Windows 10の新バージョン「1909」はアップグレードが簡単? 実際にやってみた

Windows 10の最新の機能更新プログラム、Windows 10 November 2019 Update(バージョン1909、ビルド18363)が11月13日(日本時間)リリースされ、一般提供が始まりました。今回のリリースには、これまでとは大きく異なる点があります。実際にどう変わるのかフォローアップします。●バージョン1903から1909はパッチでスイッチする感覚

以前の連載記事で紹介したように、「19H2」とも呼ばれるWindows 10 November 2019 Update(バージョン1909)の機能更新プログラムは、2通りの提供方法が予告されていました。

1つはWindows 10 October 2018 Update(バージョン1809)以前のバージョンに対してのもので、従来通りの大型更新として提供されます。もう1つはWindows 10 May 2019 Update(バージョン1903)に更新済みのPCに対してのもので、毎月の品質更新プログラムと同じ技術とエクスペリエンス(特に、更新にかかる時間に関して)で提供されます。

関連記事

では実際に、後者のWindows 10バージョン1903に更新済みのPCに対してどのように配布されるのか、見てみましょう。なお、今回の画面はInsider ProgramのRelease Previewリングに対して先行的に提供されたWindows 10バージョン1909の機能更新プログラムに基づいています。正式リリースでは、詳細なビルド番号(リビジョン番号)がさらに増加し。.418から.476になっていますが、流れは変わりません。

Windows 10バージョン1903からはWindowsのオプションの累積更新プログラムとリリース間もない新しい機能更新プログラムについて、自動でインストールされることはなくなり、「今すぐダウンロードしてインストールする」をユーザーがクリックすることで更新を開始するように改善されました。

Windows 10バージョン1909についても、ブロード展開されるまでの当面の間は「設定」アプリの「Windows Update」に「Windows 10、バージョン1909の機能更新プログラム」が利用可能になっていることが案内され、「今すぐダウンロードしてインストールする」をすぐに更新を開始できるようになっています。

なお、新しい機能更新プログラムに関しては、Windows 10バージョン1803および1809に対しても「今すぐインストールしてインストールする」機能が2019年5月後半以降の累積更新プログラムで追加提供されています。

現在、Windows 10バージョン1903を実行中の場合は「今すぐダウンロードしてインストールする」をクリックして10分もかからずに再起動が要求され、更新のための再起動も10分とかからずに終了し、Windows 10バージョン1909にアップグレードすることができました。

Windows 10の詳細なビルド番号はバージョン1903のときが「18362.418」、バージョン1909にアップグレード後は「18383.418」で、ビルド番号が1つ繰り上がり、リビジョン番号は共通です。「更新の履歴」には従来と同じように機能更新プログラムのインストール履歴が確認できますが、Windows 10バージョン1903のときの(2019年10月までの)品質更新プログラムのインストール履歴もそのまま残っています。

インストールされた機能更新プログラムの詳細は、コントロールパネルの「プログラムと機能」から確認することができ、「Feature Update to Windows 10 Version 1909 via Enablement Package(KB4517245)」という名称でした。

このように、Windows 10バージョン1903からバージョン1909への更新は、毎月の品質更新プログラムと同じように、時間的には毎月の品質更新プログラムよりも短時間で完了します。更新プログラム「KB4517245」は毎月の品質更新プログラムのような累積更新プログラムではなく、バージョン1903をバージョン1909に切り替えて、新機能を有効化するだけのパッチというイメージなのでしょう。

つまり、Windows 10バージョン1903のビルド「18362.418」までの品質更新に、Windows 10バージョン1909の新機能追加は済んでいるものと考えることができます。

●「前のバージョンのWindows 10に戻す」方法が違う

Windows 10バージョン1903からバージョン1909への更新では、1つ注意点があります。それは、従来のように以前のシステムがロールバック用に「C:\Windows.old」に退避されないことです。そのため、従来の大型更新時に10日間利用できた「前のバージョンのWindows 10に戻す」オプションは、最初から利用できません。

