折りたたみスマホ Galaxy Fold レビュー。ガチ勢専用の高コスト可変機

国内ではau独占販売となった折りたたみ画面スマートフォン、Galaxy Fold のレビューをお届けします。

Galaxy Fold は細長い本体を手帳のように開くと、内側から iPad mini に近い7.3インチのメイン画面が現れる二つ折りスマートフォン。

外側にも4.6インチの小さなフロント画面があり、畳んだ状態では片手で操作しやすくポケットにも入ります。

新しいモバイル機器「フォルダブル」として実質的に世界初であると同時に、HDR10+対応の高画質有機ELディスプレイ、超広角から望遠まで内外計6つのカメラ、桁が違う12GB RAMに高速な512GBストレージ、4000mAh超の大容量バッテリーにワイヤレス逆充電など、オーバーキル気味の超ハイエンド仕様を詰め込んだ端末でもあります。

ここでは海外版をしばらく使って分かったこと、折りたたみ機構の精度はどうか、売りのマルチタスクは現時点でどの程度使い物になるのか、海外で発売延期を招いた画面のヤワさはどの程度改善されたのか......等をお伝えしたいと思いますが、何より率直な感想は「めちゃめちゃ楽しい」(※効能には個人差があります)。ただしギミック満載のパズルや、アクションフィギュア的な意味で。

常用に耐えない実験機では決してありませんが、取り扱い注意な点、洗練に程遠い点、先行しすぎて世界が追いついていない点も多々あります。

発展途上どころかこの1台から始まる新ジャンル「フォルダブル」を、アプリ環境やOSの進化過程も含めて一喜一憂して楽しみたい、大枚をはたいてまで補給乏しく地雷が埋まった最前線に好き好んで突撃したいという、酔狂なエクストリーム新し物好きのための贅沢品です。

まずはモノとして一番気になる、曲がる有機ELディスプレイInfinity Flex と二つ折りについて。

Galaxy Foldの内側メイン画面はガラスのかわりに柔軟な樹脂と金属の複合素材を用いた有機ELディスプレイInfinity Flexを採用しており、中央に物理的な仕切りや継ぎ目はありません。

ただし中央の曲がる部分には、角度により「折り面」が見えます。もう少し詳しく書くと、ディスプレイ自体は均質なものの、開いた状態でも幅数mmのごく緩やかなV字にくぼんだ形状です。

正面から見ている限り、また何かを表示していれば、この帯の部分はほとんど目につきません。実際に使っていると、どこが折れ目なのか見失なって目を凝らしたり、縦持ちや横持ちをしていると縦線なのか横線なのか一瞬分からないこともありました。

しかし特に白単色背景で左右斜めから見ると、明るさの違うオビがくっきり見えます。これはV字にくぼんだ面の片方は画面全体よりさらに深い角度に、反対側は浅い角度になるため。

最近のディスプレイはいわゆる視野角が180度近くになりましたが、これはどの角度でも完全に均一という意味ではなく、明るさや色の変化が一定の基準に収まるという意味です。

このため平坦な面を基準にすれば、手前の折れ目から中央までは(より深い角度なので)やや暗く、そこから遠い側の折り目までは浅い角度なのでやや明るく見えることになります。

正面から見る限り目立ちにくい理由、白一色など単色背景で目立つ理由のひとつはこれです。Foldの折り目は縦にあるため、縦持ちをしているかぎり、上下方向斜めから見ても左右ほどは目立ちません。

しかしもっと大きいのは映り込みの問題。Foldの表面は光沢があるため暗い表示や明るい場所では映り込みしやすく、折れ目の歪みが強調されて目につきます。

Foldの有機ELディスプレイは非常に高いコントラスト比や鮮やかな色彩が売りの「Dynamic AMOLED」で、HDR10+対応を売りにしています。しかしHDR(ハイダイナミックレンジ)が分かりやすい、黒が沈む映像コンテンツを明るい場所で見ると、写り込みが気になります。

