2画面スマホ「G8X ThinQ」は真のマルチタスクスマホ。今までの2画面端末とも違うその強みと弱点

発売時期がGalaxy Foldと近かったこともあり、よく「フォルダブルスマートフォン」と比較されるLGの2画面スマホ「G8X ThinQ」。しかしG8X ThinQ実際に触れて見ると、その使い勝手はフォルダブルとは大きく違うことが分かります。

今更説明も必要ないかもしれませんが、フォルダブルスマートフォンとは、折りたためる有機ELディスプレイを搭載したスマートフォン。コンパクトにたたんで持ち歩き、使う時は雑誌のような大画面で使えるというのが特徴です。

対して、G8X ThinQは"2画面スマホ"の系譜に入る1台です。1台のスマホで2つの画面を持ち、マルチタスクにも使えます。そして2枚目のディスプレイはスマホケースと一体化した着脱可能なタイプで、普段はコンパクトな大画面スマホとして持ち歩くこともできます。

大画面でも2画面でもできることは変わらないのでは? と思われるかもしれませんが、G8X ThinQはAndroid標準とは別にカスタマイズを加えていて、フォルダブルのGalaxy Foldでもできないようなことを実現しています。それが「2つのアプリの同時操作」です。

■G8X ThinQは「真のマルチタスク」

これまでのAndroidスマートフォンのマルチタスクは、実は「真のマルチタスク」とは言えないものでした。2つのアプリを同時に表示することはできますが、「同時に操作する」ことはできません。G8X ThinQでは、それを可能にしています。

これにより、たとえば「ポケモンGOとドラクエウォークの同時起動」も可能となりました。2つの位置情報ゲームを同時に動かして、操作できるようになっています(あるいは、2つの音楽ゲームでも操作可能です)。

2つの位置情報ゲームをやりこむ人はほとんどいないと思いますが、ポケモンGOを遊んでいる人にとっては便利なシーンもあります。ボタンを押すだけの簡単な操作しか要求されない(退屈な)レイドバトルを、TwitterなどのSNSを見ながら操作できるという点。コアなガジェットファンならスマホ2台をもって"物理的マルチタスク"していたような用途を、1台のスマホで代替できるようになります(回線契約も1つで済みます)。

もちろん、ゲームのみならず、スマホを使っている人には2画面を同時に開きたいということはよくあるはず。たとえばLINEで話しながらお店の情報を調べたり、カレンダーを参照しつつ、ブラウザーやマップや乗り換え案内で得た情報を登録したりといったシーンは、誰でもあるのではないでしょうか。そうしたシーンでは、G8X ThinQは他の2画面スマホと同じように役に立ってくれます。

■G8X ThinQの2画面の弱点

一方で、G8X ThinQでは、マルチタスクを独自に実装してしまったがゆえの使い勝手の悪さも存在します。その1つは「2画面を"大きな1画面として"使えるアプリがかなり限られている」という点です。プリインストールアプリではNAVER製ブラウザーのWhaleが大画面表示に対応しますが、Chromeでは限られたページのみが大画面になります。

2画面スマホの使い道として期待される電子書籍アプリについては、ソフトバンク系のebookjapanのみをサポート。Kindleや楽天Koboなどその他の電子書籍アプリについては、ワイドモードで開くことすらできません。

そして、2つの画面で開いたアプリ同士の連携が難しい点も、G8X ThinQの弱点と言えます。たとえばTwitterアプリで開いたWebサイトのリンクを、Chromeアプリで開くとき、デュアルスクリーンの反対側の画面で開けると便利ですが、G8X ThinQでは同じ画面でChromeが起動してしまいます。

この不便さはおそらく、マルチタスクの実装方法に起因しているものと思われます。というのも、G8X ThinQでは、アプリ側からは「2つのAndroid 9 OSが同時に起動している」ような見え方になっているようです。専用にカスタマイズされたアプリであれば、2つの画面を同時に使ったり、連携したりすることもできますが、G8X ThniQの方式では難しいでしょう。

つまり、G8X ThniQでは、2つのアプリを大画面として使うような使い方や連携させるような使い方はできませんが、2つのアプリを同時に開いて、それぞれを動かすような使い方をする上ではフォルダブルより便利かつ、(Android 9搭載の)フォルダブルよりも高度な使い方ができます。

2画面を同時に使う上では、単純に"フォルダブルの下位互換"とも言い切れない、使い勝手の良さがあります。

■ハイエンド性能で5万円。スマホ単体としても全然アリ

"1台目のスマホ"として使う上で、性能と価格という要素に触れないわけにはいかないでしょう。この点については、G8X ThniQはまったく問題ありません。むしろ一括5万5440円(税込)という価格が、安すぎるのでは? と思えるほど、快適に動作します。

チップセットはクアルコムの最新ハイエンド「Snapdragon 855」を搭載。動作メモリーも6GBを積んでおり、2つのアプリを同時に動かしても不自由はありません。ストレージが64GBと少々少なめですが、microSDカードで拡張することができます。画面も6.4インチ有機ELディスプレイで大きく発色が良く、専用ケースの2画面目も同じ仕様のディスプレイを備えています。

ケースをつけない状態で背面側にメインカメラ、前面側にインカメラを搭載。ケースを装着して180度開いた状態ではインカメラしか使えませんが、どんな映りになるか相手に見せながら撮影することができます。

背面カメラは超広角と広角のデュアルカメラ仕様で、ズームこそ弱いものの、ハイエンドスマホとしては遜色のない写り。HDRの仕上がりの良さと相まって風景写真では超広角がグッと際立ちます。

日本向けの仕様として、防水で、おサイフケータイもサポートしている点は抑えておきたいところです。ソフトバンクから販売されますが、法改正により端末単体での購入や即日のSIMロック解除にも対応していますので、LINEモバイルや他キャリアの回線で使うのも良いでしょう(4G LTEの対応周波数については確認次第追記します)。

重さは単体で約193g、ケース装着時は約331gと重めですが、普段は単体で使い、必要な時にケースを装着するという使い方なら、許容できる範囲でしょう。

一方で、付属の2画面ケースの取り回しについては多少不便に感じる点もあります。ケースの脱着にコツがいる上、背面がフラットな形状になっているため、ケースを外す際に慣れていないとカメラに指紋を付けてしまうおそれがあります。また、ケースを装着した状態で充電するには、USB Type-C端子ではなく専用のマグネットアダプターを装着する必要があります(専用充電アダプターって、無くしてしまうと不便ですよね......)。

とはいえ、本体の性能に不足を感じることなく、2つのアプリを開いてもしっかり動作します。これまでの2画面スマホの価格を知っているだけに、筆者としては5万円という価格は「安すぎる」と感じた次第です。