3万円台で買える売れ筋スマホ「AQUOS sense3」は本当にコスパNo.1モデルか?

ミドルレンジのスマートフォンながら、おサイフケータイや防水・防塵にいち早く対応したシャープのAQUOS senseシリーズ。バランスのよさが評価され、SIMフリー市場はもちろんのこと、大手キャリアの販路でも、好調な売れ行きを維持している。そのAQUOS senseシリーズの最新モデルが、「AQUOS sense3」だ。

同モデルは、ドコモやauが取り扱うほか、派生モデルは楽天モバイルにも展開。MVNO各社も販売するなど、広く流通している。中身をAndroid Oneに準拠したモデルは、「Android One S7」として、ワイモバイルから発売される。バランスのよさはそのままに、先代の「AQUOS sense2」から、スペックに磨きがかかっているのが特徴。厳しく見るとやや不足しがちだったパフォーマンスも、Snapdragon 630を採用することで、大きく改善されている。

性能を強化しながらも、価格は先代と同レベル。大手キャリア、SIMフリーともに、3万円台前半から3万円台半ばで販売されており、コストパフォーマンスの高さは健在だ。では、AQSUO sense3は、どの程度“使える”端末なのか。ここでは、ドコモ版の実機を使って、そのコストパフォーマンスをチェックした。

パフォーマンスが向上し、不満点をきっちり解消

まずは、もっとも気になるパフォーマンスから見ていきたい。AQUOS sense2の時は、「遅い」とイライラするほどではなかったものの、ハイエンドモデルに慣れてしまっていると、キーボードの立ち上げや、画面の切り替わりのわずかなタイムラグが少々気になっていた。アプリの立ち上がりも、少々時間がかかっていた印象だ。時間にすると、コンマ数秒の差かもしれないが、人間の感覚は思った以上に鋭い。必要十分とはいえ、Snapdragon 400シリーズの限界だったのかもしれない。

もちろん、当初からグラフィックスに凝ったゲームが動くといったことは期待していないが、実はこうした画面の切り替えにも、パフォーマンスが要求される。では、Snapdragon 630を搭載したAQUOS sense3はどうか。試しに文字を入力してみたが、キーボードの立ち上がりはスピーディ。画面の切り替わりも速い。アプリの起動は、ハイエンドモデル並みとはいかず、やや間がある印象だが、チップセットをより上位のものに変更した成果が出ていると言える。快適さは、AQUOS snese2より大きく上った格好だ。

ベンチマークアプリのスコアも、それを証明する。Antutu Benchmarkでは、先代のAQUOS sense2が7万点程度だったのに対し、AQUOS sense3は12万を超えた。売れ筋のミドルレンジモデルでは、ファーウェイのP30 liteがこのスコアに近い。スコアとしては、数年前のハイエンドモデルに匹敵するレベルで、こうした端末から、SIMフリースマホに買い替える際の候補になりうる。最新のハイエンドモデルには及ばないが、ブラウジングやSNSなどのアプリは快適に動く。

ディスプレイも、クオリティが高くキレイだ。手に持って見ただけではドットが判別できず、色合いもいい。有機ELディスプレイを搭載したハイエンドモデルと比べると、コントラストなどはどうしても見劣りするが、発色などの自然さでは軍配が上がる。解像度がフルHD+と高く、シャープ独自の「リッチカラーテクノロジー」が採用されているお陰だろう。この価格帯ながら、「バーチャルHDR」に対応しているのも、評価できるポイントだ。

しかもこのディスプレイは、省電力性能に定評のあるIGZOを採用している。そのため、AQUOS sense3は、ずっと画面を見ていても、なかなかバッテリーが減らない。スクロールなどの動きがない時の電力消費を抑えるIGZOディスプレイの特性が、いかんなく発揮されていると言えるだろう。4000mAhとハイエンドモデル並みの大容量バッテリーを搭載していることも相まって、1日中、安心して使うことができた。パフォーマンスはもちろん、それを支えるスタミナも十分な端末と言える。

