有機ELでの写真・動画編集を堪能できる高性能さも魅力の15.6型ノートPC

マウスコンピューターが販売する「DAIV-NG5820」シリーズは、クリエイター向けブランド「DAIVシリーズ」の最新モデルだ。ノートパソコンとしては使い勝手のよいスタンダートサイズの15.6型ディスプレーを採用。6コア/12スレッドで動作するインテルの第9世代Core「Core i7-9750H」と、GPUに6GBのビデオメモリーを搭載した「GeForce RTX 2060」を搭載し、デスクトップマシンに迫るパフォーマンスを持っている。

また、DAIV-NG5820は、一般的な液晶パネルではなく、有機ELパネルを採用しているのが大きな特徴。背面からバックライトでの透過で色を再現する一般的なディスプレーと違い、有機ELパネルは素子そのものが発光し、ピクセル単位で明るさの制御を行なえるため、黒の締りやハイライト部やシャドー部の微妙なグラデーションの再現性が高く、メリハリがあって高いコントラストでの表示が可能になっている。加えて、DAIV-NG5820の有機ELパネルは、3840x2160ドットの4K表示が可能なほか、Windows 10のHDR機能にも対応している。

今回は、DAIV-NG5820シリーズの中でも最上位となるDAIV-NG5820U1-VGをじっくり触ってみたので、外観や使い勝手、性能などを紹介する。

狭額ベゼルでコンパクトな筐体
彩度が高い有機ELパネルが超キレイ!

まずはDAIV-NG5820U1-VGの外観からチェックしていこう。サイズはおよそ幅359×奥行257.8×高さ29.9mmと、15.6型というわりにはコンパクトだ。狭額ベゼルを採用しているので、ワンクラス下のサイズのノートパソコンに近いサイズに15.6型ディスプレーを搭載できている。外観デザインは黒を基調にしていて鋭角的。ハイパフォーマンスなCPUとGPUを搭載しているので、冷却効果を上げるためその分の厚みはあるが、左右や前面側といった目に触れる部分は底面に向かって斜めに切り落とされいるため、より薄くシャープな印象を受ける。

DAIV-NG5820U1-VGのディスプレーは、表面に艶のあるグレアタイプの有機ELパネルで、4K表示が可能。sRGB規格よりも広い色域を持つデジタルシネマ規格DCI-P3比100%の色域を持っている。試しにノングレアタイプで解像度はフルHD、NTSC比約72%の広色域型のディスプレーを搭載した姉妹モデルである「DAIV-NG5810」と一緒に並べてみたところ、その差は歴然。有機ELパネルのほうが彩度が高く、ハイライトやシャドー部の階調が液晶よりも再現されていて見るからにきれいと感じる。

Windows 10の標準機能であるHDRにも対応している。肉眼に近い広い快調が再現可能で、最近は対応PCゲームも多い。今回は「Gears 5」でHDRの効果を確認してみた。

HDR機能がオンの状態では太陽の影になっている建物の描写力が格段に上がってシャドー部の様子も確認できるようになっている。HDR機能はハイライト側の白飛びを少なくしてシャドー側の黒つぶれを少なくするため、コントラストが下がったような感じになってメリハリがなくなりがちだが、DAIV-NG5820U1-VGの場合有機ELパネルとグレア処理によりコントラストの高いメリハリのある画質のまま幅広い階調を再現することができている。HDRオフの状態と空のハイライト部分の明るさが同じになるように撮影したが影になってる建物の描写力は格段に上がっている。

また、DAIV-NG5820U1-VGに採用されている有機ELパネルはキレイなだけでなく、実用性も高い。高色域が表示可能なこともあるが、視野角がとても広い。左右で45度や30度くらいまでいっても、多少の明るさの低下はあるが発色傾向やコントラストの変化は少なく、確認ができるいう意味では十分な実用性がある。またノートパソコンの場合ディスプレーの開き具合で上下の見る角度が微妙に変わることがあるが、左右と同じく上下の視野角も広い。