(暗い映像と明るい場所、光沢ディスプレイの相性が最悪なのは折りたたみに限りませんが、折り目が余計に目につくという意味で)

もしディスプレイの折り目をもっとも強調して撮るならば、何も表示しない真っ暗な状態で、天井や遠くにある直線、あるいは人の顔などを映すこと。

わずかな角度でも大きく歪んでみえるため、直線がぐにゃんぐにゃんに見えるはずです。デフォルトの蝶の壁紙は折り目部分を避けたために、却って鏡状態になり、ぐにゃっと分断された顔面を毎回みることになります。

これはあくまで映り込みの話で、表示した映像そのものは折り目のうえでもほとんど歪んで見えません。

(平坦なガラスのスマホでも、画面オフの鏡にして指で強く押せば写像が大きく歪むのが分かります。画面を表示して同じ力で押しても、表示はぐにゃぐにゃにならないのと同じです。)

折り目がある・ないについては当然「ある」ですが、目立つ・目立たないや気になる・ならないについては、写真よりも実機を手に持って、実際に使う状況で写真やアプリの画面を見てみるのがおすすめです。

ディスプレイの弱さと改良点

この「柔らかい」ディスプレイについては、指でも強く押さないこと、折り畳んだときに異物を挟まないこと等の注意書きがあります。今年前半に評価機が各国で壊れまくり、発売延期と改良に至った理由のもこのディスプレイ部分です。

改良前の Galaxy Fold はディスプレイ表面の保護層が画面のふちギリギリまでしかなく、輸送用の保護フィルムと勘違いして無理に剥がすレビュアーが続出して壊れたり、ヒンジ上下がガラ空きで画面の裏やヒンジ内部に異物が入るなどのトラブルがありました。

発売延期を経た改良型では、保護層が画面の周囲まで広がってエッジの下に回り込んで剥がせない、ヒンジの上下にキャップとガスケットを追加。

またディスプレイ自体の弱さを改善するために、有機ELと下の樹脂製クッション層のあいだに金属プレートを追加、中央の曲がる部分には細かいメッシュの金属素材で補強が施されています。

実機は(まだ) 壊していないので、どこまで力をいれたら破損するのかは残念ながらお伝えできませんが、単純な感触についていえば、中央の折り目以外の部分は一般的なガラス表面のスマホとほとんど変わらない感触です。

中央の実際に曲がる部分も、開いた状態で触るかぎり、弛んでいたり、下の構造が指先に伝わるような柔らかさはありません。むしろ要注意と分からずに、誰かが尖ったもので刺してしまわないか心配になります。

画面の弱さが最大の弱点であるはずですが、指で普通に使っているぶんにはあまり報告できることがありません。怖いのはおそらく、尖った異物を片方の画面に載せたり付着したまま、勢いよく閉じて挟んでしまうこと。

ノートPCとは違い基本的には手に持って閉じるはずなので、その状態で何かを挟む可能性は相対的に下がると思われます。

ディスプレイ自体はもっとも近くなる部分でもお互いに触れないようベゼル部分が盛り上がって保護しているため、「2mm以上の尖ったもので、閉じるときに付着したまま」条件が揃うと危険そうです。

でかいノッチとインカメラ

蛇足気味ながら、コンテンツや見る角度で消えないのがノッチ。メイン画面の右上には、開いた状態で自撮りやビデオ通話するための広角カメラと奥行き検出カメラがあり、切り欠きになっています。

初期設定では下にコンテンツが隠れないよう、ノッチの横はシステムの通知領域になるか、横画面では黒帯表示です。ノッチを気にせず全画面表示をしたい場合、設定からアプリごとに全画面を選択できます。初期設定は「自動」。

しかしゲーム Call of Duty Mobile を試したところ、アプリに任せる「自動」設定では、タイトルのCがノッチに隠れて all of Duty になりました。設定で「全画面」を選んでも同じ。横画面固定でも幸い上下は回転できたため、ゲームの表示と被らないほうを選べます。プレイ自体は広くて滑らかで快適です。

