15型ノートPCの価値を再定義した“モダンPC”時代の新モデルASUS「ZenBook 15」を試す

ASUS JAPANが8月20日に発表会を開き、台湾の「COMPUTEX TAIPEI 2019」で発表したZenBookシリーズの日本国内向けモデルを公開した。

単なるクラムシェルPCではないエッジの立ったZenBookシリーズ

その筆頭は、2画面4KノートPC「ZenBook Pro Duo」だが、よりスタンダードなノートPC「ZenBook」シリーズも複数投入されている。ここでは、その最上位モデル「ZenBook 15(UX534FT)」をチェックした。

ASUS JAPANのノートPCは「VivoBook/S」、「ZenBook Pro/S/Flipや「Chromebook」と多彩なシリーズを展開中だが、このZenBook 15は最もスタンダードで性能を重視(Core i7+GeForce GTX 1650)したラインアップとなる。

とはいえ、単にクラムシェルのノートPCというだけでなく、性能やデザインに加え独自機能を付加することで、同社らしいモデルに仕上げているのが特徴だ。なお、海外モデルにあったタッチパネル対応モデルの日本投入は見送られている。

セカンダリーディスプレイのScreeen Pad 2.0を装備

何より注目したいのが、液晶ディスプレイ回りのこだわりだ。

昨今、ノートPCの狭額縁化はとどまることを知らず、本機の場合は左右と下部が約5mm、約92万画素のWebカメラを内蔵した上部も約8mmに抑えることで、約90%の画面占有率を実現している。

画面解像度は1920×1080ピクセルで、グレア仕様の液晶ディスプレイを搭載し、最大輝度は約300カンデラ、視野角は上下/左右約170度、sRGB比で100%のパネルだ。グレア仕様なので黒い画面を表示する際は、画面への映り込みがやや気になるが、動画や写真の見栄えはいい。

本機では液晶ディスプレイを開くと本体が3度チルトし、画面がキーボード部分に潜り込むようになるため、まさにパネル全体がほぼ画面という形になる。

狭額縁化はボディーサイズの小型化にも貢献しており、従来のZenBook Pro 15(UX580)から幅を11mm、奥行きを22mmも短くした約354(幅)×220(奥行き)×18.9(厚さ)mmとなっている(厚さは変わらず)。

重量は約1.7kgと気軽に持ち運ぶわけにはいかないが、狭額縁化が進む前の13.3型モバイルPCに匹敵する小型ボディーは、家の中や執務室から会議室の移動時も苦にならない。

これだけのコンパクト化を進める一方で、タッチパッドをセカンダリーディスプレイとして活用する従来の「ScreenPad」を拡張した「ScreenPad 2.0」を搭載しているのも本機ならではのポイントだ。従来の5.5型で1920×1080ピクセル表示から、5.65型で2160×1080ピクセルまでに拡大しながら、消費電力は3.2W→2.4Wに抑えている。

ScreenPad 2.0のパネルサイズは130(横)×66(縦)mmあり、まるで大柄のスマートフォンの画面がそのまま入ったかのようだ。タッチ操作もサポートしているので、モードを切り替えることでテンキーや手書きツールといったオフィス用途を始めとして、SpotifyやiTunesなどのサウンドコントローラー、NetflixやYouoTubeなどの動画視聴など、“ながら作業用”のスクリーンとしても活用可能だ。

ScreenPad 2.0の切り替えは、キーボードのF6キーでワンタッチで行える。機能をオフにすると消灯し、一般的なタッチパッドと見た目が同じになる。使いこなすと便利なScreenPad 2.0だが、作業中にマウスカーソルを見失ってしまったり(カーソルが知らない間にScreenPad 2.0の方に移っていた)、ScreenPad 2.0上のショートカットを起動してしまったりという場面も見られた。ScreenPad 2.0を本格的に使うなら、別途外付けマウスを使うなどの回避策も検討したいところだ。

豊富なカスタマイズに対応したScreeen Pad 2.0だが、WindowsベースのAPIを採用して仕様も公開されるとのことなので、今後はサードパーティーからの提供も期待したい。

次のページでは、ZenBookシリーズならではのこだわりを見ていこう。

しっかりとした作りのボディー

ボディーは天面と底面、パームレスト面にアルミニウム合金を採用している他、天面部分には、ZenBookのデザインアイデンティティーとなる真円のヘアライン加工が施されている。ボディーの剛性は高く、ちょとした持ち歩きの際も気になることはない。

ボディーカラーはロイヤルブルーで、キーボード上部にピンクゴールドのアクセントカラーを配置し、中央部分に「ASUS ZenBook」のロゴがある。

主要キーは扱いやすいものの少々気になる入力環境

キーボードはバックライト機能を備えたイルミネートタイプで、キーピッチは約19.05mm、キーストロークは約1.4mmあり、キー入力時もカチャカチャという耳障りな音がせず、しっとりとしたキータッチは好印象だ。

細かいところでは、キートップの中心部が約0.15mmくぼんでいたり、液晶ディスプレイを開くと本体がチルトして約3度の傾斜がついたりと、入力しやすい環境を追求している。

その一方で、テンキーを搭載している点は賛否が分かれるところだろう。数字の入力が多い人はテンキーが必須であり、本機もボディーの幅を従来より狭めながら、テンキー部分を約15.5mmピッチに狭めることにより、かろうじてテンキーを収納するなど努力の跡が見られる。

