Ice Lakeで一新され“6”から磨きがかかった「Surface Pro 7」を試す

日本マイクロソフトからSurface Proシリーズの最新モデル「Surface Pro 7」が登場した。先代のSurface Pro 6と同サイズの筐体を継承しつつ、最新の第10世代Coreプロセッサ(開発コードネーム=Ice Lake)を採用、さらにUSB Type-C、Wi-Fi 6を搭載するなど、システムが最新仕様に一新されている。今回Core i5モデルを試用することができたのでレビューしよう。

タブレットとしてもノートPCとしても使える着脱式2in1

Surface Pro 7は、いわゆる「デタッチャブル(着脱式)2in1」。単体で使えば薄型軽量のタブレット、別売のカバー兼キーボード(タイプカバー)と接続すればノートPCとして使える1台2役のデバイスだ。

本体であるタブレットの背面にはキックスタンドを搭載しており、タブレット単体で自立できる。描き味の良いSurfaceペンも用意されており、さまざまな場面で多様な使い方ができる。

洗練された上質な筐体は先代から継承

筐体のサイズは、292×201×8.5mm(幅×奥行き×高さ)。これは先代のSurface Pro 6とまったく同じ。重量はCore i5モデルで775g、Core i7モデルで790gとなっている。それぞれ先代比で5g、6gとわずかに重くなっている。評価機実測では767gと公称値より軽かった。

別売のカバー兼キーボードのタイプカバーは、先代モデルと共通で利用できる。新たにアルカンターラ素材の2カラー(ポピーレッド、アイスブルー)が追加されている。なお、タイプカバー装着時の実測重量は1,074gだった。

ノートPCスタイルでの軽さだけでみるとモバイルPCの最軽量クラスにはおよばないものの、運用の幅が大きい着脱式2in1だけに単純な比較はできないだろう。洗練された上質なデザインも大きな付加価値と言える。

「Ice Lake」こと第10世代Coreプロセッサを搭載

先代モデルからの大きな進化点の1つがCPUだ。薄型軽量向け(Uシリーズ)の第10世代Coreプロセッサには開発コードネーム「Ice Lake」と「Comet Lake」の2種類があるが、本製品が搭載するのは前者だ。新しい10nmプロセスルールの導入とともに新しいマイクロアーキテクチャを採用しており、クロックあたりの性能を大きく改善するとともに、内蔵GPUの性能向上も図っている。

Core i5モデルの評価機に搭載されていたのは、Core i5-1035G4。CPUコアは4コア8スレッドだ。内蔵GPUは、48EUのIris Plus Graphics。描画エンジンであるEUをこれまでの内蔵GPUで標準的だった24EUの2倍搭載している。先代のCore i5モデル(Core i5-8250U)に比べて描画性能の向上が期待できる。

先代同様に、Core i5モデルとCore i3モデルはファンレス設計だ。これはタブレットとしての使い勝手を考えたときには非常に重要。手持ちで使っているときに動作音がしたり、温かい風が吹き出してきたりする心配がないのは大きい。

電源供給とディスプレイ出力可能なUSB Type-Cを搭載

インターフェイスでは、従来はMini DisplayPortがあった部分にUSB Type-Cを搭載したことが大きい。このUSB Type-Cの仕様については公式には詳細な記載がないが、USB Power Delivery(USB PD)とDisplayPort Alt Modeによるディスプレイ出力に対応しているようだ。USB PD/DisplayPort Alt Mode対応の液晶ディスプレイ(LG 43UD79-B)に接続してみたところ、ディスプレイ出力もPCの充電もできていた。

Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0に対応

付属のACアダプタは従来と同じで、独自の「Surface Connect」を利用する。従来からあるドッキングステーション(Surface Dock)などのSurface Connect対応のオプションはそのまま利用できる。

このSurface Connectはマグネット式でスムースな着脱ができる一方、端子が細長いためにケーブルの取り回しが少し制限されるほか、簡単に外れやすい面もあり、好みが分かれるところではあるだろう。

通信機能は、Wi-Fi 6対応無線LANとBluetooth 5.0に対応する。Wi-Fi 6は「IEEE 802.11ax」として標準化作業が進んでいる無線LANの新規格。現在はドラフトだが、すでに対応ルーターも登場してきており、早くも普及段階に突入しつつある。

通信モジュールは「Intel AX201」。第10世代Coreプロセッサ内蔵のベースバンド機能と組み合わせるかたちで実装しており、2ストリームで最大2.4Gbpsの通信に対応する。

Wi-Fi 6では複数アンテナを別の機器(PC)の通信に割り当てられるMU-MIMOの双方向対応、通信フレームの複数機器での共有が可能になるなど、複数機器同時接続時のメリットが大きく、電波の混雑した環境での実効性能は先代のWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)の約4倍に向上しているという。恩恵を得るには対応ルーターを購入しなければならないが、将来的にじわじわ効いてくるポイントだろう。

