ディスプレイ内蔵タッチパッド採用の「ZenBook 14」はモバイルに最適な2画面ノートPC

ASUS JAPANは、5.65型液晶ディスプレイ内蔵タッチパッド「ScreenPad 2.0」を採用した14型ノートPC「ZenBook 14」を8月20日に発表、8月23日より販売を開始した(ASUS、タッチパッドをディスプレイに使える14/15.6型ノート参照)。

14型の「ScreenPad Plus」を搭載した15.6型ノートPC「ZenBook Pro Duo」、同じくScreenPad 2.0を搭載した15.6型ノートPC「ZenBook 15」が同時に発表されており、ZenBook 14は今回のラインナップでもっとも小型・軽量、かつリーズナブルなScreenPad搭載ノートPCだ。

ZenBook Pro Duoより小さいものの、Apple「MacBook Pro」の「TouchBar」より大きく、また通常のWindowsアプリも実行可能なサブディスプレイにもなり、2画面ノートPCとして魅力的なモデルに仕上がっている。結論じみたことをお伝えしておくと、記事執筆中にZenBook 14を購入してしまったぐらいだ。

さて、今回ASUS JAPANより、14型モデルのなかでもっとも低価格な「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002T)」(直販価格144,500円)を借用した。ScreenPad 2.0の使い勝手、そして最安価なエントリーモデルがどのぐらいの性能を備えているのか、スポットを当ててレビューしていこう。

ZenBook 14/15には合計4モデルがラインナップ

日本向けには下記のとおり、ZenBook 14は3モデル、ZenBook 15は1モデルが用意されている。

「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002T)」(144,500円)
14型液晶/Core i5-8265U/RAM8GB/SSD512GB/WPS Office

「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002TS)」(166,500円)
14型液晶/Core i5-8265U/RAM8GB/SSD512GB/Microsoft Office

「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-8565)」(183,500円)
14型液晶/Core i7-8565U/RAM16GB/SSD1TB/WPS Office

「ASUS ZenBook 15 UX534FT(UX534FT-A9012TS)」(222,500円)
15.6型液晶/Core i7-8565U/RAM16GB/SSD512GB/Microsoft Office

つまりZenBook 14/15にはディスプレイサイズ、CPU、メモリ、ストレージ、Officeの種類が異なる4モデルが存在していることになる。なお14型のCore i7モデルのみ、9月下旬以降発売予定だ。

14型と15.6型ではこのほかに、ディスクリートGPU、SDカードスロット、テンキーの有無、バッテリ容量が異なっている。ZenBook 14にはGeForce MX250/microSDカードスロット/テンキーなしキーボード/50Whバッテリ、ZenBook 15にはGeForce GTX 1650/SDカードスロット/テンキー付きキーボード/71Whバッテリが採用されている。

ASUSによれば、GeForce MX 250は内蔵GPUに対してゲームで2倍前後、GeForce GTX 1650は4倍前後のグラフィックス処理能力を発揮するとのこと。3Dゲームを快適にプレイしたいのであれば、ZenBook 15のほうが有利なわけだ。

とは言っても、右側面のUSB端子がZenBook 14はUSB 2.0、ZenBook 15はUSB 3.0を採用していること以外はインターフェイスの構成、通信機能は同一。ディスプレイ内蔵タッチパッド「ScreenPad 2.0」のサイズは5.65型とまったく同じだ。ScreenPad 2.0目当てで購入するのなら、14型と15.6型のどちらを選んでもユーザー体験に違いはないと思う。

なお、もう1つ細かな差異がある。それはストレージの速度。14型のCore i7モデルのみPCIe 3.0 x4接続のSSD、そのほかのモデルはPCIe 3.0 x2接続のSSDが採用されている。OSやアプリの体感速度を決定的に変える違いではないが、ストレージ速度を重視するなら14型のCore i7モデル一択となる。

