アップルの「iOS 13」は、まだ入れないほうがいい? いくつもの不具合が問題に

アップルがiOSの最新版となる「iOS 13」を公式にリリースした。さまざまな新機能が話題になっている新OSだが、実はいくつもの不具合も報告されている。アップルは問題解決のために数日以内に「iOS 13.1」をリリースする見通しで、それまでインストールするのを待つという選択肢も浮上している。

アップルが最新かつ価格が1,000ドルほどのスマートフォンを発表し、直後に「iOS」をメジャーアップデートして古いiPhoneさえも新品のように感じさせてしまう──。こうした流れは、いまや秋の恒例行事のようになっている。そして、このほど「iOS 13」が公式に公開された。対象はiPhone 6S以降となる。

iOS 13では、さまざまな新機能が予告されていた。ダークモードが登場し、写真アプリは大幅に刷新され、アップル純正のマップにはストリートヴューに似た機能が搭載された。そして月額4.99ドル(日本では600円)で利用できるゲームのサブスクリプションサーヴィス「AppleArcade」も公式にスタートした。

バグが目立つ「iOS 13」

ところがアップルにしては珍しく、公開されたiOS 13にはバグが目立っている。アップルは6月に毎年恒例の「WWDC」で新しいソフトウェアを披露したあと、iPhone用の新OSの開発者向けベータ版とパブリックベータ版を配布してきた。

このベータ期間は通常なら、ひと足先にインストールしたユーザーのコミュニティから使用感についての意見がオンラインで共有され、ソフトウェアの動作についてアップルに有益なフィードバックがもたらされるという、本来なら実りある期間である。しかし今年に関しては、行き当たりばったりで公開されたのではないかと驚きを隠せない開発者もいる。

「iOS 13はとても雑な状態でリリースされているように感じていました。これほど悪い状態だったのは、iOS 8くらいの時代から記憶にありません」と、アプリとゲームの開発者であるスティーヴン・トラウトン=スミスはツイートしている。彼はアップルのプラットフォーム向けの開発について頻繁にブログで発信している人物で、「土台固めとバグの修正に長期間かけて注力する必要が確実にあります」とも指摘する。

あと少しで「iOS 13.1」が登場

今回のヴァージョンでは、既知のバグの少なくとも一部は修正されている。また、iOS 13のベータ版を初期に利用したユーザーのなかには、重大な問題が発生していないユーザーもいる。ソフトウェアの初期版というものは、ときにある程度は行き当たりばったりになるものだ(iPhoneを完全に“文鎮”化したiOSのアップデートを覚えているだろうか)。

だが、もし待てるのであれば、「iOS 13.1」まで待つのが賢明かもしれない。このヴァージョンはiPhoneのOSの次のアップデートとして、9月24日(米国時間、日本では25日)の公開が見込まれている。信頼性も向上しているはずだ。同じ日には、iPad専用となる「iPadOS」の公開も予定されている。

アップルがiOS 13のベータ版ソフトウェアを開発者向けに公開したのは6月上旬、WWDCの基調講演の日のことだった。最初のパブリックベータ版は、新ヴァージョンに興味津々でスリルを求める一般ユーザー向けに、6月末に公開された。それ以来、開発者向けベータ版とパブリックベータ版には12近いアップデートがなされてきた。公開スケジュールは、アップルの通常のiOSのタイムラインからは少し変更されている。

iCloudの問題は「惨状」

初期のiOS 13の問題のいくつかは、開発者がアプリを開発する際に直面するような問題だった。例えば、アプリ内でカスタムトランジションを作成するときに描画に引っかかりが発生したり、アップルのアプリ作成ツール群である「UIKit」内で一貫性が欠如している──といったことである。

一般ユーザーに影響のある問題も見つかっている。その例として、iPhoneのロックスクリーンをバイパスして連絡先情報にアクセスできてしまうバグや、iCloudにバックアップしていたデータやプロジェクトが消去されてしまうという問題などが挙げられる。

このうち前者は、近日公開のiOS 13.1で修正される見通しだ。しかしiCloudの問題への対応として、アップルはあるiOS 13のアップデート時にiCloudのデータを古いヴァージョンに戻すことを余儀なくされたと、匿名希望の開発者は語っている。