なお、WWAN(LTE)機能は非搭載。今後法人向けモデルでは用意されるだろうが、個人向けでも重要な要素になってきていると感じるだけに少し残念だ。

アスペクト比3:2の高精細で美しい液晶ディスプレイは健在

液晶ディスプレイの仕様も先代のSurface Pro 6を引き継いでいる。12.3型、表示解像度は2,736×1,824ドットに対応する。画素密度は267ppiで、近づいてもドットが見えない高精細で美しい表示だ。

表面は光沢仕上げなので外光や照明の映り込みはしやすいが、最大輝度が高いことである程度視認性はカバーしている。気になる場合は非光沢フィルムなどを利用するのも手だろう。

この液晶ディスプレイは、10点マルチタッチ操作に対応。画面に直接ふれて操作できる。別売のSurfaceペンを使えば細かい線での描画も可能。先代同様、このペンの描き味は非常によく、別途フィルムなどを使わずとも適度な摩擦感があってなめらかに自然に描画ができる。

先代からの大きな性能向上を確認

ベンチマークテストの結果を見よう。評価機のスペックは、CPUがCore i5-1035G4、メモリがLPDDR4x-8GB、データストレージが256GB SSD(PCI Express 3.0 x4/NVMe)、OSがWindows 10 Home(1903)という内容だ。

比較対象として、1世代前のSurface Pro 6のCore i5モデルも借用できたため、こちらのスコアも掲載する。なお、どちらの機材もACアダプタ接続時の電源モードが標準では「よりよいバッテリー」となっていたため「高パフォーマンス」に変更して行なった。一般のモバイルPCはこの設定が標準である。

CINEBENCHのスコアを見ると、R15、R20ともにマルチスレッド性能(CPUスコア)が順当に伸びていることに加えて、シングルスレッド性能(CPUシングルコアのスコア)が大きく伸びていることがわかる。CINEBENCH R20は、R15に比べてかなり負荷が大きい内容だが、CPUスコアの伸び率はほぼ同じ。ファンレスでもしっかり性能は発揮できていると言える。

PCMark 10のスコアも良好だ。総合スコアで先代から14%アップのスコアをマーク。日常操作のEssentials、オフィス作業のProductivity、クリエイティブ作業を行なうDigital Content Creation、すべての項目で先代比11%以上の良い結果を収めている。

また、公称値では少し短くなっているバッテリ駆動時間だが、PCMark 10 MODERN OFFICE BATTERY LIFEのテストでは逆に少し長くなっており、バッテリ駆動時の性能スコアも良い。これはPCMarkのEssentialsとProductivityのテストを長めのアイドル時間をはさみつつテストをするという実践的な内容だけに価値があるだろう。

Iris Plus Graphicsを搭載することで注目の3D描画性能だが、3DMarkではエラーが出てしまい、スコアを出すことができなかった。FINAL FANTASY XIV : 漆黒のヴィランズベンチマークでは先代の約1.55倍のスコアと大きく性能が向上していることがわかる。

完成度の高い2in1がさらに魅力アップ

USB Type-Cの搭載が見送られた先代のSurface Pro 6はかなり保守的な印象を受けた。USB Type-C対応の周辺機器が広く普及するなかで出遅れ感があったが、Surface Pro 7でそのマイナス点を解消した。LTE非対応は少し残念だが、大幅と言ってよい性能向上、Wi-Fi 6への対応など、先代からの進化は大きい。

Surface Proシリーズの2in1デバイスとしての完成度についてはすでに定評があるところ。堅牢かつ柔軟な調整ができるキックスタンド、タイプカバーの利便性、ペンの描き味の良さ、そして洗練されたデザインの上質感ある筐体など、ほかに代えがたい付加価値を備えている。

評価機の構成(Core i5、メモリ8GB、256GB)の直販価格は153,780円。タイプカバーは別売だ。この価格が妥当かどうかの判断はお任せするが、ここからメモリを16GBに増やすだけで約4万円高くなってしまうのはさすがに割高感がある。

個人向けとしてはストレージの容量も全体に少なく感じる。従来同様に個人向けモデルではMicrosoft Office Home & Business 2019が標準で付属しており、これを省くことができない点も現実的に購入を検討するさいにひっかかる部分になるだろう。

LTE非対応、Office付属の有無が選べない、ストレージ容量が少なめでメモリ16GB構成時が割高……どれもライトユーザーならば気にならないであろう反面、リテラシーの高いユーザーにとっては購入に踏み切りにくい要素が多い。これが惜しいところだが、製品自体はとても魅力的だ。上記の点に納得できるならば購入する価値は十分にあるだろう。