“HDMI入力”つきでミニマルライフをとことん追求できる17.3型ノート「富士通 NH90/D2」

TVのないミニマルライフをとことん追求したい

筆者がおもに使うPCは、四半世紀前から変わらずデスクトップ型だ。机や床の上にそれなりの大きさのPCを置き、眼前にはディスプレイを設置して使う。しかもデスクトップPCは2台あるし、PC用ディスプレイとは別にTVもある。

しかし世のなかには、ノートPCしか持たないという人もいる。使うときだけ出せるので、デスクトップPCのように使わない時にまで場所を取らない。部屋の広さなり、インテリアの趣向なりで、デスクトップPCを使いたくない人がいるのは当然だ。

富士通クライアントコンピューティング株式会社(FCCL)が7月に発売した17.3型のノートPC「LIFEBOOK NH90/D2」は、“HDMI入力”を持つめずらしいマシンだ。通常のノートPCとしてだけでなく、ほかのHDMI出力を持つデバイスのディスプレイとしても使用できる。

最近だと、ネットがあるからTVは要らないという人もいると思うが、もし据え置き型のゲーム機で遊びたいと思ったら、どうしてもディスプレイは必要になる。だが本機ならそれも不要だ。持ち物は極限までシンプルに、ミニマルライフを好む人には注目に値する。

この「NH90/D2」を試用する機会が得られたので、注目のHDMI入力も含めて使用感をお伝えする。

17.3型の大型液晶でもワンサイズ小さな筐体

CPUは6コア/12スレッドのCore i7-9750Hで、デスクトップPCにも劣らないパワフルなもの。さらにストレージはPCI Express接続の256GB SSDと、1TB HDDのデュアルドライブ構成。BDXL対応のBDドライブも搭載する。GPUは非搭載ながら、ビジネスからホームユースまで幅広くカバーできるスペックだ。

本機で注目すべき点はほかにもある。ノートPCではかなり大きめの17.3型の液晶を搭載しながらも、本体サイズはかなり小さめにまとめられている。筆者の印象としては、15.6型のノートPCより、ほんの少し横幅が広いかなと思う程度で、奥行きはかなりコンパクトだ。

このサイズを実現するためのアプローチは2つある。1つは液晶の額縁をせまくしており、額縁の幅は横が8mm弱、上は約13mm(カメラも搭載)となっている。表示領域も額縁のギリギリまであるので、画面はかなり広々と感じる。

2つ目は落とし込みヒンジの採用。液晶部を開いたさい、液晶の下部が本体の下に落ち込むような設計になっており、奥行きを短くしている。同時に本体後部が少し浮くようなかたちになるため、キーボードがわずかに前傾してタイピングしやすくなる(好みはあると思うが……)。また放熱の点でも有利になると思われる。

重量は2.9kgと決して軽くないが、比較的コンパクトな本体サイズに加えて、端に丸みのある形状ながら、たわみをまったく感じさせない高い剛性もある。ちょっとした持ち運びのさいにも持ちやすく安心感のある筐体だ。

ほかにもUSB Type-Cを含む豊富なUSB端子に、IEEE 802.11ac対応の無線LAN、Windows Hello対応のWebカメラに、Blue LED採用のBluetooth接続マウスも標準で付属する。先述のHDMI入力を含め、これ1台でなにもかもやりたいという人のための機能がまとめられている。

6コアCPUとSSD・HDD両搭載で快適動作

続いて各種ベンチマークテストを試してみる。利用したのは、「PCMark 10 v2.0.2115」、「3DMark v2.9.6631」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」。

6コアのCPUを搭載するだけあって、十分な性能を発揮している。オフィスユースなどで困ることはまずないだろう。ディスクリートGPUを搭載していないため、3D性能はゲーム向けとは言えないものの、軽めのゲームならば遊べる程度の性能は有している。

バッテリ持続時間は、「PCMark 10」でアイドル時に3時間35分、オフィスユースで3時間6分となった。残り20%でスリープに入るという保守的な設定のため短めになったが、それでもこのサイズのノートPCとしては十分な持続時間で、打ち合わせに持ち出す程度なら問題なく使えるだろう。

ストレージは製造ロットによって異なる可能性があるが、お借りしたものについては、SSDがWestern Digital製の「PC SN520」、HDDは同じくWestern Digital製の「WD10SPZX」が使われていた。SSDはPCI Express 3.0 x2接続の製品のためハイエンドな製品にはおよばないものの、シーケンシャルリードで約1.7GB/sと十分高速な値になっている。HDDも2.5インチの製品としては標準的だ。

ノートPCとしては破格の“聴ける”スピーカーも魅力

次は実際の使用感を見ていきたい。本体色はシャンパンゴールドとブライトブラックの2色があり、今回お借りしたものはシャンパンゴールド。わずかに黄みがかったシルバーという印象で、天面デザインもロゴだけというシンプルなもの。デザインに派手さはなく、オフィスでも問題なく使える外見だ。

