1GB/s級の外付けSSDで変わる仕事環境、高速な防水・防塵・耐衝撃なSSDを導入してみた

ノートPCを仕事で持ち歩く人は多いと思うが、実際かったるくないだろうか。筆者はMacBook Proを持ち歩いているものの、1.5kgの重量はともかく、故障や盗難、置き忘れに気を使わなければならないことにうんざりしている。

最近になって自宅とオフィスの両方に最新のデスクトップPCを導入したため、毎日の通勤でノートPCを持ち運ぶ意義が薄くなってきていることもその気持ちに拍車をかける。仕事用のデータをなにがしかの簡単な方法で持ち運ぶことができれば、ノートPCはもはや持ち歩かなくても済むのではないか。

そこで目を付けたのが超高速な外部ストレージ。最大10Gbpsの転送速度を誇るUSB 3.1 Gen 2(一番新しい呼び方だとUSB 3.2 Gen 2)の外付けSSDだ。

ただし、“普通”の外付けSSDは選ばない。東京という“通勤が過酷な環境”を考えると、防水性能や耐衝撃性能も必要ではないか。満員電車で押しつぶされる可能性があるし、移動中にゲリラ豪雨に遭うことも少なくない。

というわけで導入したのが、ineoというメーカーがリリースしているNVMe接続のM.2 SSD専用ハードケース(購入時の価格は税込4,790円)と、NVMe SSDのストレージ本体(1TBで実売価格1万1千円~)だ。この組み合わせは、今トレンドの「働き方改革」にもぴったりではないかと思う次第。なぜ外付けのNVMe SSDがいいのか、そしてどれほどの性能を発揮するのかを紹介したい。

防水・防じん・耐衝撃で、放熱にも優れるSSDハードケース1TBのNVMe SSDを組み込んでサクッと超高速ストレージに

このineoのNVMe SSD専⽤外付けハードケースは、天板に放熱フィンが刻まれている。サイドと底面はラバーで覆われ、そこにUSB Type-Cケーブルが巻き付けられている。

見た目はまるで焼き肉プレートのようだが、実際には理にかなった個性的な特徴がいくつもある。焼き肉プレートのような金属板は、おそらくみなさんが想像している通り、発熱の多いNVMe SSDの放熱を促すもの。コンパクトな外付けSSDケースはたくさんあるが、そのぶん放熱が不十分なことも多く、長時間の使用に耐えないものもなかには存在する。筆者のように仕事に使うのであれば、長時間安定的に使えることは何よりも大切だ。

でもって、ラバーで覆われていることにより、IPX6/IP6X準拠の防水・防じん性能と、米国防総省の物資調達基準として知られるMIL規格に準拠する耐衝撃性能を備える。

近年、東京の夏は頻繁にゲリラ豪雨が発生するし、台風も激しさを増している。ストレージに限らず電子機器が水に濡れるリスクは決して低くはない。満員電車で圧迫されたり、誤って転倒して衝撃を与えてしまったりすることもあるだろう。その点このineoの製品なら、悪天候や圧迫、転倒で簡単に壊れる心配はなく、常に気楽に扱えるのが最大の魅力だ。

また組み立てもかなり簡単。裏面のプレートを外せばM.2規格のSSDモジュールを装着するスロットが見え、そこにSSDを差し込んで付属のドライバーでネジ留めし、焼き肉プレートのような金属板も6箇所ネジ留めすると、あとはType-CケーブルをPCに差し込む(&フォーマットする)だけですぐに使い始めることができる。

作業用環境として直接使えるリード・ライト1GB/s級の性能外付けストレージの使い方を大きく変える速度

ineoのNVMe SSD専用外付けハードケースの特長は耐久性だけではない。当然ながら、USB 3.1 Gen 2の最大転送速度10Gbpsを活かした高速なファイルアクセスもその1つ。

もしかすると、外付けUSBストレージは「バックアップ用」と考えている人が多いかもしれない。けれども、転送速度が10Gbpsになったことで、外付けSSDはバックアップ用途ではなく、直接ファイル操作する「作業用スペース」として使えるレベルになってきている。

筆者の場合、仕事柄テキストファイルを編集することが多いが、それとセットで写真の撮影と編集を行なう必要があり、時には動画の撮影・編集も必要になることがある。そのような編集作業は従来、読み書き速度を重視して、PC内蔵のSSD上で実行してきた。

以前は、MacBook Proでそのような作業を頻繁にしてきたのだけれど、写真や動画を大量に扱うせいで内蔵SSDの残量は常にギリギリ。データを逃がして空きスペースを確保するためには、外部ストレージに頼らざるを得ない状況だったりする。そこで活躍するのが外付けSSDというわけ。ポータブルHDDだと速度面で実用性に乏しいが、10GbpsのSSDなら速度の問題は解決できる。