折りたたみの感触と重さ

Galaxy Foldは折り目部分をできるだけ緩やかな角度で曲げる(曲率半径を稼ぐ)ため、たたんだ状態でもヒンジ側に空間を設けて厚く、ヒンジから遠い側(本でいう小口側)が薄い楔形になっています。

本で言う背の部分に、釘が打てそうな存在感のヒンジ支持パーツがあるのもこの構造のため。

(こちらは au 版。ヒンジのロゴが「Galaxy」)

畳んだ状態では確かに幅が狭く、片手でしっかりと握って持てる一方で、厚みはスマホ二枚分以上あります。(幅63mm、厚み15.7mm~ヒンジ部は17.1mm)。

内部のヒンジはディスプレイや基板を歪みから保護するため、非常にパーツが多く複雑な機構です。おかげで折りたたみの感触は非常に滑らかかつ堅牢。

閉じるときはただ片側に力を入れて折れば、強力な磁石でパチッ!と閉じます。逆に開くときは、両手で手帳のように開くか、片手で指を押し込むようにすれば、内部のバネの力でパカッとある程度開いた状態になり、あとは力をいれればカチッと平らにロックします。

ある程度角度がついた状態で維持することも一応でき、画面は表示されたままですが、曲面向けのイラストでもないかぎり特に意味はありません。

片手開閉も慣れれば簡単(非推奨です)

頑丈な構造もあって本体は重く、画面は脆いため、開閉は気をつけて両手ですべきですが、落とさない状況ならば片手でも意外と楽に開閉できます。

Galaxy Foldはフロント画面を手前にした場合、ヒンジは左側になる「左綴じ」。

片手での開き方は、たとえば左手で持っていた場合、手が大きければヒンジを親指の付け根にして握り込んで、そのまま親指と対向する指を「表紙」「裏表紙」側にひっかけてパカッと。説明するまでもありません。

同時に指が回らなければ、二枚の合わせ目に中指や薬指を押し込んで、勝手に∠まで開いたら親指でめくるように平らにするなど。

あるいは手の中で裏返してフロント画面を下にしてから親指を差し込み、そのまま押し込んで平らに固定できます。

手の大きさによっては多少握りかえる必要があり、途中で握り込んで固定していない瞬間、密着した手のひらの摩擦と重力で支えるスキが発生します。何の話をしているのか分からなくなってきました。

右手で持つ場合はもっと簡単で、軽く握りながら親指を二枚のあいだに差し込み、そのまま中央の折れ目付近まで押し込んで固定。自然と対向指でつまむ形になり安定感も増します。

閉じるときは握るように折れば、あとは軽い力でパタンとはまります。ガラケー時代のパカパカよりやや難しいものの、特にポケットにしまう前にパンッ!と閉じる感触は、何も成し遂げていないのに一段落ついたかのような満足感の錯覚を与えてくれます。

とはいえ Galaxy Foldは可動部や画面が脆く、改良型とはいえ防塵ではなく、破損のダメージが(金銭的にも)大きいため、無理に片手開閉はお勧めできません。フォルダブルであろうとなかろうと、往来で歩きながらスマホ操作は天秤が一気に傾く大罪です。

重いです

本体重量は276g。大画面スマホでは、たとえばGalaxy Note10+ (6.8インチ19:9)は196g、ジワジワと重くなってきた iPhoneの最新大型モデル iPhone 11 Pro Max (6.5インチ19.5:9)でも226g。Foldは畳んだ状態では画面がとても小さいため、なおさら外見に反して重い鈍器感があります。

Galaxy Foldに近い縦横比でひと回り広く、解像度も近い iPad mini は300〜308g。iPad mini は一般的には片手で苦もなく持てることが魅力とされているため、その基準でいえばFoldはもっと軽くて使いやすいはずですが、畳んで小さな画面でもiPad mini 並の重さということもできます。

