AMDプロセッサ初搭載、その実力は? 14型薄型ノートPC「ThinkPad T495s」を試す

レノボ(Lenovo)のPCと聞いて、「ThinkPad(シンクパッド)」を真っ先に思い浮かべる人も少なくないだろう。ThinkPadにはモバイル性を高めた「Xシリーズ」、パフォーマンスを重視した「Tシリーズ」、コストパフォーマンスに優れた「Lシリーズ」、スタンダードの「Eシリーズ」、そしてモバイルワークステーションの「Pシリーズ」と、用途や価格に応じた豊富なラインアップが用意されている。

昨今のThinkPadにおける注目モデルの1つに挙げられるのが「ThinkPad T495s」だろう。同時に発表された「ThinkPad T495」と並び、Tシリーズとしては初めてAMD製APU(GPUを統合したCPU)を搭載していることが特徴だ。

過去にもAPUを搭載するThinkPadは存在したが、どちらかというと価格重視のモデルでの採用にとどまっていた。しかし今回、APUは性能を重視するTシリーズで採用されている。古くからThinkPadを知っている人にとって、このことは非常に大きな驚きであるはずだ。

APUを搭載するパフォーマンスモデルはどのようなものか――2回に分けてThinkPad T495sを解剖していく。前編となる今回は、レビュー機の紹介と、T495sの主な特徴をチェックする。

今回レビューするのは「カスタマイズモデル」

ThinkPad Tシリーズにおいて「s」の付くモデルは、通常のモデルよりも薄型であることが特徴だ。ThinkPad T495sはIntel Coreプロセッサを搭載する「ThinkPad T490s」の兄弟機に相当する。

今回レビューするのは、直販サイトで購入できるカスタマイズ(CTO)モデルで、型番は「20QJ-CTO1WW」。型番だけではスペックを特定できないので、以下に主なスペックを記載する。

OS:Windows 10 Pro(64bit、日本語版)

APU:AMD Ryzen 7 PRO 3700U

メインメモリ:16GB(DDR4、オンボード)

SSD:512GB NVMe(OPAL対応)

ディスプレイ:14型フルHD(1920×1080ピクセル)IPS液晶

キーボード:日本語配列(バックライト付き)

指紋センサー:あり

Webカメラ:あり(赤外線カメラ付き)

無線LAN:Intel Wireless-AC 9260

有線LAN:あり(付属のドングル経由)

バッテリー:3セル

ACアダプター:65W(USB Power Delivery準拠)

CTOモデルでは、Ryzen 7 PRO 3700U(2.3G~4GHz、4コア8スレッド)や16GBのメインメモリなど、固定構成の販売代理店モデルよりも高性能な構成も選択できる。用途や好みに応じてOSのエディションと言語、キーボードの配列とバックライトの有無などを選択できる。

14型ノートPCなのに薄型軽量 セキュリティーにも配慮

T495sは、14型ディスプレイを備えたハイパフォーマンスモデルながら、持ち運びやすい薄型設計としている点が売りの1つだ。

ボディーサイズは約329(幅)×226.15(奥行き)×16.7(厚さ)mmで、一般的な13型ノートPCにも近い。重量は構成によって異なり、タッチなしの通常液晶構成とタッチパネル搭載構成が約1.33kgから、省電力液晶(※)構成が約1.26kgからと、14型ノートPCとしては比較的軽い印象を受けた。厚みもさほどではないため、カバンやブリーフケースからの出し入れもしやすい。

※ 通常より消費電力を抑えた液晶パネル

過酷な環境下でも作業できるよう、本体は耐久性を重視した設計となっている。200以上の品質チェックのテストをクリアし、さまざまな過酷な利用環境に耐えられるよう厳しい品質テストを繰り返しているという。落下テストや気温・気圧の変化、信号やディスプレイ部の開閉耐久性など、実際の使用状況に即したテストも実施している。

結果、米軍の物資調達基準である「MIL-STD-810G(MIL規格)」に定める試験のうち12項目にパスしている。客観的な基準で丈夫さが示されているのは安心だ。

セキュリティ面でも配慮した設計となっており、機密データを暗号化するTPMチップを搭載。指紋認証センサーや赤外線カメラと一体になったWebカメラを搭載すると、「Windows Hello」によるパスワードレスログインに対応する。

ディスプレイ上部には開閉式カメラカバー「ThinkShutter」も搭載している。

打ちやすいキーボードと充実のポート類

続いてキーボードについて見ていこう。

キーピッチは19mmで、いわゆる「フルサイズ」となっている。程よく深いストローク、タイピング時の跳ね返しの心地よさなど、文句のつけようがない出来だ。

キーボードバックライトを搭載した構成なら、航空機の中など暗い場所でもキーを確認できるので安心だ。バックライトのオン、オフは、キーボードのFnキーを押しながらスペースキーを押すと切り替えられる。

ポート類が充実していることも、T495sの魅力だ。

本体の左側面にはUSB 3.1 Type-C端子×2、ドッキングコネクター、USB 3.1 Type-A端子、HDMI出力端子とイヤフォンとマイクのコンボジャックを備える。右側面にはUSB 3.0 Type-A端子(Powered USB対応)とスマートカードスロット(オプション)を備えている。

USB 3.1 Type-C端子はUSB Power Delivery(USB PD)による電源入力とDisplayPort Alt Modeによる映像出力に対応している。本体に付属するACアダプターはUSB PD準拠で、標準で45W出力のものが付属する。CTOモデルの場合は、バッテリー充電速度を向上できる65W出力のACアダプターも選択可能だ。

2つあるUSB 3.1 Type-C端子のうち、右側のものはドッキングコネクターと一体化しており、「ThinkPad プロ ドッキングステーション」など、対応するドッキングステーションとの接続時に利用される。ドッキングコネクターはEthernet端子を兼ねており、「ThinkPad イーサネット拡張ケーブル 2」を用意すると本体内蔵のGigabit Ehternetチップを用いた有線LAN接続が可能となる。セキュリティポリシーの都合でUSB接続のEthernetアダプターを使えない場合に備えた機能だ。

なお、イーサネット拡張ケーブルは基本的には別売だが、CTOモデルでは付属品に含めることもできる。別途購入するより割安なので、有線LANを使う人はオプションで追加しておくことをお勧めする。

背面にはmicroSDメモリーカードスロットとnanoSIMカードスロット(WWAN対応構成のみ)を備えている。カードトレイはピン着脱式で、不用意に取り外されないようになっている。

CTOモデルでは、WWAN(LTEモデム)搭載オプションが用意されている。別途nanoSIMカードを用意する必要はあるが、本体さえあればどこでも通信できる利便性は何物にも代えがたい。

次回は、各種ベンチマークテストを通してThinkPad T495sの実力を見ていく。楽しみにしていてほしい。