カジュアルに持ち運べる高コスパなクリエイティブノート「DAIV-NG4300シリーズ」

マウスコンピューターのDAIV-NG4300シリーズは、同社のクリエイター向けブランド「DAIV」から登場した軽量コンパクトなクリエイター向けの14型ノートPCだ。

同社の直販サイトではスペックの異なるベースモデルが4種類あり、それぞれBTOでさらにカスタマイズできるようになっている。今回はシリーズ中、上から2番目のモデル「DAIV-NG4300H1-M2S5」を評価機として試用することができたのでレビューしよう。

量販店の売れ筋ともゲーミングともひと味違う基本スペック

YouTubeやInstagram、Twitterが普及し、こうしたSNSにカジュアルに写真や動画を投稿して楽しめる状況がある。同時に、写真のRAW現像、動画の編集を行なって、よりクリエイティブに仕上げたいというニーズも盛り上がっている。

クリエイティブな作品を制作するには、プロの専門職のようなマシンは不要にしても、いわゆる「アイファイブハチギガ(Core i5でメモリ8GB)」のような一般量販店の売れ筋PCではやはりつらい。

ならばどんなPCを買えばよいのか? 本製品が狙うのはその層だろう。基本スペックを見ると、クアッドコアの第8世代CoreプロセッサーとGeForce MX250、sRGB約102%相当の色域に対応する液晶ディスプレイを搭載するなど、一般的なPCともゲーミングPCともひと味違う、クリエイティブ志向のスペックとなっている。

ミニマムなデザインの薄型軽量筐体

筐体の具体的なサイズは、320.2×214.5×17.5mm(幅×奥行き×高さ)。重量約1.13kgだ。クリエイター向けと言っても、ごく普通のモバイルノートPCと変わらない。素材にはマグネシウム合金を採用しており、剛性感も十分だ。

薄型軽量だが、バッテリ容量は約47Whと余裕のある容量を搭載。公称約14.7時間の駆動が可能だ。

クアッドコアのUプロセッサーならクリエイティブな用途でも通用

クリエイティブ向けのポイントを詳しく見ていこう。CPUはCore i7-8565Uを搭載。開発コードネーム「Whiskey Lake-U」こと新型の第8世代Coreプロセッサーの主力モデルで、現行多くのモバイルノートPCに採用されている。

TDP 15WのUシリーズのプロセッサーは、旧第8世代Coreプロセッサー(Kaby Lake R)からCPUコアが倍増、クアッドコアになってマルチスレッド性能がジャンプアップ。とくに4コア8スレッドのCore i7ならば、クリエイティブな用途でも十分使える性能になっている。

もっとも、近年のモバイル向けCPUの場合、同じCPUであっても筐体の放熱設計とメーカーの電力設定によって、実際に発揮できる性能はかなり違う。クリエイター向けというからにはそのあたりはキッチリ作り込まれていること期待したいが、それは後ほど検証しよう。

なお、HWiNFOで電力設定を見てみると、PL1は25W、PL2は51Wとなっていた。これはCore i7-8565U搭載機としては高い水準。放熱能力が十分あれば、かなり優秀な性能が発揮できるはずだ。

エントリークラスのMX250でもNVIDIA GPU搭載は大きい

外部GPUとしてGeForce MX250を搭載していることも、クリエイター向けとしては重要なポイントだ。Adobe製品などのクリエイティブツールの多くは、NVIDIAのCUDAやOpenCLによるGPUアクセラレーションが利用できる。

IntelのCPU内蔵GPUでもOpen CLは使えるが、グラフィックスメモリとしてメインメモリを共有することもあり、性能的には不利。NVIDIAのGPUはこれまでの実績があり、ドライバーの安定性などでもクリエイターからの信頼を得ている。

GeForce MX250はモバイル向けのエントリーモデルでさほど演算性能は高くないが、それでもNVIDIAの外部GPUを搭載しているという点は大きい。

16GBメモリ、高性能ストレージを採用

メモリ容量は標準で16GBを搭載する。カジュアルクリエイター向けとしては妥当な容量ではあるが、BTOでこれ以上増やせない点は残念だ。

SO-DIMMを1枚だけ利用したシングルチャンネルアクセス仕様である点も気になるが、独立したグラフィックスメモリを搭載するGeForce MX250を搭載しているだけにマイナスの影響は限定的だろう。薄型軽量モデルだけにある程度の妥協は仕方がないところか。

ちなみに、クリエイティブツールの推奨メモリ容量は、Adobe Photoshop CCが8GB、Lightroom CCが12GB。Premiere Pro CCはHDビデオで16GB、4Kビデオの場合は32GBとなっている。

ストレージは標準で512GBのPCI Express(NVMe)SSDを採用している。評価機ではWestern DigitalのPC SN520が搭載されていた。