畳んだフロント画面のサイズに悩む

Galaxy Fold の気になるところ、アウトなところは人によって異なるはずですが、大画面派としてもっとも不満あるいは戸惑いを感じたのは、閉じた状態のフロント画面が実に小さいことでした。

フロント画面は21:9の縦長で4.6インチ。Galaxy やAndroidスマホの一部にある、画面が縮小した片手モードのような感覚です。

21:9はフル画面化が進むなかで多くのスマホが採用する縦横比ですが、畳んだときのFold本体はさらに縦長なので、上下にはパイオニアDP-211かよ!という空白があります。(※1996年発売のタッチパネル携帯電話)

Foldのコンセプトには、畳んだときは小さく扱いやすく、開けば大画面の両立があり、画面が小さいのはむしろ歓迎のユーザーもいるはずです。実際に上下の大きな余白があるおかげで、中ほどを持てば21:9なのに上下に指がよく届きます。

とはいっても、最近のスマホアプリはある程度の広い画面を想定していることが多く、特に大画面慣れしているユーザーほど、フロント画面だけではやはり使いづらくなります。UI部品の大きさを変えられないゲームなどは特にその傾向です。

同じ理由で、ポケットから取り出してさっと確認、すぐ戻して移動、といった使い方も大画面スマホよりは不向き。前述のように慣れれば片手で開けるものの、さっと取り出して一瞥してすぐ戻そうにも開閉動作が増えてしまい、取り落とす可能性もあり、屋外で立っているときは怖くなります。

もとから小さなスマホの熱烈な支持者であれば話は別ですが、たまたま特大スマホの熱烈な支持者なので、小さなフロント画面には人間のほうが使い方をあわせるか慣れが必要でした。小さな画面といっても、本体は画面に比して大きく分厚く重めです。

「畳めば普通の高性能スマホ、開けば大画面」はやや誤解を招く表現で、より正確には「畳めば画面が小さな高性能スマホ、開けば大画面」になります。だからこそ魅力的か、残念ポイントか分かれる点です。

フォルダブルの華マルチタスク

Galaxy Fold の画面分割(タイル表示)は折り目にそって左右に2アプリ同時か、右半分をさらに上下に分割した3アプリ同時。├ こう分割されます。

マルチタスクの開始操作は、普通のスマホやタブレットのようにアプリを立ち上げた状態で、画面右端から内側にスワイプでマルチタスクトレイを開く、使いたいアプリをタップでサイドバー的な左右分割に。

このマルチタスクトレイには、マルチタスクに対応したアプリしか表示されません。インストールしてもここに出ない場合、分割やポップアップでは使えないアプリということになります。

マルチタスクトレイからアイコンをドラッグすると、ドロップ先によって左右または右上・右下のどこで開くか、あるいはポップアップで表示するか選べます。

画面分割の比率は、仕切りをドラッグしてある程度は調整可能 (ただし右上と右下は等分で固定)。

実際に使ってみると、三分割までする使い方がどこまであるかはさておき、メールやメッセージングとメモ、ブラウザと地図のように、参照しながら別アプリを使う範囲では便利に使えます。iPadの左右分割に近い快適さです。

ポップアップの組み合わせでさらに使いこなし

表向きは「3アプリまで同時に開ける」ですが、さらにポップアップとして4つめ以降も同時に開けます。あるいは画面分割を使わずに、ホーム画面や全画面アプリのうえにポップアップを載せておくこともできます。

