GeForce MX250&Core i5が名コンビ、ZenBook 14の性能と使い勝手

「画面は広々と使いたいけれど持ち運びやすさも大事なんだよねー」という欲張りなユーザーに使ってもらいたいZenBook 14を検証するこの連続レビュー。1回目では、ZenBook 14の「14型ディスプレーを搭載しているのにボディーサイズと重さは13.3型ディスプレーを採用しているThinkPad X390とほぼ同じ」で「システム構成上Windowsのマルチディスプレーっぽく使えるScreenPad 2.0」な特徴に注目してみた。

この2回目では、ノートPCとして忘れてはならない基礎体力である「処理能力」と「使い勝手」にフォーカスする。特に、処理能力とトレードオフの関係にあるボディー表面の温度、不快感に影響するキーボード表面の温度、そして意外と多い膝上利用で影響するボディー底面の表面温度をねちっこく調べてみた。また、クーラーユニットのファンが発する風切り音の大きさも測定した。

処理能力の測定に入る前に、ZenBook 14のシステム構成を確認しておこう。ハードウェアだけで見る限り、ZenBook 14は上位構成の「UX434FL-8565」、下位構成の「UX434FL-A6002T」と「UX434FL-A6002TS」に分けられる。CPUとシステムメモリー容量、ストレージ容量とその接続規格が異なる。ちなみに、「UX434FL-A6002T」と「UX434FL-A6002TS」は付属Officeソフトが異なり、前者はWPS Office、後者はMicrosoft Office Home & Business 2019となる。

なお、本体インターフェースやボディーサイズ、GPUなどは共通している。この中でグラフィックスの描画能力に大きく影響するのはGPUだ。従来、モバイルノートPCではCPUに統合したGPUを採用するモデルが多い。しかし、ZenBook 14では上位構成のみならず下位構成でも外付けGPUとしてNVIDIAのGeForce MX250を実装している。なお、ビデオメモリーはGDDR5を2GB載せている。

GeForce MX250はリリースこそ2019年だが、コアアーキテクチャーは2017年に登場したPascal世代だ。ラインアップ的にはノートPC向けエントリークラスという位置づけになる。飛び抜けた3D描画処理能力を備えるモデルではないものの、NVIDIAは「インテルのCoreプロセッサーに統合したGPU「Intel UHD Graphics 620」と比べて約3.5倍の処理能力があるとしている。

今回、処理能力を測定するのは下位構成モデルのUX434FL-A6002TSだ。搭載するCPUのCore i5-8265Uは第8世代Coreプロセッサー(開発コードネーム:Whiskey Lake)で、物理コア4基にマルチスレッド数は8本になる。動作クロックは定格1.6GHzだが、Turbo Boost有効時最大で3.9GHzに達する。スマートキャッシュ容量は6MBだ。

上位構成のCore i7-8565Uでは動作クロックが定格1.8GHzで、Turbo Boost有効時最大4.6GHz、スマートキャッシュ容量で8MBとやや豪勢になるが、物理コアの数とマルチスレッド数はCore i5-8265Uと同じだ。

同じCPUでも比較PCよりも高めの処理能力を発揮

まずは、CPUの地力がわかる「CINEBENCH R15」とストレージ速度を計測する「CrystalDiskMark 6.0.2」で検証してみよう。比較対象として、CPUがCore i5-8265Uでシステムメモリー容量が8GB、グラフィックスがIntel UHD Graphics 620を搭載し、ストレージがSATA接続の256GB SSD、ディスプレー解像度が1920×1080ドットという構成のノートPCを用意した。

CINEBENCH R15はCGレンダリング処理でシングルコア時とマルチスレッド時の処理能力をフルで発揮するテストだ。こちらは基本同じCPUなら同じような値になるのだが、マルチスレッド時はCPUに高い負荷がかかるため、ノートPCの冷却能力やメーカーのチューニング次第だとその実力がいかんなく振るえない場合がある。

ZenBook 14は比較PCよりも高い値を示した。これがクーラーユニットの優秀さからくるものなのか、単にそういったチューニングによるものなのかは断定できないが、少なくとも同じクラスのCPU搭載ノートPCの中では弱い部類ではないということがわかった。

また、後述するが、CPUテスト時の負荷が最も高い時でも体温を超える表面温度が観測されたのはごく一部だ。騒音もほぼ気にならない。このことからクーラーユニットのファンを過剰に回転させて冷やしているわけではないと言える。そういった意味では、バランスの良いチューニングになっているのかもしれない。

続いて、ストレージ速度ベンチマークのド定番であるCrystalDiskMark 6.0.2でストレージの性能差を見てみよう。

PCIe 3.0×2接続のSSDを搭載するZenbook 14は、SATA接続SSDを搭載する比較PCと比べて、シーケンシャルリードで約3.7倍。シーケンシャルライトで約3.2倍高速だった。このように、SSD搭載モデルでも接続バスの規格が異なることでスコアーに大きな差が出る。そして、ストレージのデータ転送速度はCPUやGPUの処理能力の以上に体感で感じる場合が多い。これはそのままPCの使い勝手に影響する。

