新型iPadとiPadOSがあればテキスト入力環境はこんなに進化する!

第7世代にあたる新型iPadの発表と時を同じくして、iPad向けの最新OS「iPadOS」が9月にリリースされた。ベースである従来のiOSとは、現時点では機能の多くが重複しているが、iPadでの利用に特化した機能は徐々に増えてくるだろうし、現時点でもそのポテンシャルは端々に感じられる。

今回は、新たにSmart Keyboardに対応したiPad(第7世代)を用い、iPadOSによるテキスト入力環境はどのような特徴があり、またノートPCと比べてどのくらい実用的かをチェックしていこう。

なお、iPadOS 13.1の対応デバイスはiPad Pro全モデル、iPad Air 2以降、第5世代iPad以降、iPad mini 4以降となっている。

第7世代iPadはSmart Keyboardが利用可能に

まずは新製品である第7世代iPadと、Smart Keyboardの組み合わせについて簡単にチェックしておこう。

第7世代iPadは、従来の第6世代モデルに比べて画面サイズが一回り大きくなり、ボディーサイズについては従来の第3世代iPad Airと同じになった。さらにSmart Connectorを搭載したことで、第3世代iPad Air向けに販売されているSmart Keyboardがそのまま利用できるようになった。

このSmart Keyboardは、iPad Pro用の「Smart Keyboard Folio」と違って背面は保護されず、折りたたんだ状態では上面に段差ができてしまう。キーボードを背面に回してスタンドとして使える利点はある(Smart Keyboard Folioでは不可能)ものの、ボディー全体の保護には不完全なので、背面には何らかのカバーを追加するのが望ましい。

キー配列については、Smart KeyboardとSmart Keyboard Folioとで違いはない。横幅を約25cmの中に収めなくてはいけない関係上、キーピッチは約18mmとお世辞にも広いとは言えず、またキータッチも独特なため、特に手が大きな人は、スムーズな入力には少々苦労するだろう。

ただし、サイズが二回りは大きい12.9インチiPad Pro向けのSmart Keyboard Folioは、横幅が広すぎて右上のBackSpaceを押下しづらい問題があったので、人によっても評価は変わりそうだ。キー入力時に多少指が干渉しても、確実にキーに指が届く方が重要だという人もいるだろう。

第7世代iPad。画面サイズは10.2型と、従来よりも一回り大きい。出荷時点でiPadOSがインストール済みの初の製品ということになる

第6世代にはなかったSmart Connectorが追加され、別売のSmart Keyboardが利用可能になった

Smart Keyboardを装着した状態。さながらノートPCのようだ

iPad Pro用の「Smart Keyboard Folio」と異なり、画面の角度は調整できない

「Smart Keyboard Folio」を装着した11インチiPad Pro(右)と並べたところ。Smart Keyboard (左)だと上面に段差があり、背面は保護されない

上がiPad Pro用の「Smart Keyboard Folio」、下がSmart Keyboard。刻印は一部で微妙に異なるが、配列やキーサイズなどは同じだ

キー入力をしている様子。Bluetoothのペアリングなどは不要で、Smart Connectorに接続すれば利用可能になる

キーピッチは約18mmだ。間隔としては必要最小限で、手の大きい人にはややつらい

ざっと概要を見てきたところで、早速本題に入ろう。

Bluetoothマウスを使えばテキスト編集も簡単

新たにリリースされたiPadOS 13には、テキスト入力を行うにあたって便利な機能が数多く搭載されている。その中から、特に筆者がピンと来た機能を紹介していこう。

まず1つはマウス機能だ。iPadOSはBluetoothマウスをサポートしており、テキスト入力中にマウスによるポインタの移動やテキストの選択、カットアンドペーストなどの作業が行える。

Bluetoothマウスは他のBluetoothデバイスと同じ手順でペアリングを行う。今回はエレコムの「M-BT21BBRD」を使用している

「アクセシビリティ」→「タッチ」→「AssistiveTouch」をオンにしたのち、下段の「デバイス」→「Bluetoothデバイス」から接続済みのBluetoothマウスを選択することでマウスが利用可能になる