マルチタスクとポップアップまわりの挙動をまとめると、

マルチタスクトレイから、画面の中央あたりに落とすとポップアップ表示になる。

ポップアップはウィンドウ隅のドラッグでサイズ可変。他のアプリの上にフロート表示。

ポップアップを使うことで自由なウィンドウ配置ができる。たとえば画面上部は左右いっぱいまで横長の動画を表示、右はメッセージングといった使い方もできる。

通知をポップアップで開く設定も。タップすると画面を切り替えることなく小さな窓で開き、確認や返信後に閉じられる仕組み

サムスンお得意のアプリペアや、タイル分割のグループを保存する機能は(いまのところ)ない。ただし直前までの状態を覚える動作はする。

マルチタスク非対応アプリの挙動

ソフトウェア的にもっとも課題が残る点、無理やりポジティブに言えば「今後の進展が大いに期待できます!()」なのは個々のアプリの対応です。

サードパーティーも含めて、意外なほど多くのアプリが画面分割にすでに対応しています。これは Galaxy Fold用の特別対応の必要がなく、従来のAndroidでマルチタスクに対応していたアプリ、縦画面でも横画面でも使えるアプリや、端末によって違うアスペクト比に対応するマルチタスク対応アプリならば問題なく使えるためです。

問題は縦横比固定だったり、横画面専用だったり、全画面でしか起動できないマルチタスク非対応ゲームなど。こうしたアプリは画面分割でもポップアップでも動かず、マルチタスクトレイのアプリ一覧に現れません。

ただしマルチタスク非対応アプリを全画面で表示しつつ、手前にポップアップで複数のアプリを重ねることは可能です。

一部を隠してしまうため使い所が難しいものの、たとえば画面の一部だけ監視して待つ状況や、「アプリを開いたまま放置」を要求されるゲームのうえに動画を大きく載せるなど。

最近流行のドラクエウォークはマルチタスク非対応・全画面固定、かつアプリを開きっぱなしにしないと自動レベル上げの歩行中モード(ウォークモード)が使えませんが、ポップアップを駆使することで、最下面では全画面でドラクエが動いている上に、大きく動画アプリを載せて見るようなことも可能です。

さらにChromeを開いてウェブを眺めたり、微妙に隙間を空けることでドラクエの状況を監視したり、メタルスライムが来たら慌ててオートバトルを解除することも。そこまでレベル上げがしたいのか、もはやFoldを使い倒すこと自体が目的なのか分かりません。

マルチタスクの制約とAndroid 10の挙動

ポップアップなら自由と述べた直後ですが、実際にはAndroid自体の制約で思い通りにはゆきません。まず Android 9までは画面に複数のアプリを並べて同時に開くことはできても、本当にアクティブなのはフォーカスのある(最後に触った)アプリだけ、それ以外は一時停止状態になるというそびえ立つ問題があります。

例外は当初からフォーカスがなくても動く設計が求められる動画系や音楽系アプリの大半と、Chromeブラウザなど一部のアプリのみ。

このため、動画を見ながら~はどのアプリでも使える一方、たとえばゲームとそれ以外のアプリはアクティブな片方しか進まず、もう片方は画面更新もなく一時停止します。

画面が一時停止しても、ブラウザやOfficeアプリを行き来しつつメールを書くような用途では問題ありません。しかしゲームの演出や読み込みやマッチングなどを待ちつつ、SNSのタイムラインを眺めるような使い方は残念ながら Android 9では困難です。(ゲームから離れた途端に一時停止になり、待っている対象を確認できなくなる)。

例外として、Chromeブラウザなど一部のアプリや、Chromeのなかで動くアプリならば、ゲーム側など他のアプリにフォーカスがあっても更新されます。

この挙動は Galaxy Fold の制約というより、従来のAndroid 9までの制約です。しかしGoogleはフォルダブルとマルチタスクの普及に向けて、Android 10でマルチアクティブウィンドウ(Multi resume)を導入しました。Android 10ならば、従来のアプリでもフォーカスを失った際、前面にあれば一時停止せず同時に動くようになります。

たとえばAndroid 10の Pixel で上下に画面分割すれば、ポケモンGOでレイド開始を待ちつつ、下画面で対策ポケモンを調べたり、Twitterでイベント情報を流し見といった使い方ができます。

