセルし、最終的には再設計してから発売することになった。あの前例を忘れてはならないだろう。少なくとも筆者は、使っていないときには何らかの保護スリーブに収納しておきたいと思う。

OLEDディスプレイ自体は明るく鮮やかで、シャープネスも高い。ホテル客室の明るい照明の下でも、画面の読み取りに苦労はしなかったし、その後、あいにく冬のパリは曇り空だったが、屋外に出ても同じだった。動画は、スマートフォンモードで見ても申し分ないが、開いて8インチにするともっと没入感が増す。町に出かけているときに撮影した画像を、その大きいディスプレイでチェックするのは、本当に楽しかった。

折りたたみを可能にするために、ディスプレイはガラスではなくプラスチックで覆われている(現在の折りたたみスマートフォンはすべてそうだ)。また、Galaxy Foldでも見られたように、開いてスクリーンを平らにしたときには、表面に波跡のようなものが出る。といっても、Galaxy Foldの方が「折り目」として目立ったのに比べると、まさに「波跡」と呼べる程度だ。おそらく、スクリーンがそれほど急角度では曲がらないので、ディスプレイ素材にあまり折り目が生じないためだろう。実際に丸1日使ってみた間も、この波跡が目につくことはあまりなかったし、気になったことは皆無だった。

本当に細かい点までこだわるとしたら(いや、実際こだわっているのだが)、ヒンジが少し固いというところだろう。タブレットモードから外側に折りたたむとき、自然に折れ曲がるよりも無理矢理に曲げている感じがあり、最初に何度か折りたたんだときは、これでいいのかと不安に感じた。だが、そもそもタブレットを半分に折ろうとするという最初の違和感を乗り越えれば、きっと慣れてくる程度の感覚と言っていいだろう。逆に考えれば、タブレットとして使っているときに誤って閉じてしまう心配がないということでもある。スマートフォンモードにするとき、物理的な止め金でしっかり止まるのも、開くときに押すボタンが押しやすい位置にあるのも個人的には気に入っている。Galaxy FoldとRazrは、閉じた状態にするのに磁石を使っているが、Mate Xは止め金を選んだということだろう。どちらがいいかは、時間が答えを出してくれるはずだ。

カメラは、垂直のサイドバーに収められている。これは、タブレットモードで開いたときちょうどいい持ち手になると感じた(閉じてスマートフォンモードに戻ると、厚みがこのサイドバーの高さに揃うので突起にはならない)。また、カメラを使う際に、ノッチがディスプレイの邪魔になることがない。自撮りの場合でも、本体をひっくり返してメインのカメラでそのまま撮ればいいだけだ。

カメラ機能はファーウェイの「P30 Pro」と同等だ。標準レンズ、光学3倍と5倍のズームに対応する望遠レンズ、超広角レンズ、そして深度処理用となる第4のToF(Time of Flight)センサーを備える。試用期間中、これらのカメラを使いまくったが、結果にはかなり満足している。特にポートレートモードでは、狙った被写体の周りにきわめて正確なボケを出すことができた。露出は全体的に良好で、ナイトモードも、ファーウェイのこれまでのフラッグシップモデルで感動してきたのと同じように、夜間の暗いシーンでも明るくシャープな画像が撮れる。

その他のスペックは、トップエンドのスマートフォンでおなじみの辺りだ。ファーウェイ最新の8コアプロセッサー「Kirin 980」を採用し、バッテリーは1日持つ4500mAh。内部ストレージは512GBで、RAMは8GBを搭載する。

とはいえ、今回重要なのは、中身のスペックではない。ファーウェイMate Xの肝は、折り曲げられることにある。そして、丸1日使ってみた結果、これまでの折りたたみスマートフォンでは最も気に入ったと自信をもって言える。中国でしか販売されていないことを考えると、すぐに自分の永久コレクションに加えることはできなさそうで、その点は何とも残念だが、いっときでも使ってみたおかげで、これからの折りたたみデバイスがどうなっていくのか、とても楽しみになってきた。