Xperia Z Ultraもライバル! Galaxy Noteに挑んだ「ペン付きスマホ」を振り返る

「大画面+スタイラスペン」という特徴を持ったGalaxy Noteシリーズも、今年のモデルでは6.8型に「Galaxy Note10+」に、6.3型の「Galaxy Note10」が追加されるなど、製品バリエーションを広げています。しかし、他社を見ると、スタイラスペンを付属させたスマートフォンはほとんど見かけません。Galaxy Noteシリーズはディスプレーメーカーでもあるサムスン電子が積極的に大型ディスプレーの採用を進めたことと、ワコムの技術を採用した高精度なスタイラスペン「Sペン」の融合により市場で唯一成功したペン付きスマートフォンとなったのです。

しかし、過去を振り返るとGalaxy Noteシリーズには好敵手ともいえるライバルが存在しました。中には普通の鉛筆で手書きを実現したスマートフォンもあったのです。Galaxy Noteを乗り越えようとして敗れていった「ペン対応」スマートフォンともいえる5機種を振り返ってみましょう。

LGエレクトロニクス「Vu」シリーズ(2012~2013年)

2012年2月に登場したLGの「Optimus Vu」(Vu:)は、2011年9月に登場した初代Galaxy Noteの対抗として発表されました。Galaxy Noteばりに大型の5型ディスプレーを採用しましたが、アスペクト比は4:3と当時の「iPad」などのタブレットと同じ縦横比だったのです。このサイズは電子書籍を読むのにも適しており、コミックビュワーとしての利用も大きくアピールされました。

さらにはプレミアム感あふれる革調のカバーも用意され、装着すると高級デジタル文具のような外観になりました。しかし、スタイラスペンは静電容量方式の一般的なもので、本体には収納できなかったのです。同年9月発表の2世代目「Optimus Vu II」ではカバーにペンホルダーが付きましたが、収納時の横幅サイズは広がってしまいました。なお、日本では初代モデルが「Optimus Vu L-06D」としてドコモから発売。人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とのコラボモデル「L-06D JOJO」も登場しました。

2013年9月には「Vu 3」を発表。前年からあえてGalaxy Noteシリーズと発表時期をあわせたものの、4:3のアスペクト比のままディスプレーサイズを大型化しては、本体を片手で持ちにくくなってしまいます。Vu 3はディスプレーを5.2型へサイズアップしながら、本体の横幅はOptimus Vu 2と同じ85.6mmに抑えたものの、これが大人の手のひらで保持できる最大サイズでしょう。スタイラスペンもようやく本体内蔵式にしたものの、Vuシリーズはこのモデルで終わってしまいました。

その後、LGは細身のスタイラスペンを内蔵した「Stylus」シリーズをアメリカを中心に展開。ミッドレンジクラスの製品とし、「手軽にメモが書ける低価格スマホ」として人気を保っています。日本でも「LG Q Stylus」が発売中です。

ASUSFonepad Note 6(2013年)

ASUSは通話機能を搭載したタブレットとして「Fonepad」シリーズを展開していました。その中でもFonepad Note 6はスタイラスペンを内蔵した製品で、ペンによる手書き入力も可能。名前が示す通りディスプレーサイズは6型、そして「Note」の名はGalaxy Noteを意識したことは間違いないでしょう。

初代Galaxy Noteが市場の予想を裏切って好調だったサムスンは、2012年9月に後継モデル「Galaxy Note II」を発表します。ディスプレーサイズは5.3型から5.5型へと大型化し、スタイラスペンの感圧感度も256諧調から1024諧調へアップ。発表と同時に人気製品となります。ASUSにとってGalaxy Noteの成功は「大型スマートフォンが市場で受ける」ことの証明であり、「タブレットを小型サイズにすれば同類の製品で市場に参入できる」ことを気づかせたといってもいいでしょう。

Fonepad Note 6の本体サイズは88.8×164.8×10.3mm、重さは210g。Galaxy Note IIの80.5×151.1×9.4mm、重さ183gより一回り大型でしたが、フルHDの高解像度ディスプレーに手書きで文字やイラストを描ける快適さでは勝っていたかもしれません。しかし、当時のASUSのスマートフォン事業はタブレット型のドッキングステーションを利用できる「PadFone」が主力であり、スマートフォン市場ではまだ認知度は高くありませんでした。大ヒット作となる「ZenFone」シリーズが登場するのは、翌2014年だったのです。

アルカテルOneTouch Heroシリーズ(2013~2014年)

低中価格スマートフォンで販売数を伸ばしていたアルカテル(TCL)が、新しい展開としてリリースした製品が「Hero」。6型ディスプレーを搭載し、スタイラスペンを内蔵したスマートフォンでしたが、そのスマートフォン本体に様々なアタッチメントや周辺機器を接続することで、活用範囲を大きく広げる製品だったのです。

2013年9月発表の初代「Hero」にはフリップカバーを電子ペーパーにした製品や、クレードルにプロジェクターを内蔵したものなどが発売される予定でした。また、2014年9月に発表された「Hero 2」は、なんとノートPCスタイルの「キーボード+モニター」というドッキングステーションが登場。Hero/Hero 2そのものはペンで手書きしたり操作しつつ、様々な用途展開が図られたのです。

しかし、この手の製品の宿命とでもいうのか、アクセサリーを全部揃えるくらいならスマートフォンとは別にノートPCなどを買ったほうがいいんじゃないか? と思われてしまいました。合体式スマートフォンでもあったHeroシリーズは2機種で終わりとなってしまったのです。

ソニーモバイルXperia Z Ultra(2014年)

ソニーモバイルの大画面スマートフォン「Xperia Z Ultra」は今でも愛好者がいるほどユーザーに愛されている端末です。2014年6月発表時の6.4型という大きなディスプレーサイズは、前年9月に発表された「Galaxy Note 4」の5.7型をさらに超える特大サイズでした。このころになると、もはや大画面スマートフォンに対して否定的な声は一切聞かれなくなり、「ファブレット」という用語も定着しはじめました。

このXperia Z Ultraが、発売当初はGalaxy Noteシリーズを意識した製品だったことは今では誰も覚えていないでしょう。Xperia Z Ultraはスタイラスペンや市販の鉛筆を使って画面タッチや手書き操作が可能だったのです。机の上や引き出しには必ずあるだろう鉛筆が入力デバイスになるというのは面白い発想でした。

しかし、収縮式のスタイラスペンは使い勝手が悪く、鉛筆を普段持ち運ぶ人はすでに少なくなっており、実際に出先でXperia Z Ultraの画面に手書きするユーザーは多くなかったでしょう。Xperiaシリーズから定期的にペン対応製品が出ていれば、Galaxy Noteシリーズもよりエンタメ機能を強化するなど今とは変わった姿に進化していたかもしれませんね。