10Gbpsという速度はあくまでも理論値ではあるものの、実測値でもシーケンシャルリード・ライトは1000MB/s(8Gbps)に迫るパフォーマンスを発揮する(下記ベンチマークのスクリーンショットのうち、オレンジ枠の画像が実測値)。シーケンシャルアクセスは内蔵SSD(SATA接続、6Gbps)よりも高速だ。

せっかくなのでこの速度がどれくらい高速なのか、手持ち機材といろいろ比較してみた。リンク速度が最大5GbpsになるUSB 3.1 Gen 1でNVME SSDを接続したときの速度や、、SATA接続SSDを内蔵したUSB 3.1 Gen 1/Gen 2外付けSSD、そしてUSB 3.0接続の2.5インチポータブルHDDのベンチマーク速度を計測したので、見比べてみて欲しい。

10Gbps(USB 3.1 Gen 2)で接続したNVMe SSDは、シーケンシャルリード・ライトでは内蔵・外付けにかかわらずSATA接続のSSDより2倍前後高速だ。HDDとは比ぶべくもない。ランダムリード・ライトになるとUSB接続のSSDの間で大きな差はなくなり、内蔵SATA SSDのアドバンテージが大きくなる。HDDはやはりランダムアクセスも厳しい。

このベンチマーク結果に表れているシーケンシャルリード・ライト性能の高さは、特にサイズの大きなファイルをコピーするときに実感しやすい。カメラで撮影した写真や動画を編集するため外部SDカードからSSDにコピーしようとするとき、1ファイル数十~数百MBのデータでも一瞬でコピーを終える。そんなファイルが100個くらいあったとしても数秒で完了するレベルだ。

実際にファイル転送を試してかかった時間を計測してみると、10Gbpsの外付けNVMe SSDは、5GbpsのSSDに比べるとだいたい30~40%ほど高速な結果となった。HDDと比べると5分の1だ。もし外付けHDDを作業用として使っているのなら、NVMe SSDに切り替えるだけでファイルのコピーは劇的な時間短縮につながるだろう。

ここのところのNVMe SSDは、容量1TBクラスかつリード3GB/sオーバーのパフォーマンスをもつ製品でも、実売で1万5千~2万円程度、リード2GB/s台でも構わなければ1万1千円程度で入手できる。ineoのハードケースと合わせても1万5千~2万5000円前後だ。さすがにHDDと比べてしまうと少し値が張るとはいえ、一時的なデータ保管先として十分な容量をもち、実作業環境として使える性能があることも考えれば、外付けSSDのコストパフォーマンスは圧倒的と言って良いのではないだろうか。

もっと言うと、筆者のように複数のPC環境があり、それらのデータの一時保管先をこれ1つに統一してしまえば、各PCの内蔵ストレージの容量を最小限に止めておくこともできる。つまり、PCを購入・カスタマイズするときのコストダウンにもつながるのだ。

もちろん、外付けNVMe SSDに蓄積していく仕事データは、容量が一杯になる前に定期的にNASなどのバックアップメディアに移す作業も必要になってくる。が、500GB~1TBもの容量があればそれほどバックアップ頻度も高くならず、手間と感じることもないはずだ。

クラウドストレージに頼れないモバイルワーカーにも最適な1台

外付けSSDの導⼊は単純に速度の問題だけでなく、自宅とオフィスにあるデスクトップPC、そして時々持ち運ぶノートPCという3台で、まったく同じデータをいつでもどこでも扱えるようにしたい、という狙いもあった。データの同期ならクラウドストレージも便利ではあるけれど、それでは不都合なシチュエーションもままある。

先ほど書いたように、筆者の場合は、写真や動画のような大容量データを扱うことが多いのが問題だ。固定回線のある自宅とオフィスのデスクトップPCならまだしも、外に持ち運ぶノートPCでも同期させようとすれば、外出のたびに高速なWi-Fiスポットを求めてさまようことになるだろう。スマートフォンでテザリングなんかしようものなら、“ギガ”がいくらあっても足りない。

なので、データ通信のことを気にしなくても必ず同じデータを参照でき、しかも内蔵SSDと同等かそれ以上の性能を発揮する、耐久性に優れたineoのUSB 3.1 Gen 2対応の外付けSSDは、筆者にとって、そして多くのモバイルワーカーにとって最適な1台なのだ。これ1つ持ってさえいれば、複数PCのデータ同期の問題は解決し、身軽で合理的なワークスタイルが実現できる。簡単なところから「働き方改革したい」と思っている人にも、ぜひともおすすめしたい。