Windows 10Xのリリース時期は? 最新事情と「Windows 10 2004」の謎を探る

2019年10月に米ニューヨークで開催された製品発表イベントで初めて公開された2画面デバイス「Surface Neo」と「Surface Duo」だが、Microsoftから開発者向けに公式アップデートが発表されている。

この2つのデバイスはそれぞれ「Windows 10X」と「Android」という異なるOSをベースとしているが、この手のデバイスをターゲットにアプリやサービスを提供したいと考える開発者がいた場合、両プラットフォームをターゲットにした開発をしなければならない。今回のアップデートではこういった開発者の疑問に答えつつ、皆が気になるWindows 10Xの早期アクセスプログラムについて紹介されている。

2つのプラットフォームと共通アプリ開発

2画面デバイスに関するMicrosoftの最新の情報は、公式Blogでまとめられている。既報の通りではあるが、Windows 10Xにおいて既存のWindows 10向けのWin32アプリケーションやUWPは、そのまま動作する。Blogではシングルスクリーン用にデザインされたWebサイトも動作することが強調されているが、これは「PWA(Progressive Web Apps)」も含まれるとみられる。

最新のものではOutlookがPWA対応して話題になっているが、既存資産がそのままWindows 10Xで動作するのは、やはりWindowsならではの強みといえる。

どちらかといえば問題はAndroidを搭載する「Surface Duo」の方だ。こちらについても「既存のシングルスクリーン向けAndroidアプリはそのまま動作する」とMicrosoftでは説明しているが、問題はどちらかといえば「2画面Surface向けにアプリをリリースする場合はWindowsとAndroidの両方をターゲットにしなければいけない」という開発者側の話だ。

デバイスを開いて巨大な1画面になるSamsungの「Galaxy Fold」の他、最近ではLGの「G8X ThinQ」のようにデバイスとしては1つの扱いながら、2画面同時制御が可能なAndroidスマートフォンも登場している。市場に出回っているデバイスの数が少ないため「2画面向け」としてリリースするには開発投資が割に合わないのだが、少なくとも「Surface Duo」以外にも「2画面Androidスマートフォン」の市場は存在している。

Microsoftとしては「両Surfaceをターゲットにアプリを開発してほしい」「ツールとしてはXamarinがある」ということだと考えるが、開発者にとってはこれを機会にWindowsだけではないプラットフォームに開発範囲を広げるか悩みどころだと思う。

さらに難しいのは、Microsoftが作ってほしいのは「2画面Surfaceでも動くアプリ」ではなく、「2画面Surface(ならびに2画面デバイス)の特徴を最大限に生かしたアプリ」という点だ。

つまりヒンジの開き具合や持ち方を検知し、単純なシングルスクリーンのデバイスでは表現し得ない動作を可能とするアプリの登場を待ち望んでいる。同社ではWindowsとAndroidの両プラットフォーム向けに、2画面デバイス上で動くアプリを開発するためのAPI提供を予定しており、実際にデバイスが登場する2020年末までに一定数までアプリをそろえたいと考えているだろう。

ネイティブアプリが理想だと思われるが、「Webアプリケーションでもクロスプラットフォーム環境で2画面デバイスを制御できるAPIの提供」を予定しており、前述のPWAの拡大と合わせて、Webアプリとネイティブアプリの両面で開発者の呼び込みを狙っている。検証の手間はあるが、おそらく2つのOS向けに個別にアプリを開発してストア登録を別個に行うよりも、PWA的なアプローチの方がアプリ配布の難易度は低い。このあたりの追加情報は追って紹介したい。

Windows 10Xのリリース時期を予想する

以前の記事で「Windows 10XはWindows 10の『20H1』がベースとなり、搭載デバイスの登場は2020年のホリデーシーズンだが、OSそのものは比較的早い時期に登場する」と予想していた。だが実際のところ、その次のバージョンとなる「20H2」が採用できないのは完全に時期的な問題で、OSそのものも、また2020年のやや遅いタイミングでのリリースになるのではと考えている。

その理由の1つが、11月26日にWindows Insider Program参加者のFast RingとSlow Ringユーザー向けにリリースされたWindows 10 Insider Previewの「Build 19033」だ。

従来のWindows 10を区別するバージョン名の命名法則では、春期にリリースされるものが「xx03」(xxの部分はリリース年の下2桁)、秋期にリリースされるものが「xx09」(xxの部分はリリース年の下2桁)となっていた。

これに則れば「20H1」は「2003」となるのが通例だが、今回公式にバージョン番号は「2004」とされ、バージョン番号を含めた製品名も「Windows 10 2004」とよく分からない表記になった。Microsoftによれば「Windows Server 2003などとの混同を防ぐため」と説明しているが、単純にリリースサイクルが後ろにずれ始めており、2018年は「April 2018 Update」と「October 2018 Update」という組み合わせだったのが、2019年は「May 2019 Update」と「November 2019 Update」になっている。

「November 2019 Update」の一般向けリリース時期も11月半ばであり、これではホリデーシーズン商戦向けのデバイスへのプリインストールは間に合わない。バージョン名の命名規則を変更したのも、実情に合わせたという側面が強いだろう。

「Manganese」という内部開発コード名で呼ばれる「20H1」こと「バージョン2004」だが、この状況を鑑みれば一般向けリリースの時期は2020年5月のいずれかの時期だと予想される。

一方で、「20H2」は「バージョン2010」になることが見込まれ(これこそ混同を呼びそうだが……)、リリース時期は同年11月のいずれかだろう。やはりホリデーシーズンをターゲットとするのには遅すぎ、ホリデーシーズンに登場する2画面Surface向けのWindows 10Xとしては「20H1」をベースとするしかないのではないだろうか。

そもそもWindows 10Xが一般向けに提供されるのかという問題も含め、関連APIの提供から搭載デバイスの登場まで、かなり長いリードタイムをもってリリースされることになるだろう。