バリュークラスのPCでHDD搭載モデルが残っていることも影響し、依然として「SSDは高い」というイメージを持つユーザーもまだまだいる。しかし、容量あたりの価格差はもうそれほどあるわけではなく、転送速度の違いは価格差を補って余るほどに快適な使い勝手をユーザーに提供してくれる。

また、接続バス規格の違いにも同じことが言える。SATA接続とPCIe接続で価格差はまだあるものの、ベンチマークテストのスコアーが示すようにその違いは圧倒的だ。例えば、ファイル移動時などにその差は顕著に表われる。SSDを採用するモダンPCの中でも、できればより高速なPCIe接続のSSDを選びたい。

デジタルコンテンツ制作能力を底上げするGeForce MX250

Zenbook 14のCPUとストレージの性能がわかったところで、次はGPUにフォーカスしてみたい。GeForce MX250はエントリークラスの位置付けなので、ゲーミング性能には高い期待はできないがデジタルコンテンツ制作におけるCPUのサポートGPUとして活躍してくれるはずだ。というわけで、上位構成と同じくCore i7-8565Uとメモリー16GBを搭載する格上の比較PCを用意し、GeForce MX250の有効性を総合ベンチマークソフト「PCMark 10」で検証した。

PCMark 10はアプリケーションの起動やビデオ会議、Web閲覧にスプレッドシート、ワープロへの入力とマクロ計算、写真編集にレンダリング処理、ビデオ編集といったオフィスでPCを使う場面を想定した総合性能ベンチマークソフトだ。実際にアプリケーションを走らせてその処理能力をスコアーで示してくれる。

ちなみに、PCMark 10のスコアーはCPUやシステムメモリー、ストレージにグラフィック処理など、個別テストの結果それぞれにウェイトをかけて総合スコアーとして処理した値だが、個別テストの結果も得ることができる。

比較対象のPCと比べてPCMark 10のスコアーは高い値を示しているが、これは個別テストのスコアーでGPUのアクセラレーション機能が利用できるテストではGeForce MX250によって高いスコアーを出しており、それが相当スコアーの算出に影響していると考えられる。CPUのクラスは格上でも外付けGPUを実装した効果が表われていると言えるだろう。

さらに、GPU性能について深掘りしてみたい。PCMark 10ではIntel UHD Graphicsとの性能差を見せつける格好となったが、では一般的なゲーミングノートPCと比べるとどうだろう? 先の試験とは別にGeForce GTX 1650を採用するゲーミングノートPCを用意して比較してみた。

さすがに比較対象がGeForce GTX 1650と上位クラスの外付けGPU搭載モデルになると、ZenBook 14の3DMark関連スコアーは弱めに見える。もともと採用しているGeForce MX250が重い3Dゲームを快適に動かすことが目的ではなく、軽量級3Dゲームや動画コンテンツのデコードとエンコード、3Dレンダリングなどの演算支援を想定しているためだ。もし、ゲーム目的でZenBook 14を使うなら、画質設定を低めにするか、3D負荷が軽いタイトルをプレイするといいだろう。

高負荷時でも体温を超える箇所はごく一部

最後は使用感に関わる表面温度や騒音についてのテストだ。表面温度はC-Timvasionの温度計「VLTJ001」を用い、CINEBENCH R15を走らせてCPUテスト実行時最終段階で計測している。計測ヵ所はPC使用中に指を置く機会の多い「F」、「E」、「J」、「I」キーとパームレストの左右部分、膝にPCを置いて使う場合に影響する底面の左寄りと右寄りのエリアだ。なお、測定したのは残暑が厳しい日の昼間で、外気温は30℃近く、室内温度は27℃だった。

ZenBook 14はキーボード左寄りの奥側が熱くなる傾向にあった。最も高い状態では「F」キー、「E」キー共に体温を超えている。しかし、それ以外では体温を下回りパームレストも30℃近くにとどまっている。なお、最も熱くなるタイミングで測定しているため、負荷がそれほど高くない状態(PCを使用するほとんどの時間がその状態)では、不快になるほど高い温度にはならなかった。

なお、クーラーユニットのファンが発する音量は、Meterkの指向性マイクを組み込んだ騒音計「MK09」を用い、排気用スリットのあるヒンジ部分中央から上方向45度に向けて直線距離で30cmほど離れた場所に騒音計をセットして測定した。

PCが動作していない状態で測定値は37.4dBA、負荷が高いCINEBENCH R15のCPUテスト実行中に発生音が最も大きかった時点における測定値でも44.7~45.2dBAだった。この値は、環境庁が示す騒音の目安において「美術館の館内」に相当する。その表現からかなり静かな印象になるが、実際聞くと音を発しているのは明確に認識できる。ただし、回転数が極端に変化しないので音の強弱や発生音の周波数が変わって気になる、ということことはなかった。

以上、ベンチマークテストのスコアーと実測した表面温度、発生音測定値から、ZenBook 14の基礎体力とそこから推察できる使い勝手を考察してみた。次回は、外で持ち歩いて街カフェや図書館、新幹線で実際に使ってみてわかる「モバイルの実力」を検証する予定だ。