Ryzen搭載でGPU性能が格段に向上した「Surface Laptop 3 15型」の実力は?

日本マイクロソフトは、クラムシェル型ノートPCの3世代目として「Surface Laptop 3」を10月17日に発表、23日に販売を開始した。今回のトピックは、13.5型モデルに加えて15型モデルが用意されたことと、15型モデルの一般消費者向けにMicrosoft製ノートPCとしてははじめて「Ryzen」を採用したこと。

というわけで今回は、15型のRyzen搭載モデルを借用したので、実機レビューをお届けしよう。

CPUにRyzen 5、Ryzen 7の2種類を用意、法人向けはCore i5/i7をラインナップ

まずはいったん13.5型モデルも含めてSurface Laptop 3のラインナップをご紹介しよう。

詳しくは下記表をご覧いただいたほうが一目瞭然だが、今回のSurface Laptop 3には、ディスプレイサイズ(13.5型/15型)、プロセッサ(Core i5-1035G7/Core i7-1065G7/Ryzen 5 3580U/Ryzen 7 3780U)、メモリ容量(8GB/16GB/32GB)、ストレージ容量(128GB/256GB/512GB/1TB)、無線LAN(11ac対応/11ax対応)、Officeのあるなし、本体カラー(サンドストーン(メタル)/ブラック(メタル)/コバルトブルー(Alcantara)/プラチナ(Alcantara)/プラチナ(メタル))などが異なるモデルが用意されている。

13.5型と15型モデルでもっとも大きな違いは、15型の一般消費者向けモデルはプロセッサにRyzen 5/7を採用していること。それに伴い、Ryzen 5/7搭載モデルだけが無線LANがWi-Fi 6(11ax)非対応となっている。

またRyzen 5/7搭載モデルだけ1TB SSDが用意されておらず、15型のCore i5/i7搭載モデルのみ32GBメモリを選択可能だ。さらに外観的には15型モデルには手触りのやわらかいAlcantaraモデルが用意されていない。以上の点を踏まえて、13.5型と15型のどちらを選ぶかご検討いただきたい。

なお、Surface Laptop 3と「Surface Pro 7」、そして2020年1月発売予定の「Surface Pro X」についても、一般消費者向けモデルには「Office Home and Business 2019」が含まれる。これはサブスクリプションの「Office 365」を利用しているユーザーにとってはまったく必要のないものだ。米国市場と同様に一般消費者向けにもOffice非搭載モデルを用意することを強く望みたい。

一定の拡張性を備えているが、USB Type-C端子1つではやりくりが難しい

Surface Laptop 3 15型の筐体はアルミニウム製。筐体を横から見るとキーボード手前が細いクサビ形で、装飾はSurfaceの鏡面ロゴだけ。非常にシンプルなデザインだ。本体サイズは339.5×244×14.69mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1,542g。筐体が薄いため、手に持つと重たく感じられるが、そのぶん剛性は高そうだ。

インターフェイスは、USB Type-C、USB Type-A、SurfaceConnectポート、3.5mmヘッドセットジャックとシンプルな構成。Surface Laptop 2には映像出力用にMini DisplayPortが搭載されていたが、USB Type-Cに置き換わったわけだ。

なお、USB Type-CおよびUSB Type-A端子にUSB 3.1対応SSD「サンディスク エクストリーム900 ポータブルSSD」を接続したさいに、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」で879.40~880.29MB/sのシーケンシャルリード(1M Q8T1)を確認した。つまりUSB Type-C、USB Type-A端子ともに500MB/sを大きく超える実効速度を記録しているので、製品公式サイトの技術仕様には記載されていないがUSB 3.1に対応していることになる。

また、USB Type-Cからモバイルディスプレイに対する映像出力と給電、USB Power Delivery対応61W USB ACアダプタからの給電を確認した。一定の拡張性を備えていると言えるが、USB Type-C端子が1つというのはやりくりが難しい。Surface Connectポートにはケーブルを引っかけてもすぐに抜けるなどのメリットはあるが、個人的にはSurface Connectポートを廃止してUSB Type-C端子の数を増やしてほしいと思う。

キーボードのサイズや配列は13.5型モデルとまったく同じ

Surface Laptop 3 15型はクラムシェル型ノートPCとしての使い勝手は申しぶんない。キーボードのサイズや配列自体は13.5型モデルと変わらないが、これはAppleのMacBookシリーズも同じ。

もともと13.5型モデルでデスクトップPC用フルサイズキーボードと変わらない19mm前後のキーピッチを確保できている。従来モデルから買い替えたユーザーが混乱しないように、キーボードのサイズや配置はまったく変えないほうがいい。