打鍵感良好なキーボード
UHS-II対応のSDカードスロットで高速転送

DAIV-NG5820U1-VGのキーボードは、テンキーを備えた107キー配列。キーピッチは約18.2mm、キーストロークは約1.8mmで、本体に剛性感があるため打ち心地はかなりよい。キーストロークには適度な反発感があり、入力される位置が確実に指に伝わり小気味よくキー入力ができた。タッチパッドのクリックボタンも物理的に分かれていて、確実な操作が可能だ。

豊富なインターフェース
高速なThunderbolt 3も搭載

DAIV-NG5820U1-VGのインターフェースは、右側にThunderbolt 3(Type-C)とUSB 3.0を配置。左側には本体の電源が入ってなくても給電可能なUSB 3.0と、マイク端子、ヘッドホン端子が備わっている。

背面には、左から有線LAN端子、HDMI出力、ミニディスプレイポート、Thunderbolt 3(オルタネートモード)端子、USB 3.0が並ぶ。Thunderbolt 3は、最大転送速度が40Gbpsで、USB 3.0の約8倍の速度での転送が可能だ。また対応したディスプレーなら出力も可能になっている。

フロントにはSDカードスロットが備わる。UHS-IIに対応しているため、高速なデータ転送が可能だ。高画素のデジカメデータや動画データのコピーが早く便利。また転送速度が早いため、本体側にコピーせず、SDカードから直接再生してもスムーズな動画再生が可能だった。

写真・動画編集が快適にできる性能

DAIV-NG5820シリーズは、CPUとGPUは基本構成で共通になっており、メモリーやストレージの違いでいくつかのラインナップが用意されている。一番ベーシックな構成の「DAIV-NG5820S1-M2S2」は、メモリーが16GBでストレージに256GB SSD(M.2接続/NVMe対応)を搭載し、価格は25万1424円から。なお、今回の試用機のDAIV-NG5820U1-VGは、メモリーが32GB、ストレージはNVMeに対応したPCIe3.0x4接続の512GB SSDが2基に、SATA接続の1TB SSDが1基搭載されているフルスペックモデルだ。この構成で、価格は31万6224円。

肝心のCPUとGPU、有機ELパネルは共通スペックなので、目的合わせてメモリーやストレージの組み合わせを探してもいいし、BTOで自由にカスタマイズも可能だ。

では、フルスペックのDAIV-NG5820U1-VGはどれくらいのパワーを持っているのか、各種ベンチマークを実施してみた。

パソコンの総合的な性能を測るPCMark 10では、総合スコアで5492となかなかの数値が出た。内訳を確認してみると、クリエイティブ系の性能を示す「Digital Content Creation」も6751としっかりとした数値を記録している。そのほかも、平均的に高めのスコアとなっている。

CGレンダリング速度からCPU性能を測る「CINEBENCH R15」と「CINEBENCH R20」をチェック。CINEBENCH R15は、CPUのマルチスレッドが1209cb、シングルが190cbとなった。モバイル向けCPUとはいえ、6コア/12スレッドだけあって高めの数値を記録。CINEBENCH R20もマルチが2429pts、シングルが448ptsと、傾向はCINEBENCH R15と同じ。2世代前のCore i7-7700Kを超えるスコアなのには驚いた。

DAIV-NG5820U1-VGの3D性能をチェックするため、3DMarkとゲーム系のベンチマークもチェックした。

3DMarは、Time Spyで5765というスコアに。デスクトップ向けのGPUと比べると性能は劣るが、それでも高めのスコアを記録している。これくらいのスコアがあれば、写真・動画編集でもしっかりと活躍してくれそうだ。

ゲーム系ベンチマークは、負荷が重めの「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」をチェック。まずは初回起動の状態で計測。画質は「標準品質」、解像度は1920x1080ドット、ウインドウモードで、スコアは8055(快適)となった。

また、余裕がありそうなので解像度を4Kに設定して測定してみた。画質は「標準品質」のまま、ウインドウモードでの測定。スコアは2952(やや重い)になった。さすがに4K表示ではかなり負荷が高いが、ノートパソコンでこのスコアであれば十分だろう。

NVMe対応SSDを2基搭載で書き出しも高速!

