13.3型のE Inkタブレット「Boox Max3」を試す

ドキュメントの表示に最も適したタブレットと問われて、12.9型iPad Proを思い浮かべる人は多いだろう。実際、B5サイズをほぼ原寸で表示できる12.9型iPad Proは、ドキュメントビューアとして非常に魅力的だ。

とはいうものの、これだけ画面が大きいと輝度などを最適化していても、目が疲れてしまうこともしばしば。重量も600gオーバーということで、長時間続けて保持するのはちょっとつらい。

そういった人にとって注目なのが、ここで紹介するOnyx Internationalの「Boox Max3」だ。これはBooxが生産するAndroidタブレットの最新モデルで、13.3型のE Ink電子ペーパーディスプレイを搭載しつつ、500g以下という軽量ボディーを実現している。Androidゆえ、Google Playストアも利用できる。

今回の前編では基本的なスペックや特徴、アプリケーションの使い方について、次回の後編ではビューア機能やノート機能、さらにサブディスプレイ機能といった個別の機能についてチェックしていく。

13.3型にして約490gと軽量なボディー

まずはスペックと外観を見ていこう。画面サイズは13.3型と大型で、同じE Ink電子ペーパー端末であるKindle(6型)と並べると、親と子ほども違う。画面解像度も2200×1650ピクセルと十分だ。

ボディーは約6.8mmと薄型で、iPadなどのタブレットと比べても遜色がない。モノクロ16階調のE Inkパネルはタッチ操作をサポートしており、一般的なタブレットと使い勝手は同様だ。4096段階の筆圧検知に対応したワコム製スタイラスの利用もサポートしている。

ボディーは樹脂製ゆえ、画面中央など一箇所に負荷がかかるのはなるべく避けたいところ。持ち歩く時はウレタンタイプのケースよりも、表と裏からパネルで挟み込むような、硬質タイプのケースを使った方が安心だろう。

CPUはQualcomm オクタコア(2.0GHz)、メモリは4GB、ストレージは64GBというスペックだ。読書用のE Ink端末では、メモリが1GB未満であることも珍しくないので、かなりの充実ぶりだ。なお外部メモリカードには対応しない。

インタフェースはUSB Type-Cを装備する。急速充電がUSB Power DeliveryではなくQuick Charge 3.0なのは、QualcommのCPUを採用しているためだろう(QCはQualcommが推進する規格)。OTGもサポートしており、USBドライブの読み出しにも対応する。その他、PCなどのサブディスプレイとしても使えるmicroHDMI端子を搭載している。

上部には電源ボタンが、背面には2基のスピーカーを内蔵している。音量調整は物理ボタンではなく、画面内のナビゲーションバーから操作する。利用頻度が決して高くないことを考えると許容範囲と言えるだろう。

バッテリーは4300mAhと容量こそ一般的だが、省電力が特徴のE Inkゆえ、最大4週間持つとされる。これはスタンバイモードでの公称値なので、1日1時間など決まった時間だけネットに接続しながら使えばもっと短くなるが、液晶タブレットなどに比べるとずっと長寿命だ。実際、数日間放置しておいても驚くほど残量が減らない。

そして何といっても特徴は、13.3型というサイズながら約490gと軽量なことだ。先日発売された第7世代iPadが、10.2型ながら同等の重量(約486g)なのを考えると、いかに軽いか分かるだろう。

Android 9ベースだがホーム画面などはオリジナル

次に画面構成を見ていこう。ホーム画面の左列に並ぶ6つのアイコンは、いわば大分類に相当しており、それぞれのアイコンをタップすることで中央のコンテンツエリアが切り替わる仕組みだ。この6つの大分類は、順序の入れ替えや削除・追加には対応せず、全て固定となっている。

アイコンは上から「書棚」「書店」「ノート」「保管庫」「アプリ」「設定」で、電子書籍および電子ノートの利用を強く意識していることが分かる。ただし「書店」は日本語非対応ゆえ実際に利用できず、また「保管庫」も同様だ。ユーザーの多くが使うのは「書棚」「ノート」の2つだろう。これらは次回の後編で詳しく見ていく。

上部のステータスバーには、バッテリー残量やWi-Fiステータスなどのアイコンが並んでおり、それらをタップすることで、Androidではおなじみの通知メニューが表示される。その上段には、一般的なAndroidでは画面の一番下に表示される、ホームボタンや戻るボタンを配置したナビゲーションバーが表示される。

つまり、本製品ではインタフェースが画面上部に集約されているわけだが、画面サイズの大きさゆえ、何らかの操作のたびに画面の上まで指を持っていくのは面倒だ。そこで活用したいのが、画面右下に常時表示されている「ナビボール」なるインタフェースだ。