この黒の二重丸(赤丸で囲った中央)がマウスポインタに相当する。サイズや色は変更可能だ

デフォルトでは、左クリック=シングルタップでメニューが開くよう割り当てられているが、ダブルタップや長押しも含め、割当は自由に変更できる

右クリックするとホーム画面に戻ったり、Siriを起動するためのメニューが表示されたりする。かなりの存在感だ

メニューの割当は自由に変えられる。数も1~8個の間で変更可能だ

このマウス機能はアクセシビリティの機能の1つとして実装されており、一般的なマウスとは使い勝手は若干異なるのだが(後述)、ポインタ相当のマークが画面上に表示され、それらを動かして項目を選択するという意味では、紛れもなくマウスを使った操作に他ならない。見た目も完全にノートPC、もしくは2in1のそれだ。

ちなみに右クリックした場合は、メニューを並べたパレットが表示され、そこから機能を選択して実行できる。Windowsの右クリックで表示されるコンテクストメニューと見た目は大きく異なるが、考え方としてはよく似ている。カスタマイズが容易なのもよい。

わざわざiPadでマウスを使わなくとも、画面タップの方が速いじゃないか、と思う人はいるだろうが、筆者のようにキーボードとマウスを使った方がしっくりくるというオールドタイプにとっては、実にありがたい機能であり、文字通りPCの代替として使えそうだ。具体的な挙動は以下の動画をご覧いただきたい。

マウスを使ってホーム画面の切り替えや、メモアプリを開いてのスクロール、テキスト選択、メニュー表示、新規メモの立ち上げなどを行ったのち、画面下からDockを表示させてホーム画面へと戻る様子。この間は全く画面には触れておらず、マウスだけで全ての操作を実現できている

操作性は若干異なるとはいえ、iPad上でPCなどと同じようにマウスが使えるのは画期的だ

また今回のiPadOSでは、テキストの選択が従来よりも簡単になったため、これと組み合わせると、マウスを使ってのテキスト編集が効率的に行える。具体的には、ダブルタップ1回で単語選択、2回で一文選択、トリプルタップで段落選択が行える。ドラッグによる範囲選択のストレスから開放してくれる便利な機能なので、数回試して慣れておくことをお勧めする。

メモアプリで編集している文章上でダブルクリックをしたところ。単語単位で選択される

さらにダブルクリックをすると読点までの一文がまるごと選択される

さらにダブルクリックをすると段落全体が選択される

マウスの使い勝手で唯一、致命的な違いはホイールだ。前述の動画にもあるように、iPadOSはホイールそのものをサポートしているのだが、回す方向に対してスクロールする向きが逆になるという、macOSと同じ問題をはらんでいる。方向を逆にする設定項目はなく、現状では慣れるしかない。普段、Windowsをメインで使っている筆者としては少々痛い。

ちなみにここでは、テキスト入力での活用方法をメインに紹介したが、筆者自身はもっぱら、ウェブブラウジングでこのマウスを多用している。特にSafariは、iPadOSで利用可能なショートカットが大量に追加されているので、キーボードと併用することで、画面に一切触れないまま、PCライクなブラウジングが行える。実に快適だ。

複数画面の表示により参照やコピペも容易に

さて、iPadOSでテキスト入力作業を行う場合にもう1つ活用したいのが、2つの画面を同時に表示する「Slide Over」と「Split View」だ。

いずれも既存のiOSの頃から存在した機能で、前者は全画面表示の上に小窓を開いて別アプリを表示する機能、後者は画面自体を分割する機能だが、今回のiPadOSで自由度が高くなり、テキスト入力の作業で使いやすくなっている。

