新型「ZenBoook 14」はゲーミングPCの夢を見るか?

ASUS JAPANから発売された14型ノートPC「ZenBook 14」(UX434FL)。前モデル(UX433FN)から狭額縁のベゼルや小型ボディーを引き継ぎつつ、タッチパッド部には新しい「ScreenPad 2.0」を採用している。これにより、テンキーとして使えるだけでなく、セカンドスクリーンとして動作するので、メイン画面で作業しているときにScreenPad 2.0にチャット画面を開いておいたり、音楽アプリを開いておいたりと、便利に使えるのがうれしい。

モバイルでどこまでゲームが楽しめる?

ざっくり言ってしまうと、このようなポイントが新型ZenBook 14の特徴なのだが、筆者的に注目したのはGPUだ。前モデルに搭載されていたGeForce MX150から、GeForce MX250へとワンランク上がったことで、「もしかしたら結構、ゲームが動くかも?」と思ったわけだ。

今ではゲーミングPCが普及してきており、PCゲームもさまざまなジャンルのソフトがあって、ハイエンドなゲーミングPCでないと満足した動作が期待できない超ヘビー級なタイトルから、本製品が搭載されている下位クラスのGeForceシリーズでも軽々と動作するタイトルまでいろいろある。となったら、ここはやっぱりテストするしかないでしょうというわけで、どの程度のレベルまで動作するのかを検証していく。

狭額縁でスリムなボディーは健在

いきなりゲームの話をする前に、本機の進化点を押さえていこう。なお、新型ZenBook 14はCPUとストレージの容量で2モデルあり、さらに下位モデルではOffice Home and Business 2019の有無に分かれる。評価機は、オフィススイートを省いた最も安価な下位モデル(CPUがCore i5-8265U、SSD容量が512GB)だ。

ボディーは、前モデル(UX433FN)と同じ319(幅)×199(奥行き)で、厚さは1mm増えた16.9mmとなる。これなら持ち運んでの使用や、新幹線の中などでも邪魔にならないサイズ感だ。重量は約1.3kgとモバイルPCとしては重い方だが、持ち運びは苦にならない。なお本体色は前モデルの「ロイヤルブルー」「アイシクルシルバー」の2色展開から、ロイヤルブルー1色のみとなった。バッテリー駆動時間は約8.2時間となっている。

インタフェースは、左側面に電源ジャック、HDMI、USB 3.1 Gen2(Type-AとType-C)ポートが、右側面にはmicroSDカードスロット、USB 2.0、3.5mmヘッドフォン兼マイクポート、電源およびバッテリー表示LEDが配置されている。USB Type-CポートはUSB Power Deliveryに非対応(DisplayLink対応)だ。

液晶ディスプレイとキーボードの配置も従来モデルを踏襲

液晶ディスプレイは、グレアタイプの14型ワイドTFTカラー液晶を採用する。このため、表示ははっきりとした色合いという印象だ。画面解像度は1920×1080ピクセル(フルHD)表示に対応し、リフレッシュレートは60Hzとなっている。

本体を開けると、液晶側が下に潜り込む「エルゴリフトヒンジ」が採用されており、約3度キーボード面を傾けてくれるのでとても打ちやすい。キーボードはイルミネートタイプの日本語86キーで、キー下部に白いLEDを内蔵し点灯すると、うっすらとキーの文字が見える。このため暗いところでも入力しやすい。

キーピッチは実測で約18.5mm、キーストロークは約1mm程度と、薄型モバイルノートPCとしては平均的な値だが、特に打ちづらいということはない。なお、Fnキーはデフォルトでは音量調整、ディスプレイの明るさ調整といった拡張機能を使うように設定されている。通常のFnキーとして使いたい場合は、Fn+Escでロックをかけて、Fnキー優先にしておこう。

キーボードについて1つだけ難点あげるとすると、それは一番右上に電源ボタンがあることだ。一般的なノートPCではDeleteキーがある部分でもあり、DeleteキーやBackSpaceキーを押すつもりで何回かスリープ状態に移行してしまった。これは前モデルから引き継がれている配置なので、電源ボタンをサイドに回すなど、なんとかしてもらいたい。