2018年モデルよりフットプリントが約13%小型化、USB PD非対応は残念

ここからは基本的にZenBook 14に限定してレビューさせていただく。本製品は天面、パームレスト、底面すべてにアルミニウム合金製の筐体を採用。米国国防総省物資調達規格「MIL-STD-810G」に準拠した落下、振動、高度、高温、低温、多湿環境テストをクリアしていると謳われている。

またASUSによれば、業界標準を上回る同社内部の品質テストにも合格しているとのことだ。正直、それがどの程度の堅牢性、環境性能を備えているかは具体的には不明だが、少なくとも実際に取り回したり、ディスプレイを開閉したり、タイピングしていて、筐体剛性の高さは実感できる。

本体サイズは319×199×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.3kg。ZenBook 14の2018年モデルの本体サイズは324×225×15.9mm(同)なので、フットプリントが約13%小型化されたことになる。カタログスペック上の重量は2018年モデルの約1.27kgから約0.03kg増えているが、体感できるほどの差ではないだろう。

インターフェイスは、USB 3.1 Type-C、USB 3.1、USB 2.0、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドセット端子を用意。通信機能は、IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0をサポートしている。

セキュリティデバイスとしてはWindows Hello対応の顔認証センサーを採用。ディスプレイ上部に92万画素のWebカメラ、アレイマイクとともに、赤外線カメラが内蔵されている。個人的には指紋認証センサーも搭載してほしかったが、どうしても必要ならUSBドングルタイプの指紋認証センサーをUSB 2.0端子に接続すればよいだろう。

本製品の仕様で残念なのは、USB Type-C端子がUSB Power DeliveryやDisplayPort Alternative Modeをサポートしていないこと。そのためUSB PD対応ACアダプタやモバイルバッテリで充電したり、モバイルディスプレイをケーブル1本で接続できない。ZenBook 14に付属するACアダプタは実測約195.6gと比較的軽量で、ScreenPad 2.0があれば別途モバイルディスプレイを使う機会は少ないかもしれない。しかし、2019年に発売されるノートPCとしては実装してほしかった機能だ。

ScreenPad 2.0はセカンドディスプレイとして利用したさいに本領発揮

ZenBook 14/15最大の売りは、5.65型液晶ディスプレイ内蔵タッチパッド「ScreenPad 2.0」だ。本項ではこの入出力デバイスの使い勝手についてレビューしていこう。

ScreenPad 2.0には、画面を表示する「ScreenPadモード」、画面を消してタッチパッドとして利用する「タッチパッドモード」、画面とタッチパッドを無効化する「タッチパッドOFF」の3モードが用意されている。この3つのモードは「F6」キーでいつでも切り替え可能だ。

ScreenPadモードでは、起動時にホーム画面が表示されている。ここにスマートフォンのようにアイコンが並んでおり、ソフトウェアテンキー「Number Key」、手書き入力ツール「Handwriting」、ショートカット入力ツール「Quick Key」、Power Point用コントローラ「Slide Xpert」、Word用コントローラ「Doc Xpert」、Excel用コントローラ「Sheet Xpert」などを起動可能だ。

これらのツールは、メインディスプレイに表示されているアプリで数字、文字、ショートカットキーを入力したり、Officeアプリの操作に利用できる。ただ、見た目は新しいが、これまで慣れ親しんできたPC操作を置き換えるほどのものではないと思う。

ScreenPad 2.0をもっとも便利に感じたのはセカンドディスプレイとして使ったときだ。メインディスプレイに表示されているアプリのタイトルバーをつかんで少しドラッグすると、2つのアイコンが表示される。マウスカーソルを左のアイコンにドラッグすればアプリをScreenPad 2.0に全画面表示し、右のアイコンにドラッグすればScreenPad 2.0のホーム画面にアプリをピン留め可能。この操作は初回起動時にチュートリアルで解説されるので、すぐにマスターできるはずだ。

ただしScreenPad 2.0をセカンドディスプレイとして使うさいにはいくつかの制約がある。まず、ScreenPad 2.0にアプリやウィンドウを表示している間は、それらを直接タッチ操作できるが、メインディスプレイを操作するためのタッチパッドとしては機能しない。