使い方は多彩で、例えばブラウザを参照しながらテキスト入力を行ったり、逆にブラウザをメインに表示しつつ、上に重ねたメモアプリに要点をコピペしたりするといったこともできる。メモアプリなど一部のアプリでは、同じアプリの画面を2つ並べることも可能だ。

「Slide Over」。全画面表示の上に小窓を開いて別アプリをフローティング表示できる。ここではメモアプリの上にSafariを表示している

「Split View」。画面自体を分割して表示できる。割合はドラッグして変更可能だ。ここではメモアプリとSafariを並べて表示している

アプリによっては、同じアプリを横に2つ並べて開くことも可能だ。これはメモアプリの場合

「Slide Over」でも同じアプリを開くことができる

大量のショートカットが追加され、効率化が可能になった

これはiOS 12時点でのショートカット。一部掲載されていないショートカットもあるようだが、いずれにせよiPadOS 13でかなり増えたことが分かる

ショートカットも強化、ソフトキーボードも自由度が向上

また従来に比べて、ショートカットが充実したことも見逃せない。一般的に「テキスト入力の効率化」といえば、辞書登録の充実などを指す場合も多いが、キーボードショートカットをいかに使いこなすかも大きなポイントだ。今回のiPadOSでは、そのショートカットの種類が従来よりも増え、使い込むことでポテンシャルが引き出せるようになった。

この他、3本指を使ったジェスチャー操作に新たに対応し、1回ピンチするとコピー、2回ピンチするとカット、3本指でピンチアウトするとペーストが可能になった。ただ操作がかなり難しく、筆者はいまだ使いこなせる域に達していない。便利さは疑いようがないので「慣れれば便利に使えるかも」とだけコメントしておきたい。

また、ソフトウェアキーボードについては、iPhoneと同等の片手用キーボードが使えるようになったのもメリットだ。標準キーボードをピンチインで縮小することで、キーボードがこのサイズに切り替わる。画面上どこにでもドラッグして動かせるので、片手でのテキスト入力に重宝するはずだ。

通常の日本語ローマ字キーボード。利用頻度が最も高いのがおそらくこれだろう

日本語かなキーボード。筆者の周辺で使っているユーザーはてんで見かけないが、特定層には便利なのかもしれない

キーボードの「分割」をオンにすると、iPhoneのそれに似たフリック入力キーボードが表示される。予測変換の結果は左側に表示される

キーボードをピンチインすると縮小表示が可能。入力フォームがキーボードに隠れてしまう場合などに便利だ。ドラッグすることで画面上の好きな場所に移動できる

縮小表示の状態で日本語かなに切り替えるとフリック入力キーボードになる。分割表示の時と異なり、予測変換の結果はキーボード上部に表示される

iPadでのテキスト入力がもう一歩先へと進むには?

以上のように、ノートPCと同等、とまでいってしまうとさすがに語弊があるが、ノートPCの使い勝手にかなり近いところまで来つつあるのは事実だ。きちんと使い込めばそれに応えてくれるようになったという意味では、ポテンシャルは従来に比べて確実に高まっている。

その上で、これらiPadを使ったテキスト入力環境がもう1つ先のステージに進むために、現在ボトルネックになっている箇所を1つ挙げろと言われると、筆頭に上がるのはやはりSmart Keyboardそのものではないかと思う。

このSmart Keyboard、ぺこぺことしたキータッチの割に慣れればそこそこ快適に使えるため、初見の印象に比べるとはるかに使えるというのが筆者の意見なのだが、とはいえ一定レベルまで達すると、そこから先はどうしてもハードウェアの出来がネックになり、上達が難しくなってしまう。

もちろん、代わりにBluetoothキーボードを使うなどの方法もあるのだが、それではSmart Connectorの意味がなくなってしまう。OS側がここまで進化した現在、次の世代ではiPad背面が保護されない問題と合わせて、使い込むだけの価値があるキーボードを見てみたいものだ。

Apple Pencil(第1世代)にももちろん対応する。画面右下からのスワイプでスクリーンショットを取得可能になった