次期「Android」スマホに期待できる6つのこと--クアルコムの最新デモより

スマートフォンは毎年、より高速に、よりスマートに、そしてより効率的になっている。内部にあるプロセッサーのおかげだ。スマートフォンの写真撮影機能やスローモーション動画、顔や指紋による本体のロック解除機能を気に入っている人もいると思うが、それらを可能にしているのはプロセッサーだ。ハイエンド「Android」スマートフォン向けの、Qualcommの次期チップセット「Snapdragon 865」は、2020年にスマートフォンに搭載されるかもしれない新機能群の基盤となっている。

Snapdragon 865を採用すると、5G通信速度、2億画素のカメラ、デジタル運転免許証のサポートや、スマートフォンでのゲームの体験をデスクトップ体験にさらに近づけるであろう機能群など、さまざまな高度な機能を利用できるようになる。しかし、本記事では、将来のスマートフォンでできること(スマートフォンメーカー各社がそれらの機能を搭載する必要があるが)について、Qualcommの「Snapdragon Tech Summit」で提示された具体的な例もいくつか紹介したい。

Snapdragon 865チップは2020年にハイエンドスマートフォンへの搭載が開始される予定だ。

5G経由で8K動画を編集

Snapdragon 865を搭載するすべてのスマートフォンは、5Gに対応し、最大8KのHD動画をサポートできる性能を備える。8Kは超高解像度なので、ファイルサイズも非常に大きくなる。

例えば、30秒の8K動画ファイルは最大1GBのスペースを占有する。それを4G経由でアップロードするには、20分かかる場合もある。そのため、高速のWi-Fi接続がなければ、それよりも短い8K動画のアップロードでさえ実用的ではなく、その過程でバッテリーも大量に消費される。5Gを使用すると、より高速にこうした動画をアップロードして、クラウドで編集することが可能だ。出先でほかのユーザーと動画を共同編集することもできる。

筆者が目にしたデモは、なるほど、と思わせるものだった。そのデモでは、大容量の8K動画がスマートフォンからクラウドにアップロードし、ほかのユーザーと共有した。そして、そのユーザーが編集を加え、完成した動画を再び共有した。こうした大容量のデータを快適に操作するには、超高速の5G通信速度が必要になる。

2本指での生体認証でアプリのロックを解除

超音波を使ってスマートフォンのロックを解除するQualcommの画面内指紋リーダーは、出だしでつまずいた。特に、「Galaxy S10」と「Galaxy Note10」に実装された画面内指紋リーダーには問題があった。Qualcommは今回、新たに発表した「3D Sonic Max」によって再びこのテクノロジーに挑戦している。3D Sonic Maxは、読み取り面積を拡大して、2本の指を認識できるようにした指紋リーダーだ。

これにより、より高速なロック解除が可能になり、ユーザーの指に固有の凹凸や汗孔というユニークなデータポイントをより多く照合することで、セキュリティも向上すると言われている。スマートフォンでは、1本または2本の指でのロック解除を設定する選択肢が用意されるかもしれない。あるいは、モバイル決済にのみ、または銀行アプリなどの一部のアプリで2本指認証を使用するなど、設定を選べるようになる可能性もある。

さらに、心拍数を測定することもできるので、この機能を利用する新しい健康アプリが登場するかもしれない。

筆者は、画面内指紋センサーではなく、安全と思われる顔認識によるロック解除を好んで使うようになったが、予備の方法として、あるいは、単純に好きなようにカスタマイズできるもう1つのオプションとして搭載されれば、このアイデアはよいと思う。

リフレッシュレートの向上で、滑らかなフィルターや画面の録画が実現

「高速な」画面を備えたスマートフォンが増えつつある。一般的なリフレッシュレートは60Hzだが、一部のスマートフォンでは、これが90Hzや120Hzに強化されており、ゲームに適したより滑らかなグラフィックスを実現している。だが、高速なリフレッシュレートの利点は、これだけではない。

Snapdragon 865は、最大144Hzの画面リフレッシュレートをサポートするので、ゲームだけでなく、画面上のすべてのアニメーションがよりスムーズになる。ページを上下にスクロールするときの滑らかさは、ありきたりではあるが格好の例だ。だが、ゲーム以外でその威力を最も端的に示したのは、Snapchatのフィルターのデモだった。筆者の顔をすばやく追跡して、赤ちゃんのような外見に変換したり、性別交換フィルターでは、筆者のあごを角張らせて、眉毛を濃くし、あごひげを生やしたりしていた。