また、タッチパッドとして利用するためには、ScreenPad 2.0を3本指でタップしてタッチパッドモードに移行するか、ScreenPad 2.0の画面下部をタップして「コントロールセンター」を表示し、一番左の「モード切替」アイコンからタッチパッドモードに切り替えなければならない。タッチパッドモードのオン/オフをスムーズに切り替えるのには慣れが必要だ。

さて、実際にScreenPad 2.0を使ってみて不便に感じたのが、タッチパッドモードを有効にしている間は、画面が暗転して操作できなくなること。マウスカーソル自体はScreenPad 2.0側に移動できるが、操作できるのはメインディスプレイ側だけだ。そのため、ScreenPad 2.0側のウィンドウにサムネイル表示されているファイルを、メインディスプレイ側にドラッグするような操作はできない。このような操作をしたいときには、タッチパッドモードは使わず、マウスなどのほかの入力デバイスを利用する必要がある。

もう1つ不便に思ったのが、ScreenPad 2.0の画面を暗転させずにタッチパッドモードを利用する手段がないこと。そのため、メールソフトやSNSのタイムラインを明るく表示したままで、単なるタッチパッドとしては使えない。ASUSによれば前世代のScreenPadよりもシンプル化したとのことだが、さまざまな使い方に対応できるようにカスタマイズ機能はむしろ充実させてほしかったところだ。

とは言え、マウスを用意しさえすれば、ScreenPad 2.0はセカンドディスプレイとして非常に快適。外づけディスプレイを接続せずに、すぐにデュアルディスプレイ環境を利用できるのは、通常のノートPCに対する大きな優位点だ。ScreenPad 2.0のみの操作にはまだ改善の余地があるが、ユーザーの声を吸い上げて、より便利な入出力デバイスに育て上げてほしいと思う。

フルスピードで入力できるのはテンキーなしのZenBook 14のキーボード

日本国内向けのZenBook 14/15のキーボードは日本語仕様のみ。テンキーなしのZenBook 14はキーピッチ19.05mm、キーストローク1.4mm、テンキーありのZenBook 15はキーピッチ18.75mm、キーストローク1.4mmのバックライト搭載キーボードが採用されている。どちらもわずかにキーボード面がたわむものの打鍵感は良好。打鍵音も低めに抑えられている。

どちらのキーボードを好ましく感じるかはユーザー次第だが、個人的にはキーピッチの差は気にならなかった。ただ、Enterキー、BackSpaceキーに密接してテンキーが配列されているZenBook 15のキーボードは少々狭苦しく感じた。筆者がフルスピードで文章を入力できるのは、間違いなくZenBook 14のキーボードだ。

ScreenPad 2.0はタッチパッドとしては全体が沈み込むダイビングボード構造を採用しているが、クリック感は良好だ。適度なクリック感を備えつつも、ストロークはそれほど深くないので、細やかなマウスカーソル操作もしやすい。総合すると、ZenBook 14/15のキーボード、タッチパッドは、ノートPCの入力デバイスとして上質な部類に入ると言える。

スペックを下回った色域、サウンドは14型ノートPCとしては上質

ZenBook 14には、14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、300cd/平方m、sRGBカバー率100%、光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)ディスプレイが採用されている。実際の色域をディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたところ、sRGBカバー率91.6%、Adobe RGBカバー率69.2%という値が出た。個人的に購入したZenBook 14でも計測してみたが、sRGBカバー率93.1%にとどまった。

ColorACにICCプロファイルを読み込むさいに「注意 : このICCプロファイルのLUT Blackにクリップ(値が飽和)の可能性が見られます」という警告メッセージが表示されたが、カタログスペックのsRGBカバー率100%とは差が開きすぎている。もちろん今回の試用機の液晶ディスプレイの個体差による可能性も考えられる。