このSSDに関しては、あまり詳細なスペックが公開されていないので、ベンチマークテストを実施してみた。PCI Express 3.0 x2接続なのでピーク性能はさほど高くないが、HDTune Proの結果を見ると疑似SLCバッファが切れたあとも750MB/sの書き込み性能を維持しており素性は良い。必ずこのSSDが搭載されるとはかぎらないが、BTOではより高速なSamsung PM981aを指定して選ぶこともできる。

USBポートは合計で4基搭載

なお、RAWデータや動画を扱っていれば、内蔵ストレージだけではいずれ足りなくなるので、データの置き場所としては、外付けSSDやNASなどを活用することになる。

USB Type-Cを含めてUSB 3.0(5Gbps)が3基、USB 2.0が1基とUSBポートには余裕がある。ただ、SDカードスロットは装備しておらず、SDカードのデータを読むには別途カードリーダが必要になる。

通信機能はGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 5.0を標準装備。ただ、無線LANの速度は433Mbpsと遅いので、NASなどを利用するならば、無線通信モジュールをBTOで選べるIntel Wireless-AC 9560に変更したほうがよいだろう。

キーボードのキーピッチは約18mm、キーストロークは約1.4mm。キーボードのレイアウトで右Altキーなどの省略はあるが、比較的クセのない配列だ。キートップが薄く、タッチ感は少々頼りない印象だが、頻繁に長文入力するような用途でなければ問題ないだろう。

sRGB102%相当の液晶ディスプレイを搭載

液晶ディスプレイのサイズは14型。スリムベゼルデザインのため、このクラスの筐体で一般的な13.3型よりもひとまわり大きな画面を搭載できている。表示解像度は1,920×1,080ドットに対応する。

クリエイター向けとしては、色域や色再現性も気にしたいところ。本製品はNTSC比72%、sRGB102%相当の色域を持つ液晶ディスプレイを搭載している。視野角と発色に優れたIPSパネル、映り込みしにくい非光沢仕様という点でクリエイター向けの水準を満たしている。

カラーモードが選択できるユーティリティが導入されているが、これがいまひとつ要領を得ない。制作用に適切だとわかるメニューがないし、カスタマイズもスライダーでの調整のみとクリエイター向けとしては少々残念な内容だ。

クラスを超えるきわめて優秀な総合性能

ベンチマークテストの結果を見よう。評価機のスペックは、CPUがCore i7-8565U、メモリが16GB、グラフィックス機能がGeForce MX250(2GB)、データストレージ512GB SSD(PCI Express 3.0x2/NVMe)、OSがWindows 10 Home(1903)という内容だ。

比較対象として、2018年発売のThinkPad T480s(アウトレット購入、筆者自身でメモリ増設とSSD換装)で計測したスコアも掲載する。

CINEBENCH R15の762cbというスコアは、Core i7-8565Uを搭載したノートPCとしてはトップクラスの水準。薄型軽量筐体でもCPUのポテンシャルはきっちり引き出していることがわかる。

そのほかの定番ベンチマークテストのスコアに関しても、1.13kgの薄型軽量筐体のPCとしては申し分ないスコアが出ている。GeForce MX250を搭載していることもあって、総合的な性能はきわめて優れている。

Lightroom Classic CC、Photoshop CCでもメリットを実感

クリエイター向けPCということで、写真管理/現像ソフトであるLightroom Classic CCでいくつか実践的なテストも行なってみた。

今回はリコーイメージングのGRIIIのRAWデータ(2,424万画素、DNG形式、現像パラメータ設定済み)を50枚を使用。カタログに読み込んで写真に埋め込まれているプレビューを取得するまでの時間、その後標準プレビュー(Lightroom Classic CCでのプレビューレンダリング)を作成するのにかかった時間、JPEGへの書き出し時間を計測してみた。どれも比較対象をはっきり上回る速さで、体感でもはっきりメリットが感じられる。

Photoshop CCでは、5枚のRAWデータ(リコーイメージングGRIII)をスマートオブジェクト(16bit)として読み込み、スマートシャープや虹彩ぼかしフィルタなど、GPUアクセラレーションが効くフィルタ6種類をかけて解像度変換をしてJPGE出力するバッチ処理を実行した。こちらも比較対象に比べて30%近い高速化が確認できた。

汎用PCからのステップアップに、テザー撮影用のサブ機にも

ベンチマークテストでは、一般的なビジネスPCと比べてもはっきりと違いを示し、クリエイターPCとして使える実力は十分に示した。スリムで軽量で使わない時には畳んでおけるため、あまりPCになじみがない方にも抵抗は少ない。価格も評価機の構成で税別149,800円からとリーズナブルだ。

メモリが16GBから増やせないため本格的な制作用途には物足りないものの、クリエイティブ用にはじめてPCを導入する方、汎用のPCからステップアップしたい方、とくに持ち運んでアクティブに楽しみたいという方には良い製品だろう。また、すでにメイン用にパワフルなPCを持っていて、外での作業やスタジオでのテザー撮影用などにサブ機が欲しいという方にも適している。