また、ZenBookシリーズはキーボードの右上(一般的なノートPCではDeleteキーの位置)に電源ボタンを並べるため、文字を削除するつもりがスリープ状態に入るなどの誤動作を引き起こしていた。その点、本機はテンキーがあるおかげでDeleteキーのミスタイプは物理的に防げるわけだ。

ただ、本機の場合はScreen Pad 2.0部分にテンキーを呼び出せることを考えると、無理して詰め込むならカーソルキーを大きくしたり、他のキーから一段下げるなどしたり、ゆとりのキー配置を目指してほしかったところ。せっかく良好な入力環境を備えているだけに惜しいと感じてしまう部分ではある

手堅くまとめたインタフェース

インタフェースは必要十分というところで、左側面に3.5mmのヘッドフォン/マイク端子とUSB 3.0(Type-A)、右側面にSDメモリーカードスロット、USB 3.1 Gen2(Type-C)、USB 3.1 Gen2(Type-A)、HDMI、DC入力の各端子を用意する。外付けGPUを搭載しているだけに、USB Power Deliveryのサポートは難しかったのかもしれないが、今後に期待したい部分ではある。

無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.0とそつなくまとまっている。

ACアダプターは120Wと、ノートPC向けとしては大容量で、サイズも約68.5(幅)×138(奥行き)×23.5(厚さ)mm、重量も約330g(電源ケーブル込みだと約418g)と大柄だ。電源ケーブルは3ピン(いわゆるミッキータイプ)となっている。

バッテリー容量は71Whのリチウムポリマー(着脱不可)で、最大9.4時間の駆動が可能だ。実際にどれくらい動作するかは次のページのベンチマークテストで確認しよう。

バランスの良いベンチマークテストのスコア

冒頭で、本機は性能を重視したモデルと書いたが、CPUはTDP 15WのIntel第8世代Core i7-8565Uを採用し、4コア8スレッド(1.8GHz~4.6GHz)で動作する。メインメモリは16GB(LPDDR3-2133)、ストレージはPCI Express 3.0 x2接続の512GB SSDと手堅くまとまっている。

GPUは、Turing世代のGeForce GTX 1650(4GB DDR5メモリ)で、Optimus Technologyをサポートしており、バッテリー駆動時や負荷の低い作業時は自動的にCPU内蔵のGPU機能(Intel UHD 620)に切り替わる。なお、OSは64bit版Windows 10 Home(1809)だ。

この辺りの性能はどうなのか、ベンチマークテストで調べてみよう。

以下に各種テストの結果をまとめたが、CPUの性能を測るCINEBENCH R20や、総合的なシステムパフォーマンスを計測するPCMark 10でもバランスの良い値を記録した。

また、PCMark 10 Modern Office Battery Lifeを実行したところ、液晶ディスプレイの輝度を最大にして状態でバッテリー残量が残り2%になるまでの駆動時間が6時間56分、パフォーマンススコアは6445と、実利用でも十分なバッテリー駆動時間と優れた性能を実証した。画面輝度を下げれば、通常のビジネス用途で1日稼働させることも可能だろう。

ゲームタイトルでは、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークの1920×1080ドット最高品質で7797(非常に快適)だった。グラフィックス性能を測る3DMarkでは、Time Spyが2939、Fire Strikeが6659、Sky Diverが19772、Night Raidが20829と3Dゲームも含め、負荷の軽いゲームに関しては最高画質で、カジュアルなタイトルも快適に楽しめるだろう。ただ、GeForce GTX 1050の後継となるGeForce GTX 1650だけに、高負荷のかかるタイトルは荷が重く、画質を落とす必要がある。

一方で写真の現像や動画の編集など、GPUパワーを必要とする場面では、外付けGPU搭載モデルらしい処理速度を見せてくれる。

評価機のSSDはIntel 660p 512GB(PCI Express 3.0 x2接続)と、圧倒的な速さではないものの実用十分なスピードを確保している。

15型ノートPCの価値を再定義した新時代のモデル

日本で売れ筋の15.6型ノートPCは、とかく厚みがあってやぼったいといった印象を受けるが、ZenBook 15は見た目の良さだけでなく狭額縁化によるボディーサイズの小型化、Windows Hello対応の顔認証用赤外線カメラの内蔵といったトレンドをしっかりと押さえている。

さらに、Screen Pad 2.0の新機軸も磨きをかけている。独自ユーティリティーの「MyAsus」では、本製品に関するドライバのアップデートだけでなく、Windows Updateを適用したり、システム診断を受けたり、オンラインのチャットサポートや修理状況なども確認できる。

冷却ファンの動作モードも、自動とサイレント(ピーク時のファンノイズが約40%抑えられる)の2種類から、最大100%まで充電するフルキャパシティ、最大80%まで充電するバランス、最大60%まで充電するマックスライフと3種類の充電モードの切り替えも用意されている。

4K表示をサポートし高性能なパーツで固めた従来のZenBook Pro 15のような目を見張るスペックこそ持たないものの、ベンチマークテストの結果からも分かるように、ビジネス用途もゲーム用途も実用十分な処理性能を備えている。

価格も税別22万2500円と、ZenBook Pro 15から4割近くも下がっており、Windows 10時代の新たなスタンダードノートPCとして、ASUSなりの提案が詰まった魅力ある1台に仕上がっている。

Windows 7の延長サポート終了、消費税増税を控えるといった環境の中で、PCの買い替えや新調を検討している人こそ、店頭で実機に触れてほしいモデルと言えるだろう。