逆に便利だと思ったのは、PrintScreenキーが独立していることだ。ノートPCだとFnキーとの合わせ技で利用しなければならないモデルが多く、ゲーム画面のキャプチャにはちょっと面倒に感じる。しかし本機ではキーが独立しているので、Altキーと合わせたウィンドウキャプチャもやりやすい。ゲーマー的にはこの配置はうれしいところだ。

スマホをパームレストに埋め込んだかのようなScreenPad 2.0を搭載

そして本機最大の特徴が、ScreenPad 2.0だ。単なるタッチパッドとして使えるだけでなく、2160×1080ピクセルのセカンドディスプレイとしても機能する。ScreenPad 2.0には、デフォルトでは電卓や手書き文字入力の他、入力文字の切り取りやコピーといったホットキーとしての使用、SpotifyやKKBOXなどの音楽アプリが登録されている。

好みのアプリも登録可能だが、Handwritingで日本語の手書き文字入力を認識させるためには、Handwriting起動後の画面左上にある地球儀アイコンから「Microsoft 日本語手書き認識エンジン」を指定しないと漢字やひらがなを認識しない。

また、ScreenPad 2.0、はキーボード下に大きな画面で配置されているため、気がつかないうちに親指の付け根でタッチしてしまってアプリを起動することがままあった。このあたりは慣れの問題だと思うが、あまり影響を受けないようにするために、筆者の場合は通常のタッチパッド状態にして使っていた。

マシン自体のスペックとしては、CPUは4コア8スレッドの第8世代Core i5-8265Uで、動作周波数は1.6GHz(ターボ・ブースト時は3.9GHz)、GPUはGeForce MX250(グラフィックスメモリは2Gバイト)で、NVIDIA Optimum Technologyに対応しているので、負荷に応じてGeForce MX250とIntel UHD Graphics 620を切り替えて使うことができる。

メインメモリは8Gバイト(増設不可)、評価機のストレージはWestern Digitalの512GバイトNVMe SSD「SN520」(PCI Express 3.0 x2接続)が搭載されていた。無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n/ac対応で、Bluetooth 5.0もサポートする。

次のページでは、実際のゲームタイトルをプレイしてみよう。

ゲーミングPCとしての実力を見る

では、本題に入っていこう。ZenBook 14でゲームを動作させて、どの程度動くのかを見極めていく。

まずはZenBook 14の基礎体力を見るために「PCMark10」と「3DMark」を実行した。基本はGeForce MX250の測定結果を見ることにし、その比較対象として、ZenBook 14で使えるIntel UHD Graphics 620と、従来モデル(2018年発売)のZenBook 14(UX430U)を用意している。UX430Uのスペックは、CPUはCore i5-8250U(4コア8スレッド、1.6GHz~3.4GHz)だが、GPUはIntel UHD Graphics 620のみだ。

PCMark10の結果だが、新しいシステムなので、素直に動作が速くなっているという印象だ。3DMarkについても、「Time Spy」ではCPU ScoreとGraphics Scoreが示している通りの実力だろう。統合型グラフィックスよりも独立したGPUを乗せた成果はあるというところだ。

ただしそうは言っても、GPUのスペックが低すぎる。「Time Spy」や「Fire Strike」を回していたときは、デモ画面ののっけから紙芝居状態になったし、ハイパフォーマンスのゲーミングPCで走らせたときのようなヌルヌル感は全くない。

低スペックマシン向けのテストである「Sky Diver」や「Cloud Gate」は順調にこなしたが、統合型グラフィックスでは前モデルとあまり差がない印象だ。GeForce MX250を利用するならトータルでの性能は高い、という結果だ。そのあたりは低スペックマシンにおけるDirectX 12での性能を測る「Night Raid」にも現れている。

ここまでで分かったのは、GeForce MX250が載るならやっぱり統合型よりスペックは高いね、というある意味で当然の結果だ。ビジネスシーンでは快適に使える性能を備えているが、ゲームの世界ではそうは行かない。

