番外編--それでもWindows 7を使いたい!

7月まで、全てのタスクをクリアした読者の皆さんは、既にWindows 10の導入を進められていると思います。しかし、どうしてもWindows 10で動かないアプリがあるとか、対応していないデバイスがあるとかで、「Windows 7を使い続けたい!」という企業もあると思います。そこで、今週のお題は「番外編:それでもWindows 7を使いたい!」です。

まず申し上げておきますが、「セキュリティを諦める」は最もやってはいけないことです。2020年1月14日のWindows 7のサポート終了(以下、EOS:End of Support)以降は、Windows 7向けのセキュリティパッチが提供されません。そのため、そのまま使い続けるということは、それ以後に発生するセキュリティホールをそのままにして使い続けることになり、非常に危険です。しかし、そこを諦めて、とりあえずEOS後も使い続けちゃおうと「セキュリティを諦めている」ことを考えている企業が、私が相談を受けた企業にも少数ですがいらっしゃいました。

絶対にやめてください。改めて申し上げます。EOS後のWindows 7を使い続けてセキュリティリスクを放置することは、セキュリティ事故発生時に企業の信頼そのものを地におとしめるだけではなく、もしかすると他社へのサイバー攻撃の踏み台になり、訴訟問題に発展する可能性もあります。実際に攻撃者は、セキュリティレベルの高い大企業を攻撃する前に比較的セキュリティレベルの低い取引先の中小企業を攻撃して、そこから攻撃を仕掛ける手口を今もまだ使っています。

そもそも、今使っているWindows 7のPCは、もともとWindows 10プリインストールモデル(OEM OS)で、Windows 7ダウングレード権によってダウングレードして使っているものがほとんどだと思います。実は、このダウングレード権はWindows 7のEOSまでの期限付きの権利です。そのため、ダウングレードして使っているWindows 7のPCは、2020年1月以降に使い続ける場合は、明確なライセンス違反となります。セキュリティ事故を起こす前に、Microsoftから訴えられる可能性があるというわけです。

それでは、EOSまでにアプリの改修が間に合わない、デバイスが対応していないためにWindows 7を使い続けたいという企業はどうすればいいのでしょうか。実は、Windows 7を使い続ける“合法的”な方法があります。「Windows 7 Enhanced Security Update(ESU)」というアップデートプログラムを購入することで、EOS後もWindows 7のセキュリティパッチの提供を受けることができます。当初、日本で一般的なOEMのWindows(プリンストールされたWindows)には適用できないとアナウンスされましたが、実際には関係ないようです。(新しくWindows 7のライセンスを購入するという体で)価格は非公開ですが、大体2万円/台・年くらいと言われています。

ただしこれには落とし穴があります。年間契約ですが、次年度以降の2年目、3年目に値上げをするとMicrosoftは予告しています。スタート時で2万円ですから、3年も使うと6万円以上、8~9万円/台・年がかかる可能性も否めません。そうなると、もう1台PCが買えてしまうくらいのコストを負担することになります。これで生産性が上がるわけでもないので、かなりの無駄と言えるでしょう。

それでは、このESUをもっとお得に利用する方法はないのでしょうか。2つほど、紹介します。

1.Windows Virtual Desktop(WVD)

最もリーズナブルでお勧めの方法が、このWVDを利用することです。WVDは、Azure上のDesktop as a Service(VDIのクラウドサービス)です。WVDの仮想マシンでWindows 7を利用する場合、ESUが無償で提供されます。どうしても、Windows 7を利用しなければならない場合は、まずはこのWVDで動かすことを検討しましょう。

ただし、コストはAzureのリソースに対する従量課金がそのままかかります。これが結構高価です。デスクトップが10台とか、20台とかであれば何とかなると思いますが、100台、1000台となると大きなコストになります。そのため、全てのアプリをWVDで使用するのではなく、対応できないアプリのみをWVDで使用することをお勧めします。

ちなみに、Windows 10に対応できないアプリはごく一部で、常にメインで利用するものでないことが多いと思います。たった一部、あまり使わないアプリのせいでWindows 7を使い続けるのではなく、それ以外はWindows 10に移行してその一部のアプリのみをWVD上で利用するようにするわけです。データは基本的にOneDriveなどのクラウドストレージに保存するようにすれば、ローカルが分かれる異なるデスクトップ環境による混乱も最小限に抑えられるでしょう。ちなみに当社のデータレスPCソリューション「Flex Work Place Passage Drive」を利用すれば、ローカルのデスクトップやドキュメントなどを自動でOneDriveに移行し、特に意識することなく複数のデスクトップ環境を行き来することが可能です。

2.Microsoft 365 Enterprise E5

もう一つ、ESUを無償で利用できるケースがあります。先ほどのWVDは普通に報道されているのでご存知の方も多いと思いますが、実はこちらの方はあまり知られていません。Microsoft 365 Enterpriseの最上位クラスE5のユーザーは、ESUを無償で利用することができます。

ただしこれは、利用できるとは言え正直もったいないです。Windows 7では、Microsoft 365に含まれるあらゆるセキュリティ向上、ガバナンス向上、生産性向上のソリューションやツール群の半分も使えません。

いかがでしょうか。EOS後もWindows 7を利用することは可能ですが、やはりESUを単に購入すると高くつきます。お勧めは、WVDでの一部アプリの利用です。全部をWVDに利用するのは、賢明ではないでしょう。

繰り返しになりますが、Windows 7のEOS後に何もせずWindows 7を使い続けることはおやめください。セキュリティの問題もさることながら、ダウングレード権でWindows 7を使っている場合は明確なライセンス違反となりますので、ご注意ください。例えESUを購入しても、ダウングレード権は延長されません。別にライセンスを購入する必要があります。