SCMで主導権目指すIntel、最新メモリを一挙に発表

Intelは2019年9月26日、世界各国の報道機関を対象に同社のメモリ/ストレージの新製品や戦略、採用事例を紹介する「Intel Memory and Storage Day」を韓国・ソウルで開催。同イベントに合わせて、「Optane DC Persistent Memory」*)の第2世代となる「Barlow Pass」(開発コード名)、QLC(Quad Level Cell)を用いた144層の3D(3次元) NANDフラッシュメモリなどを発表した。

IntelのNon-volatile Memory Solution Groupでシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるRob Crooke氏は、イベント冒頭の基調講演で、「Intelは、マイクロプロセッサベンダーから“PC中心”へと移行した際、インターネットを介して世界中の何十億人もの人々をつなぎ、社会を根本から変えた。さらに、Intelが“PC中心”から“データ中心”へと移行している今、当社は、顧客が“データの海”から価値を見つける手助けをすることで、再び世界を変える新しいチャンスを手にした」と語った。

Crooke氏は、“データ中心”の時代では、「クラウドコンピューティング」「AIと分析」「ネットワークおよびエッジ」の3つが大きなトレンドになると述べる。Intelは、これらをサポートすべく、「プロセス」「アーキテクチャ」「メモリ」「インターコネクト」「ソフトウェア」「セキュリティ」の6つを技術開発の中心に据えている。

メモリ/ストレージの中で、Intelが最も注力している技術の一つが、SCM(Storage Class Memory)に相当するOptane技術である。Crooke氏は、「分析の作業を行うために、より大容量のストレージに対するニーズは高まっているが、HDDではとても対応できない。CPUの演算能力とHDDのレイテンシの間に存在するギャップは極めて大きい」と述べる一方で、そのギャップこそが、メモリ業界にとっては新しいビジネスチャンスになると強調した。

第2世代の「Optane DC Persistent Memory」

Intel Data Center Groupのシニアディレクター兼プロダクトマネジメントを務めるKristie Mann氏は、Intelのメモリ/ストレージの製品ロードマップを紹介。

Barlow Passの他、Optane技術を搭載した「Optane DC SSD」の次世代バージョン「Alder Stream」(開発コードネーム)、3D NAND型フラッシュメモリを搭載したSSDの次世代バージョン「Cliffdale-R/Arbordale」を紹介した。今後もIntelのプロセッサ「Xeon」のアップデートに合わせて、Optane DC Persistent Memory、Optane DC SSD、Intel 3D NAND SSDの3つをアップデートしていくと述べた。「これらのロードマップは、データセンターの要となる部分に対するIntelの貢献を示すものだ」と、Mann氏は強調する。

Barlow Passは、2020年にデータセンター向けに投入される予定だ。第1世代のOptane DC Persistent Memoryは2層構造の3D XPointメモリをベースにしているが、Barlow Passではそれが4層構造になる。これにより、記憶容量が2倍になるとIntelは述べる。

なお現在はサーバストレージ向けとして提供されているOptane DC Persistent Memoryだが、間もなくワークステーションに、そして将来的にはクライアントPCへと、導入の範囲を拡大していくことを明らかにした。

Intelが第1世代のOptane DC Persistent Memoryを発表したのは、約半年前となる2019年4月のことだ。Mann氏は、Optane DC Persistent Memoryの採用事例とその効果を紹介した。

OptaneのパイロットラインをFab 11Xに

併せてIntelは、Optane DC Persistent Memoryのパイロットラインを、米国ニューメキシコ州リオランチョ(Rio Rancho)に保有する工場「Fab 11X」に構築したことについても発表した。Fab 11Xは300mmウエハー製造ラインを備えた工場だ。Fab 11Xへの移管の背景には、2018年7月に発表したMicronとの共同開発プログラムの終了がある(関連記事:「「3D XPoint」、Intelは強気もMicronは手を引く?」)。ただ、両社の合弁会社であるIM Flash Technologiesが所有する米国ユタ州リーハイ(Lehi)の工場でも、第1世代および第2世代のOptane DC Persistent Memoryの製造は継続していく。なお、Crooke氏は、同プログラム完了後の3D XPoint開発について報道陣から尋ねられた際、ほとんど何も明かさなかった。

