「Windows 10X」の正体は? Chrome OSの対抗? ほぼ無償? 2020年1月?

「折りたたみ型(Foldable)」の2画面デバイスとして発表された「Surface Neo」だが、同デバイスとともにデビューしたのが「Windows 10X」だ。Windows 10ファミリーの1つとしてSurface Neoのような2画面デバイスでの活用を目指すと紹介されたWindows 10Xだが、実際に搭載製品が市場へ投入されるのは、2020年のホリデーシーズンと1年ほど先であり、いまだMicrosoftからは詳細な公式情報が語られていない。

だが10月25日(米国時間)に、MicrosoftやWindows関連のリーク情報で知られるTwitterアカウントのWalkingCatが、Microsoft内部向けと思わしき「Windows 10X」の技術情報に関するURLが外部公開されているのをツイートで紹介して話題になった。

その後、当該のURLは時間をおかずにアクセス不能になり、筆者も中身を確認する前に情報がシャットアウトされてしまったのだが、Borisと呼ばれるTwitterアカウントなどの有志が消される前の情報をまとめてアップロードすることで、いくらかの手がかりが残された状態となった。今回はここで出た新たなリーク情報を基に、過去これまで出てきた情報との突き合わせを行いつつ、Windows 10Xの姿を探ってみたい。

Windows Lite≒Santorini=Windows 10X?

2画面デバイスやそれを構成するOSプラットフォームは、かつて「Android」や「Centaurus」の名称で呼ばれ、後にWindows Centralのザック・ボーデン氏が「“Santorini”の開発コード名で内部的には呼ばれている」ことを紹介し、既に開発コード名がSantoriniにシフトしていると考えられるようになった。

「Chrome OS」対抗として、「Windows Lite」という「WCOS(Windows Core OS)」と「C-Shell(Composable Shell)」を組み合わせた新しいOSが開発されていることが何度か報じられていたが、後に「“Windows Lite”という名前はMicrosoftの開発コード名から消滅した」という話が持ち上がり、代わりのキーワードとして「Pegasus」や「ModernPC」などの名称が登場してきた。

だが、PegasusそのものはCentaurusと対となる言葉だと想像できるため、おそらくCentaurusのキーワードが消滅した時点で代替のキーワードに置き換えられたと考えられている。キーワードだらけで意味不明な状態になりつつあったが、これが今回のリーク情報で1本につながったように思える。

WalkingCatがツイートしたWindows 10X情報に関するURLは、「santorini-os.azurewebsites.net」であり、Windows 10Xとは、つまり「Santorini」が内部的な開発コード名だということが改めて確認できる。

ここで重要なのは、Santoriniが「2画面デバイス」のみを対象としたOSではなく、「通常のクラムシェル型ノートPC」もその対象としていることがリーク情報には書かれていた点だ。消されたリンク先から、事前に情報をスクリーンキャプチャしてまとめていたBorisというユーザーによれば、Windows 10Xのタスクバーの機能に関する記述で「For both cramshells and foldables」となっており、複数のフォームファクターを包含するOSであることが示唆されている。

これを前段の情報と突き合わせれば、消えた「Windows Lite」というキーワードで示されるOSは、Santoriniで示されるOSの中に包含されたと考えるのが適当だろう。

続いて、見えてきた「Launcher」に触れる。

タブレット利用を意識した「Launcher」

物証というわけではないが、サルベージされた情報群のスクリーンショットからもそれがうかがえる情報がいくつか出ている。例えば、Windows 10Xのデスクトップ画面とされるもののデザインはiPadなどのそれに近い。

また、スタートメニューの代わりに「Launcher」という機構が投入されており、「MicrosoftのWeb検索」「代表的なアプリとWebサイト」「最近使ったファイル」がLauncherの基本画面に包含されている。

縦画面なのは2画面デバイスの基本的な利用スタイルが通常のスマートフォンやタブレットを意識したものだからだと思われるが、その操作体系もまたPCというよりはそちらに近い。おそらく、クラムシェル型ノートPCにおいてもLauncherなどの構成はそれを踏襲するとみられ、「機能を絞った簡易OS」としてのChrome OS対抗として活用されるのではないだろうか。

Windows 10Xに関して重要なのは、ユーザーが対面する操作画面(シェル)の構造が従来と異なるだけで、アプリケーションそのものは従来のWin32ベースのものも含め新OSでも動作する。Launcherに含まれるのは従来型のWindowsアプリケーションに加え、UWPアプリ、そして「PWA(Progreassive Web Apps)」だ。

説明を見る限り、WebサイトのブックマークもまたLauncherのデフォルトのアプリとして含まれるようだが、Edge(おそらくはChromium Edge)を通して両者を一緒くたにして扱っていくというのがWindows 10Xのスタンスのようだ。

下記はリーク情報にある、資料が公開されていた時点での“Inbox”というデフォルトアプリの一覧だが、これらの基本アプリに加え、OEMメーカー各社は独自のアプリなどを最大4つまでLauncher内に搭載して出荷できる。このあたりはWindows 10のビジネスモデルをある程度そのまま踏襲したものと考えられる。

次に、Windows 10Xのライセンシングモデルと出荷時期を考える。

ライセンシングモデルと出荷時期

情報が一部流出したとはいえ、Windows 10Xそのものにはまだまだ謎が多い。例えば最初に紹介したスクリーンショットには、「View in Proteus」というキーワードのリンクが見られるが、そもそも「Proteus」というキーワードが何を意味しているのかが分からない。

Proteus(プロテウス)とは、ギリシャ神話に登場する海の神の名称だが、これまでSantoriniで出てきたキーワードの数々はギリシャ神話由来のもので(Santoriniはギリシャの島の名称)、このあたりの開発コード名で周辺を固めているのだろう。

つまり、関連ツールやプラットフォームを指す名称としてギリシャ神話由来のキーワードが今後も頻出する可能性があり、これらをウォッチしていると、今後リンクしてくる可能性が高いと考えていいのだろう。

興味深いのは、ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏も触れているように、「Windows 10Xがどのような形でOEMに出荷されるのか」という点だ。

一般に、Windows 10はマーケティング要素がなければOEMが出荷するデバイスに対して“高価”でライセンスが付与されるが、2画面デバイスであれば“有償”、クラムシェル型ノートPCであれば“低価格”になるのではないかと同氏は予想している。

かつて、Windows Liteと呼ばれていたOSはChrome OS対抗を目指しており、SantoriniことWindows 10Xがその後継を担うならば、デバイス価格を引き下げてライバルに対抗するために、当然ライセンス価格の引き下げに向かう。無償となるかは不明だが、Launcherの機能との組み合わせで“広告“的な機能を持たせることで、ほぼ無償に近い形を実現するのではないかと筆者は予想する。

なお、同氏はWindows 10Xのリリース時期について当初「20H2」と述べており、ホリデーシーズン直前になるとの見解を示していた。このバージョンのOSの開発コード名は「Manganese」と呼ばれているようだが、これについて前述のボーデン氏は「20H1」がManganeseとしており、両者で食い違いがみられた。だが後に修正し、やはりWindows 10Xのベースになるのは「20H1」であり、これがManganeseであるとしている。

そうなると、開発者向けプレビューが行われるタイミングが重要になり、早ければ年明け早々、遅くとも4月にはかなり広範囲の開発者に提供が行われることになる。これは2020年5月に開催されるとみられるBUILDカンファレンスよりも前のタイミングであり、その前のタイミングで何らかのプレビューが改めて行われる可能性があるのではないかと考える。