次にゲーム系のベンチマークテストである「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FFXVベンチ)と「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下、FFXIVベンチ)で測定をして、本気モードに突入する。

FFベンチもいろいろあるけれど

まずはFFXVベンチから見ていこう。このベンチマークテストでは「軽量品質」「標準品質」「高品質」の3パターンでテストできるが、画像サイズをHDから4Kまで選べること、ゲームをウィンドウか、フルスクリーンか、ボーダーレスかを選ぶことが可能な以外、特に細かい設定はできない。ただし、このベンチマークテストはかなり重く、「普通」という評価を得るには最低でもCore i5+GeForce GTX 1660くらいは載せないと厳しいという感じだ。

さて、結果を見ると分かるように本機のスコアは低く、高品質と標準品質では「動作困難」、軽量品質でも「重い」という結果となった。最も、これはGeForce MX250での測定結果で、当然ながらIntel UHD Graphics 620ではテストすらできなかった。つまり、重い処理を要求するゲームは荷が重すぎるということだ。

やはり、GeForce MX250だとゲームを遊ぶのは厳しいのだろうか。ここまでの(予想していたとはいえ)面白くない結果にはかなり落胆したのだが、気を取り直して次のFFXIVベンチへと移ることにする。

FFXIVが登場した当初は、先に出たオンラインゲームである「ファイナルファンタジーXI」よりもかなり美麗なグラフィックで展開されおり、PCのスペックもそこそこのものを要求していたのだが、既にサービスが始まってから9年あまり。動作条件をPCのスペックが軽々と越えてしまい、いまや軽いゲームのベンチマークテストとして位置付けられている。これならGeForce MX250でもかなりのものを期待できるのではないか。

そんな思いを込めてテストをした結果がこれだ。最高品質でも「やや快適」、高品質では「快適」、標準品質では「とても快適」だった。筆者的にはこの結果にはかなり喜んでしまった。なんだ、手軽に遊べるゲーミングノートPCとしても使えるじゃないか。あ、統合型グラフィックスでは快適プレイになりませんよ。もちろん。

実際のゲームをプレイしてフレームレートを計測

「FFXIV」くらいなら動きそうだという希望が出てきたので、ここからはゲームをプレイしつつフレームレートを計測した結果を示して、ZenBook 14のポテンシャルを見ていきたい。

フレームレート計測だが、画質が高いもの、低いものについてそれぞれテストをして「Fraps」による結果を複数回測定して、そこからフレームレートの最大値と最小値、平均値について算出した結果から考えることにした。ゲームを楽しめる基準として「60fps」をその値とした。

まずは、先ほどのベンチマークテストでもいい結果を残した「FFXIV」から。一番軽いモードの標準品質では平均でも60fpsに迫る勢いだ。最高品質では平均24fpsと厳しいが、多少カクつくものの、全くプレイができないということではなかった。標準品質にしてしまうとグラフィックスの表現がかなりそぎ落とされてペラペラな感じになるが、十分にプレイを楽しむことができた。このあたりはマシン性能とのトレードオフだ。「FFXIV」をZenBook 14でプレイすることができたのも、一瞬の判断が影響するシューティングゲームと敵と戦うだけのRPGでは体験が異なる、ということもあるだろう。

次に、「PUBG」やエレクトロニック・アーツの「Apex Legends」で調べてみる。

Apex LegendsやPUBGはどうだ?