PCの起動はかなり高速で、電源ボタンを押してからデスクトップ画面が表示されるまでに実測で約15秒。終了も早いので、スリープにしておかなくても使いたいときにすぐ使える。

画面は光沢のあるタイプで、発色はとても鮮やか。視野角はきわめて広く、どの角度から見てもほとんど色変化が感じられない。光沢タイプながら低反射処理もうまくできており、照明が直接入るような角度にしないかぎりはほとんど気になることはない。17.3型の大型液晶を存分に活かせる性能だ。

キーボードにもFCCLならではのこだわりが見える。アイソレーションタイプのキーは、主要なものはすべて正方形で、キー配置も一般的。キートップにはわずかなくぼみがあり、指のおさまりがよく、がたつきのない深めのストロークとしっかりしたクリック感。普段デスクトップPCを使っているという人も、サイズ感、手触りの両面で違和感なく扱えるだろう。

タッチパッドは周囲の筐体とほぼ同じ高さにそろえられている。硬質な手触りで、指滑りも良好。ボタンはストロークはほとんどないが、こちらもしっかりしたクリック感があって押しやすい。

スピーカーはオンキヨーとの共同開発によるもの。実際に聞いてみると、やはりサイズ的な面から低音はほとんど出ていないが、高音ばかりが尖って聞こえるわけではなく、低音も出ないなりに全体のバランスを取って、全体としてそれっぽく聞かせようというチューニングが感じられる。「小さいスピーカーでとりあえず音を出した」というキンキンした高音ばかりが目立つノートPCのスピーカーが多いなか、本機は確かに音が違う。

音のバランスを聞き取るさいにはオーケストラの曲を流していて、大抵のノートPCでは「やっぱり低音は出ないよね」となって1分も聞かずに違う曲に変えてしまう。ところが本機で試すと、「低音が出ないなりにも、結構いい感じに聞ける」と感じて、なんとなく数分の曲を最後まで聞いてしまった。

ボーカル曲に変えると、人の声の部分がとくによく聞こえる。このバランスはノートPCではよくあるのだが、本機だとそこまで極端なバランスではなく、バックミュージックもちゃんと立っている。男性や女性の声、また激しい曲や静かな曲など、タイプを変えて何曲か流してみても、どれも嫌な感じがしない。

本格的なスピーカー環境と比較すれば落差は大きいのは確かなのだが、筆者の主観ながら「これで音楽を聴いてもギリギリ許せるかな」と思えるくらいの音になっている。ノートPCでこれだけの音が出せるものは、過去にもそうなかったと思う。

HDMI入力は遅延も少なくゲーム機の接続にも最適

気になるHDMI入力についても試してみた。HDMI入力を使うには、本体左側にあるHDMI入力端子にHDMIケーブルを接続する。隣にHDMI出力もあるので、「IN」と書かれているほうへの接続を確認する。

次にキーボードの上部にあるHDMIボタンを押す。これで入力待機状態となる。ただしHDMIボタンはPCが起動しているときにしか使用できず、電源オフ時やスリープ時には機能しない。つまり、PCを起動せずに単なるディスプレイとして使うことはできない。ここは少々残念だ。

ディスプレイとしての性能を見るため、「LCD Delay Checker」を使って筆者のディスプレイ(EIZO SX2462W)とクローン表示で比較してみた。筆者のディスプレイは高画質化処理のため、1~2フレーム程度の遅延があるのは把握している。撮影した写真を見てみると、筆者のディスプレイよりもおおむね1フレーム程度早く表示できているのが確認できた。これならディスプレイとしての性能も満足がいく。

次にPlayStation 4を接続してゲームを遊んでみた。HDMI接続すれば、画面はもちろん音も出る。音量は[Fn]キー+[F8]/[F9]キーで上げ下げできる。ちなみに画面の明るさも[Fn]キー+[F6]/[F7]で調整可能だ。

映像についてはPCとして使用するのと同じく、とてもクリアで色味がいい。光沢液晶だということもあり、液晶TVでプレイしている感じにとても近い。また音もかなり大きく出すことが可能で(筆者は10/100程度の音量でも十分だった)、サウンドの質も十分満足できる。とくに音にこだわるゲームでないかぎり、これで不満が出ることはほとんどないと思う。またバッテリが続く間は、ACアダプタを接続しなくてもディスプレイとして使えるという利点もある。

価格はWeb通販で、7月31日時点では5%オフクーポン込みで税込み235,774円。Web限定モデルの「WN1/D2」ではTVチューナーも選べるほか、CPUやメモリ、ストレージなどもカスタマイズできる。若干の納期は必要になるが、よりハイスペックな構成にもできるし、不要なものを削って価格を下げることもできる。

本機1台でPCとディスプレイがまかなえるのはもちろん、TVチューナーも搭載してしまえばTVも不要。音にこだわりたい人でなければ外部スピーカーも要らない。とにかく部屋をすっきりさせたい、使わないときにはさっと片付けてしまいたいという人には、これほど適したマシンはないだろう。PC単体として見たときの完成度も高く、あらゆる面で満足度の高い1台だ。