だからと言って、Windows 10バージョン1903に戻せないというわけではありません。通常の品質更新プログラムをアンインストールするのと同じように、更新プログラム「KB4517245」をアンインストールすれば、元のバージョン1903に戻すことができます。

●バージョン1809以前からは従来と同じアップグレード

以前のバージョンのWindows 10からバージョンをスキップすることなくアップグレードを繰り返してきた場合、Windows 10バージョン1909への更新は、従来の大型更新の痛み(長時間のダウンロードとインストール、互換性問題、更新の失敗など)を伴わずにスムーズに行えるでしょう。

しかし、前述したように現在、Windows 10バージョン1809以前を実行中の場合は、従来と同じ大型更新です。

Windows Updateを通じて提供されるというエクスペリエンスは同じですが、機能更新プログラムは3GB以上のダウンロードが必要で、アップグレードのためには一時的にさらに数GBの空き領域が必要です。アップグレードには数時間かかることもありますし、アプリケーションやハードウェアの互換性問題の影響でインストールに失敗する、あるいは起動不能になる可能性もあります。

●Windows 10のリリースサイクルの変更点、今回限りか今後も続くのか?

春の機能更新プログラムは大型更新、秋の機能更新プログラムは小規模な更新という、Windows 10バージョン1903とバージョン1909のリリーススタイルが今後も継続されるとしたら、以前の連載記事で指摘したように企業のWindows 10の更新管理の負担は大幅に減るはずです(小さな更新プログラムKB4517245は、WSUSでも配布できます)。秋リリースのバージョンはEnterpriseおよびEducationエディションで30カ月のサポートが提供されますが、秋リリースを待たずに春リリースから順次展開をはじめ、秋リリースに簡単に移行できるからです。

しかしながら、サービスとしてのWindowsでこれまで繰り返されてきた変更を考えると、今回の状況を踏まえて今後の計画を立てるべきだとは断言することはできません。

ところで、サービスとしてのWindowsの「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」のリリースサイクルは、バージョン1709以降、Windows Serverにも導入されています。Windows Server 2016やWindows Server 2019は「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel、LTSC)」であり、SACのWinodws Serverは主にクラウドアプリのプラットフォーム(.NETアプリ向けプラットフォームやWindowsコンテナのベースOSイメージなど向け、Server Coreのみ)としてWindows 10と同じ半年ごと、18カ月のリリースサイクルで提供されてきました。

Windows Server servicing channels: LTSC and SAC(最終更新日:2019年5月21日)

Windows 10バージョン1909の完成は2019年10月上旬にアナウンスされましたが、SACのWindows Server, version 1909についての情報はそれまでありませんでした。Windows Server Insider Programでは6月から、Windows 10の次期バージョン20H1(バージョン2003の予定)と同じビルドベースのものが、SACのWindows Serverの次期バージョン(Windows Server vNext)とされ評価、検証ができるようになっていましたが、19H2に関する情報は筆者の知る限り一切ありませんでした。

このままWindows Server, version 1909がリリースされることがないとすれば、年に2回、6カ月ごとのSACというリリースサイクルが崩れてしまい、SACの名称変更も必要になるのでは(例:AC)と思っていました。ですが、事前に何の情報提供やアナウンスもないまま、10月中頃、Visual StudioサブスクリプションやOEM/パートナー向けに、Windows 10バージョン1909のISOイメージとともにWindows Server, version 1909のISOイメージもリリースされました。 そして、Windows 10バージョン1909と同じ日に正式リリースとなりました。

過去には、System Center製品にLTSC(Configuration Managerを除く)とは別にSACを導入し、一年限りで廃止したという実績もありますが(バージョン1801と1807の2バージョンをリリース、バージョン1807のサポートは2020年1月まで)、Windows ServerのSACは変わらず続きそうです。情報発信がほとんどなかったのは、今回の新バージョンにOSのコア部分に変更がないからだと推測されます。