このナビボールを使えば、前の画面に戻ったり、アプリ一覧を表示して切り替えたりする操作が簡単に行える他、E Inkに合わせてアプリを最適化する画面も呼び出せる。カスタマイズも容易なので、積極的に活用するとよいだろう。

セットアップ完了後も個別に設定を行う必要あり

話が前後するが、セットアップの手順にも触れておこう。本製品はAndroid 9.0をベースにしているが、セットアップのフローはAndroidのそれとはかなり異なっている。

具体的には、最初に言語設定を選んでから、タイムゾーンとスタイラスの効き手を選択するだけで、すぐにホーム画面が表示される。プライバシーポリシー確認の画面を除けば、セットアップ画面と呼べるのはわずか3画面だ。

この時点ではWi-Fiやロック画面のパスワードなどが未設定なので、あとから設定画面を開いて1つずつ設定していく。必要な項目だけを設定すればよいという意味では便利だが、セットアップの段階で一通り済ませるのが当たり前の通常のAndroidと比べると、やや戸惑う。

なお、設定画面の項目自体は、Androidのそれと非常に似通っており、それほど迷うところはないが、自動スリープやシャットダウン、ネットワーク切断までの時間など電源管理回りの設定は、デフォルトよりも長めに変更した方がよい。いざ操作をした時に、Wi-Fiがつながっておらず再接続からやり直しになった、といったストレスから解放されるからだ。

Google Playも使えるがなるべく標準機能を使うべし

さて本製品は、E Inkを採用した製品でありながら、Google Playストアからアプリをインストールできるのが大きなウリだ。実際、頻繁な画面の書き換えが発生するアプリや、CPUのパワーを極度に食うアプリを除けば、多くのAndroidアプリがそのまま使える。

ただし、実際にはなるべく本製品の標準機能もしくはプリインストール済みのソフトで済ませ、それが難しい時のみ、Google Playストアのアプリを試すようにすることをお勧めする。

なぜなら、本製品の画面はモノクロゆえ、カラーを前提にデザインされた一般的なアプリでは、フォントが読めなかったり、入力フォームの場所を判別できなかったりすことも多いからだ。どこをタップすれば反応があるのかが分からず、行き詰まってしまうことすらある。

それよりは、本製品にプリインストールされているアプリをそのまま使った方が、デザインがモノクロに最適化されているため見やすく、またレスポンスも高速だ。どうしても標準アプリでは物足りない場合のみ、代替のアプリをGoogle Play ストアから探すのが、本製品とうまく付き合っていくコツだろう。

なお、Google Playはセットアップ完了直後には有効になっておらず、「設定」→「アプリ」から「Google Playを有効にする」にチェックを入れて再起動し、さらにGSF ID(Google Service Framework)の登録を行ってから約1日待つという、まわりくどい作業を行う必要がある。これは本製品がGoogleの承認を得ておらず、個人としてGoogleに利用申請を行わなくてはいけないためだ。

ただし、ここを乗り越えれば、あとは快適だ。このBooxシリーズ、かつての製品はもっさり感が強く実用レベルではないことも多かったが、本製品はベースのAndroidが9.0になり、かつ4GBものメモリを搭載しているためか、動きはスムーズだ。スクロールに弱いE Ink自体の欠点にさえ目をつむれば、非常に実用的な印象を受ける。

また、アプリごとにどうしても動きが遅い、見づらくてストレスだという場合は、ナビボールから呼び出せる「アプリ最適化」機能を使うことで、画面のコントラストやリフレッシュモードを調整できる。利用頻度の高いアプリは、ここで調整するとよいだろう。

独自ストアは使わない方が無難か

以上がBoox Max3の基本的な使い方なのだが、本製品オリジナルのアプリストア「Booxストア」についても触れておこう。これはGoogle Playとは別に用意されている独自のアプリストアで、日本国内にある複数の電子書籍ストアのアプリなどが用意されている。

このストアだが、アプリの入手元は「ネットから研究目的で収集したもの」とのことで、出どころがやや怪しい。またそれらを抜きにしても、Google Playストアに登録されているアプリよりもバージョンが古いことも多く、積極的に使う必要性を感じない。メリットと言えば、Google Playストアを有効化しなくても使える点くらいだ。

また確認した限りでは、モノクロ表示の本製品向けにアプリが最適化されているわけでもないようなので、なかなか意義を見出しにくい。本製品でアプリを新規インストールする場合、この「Booxストア」ではなく、最新版をインストールできるGoogle Playストアを使う方がよいだろう。

以上、入門編として基本的なスペックや特徴、アプリの使い方についてチェックした。次回は活用編として、ビューア機能やノート機能、さらにサブディスプレイ機能といった個別の機能を見ていく。