カメラはトレンドを意識、仕上がりも上々

カメラもデュアルカメラになり、トレンドをしっかりキャッチアップしている。デュアルカメラといっても、低画素の深度測定用カメラをサブで搭載し、お茶を濁す端末もあるが、AQUOS sense3は、広角と標準で画角の切り替えが可能。実用度は、使いどころの少ない深度測定用カメラよりも高い。iPhone 11シリーズが広角カメラを採用し、そのメリットが一般にも認識されるようになってきた中、絶妙なタイミングでの搭載と言えるだろう。

画質もまずまず。夜景を撮った時は、明暗差の大きな場所でやや白飛びしてしまっているものの、発色も非常によく、普段使いには十分だ。フォーカスがやや遅いところは気になったが、コストの制約が厳しいミドルレンジモデルとして集中と選択をしなければいけないことを考えると、合格点を出せる。

欲を言えば、2つのカメラは、もう少しシームレスに統合してほしかった。例えばiPhone 11やGalaxy Note10+などでは、広角カメラから徐々にデジタルズームで拡大して、標準カメラの画角になった段階でカメラを切り替えるようなユーザーインターフェイスを採用している。

AQUOS sense3でも同様のことはできるが、0.9倍と1倍を切り替える時、画面が白くなってしまうため、シームレスとは言えない。前者はズームレンズで画角を変える操作を再現しているユーザーインターフェイスだが、AQUOS sense3は、まだそこに一歩及んでいない印象を受けた。撮影モードは少な目で、トレンドともいえる複数枚の写真を合成して暗所での写りをよくする夜景モードをサポートしていないのは残念なところと言える。

一方で、撮影した動画を15秒の短いハイライトにまとめてくれる「AIライブストーリー」は、ハイエンドモデルの「AQUOS R3」譲り。被写体を判別し、自動で最適なモードを選択するAIも搭載されているなど、ソフトウェアで実現できる上位モデルの機能は、しっかり取り入れている。

使い勝手がよく安心感のあるデザインで、ヒットの可能性大

奇をてらわず、スタンダードを目指している端末ゆえに、指紋センサーは前面に搭載されている。この位置にあれば、手に取った時はもちろん、机やテーブルに置きながらでも指を当てることができ、ロックの解除がスムーズだ。ハイエンドモデルでは、画面内指紋センサーを採用する端末も徐々に増えているが、コストとの兼ね合いでそこまでは難しかったのかもしれない。とは言え、デザインやディスプレイサイズを優先して背面や側面に配置するよりも、使い勝手はいい。デザインやわずかなディスプレイサイズではなく、使い勝手という実を取った判断と評価できる。

ユーザーインターフェイスもシンプルで、カスタマイズは最小限に抑えられている。Androidに慣れている人であれば、すぐに使いこなせるはずだ。一方で、ナビゲーションキーには、慣れが必要になる。標準では、ホームキーと履歴キーを兼用したバーに加え、バックキーを備えているが、これは、Android 9以降の“お作法”に則ったもの。バックキー、ホームキー、履歴キーの3つが並んでいた以前のAndroidに慣れていると、操作性の違いに戸惑うこともある。

「設定」→「システム」→「操作」→「ホームボタンを上にスワイプ」で3つのキーを“復活”させることはできるが、もう少しわかりやすい表記にしてほしかったというのが本音だ。先に挙げた指紋センサーを左右になぞることで、「戻る」や「履歴」の操作を兼ねるようにする設定も用意されているが、少々クセがあることは否めない。

デザインはシンプルで、万人受けしそうだ。FeliCaのアンテナが2つのカメラの中央にあるのは少々驚いたが、金属のボディを採用しているため、ここに配置せざるをえなかったのだろう。離れ業とも言えそうだが、端末に切り欠きを増やしてしまうよりも、見た目はシンプルになる。AQUOS sense2よりも、金属そのものの持つ質感になっており、持った時のサラサラとした感触も気持ちがいい。決して尖ったデザインではないが、安心感のある外観と言えそうだ。

不満点が少ないAQUOS sense3だが、これだけの機能を備えながら、3万円台半ばという価格を打ち出せたのは、高く評価できる。電気通信事業法が改正され、大手キャリアや上位のMVNOが端末割引をしづらくなっていることを踏まえると、AQUOS sense2の時以上に、コスパのいいミドルレンジモデルのニーズは高くなっている。端末そのもののコストパフォーマンスのよさと相まって、シリーズ最高のヒットモデルに化ける可能性もありそうだ。