開発者のクレッグ・ホッケンベリーは、このiCloudの問題を「惨状」とした上で、「開発は振り出しに戻ったようで、(少なくとも初期版では)iOS 13には新たなiCloudの機能は追加されないように見受けられます」と見解を述べている。彼はiCloudはアップル製品を支える重要なサーヴィスとしての役割を帯びていることから、「iCloudがベータ版の状態であることは許されないことです」とも付け加えた。

「iPhone 11」でも問題発生

アップルによると、初期ベータでのiCloud関連の問題は、すでに公開されたヴァージョンでは解決されているとのことだ。

全盲と医学的弱視のユーザーコミュニティ向けのアップル関連情報を専門に発信しているウェブサイト「AppleVis」によると、iOS 13の初期版では端末のディスプレーが「勝手にランダムに『黒地に白』と『白地に黒』の間とで切り替わってしまう」問題があり、それによって医学的弱視のユーザーが携帯電話を使用するのが難しくなっていたという。

iPhoneに新たに追加された点字キーボードの表示が入力に対して応答しなくなる場合もあったという。点字関連のバグはiOS 13.1で修正されるが、それ以外の問題の修正にはまだ時間がかかるようだ。

個人的には新しい「iPhone 11」と「iPhone 11 Pro」でiOS 13を使用しているが、軽微な問題がいくつか発生している。例えば、アプリがクラッシュしたりフリーズしたり、ホーム画面に戻ってもアプリのメニュー項目が画面に残存してしまったり、テキストを編集しようとしているときにカーソルが動かせなかったりなどだ。

また、アプリの削除方法もiOS 13ではまったく直感的ではないものになってしまった。アプリを長押しした際、アプリアイコンが揺れ始めてお馴染みの削除用のバツ印が表示されるまでに、アプリを共有したり配置変更したりするためのオプションが表示されるようになってしまったのだ。

しかしこれらは、iCloudのバックアップが消えてしまったり、医学的弱視のユーザーがiPhoneの画面を読めなくなってしまったりする問題と比較すれば、はるかに重大性は低いものだ。アップルは長きにわたり、「複雑なことを考えなくても使える」という操作が簡単な製品を売りにしてきた。しかしiOS 13は、ユーザーによってはiPhoneの使い勝手を悪くしてしまうものなのだ。

待ち受ける新機能とバグ

そこで繰り返しになるが、iOS 13.1までアップデートを控えるのも悪い考えではない。AppleVisの編集チームが説明しているように、iOS 13.1が13.0のわずか数日後に公開されることを考えれば、「アップルがiOS 13の開発作業において個別の問題よりさらに全体的な問題に直面したと推測してもあながち間違いではないでしょう。それを考えれば、iOS 13.1の公開までアップグレードを待てるのであれば__待つことをお勧めします」

思い切ってiOS 13をインストールすることにすれば、待ち受けているのは数多くの便利な新機能とバグの両方だ。

新機能としては、すでに説明したようなダークモードに加えて、「QuickPath」とアップルが呼ぶSwype風のキーボードも挙げられる。これは、携帯電話の画面上のキーボードの個別のキーを叩くことなく、なぞるだけで単語を入力できるというものだ。

「リマインダー」アプリは完全に刷新されている。「メモ」アプリも同様に刷新され、一覧表示と共有フォルダーの機能が追加された。本体の音量を調節すると、音量インジケーターは画面の中央に直接表示されるのではなく、左上に表示されるようになっている。

「Appleでサインイン」は新たな認証方法となる。開発者からは賛否両論が寄せられたが、アップルのエコシステムで固めているユーザーにとっては、サインインがより簡単に、そしてより安全になるだろう。

最もうれしい変更点

個人的に気に入っている変更点は、写真アプリだ。時間(年、月、日)別に表示できるタブがアプリの下部に追加され、編集ツールはより強力になった。そしてLive Photoと動画のサムネイルは、アルバムをスクロールして閲覧中に自動的に再生されるようになっている。

使い勝手の面で最もうれしい変更点は、パフォーマンスの向上だろう。アプリの起動時間はこれまでの2倍になっており、アプリのダウンロードではデータが圧縮され(それゆえダウンロードの所要時間もかなり短くなっている)、「iPhone X」と「iPhone XS」では顔認証のFaceIDが30パーセント高速化されている。

これらは比較的小幅な高速化に思われるかもしれない。だが、「古くなってきた」はずのiPhoneが新品に戻ったように感じられるのは、このように高速化を図ったアップデートをインストールしたときなのだ。