Intelは第2世代以降のOptane DC Persistent Memoryについても、Fab 11Xのパイロットラインで開発を続けていくが、具体的な投資額や投資のタイミングは「公開できない」(Crooke氏)とし、「他のメモリベンダーに引けを取らないレベルでの投資は行う」と述べるにとどまった。

QLCの144層3D NANDを2020年に市場投入

3D NANDフラッシュについては、第4世代として144層のQLC(Quad Level Cell) 3D NANDフラッシュを発表した。第3世代の96層まではMicron Technologyと共同開発したものだが、144層の3D NANDフラッシュについてはIntelのみで開発している。

Intelが現在出荷しているのはQLCの64層3D NANDフラッシュを搭載したSSD「660p」だが、その後継品として、96層3D NANDフラッシュを搭載した新しいSSD「665p」の出荷を、2019年第4四半期(10~12月)に開始する。ただし、665pの詳細な仕様は明らかにされなかった。144層3D NANDフラッシュを搭載したSSDは、2020年に量産を開始する予定だ。

Crooke氏は、「Intelは、32層、64層、96層の3D NANDフラッシュにおいて、ダイ面積当たりで最も高い記憶密度を実現してきた。次世代の144層でも記憶密度におけるわれわれのリーダーシップを継続できると確信している」と語った。

QLCを採用したSSDについては、TRL(Triple Level Cell)搭載品に比べて書き込み耐性などについて懸念する声もある。だがCrooke氏は「QLCドライブの性能は非常に優れている」と言い切る。「ほとんどのQLCドライブはSLCキャッシュ機能を備えていて、これをうまく利用できるアルゴリズムがあれば、QLCでも性能に心配はないと考えている。Intelは今後もクライアントPC向けSSDではQLCを採用する方針であり、TLCを搭載する必要はないだろう」(Crooke氏)

3D NANDフラッシュでは、次世代の技術として5ビット/セルや500層以上の積層数に関する開発や議論が既に始まっている。Crooke氏は、「5ビット/セルについては理論的に可能だが、実用化には程遠いというのが業界の見解ではないか。積層数については、Intelも他社のメモリベンダー同様、積層しようと思えば積層できるとは思う。ただし、設備投資に対して効率的に容量を上げる手法は、ビット/セルを向上していく方ではないか」と述べた。

Intelは、OptaneメモリとQLC 3D NANDフラッシュを搭載したSSD「Optane Memory H10 with Solid State Storage」(以下、H10)を2019年4月に発表している。イベント後半のセッションでは、このH10と、TLC 3D NANDフラッシュを搭載したSSD(TLC SSD)の性能を比較するデモが行われた。

デモでは、H10を搭載したPCと、TLC SSDを搭載したPCで、「Photoshop」を開いたり、Photoshopを開きながらファイルをコピーしたりといったタスクを行い、完了するまでの時間を比較した。

新しいSSDフォームファクタも発表

さらに、データセンター向けSSDのフォームファクタとして「E1.L」と「E1.S」も発表した。1ラック当たりの容量は、E1.LがU.2に比べて最大2.6倍、E1.Sでは1ドライブ当たりの容量はM.2に比べて最大2倍となっている。

韓国NAVERとのパートナーシップ

韓国におけるIntelの重要なパートナーの1社がNAVERだ。NAVERは、ソウルから電車で西に約1時間の春川(チュンチョン)市に、巨大なデータセンター「GAK(閣)」を保有している。

GAKの最新のサーバルームには、Intelの第2世代「Xeon」プロセッサとOptane DC Persistent Memoryが採用されている。

さらにNAVERは、Intel、韓国の大手キャリアKTと共同で、5G(第5世代移動通信)を活用するサービスロボットを開発することも発表している。