一方サウンド面については、harman/kardon認証を謳うステレオスピーカー(1W×2)を底面左右に内蔵している。音響的には決して有利な場所とは言えないが、14型ノートPCの音としてはかなり健闘しているというのが率直な感想だ。リビングなどで離れた場所から聴くのには物足りないが、目の前に設置してミュージックビデオや映画を楽しむのなら、外づけスピーカーやヘッドフォンを用意する必要はなさそうだ。

3Dグラフィックス性能を含めればCore i7を搭載するXPS 13より高い性能を発揮

さて最後に性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2115」

3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.9.6631」

CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」

CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」

3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」

3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマ-ク」

3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 紅蓮のリベレ-タ- ベンチマ-ク」

3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」

ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.2」

「Adobe Lightroom Classic CC」で100枚のRAW画像を現像

「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分の4K動画を書き出し

バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」

バッテリベンチマーク「BBench」

比較対象としてはデルの「Core i7-8565U」搭載ノートPC「XPS 13」のスコアを掲載している。上位プロセッサを搭載するXPS 13に対して、下位CPU「Core i5-8265U」を搭載しているものの、外部グラフィックスとして「GeForce MX250」を採用している「ASUS ZenBook 14 UX434FL(UX434FL-A6002T)」が下剋上を果たせるかどうかという視点から、ベンチマークスコアを見ていきたい。

まずはCPU単体の処理性能だが、ZenBook 14が意外な健闘を見せた。CINEBENCH R15.0で、XPS 15の740cbに対して、ZenBook 14は約95%に相当する703cbと好スコアを記録した。Core i5-8265Uの性能を最大限に引き出していると言える。

そしてディスクリートGPUのGeForce MX250の効果は大きく、3DMarkでZenBook 14はXPS 13の133~241%のスコアを記録している。FINAL FANTASY XV BENCHMARKでも、XPS 13の1001に対して、約264%に相当する2644というスコアだ。3Dグラフィックス性能を含めれば、ZenBook 14は上位CPUを搭載するXPS 13より高い性能を発揮するわけだ。

一方、実アプリでは、Adobe Lightroom Classic CCでZenBook 14がXPS 13の1.64倍、Adobe Premiere Pro CCでは逆にXPS 13がZenBook 14の1.42倍ほど処理に時間がかかっている。処理時間が逆転しているのは、ディスクリートGPUへの最適化度合いが影響していると思われる。

バッテリ駆動時間は意外な結果となった。ZenBook 14が50Wh、XPS 13が51Whとほぼ同容量のバッテリを搭載しているが、ZenBook 14が7時間16分10秒、XPS 13が10時間7分10秒と3時間弱の差が開いた。ZenBook 14は、ディスクリートGPUとScreenPad 2.0を搭載していることが不利に働いた可能性がある。

最後に発熱をチェックしてみよう。室温25.2℃の部屋でCINEBENCH R20.060を3回実行したあとの表面温度は、キーボード面が最大40.6℃、底面が最大50.1℃となった。底面の吸気口付近がとくに表面温度が高くなっているので、膝上で長時間利用するさいには低温火傷を避けるためバッグや雑誌などをはさんだほうがよさそうだ。

新し物好きはもちろん、2画面作業環境を手軽に活用したい方にもってこい!

ScreenPadのみの使い勝手で比較するなら、もちろん14型のScreenPad Plusを搭載するZenBook Pro Duoのほうが上だ。しかし、スペックが高いぶん高価だし、バッテリ駆動時間やACアダプタのサイズ/重量を考慮すると、モバイル用途には不向き。その点、とくにZenBook 14は小型・軽量で、バッテリ駆動時間もモバイルノートPCとして実用的なレベルだ。

インターフェイスの仕様には正直不満はある。だが、2画面ディスプレイを搭載しつつ、実用性も兼ね備え、なによりも比較的手ごろな価格で入手できるZenBook 14は、新し物好きにはもちろんのこと、デュアルディスプレイ環境をすばやく&手軽に活用したいという方にもってこいの1台だ。