クラムシェル型ノートPCでもタッチ操作に対応したモデルが増えているが、Surface Laptopのように初代からスタイラスペン「Surfaceペン」に対応しているのはめずらしい。もちろんSurface Laptop 3もSurfaceペンに対応している。ちなみに今回は試せなかったが、Surface Dialのオフスクリーン操作もサポートしているとのことだ。

今回もいつものレビューと同様に拙いイラストをSurfaceペンで描いてみたが、純粋なタブレット端末より描きにくく感じた。本製品のディスプレイの最大展開角度は実測約138度。この状態でイラストを描こうとしても、ちょっと筆圧が強くなってしまうとディスプレイが揺れてしまう。製品コンセプトとは合わないのかもしれないが、できれば360度、それが難しければせめて180度までディスプレイを開けるようになってほしい。

ビジュアル、サウンドはモバイルノートPCとして平均以上

Surface Laptop 3 15型には、「PixelSense」と名づけられた2,496×1,664ドット、201ppiの高精細液晶ディスプレイが採用されている。表面処理は光沢だ。

輝度や色域などは非公表だが、ディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたところ、sRGBカバー率98.6%、Adobe RGBカバー率73.2%という値が出た。高精細なモバイルノートPC用ディスプレイとしては広い色域が確保されている。発色はSurface Laptop 2よりやや暖かみが強くなっているが、好みに合わなければ「画面の色調整」で補正できる範囲だ。

サウンドについては少しボリュームが物足りないものの、音質自体は低音の迫力も、高音の伸びやかさも出ており、解像感も高く好印象。キーボード面の特等席にスピーカーを内蔵しているようなノートPCと比較すると差は感じるが、目の前に置いてミュージックビデオを聴くなどの用途であれば十分満足できるレベルだ。

Ryzen採用によりグラフィックス性能が大幅に向上

最後に性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2144」

バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」

3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.10.6799」

CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」

CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」

3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」

ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」

ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.2」

今回日本マイクロソフトより借用したSurface Laptop 3 15型のスペックは、Ryzen 5 3580U/16GBメモリ/256GB SSD(PCIe接続)。比較対象機種としてはCore i5-8250U/8GBメモリ/256GB SSD(PCIe接続)を搭載するSurface Laptop 2を使用した。新旧Surface Laptopの下位モデル同士で、どのくらい性能が向上したのか見てほしい。

まずCPU自体の処理性能は微増だ。Surface Laptop 3 15型はSurface Laptop 2に対して、CINEBENCH R15.0のCPUスコアで約116%に相当する「710 cb」、CINEBENCH R20.060のCPUスコアで約112%に相当する「1,582 pts」にとどまっている。

一方、大きな性能向上をはたしたのがグラフィックス性能。3DMarkのFire Strikeでは約256%に相当する「2,881」、実際のゲームでもファイナルファンタジ-XIVで約179%に相当する「4,058」を記録している。これはグラフィックス性能に優れる「Radeon Vega 9 Graphics」内蔵の「Ryzen 5 3580U」を採用した最大の恩恵と言えよう。

ただし、「PCMark 10 Modern Office Battery Life」(ディスプレイ輝度 : 50%、電源モード : 高パフォーマンス)で計測したバッテリ駆動時間についてはSurface Laptop 3 15型が9時間27分、Surface Laptop 2が12時間8分と前者が下回る結果となった。バッテリ駆動時間については、Surface Laptop 3 15型は「通常のデバイス使用時間は最大 11.5 時間」、Surface Laptop 2は「最大 14.5 時間のビデオ再生」と表現が変わっている。

しかし実際に、Surface Laptop 3 15型はSurface Laptop 2よりバッテリ駆動時間が短くなっているわけだ。幸いUSB Type-C経由での充電に対応したので、もしバッテリ駆動時間が心許なく感じる方は対応モバイルバッテリを準備しよう。

高負荷時の本体表面の発熱については、キーボード面は最大40.5℃と低めだが、底面は44.0℃とやや高めだった(室温25.0℃で計測)。膝上で長時間利用するさいにはバッグなどを間にはさんだほうがよさそうだ。

ペンも含めてWindows 10の全機能を活用できるクラムシェル型ノートPC

SurfaceシリーズはOSを作っているMicrosoftのハードウェアだけに、ファームウェアがこまめに提供されており動作が安定している。またスペックだけで比較すると他社製品より高く感じるが、実際にSurface Laptop 3 15型をじっくりさわってみた感想としては、洗練されたデザイン、品質の高さに価格なりの価値はあると納得できた。

クラムシェル型ノートPCとしてはやや優等生すぎる印象もあるが、スタイラスペンも含めてWindows 10の全機能を活用したいという方には、購入後の満足度が高い1台と言える。