ベンチマークソフトの場合、基本的にはCPUとGPUで結果は決まってしまいがち。そこで次はより実用的にPhotoshop Lightroomでの現像時間を測定してみた。2400万画素のデジカメで撮影したRAWデータを500枚、そのままPSD形式(16bit)とJPEG(最高画質)で書き出した場合の時間を測定してみた。

RAWデータ500枚の書き出しにかかる時間は、PSD形式(16bit)で約7分5秒、JPEG(最高画質)での書き出しにかかる時間は約7分15秒で、ほんの僅かだけJPEGの方が遅くなった。試用機にはCドライブとDドライブに同じ512GBのSSDが搭載されてるので、試しに書き出し先をDドライブから変更して測定してみたところ、Dドライブへの書き出しはPSD形式(16bit)で約6分40秒、JPEG(最高画質)で約6分57秒と早くなった。

またEドライブにはSATA接続ではあるが1TB SSDが搭載されているので、そちらへの書き出しも行なってみた結果、PSD形式(16bit)で約7分、JPEG(最高画質)で約7分18秒となった。元のRAWデータがCドライブに置いてあるため、読み込みと書き込みが同じになるCドライブへの書き出しよりも、別になるDドライブやEドライブへの書き出しのほうが若干早くなるようだ。

DAIV-NG5820は、「DCI-P3」に準拠した4K表示可能なディスプレーを採用しているため、動画編集向きな面もある。そこで「DaVinci Resolve 16」を使って動画の書き出し時間のチェックも行なってみた。デジカメで撮影した約30秒くらいの動画をエフェクトなどを使わず単純に20本つなげて約10分くらいにし、4K書き出しとフルHDでの書き出しにかかる時間を計測してみた。

まず素材動画にフルHD24フレームで撮影したMP4形式の動画を20本用意して10分30秒の動画を作成。DaVinci Resolve 16に用意されているYouTubeプリセットでフルHD24フレームMP4形式で書き出したところ、かかった時間は約9分21秒。多少ではあるが実時間よりも短い時間で書き出せている。

素材の動画を4K24フレームで撮影した動画にして、同じく20本並べて約10分38秒の動画を作成。これを同じくYouTubeプリセットでフルHD24フレームMP4形式で書き出しを行なったところ、かかった時間は約7分36秒と素材が大きくなったはずが処理時間は短くなっている。また、書き出しをYouTubeプリセットのまま書き出しサイズを4Kにしたところ、処理時間は約14分27秒となった。

素材の大きさが変わっても書き出しの処理時間への影響は感じられず、書き出しサイズが大きくなるとそれなりに処理の時間はかかるものの、大きな影響は無い。この辺は使用した「DaVinci Resolve 16」の出来がよいということもあるだろうが、DAIV-NG5820の性能は趣味レベルだけでなく十分に仕事に使える性能があるといっていいだろう。

処理時間だけでなく「DaVinci Resolve 16」の動作も軽いほうだ。プレビューの表示やコマ送り等の動作でもマウスに追従して表示してくれるのでカット中から必要な部分を探すのにも苦労はなかった。

有機ELを堪能できる性能のノートパソコン

有機ELパネルは鮮やかで、階調が豊富ながらもメリハリのあるコントラストのしっかりした表示が可能だ。色域的に「DCI-P3」準拠となると静止画よりは動画向きの性能とも思えるが、アップルがiPhoneで採用しており、今まさに増えつつある時期でもあり今後はsRGBに置き変わるスタンダートな規格になる可能性が大きい。

動画やウェブコンテンツをメインにあつかう人なら、DCI-P3準拠の有機ELパネルを採用しているDAIV-NG5820は大注目だろう。15.6型のハイエンドマシンとしてはかなり軽くなっているので、外出先で編集や作業を行なう人は、ぜひDAIV-NG5820を検討してみてほしい。