Apex Legendsは比較的軽いゲームで、3人ひとチームになって戦うバトルロイヤルゲームとして人気だ。Apex Legendsは高画質、中画質のようなトータルでの描画設定がないので、何もかも“低”の場合、“高”にした設定で比べた。

結果については「FFXIV」のデータがあるのである程度想定でき、まさにその通りといった感じだ。高画質モードでのプレイは難しいかもしれないが、低画質設定であれば、まあ遊べなくもないというところである。ただし平均35fpsというのはかなり厳しい数字で、実際にプレイしているときもカクつきやラグがかなり発生した。最後の1チームとして残れるほど、十分楽しめるというわけにはいかなかった。

厳しい現実が見えてきたところで、次にテストするのは「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下、PUBG。最近は「ぱぶじー」と呼ぶ人が増えている)。こちらも、Apex Legendsとともに人気のあるバトルロイヤルゲームだ。ただ、2017年からサービスを開始しているPUBGの方が元祖だ(Apex Legendsは2019年2月から)。

PUBGは大きな1枚のマップ上を最大100人のプレーヤーが闘い合うゲーム。輸送機から飛び降りて街に行き、そこに落ちている武器や防具を身につけて、相手を倒していく。最後の1人に残ったら「ドン勝」という“称号”を与えられ、たたえられる。

しかし広いマップに点在する、細かく描かれている街並みや森、草原など、GPUが担当する処理はかなり重く、満足なプレイをするためには少なくともCore i7+GeForce RTX 2060くらいは欲しいところだ。GeForce MX250では力不足で太刀打ちできないのは分かりつつも、どのような結果になるのかを見ていきたい。

PUBGには「ウルトラ」「高い」「中」「低い」「非常に低い」のグラフィックス設定があるので、これにならうことにした。しかし結果を見ると分かるように、「ウルトラ」は夢のまた夢で、「非常に低い」でも平均フレームレートは30fpsを割る始末。確かにプレイしていても相手に照準を合わせる前に打たれてしまうし、このハンデはどうしようもないといったところだ。Apex Legendsもそうだが、この手のシューティングゲームは無理と考えた方がよい。

好きなゲームが動く喜び

予想していたとはいえ、あまり面白くない結果ばかりを見せられたので、どうせテストするなら自分の好きなゲームをプレイしてみようかと思って調べたのが、バンダイナムコエンターテインメントの「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」(以下、AC7)だ。

このゲームは、以前Core i7搭載PCで試したことがあり、その時にはとてつもなく高いスコアが出ていたので、もしやと思ってテストしてみた。その結果がこれだ。なんと、十分に遊べるじゃないですか。

「AC7」には、グラフィック設定で「HIGH」「MIDDLE」「LOW」の3種類が用意されている。こちらを元に計測したのだが、「HIGH」ではさすがに厳しいものの、「LOW」であれば平均フレームレートが72fpsと十分に楽しんでプレイできるレベルにある。プレイ感もプレイステーション 4などで遊んでいるのとほぼ同じ感覚だ。

ただし「LOW」ではグラフィック表現がかなり粗くなるので、きれいな飛行機の姿を見たいと思うならそれは厳しい、と言いたくもなる。ところが、実際のコンバット中は相手の飛行機なんて一瞬で過ぎ去っていくため、そんなにグラフィックスに気を回す余裕はない。

となると地面や雲の表現はどうか、ということになるのだが、こちらもあまりじっくりと見て回る余裕はないので、簡略化された表現でも十分に楽しめる。出撃前のエアクラフト選択画面で、じっくりと飛行機の美しいラインを眺めたいなら、その時だけ「HIGH」にすればよいのだ。このためプレイへの支障は全くない、というのが筆者の結論だ。

意外とゲームが動くぞ、これ

ここまでベンチマークテストとフレームレート計測により、ZenBook 14の実力を見てきたのだが、そこそこ軽いゲームならプレイできるし、ビジネス兼ゲームPCとして使うのも悪くない。ゲーミングノートPCというと安くても16万円を軽く超えてしまうものだし、液晶ディスプレイのサイズは15.6型以降と大型になってしまうが、ZenBook 14のASUS Storeでの価格は14万4500円(税別)で済む。

そして小型でいつでも持ち運びができる「FFXIV」マシンと考えると、筆者的にはかなり魅力に感じた。最近では体験版が用意されていることも多いので、プレイしてみたいゲームの体験版をインストールして動作を確認してもよいだろう。それほど重いソフトをプレイすることがないライトゲーマーであれば、ZenBook 14は見た目の良さや使い勝手を含めて選択肢に加えたい1台だ。