Galaxy Fold の出荷時OSは Android 9 Pie。今後Android 10アップデートが提供されれば、アプリ開発者の対応がなくても、真のマルチタスクがもっと便利になることが期待できます。つまりGalaxy Fold は同じハードウェアのまま、進化形態をひとつは残した状態です。

一方で、そもそも画面分割やマルチタスクに対応しないゲームなどの場合、Android 10になったとしても、アプリ側が対応してくれないかぎりマルチタスクとの相性は改善しません。この点では、左右の手に2丁スマホで人力マルチウィンドウのほうが安く、どんなアプリも並列できます。

可変機の魅力

二台持ちソリューションは安く応用が効きますが、一台で変形するフォルダブルならではの魅力ももちろんあります。たとえば、

・片手で使っていて「これは大きな画面でちゃんと見たいな」というアプリや画像や動画に出くわしたとき、「後で読む」に保存したり、タブレットやPCを取り出して持ち替えたりの手間なく、その場ですぐ大画面に移れる。

・あるいは人と話していて不意に写真や地図を見せたくなったとき、待たせてタブレットを取り出して開き直す手間がなく、一瞬で広い画面を一緒に見られる。

・二台運用の面倒、持ち運びや同期や充電の手間から開放される。スッと一台をポケットに入れれば常に備えあり状態。「今日はタブレットまでは持って出なかったな、失敗した」がない。

そのほか Galaxy Fold の魅力をダメ押しすれば、

・バッテリーの持ちが優秀。大画面でマルチタスクを試しても、一般的なスマホと同等以上に長く使える。

・メイン画面が非常に美しい。HDR対応の有機ELタブレットというだけで、折れなくても価値がある。(暗いコンテンツや明るい場所では映り込みで折り目が目立つものの、何かを表示して正面から見る限りほとんど見えないか、慣れて気にとまらなくなる。)

・RAMの量とプロセッサの速さで、重いアプリも大画面で快適。3Dゲームは画質設定を重くしても滑らかに遊べる。

半歩先の未来を楽しめるなら最高の一台。扱い注意な贅沢品

Galaxy Fold は折りたたみ実現だけで力尽きた一発ネタでもなければ、常用できないキワモノでもなく、タブレットに変形する高性能スマホとして額面通りに使えます。

燃費が悪すぎるスポーツカーのようにバッテリーが持たないであるとか、独自OSでアプリがないといった分かりやすい欠点があれば、「有料で売ってるコンセプト実証機、実用性皆無」で片付けられて話は楽なのですが、Foldのバッテリーは一般的なスマホと同等以上に保ち、Androidアプリは豊富です。マルチタスク対応こそ途上なものの、単に大画面で使うには困りません。

そのうえで述べるとすれば、

・新製品の購入後やOSの更新後、目を輝かせて「設定」を開き新機能や改良点を探し回ったり、できること・できないことを確認したり、これはどう使えば良いんだ......?これを試そう等々、デバイスとテクノロジー自体で遊べる特殊な嗜好の人にとっては最高の玩具。「すげえ!で、何に使えるかな?」「うん、やっぱりできなかったよ!」(何故か満面の笑み)といった手合いです??‍♂️

・逆に「設定」はできるだけ開きたくない、新しいことは人柱に整地させてから悠然と手を出す、道具なのだから手段として Just Works すれば良い、というかたにとっても、最低限「二つ折りできる大きな画面のスマホ」の額面どおりには使えます。

いずれの場合も「防水防塵に非対応」「開いた状態では画面が弱い」「閉じると画面が小さい」ことに注意は必要です。物好きな新し物好きだったとしても、24万円払ったうえに、この先祖返りしたような取り扱い注意点をトレードオフとして受け入れられるかどうか。

24万円の壁を見なかったことにすれば、初物はアーリーな方々に任せて、恐らくは年末や来年にも各社から出てくるであろう後発フォルダブルまで待つかどうかが最大の悩みどころです。

なお au が独占販売する国内版は台数が限られているらしく、悩んでいる余裕があるか分かりません。