動きの激しい自動車に乗っているときに画面を録画する場合、高いリフレッシュレートによって、どれだけ動きが滑らかになるか想像してほしい(ただし、リフレッシュレートが高くなると、バッテリー消費も多くなることに注意してほしい)。

「Googleアシスタント」が周囲の音からユーザーのいる環境を把握する

スマートフォンは、アシスタントを起動する「OK, Google」などのウェイクワードに反応するようにすでに設定されている。Snapdragon 865は新しい「Sensing Hub」によって、それをさらに進化させ、周囲の音を聞いて、何が起きているのかを解釈できるようにさせたいと考えている。

赤ちゃんの泣き声、ガラスの割れる音や銃声を識別した場合に、何らかのアクションを起こすように訓練されたスマートフォンを想像してほしい。寝室のモニターの映像と共にアラートを送信して、赤ちゃんの様子を確認するよう促す、といった機能も登場するかもしれない。

あるいは、ユーザーがいつもの通勤時間に地下鉄に乗っていることをスマートフォンが感知して、その時間帯にいつも使っているアプリを起動してくれたらどうだろうか。通話中に道路の騒音や風を感知したら、自動的に音量を少し上げる機能も搭載されるかもしれない。

Sensing Hubは、多くの電力を消費することなく、複数のウェイクワードをサポートし、離れた場所のユーザーの声も聞き取れるように、ノイズ抑制を有効化するようにも設計されている。

リアルタイムの翻訳と字幕作成

Googleは、動画にリアルタイムで字幕を付ける機能を「Android 10」で公開した。そして、「Pixel 4」のボイスレコーダーアプリは、他に類を見ないほど優れた自動文字起こし機能を備えている。しかし、筆者が今週見たデモは、SF作品に出てくる万能の翻訳機能により近づいていた。具体的には、英語と中国語の2つの言語で瞬時に筆記するソフトウェアシステムだった。

別のデモでは、スマートフォンが英語で話された言葉を中国語に翻訳し、その音声を相手に向けて再生した。このプロセスはすべてスマートフォン上で瞬時に実行される。筆者は、年に何度か外国に旅行するので、自分の言語の壁によるすれ違いを減らすために、タクシーやレストランでこの機能を使用するところを容易に想像できる。

確かに、「Google翻訳」を使えば、すでにこれらの機能の一部をオフラインでも利用できるようになっている。しかし、この偉業により、私たちはより迅速かつ快適に他者とコミュニケーションをとれる世界に一歩近づいた。

周囲の世界を見る「窓」としてスマートフォンを使用する

モバイルアプリメーカーは何年も前から、拡張現実(AR)でさまざまなことを試している。例えば、Yelpの「Monocle」で周辺の店舗を見つける機能や、スマートフォンに巨大な矢印を表示して、ユーザーがどこに向かって進んでいるのかを伝える「Googleマップ」の道案内などが挙げられる。問題なのは、これらの機能が少しでも利便性を発揮するためには、迅速な応答が必要であることだ。これに関しては、高速な5G通信速度が威力を発揮するだろう。

筆者が見たデモでは、木製のブロックで作られた3Dの世界地図が使われていた。その3Dの地図にスマートフォンをかざすと、AR体験により、アニメーションで動く世界地図が表示される。スマートフォンを動かすと、画面上の特定の地域に「TikTok」の動画が表示される。この機能の狙いは、各地域の人気動画を簡単に表示させて選択できるようにすることにある。

自分がこのアプリを実際に使用するかどうかは分からないが、画面上に表示された人工的なARは、動画のタイトルを「平面的に」並べたものよりもはるかに創造的かつインタラクティブにコンテンツを提示していた。

2020年にスマートフォンで体験できるかもしれない、現実的な可能性のいくつかについて、本記事で少し把握いただけていれば嬉しい。これらのデモでのQualcommの役割は、アイデアをひらめかせることだ。私たちが実際に使用する具体的な体験を作り出せるかどうかは、スマートフォンメーカーとアプリメーカーにかかっている。