縦長は使いやすい! ソニーモバイルの原点回帰モデル「Xperia 1」レビュー

今回レビューするスマホは、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia 1」です。同社が自ら「1から生まれ変わった、ソニー渾身の新フラッグシップ」と謳うほど、人気の巻き返しを狙っている勝負モデル。ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアが取り扱っていますが、筆者はドコモから借りた「Xperia 1 SO-03L」を使ってみました。

意外と使いやすい21:9のシネマワイドディスプレー

Xperia 1の大きな特徴となっているのが縦に長い画面。約6.5型の有機ELディスプレーは、画面の縦横比が21:9で、解像度は3840×1644ドット。映画とほぼ同じ比率であることから「シネマワイドディスプレイ」と名付けられています。

第一印象では、使い勝手が不安になりそうな形状ですが、実際に手にしてみると、そんなに違和感はありません。横幅は約72mmに抑えられているので、片手で持ちやすく、電話に応答したり、メッセージをチェックして返信したりといった日常的な操作は片手でこなせます。むしろ、画面が縦に長いので、ウェブやSNSの閲覧には適しているように思えます。

動画は「YouTube」「Amazon プライム・ビデオ」「Google Playムービー」を試してみました。YouTubeは、そもそも21:9のコンテンツは少ないので、左右に黒い帯が入った状態で表示されます。しかし、ピンチでフルスクリーンに拡大できます。ただし、映像の上下が画面からはみ出して表示されなくなります。Amazon プライム・ビデオは、21:9のコンテンツは映像が欠けることなくフルスクリーンで表示。16:9のコンテンツも拡大表示に切り替えられます。Google Playムービーも同じように21:9のフルスクリーンで楽しめました。

また、解像度の低い動画を4Kにアップスケールする機能があるためか、映像配信サービスで主流のフルHD画質の映像も、他のスマホよりもキレイに表示されるように感じました。

インカメラを搭載する部分をノッチ(切り欠き)にして、本体上部のベゼルを細くする機種が増えていますが、Xperia 1は上下のベゼルはやや太めに残し、横向けで使う場合に、そこに指を当てても画面が隠れない趣向になっています。

Androidのスマホには、画面を2つに分割して、2つのアプリを同時に使う「マルチウィンドウ」という機能があります。しかし、それぞれの画面は小さくなるので、実用性が高い機能とはいえず、「使ったことがない」という人も多いのではないでしょうか?

Xperia 1では、縦画面の上に16:9の動画を表示させても、その下に標準的なスマホと同等の画面を表示させて、無理なく他の機能を使えます。横向きにした場合は、ほぼ正方形の画面を2つ並べられます。動画を見ながらウェブをチェックしたり、SNSをチェックしつつ地図を開くなど、マルチウィンドウを積極的に使いたくなること請け合いです。

トリプルカメラは超広角撮影と夜景撮影が楽しい!

背面には、Xperiaシリーズ初のトリプルカメラが搭載されています。3つのカメラは、上から標準(26mm/F値1.6/約1220万画素)、望遠(52mm/F値2.4/約1220万画素))、超広角(16mm/F値2.4/約1220万画素)という構成(焦点距離は35mmフィルム換算値)。

超広角撮影は、Galaxy S10/S10+、HUAWEI Mate 20 Pro/P30なども対応しており、今後、ハイエンドスマホには欠かせない機能になるかもしれません。Xperia 1の超広角レンズは、パース(歪み)が大きく目立つことが特徴。これを欠点と捉えることもできますが、逆に、パースを生かした面白い写真が撮れるとも言えます。

標準カメラにはF値1.6の明るいレンズを採用。ピクセルサイズが1.4μmのイメージセンサーを搭載し、暗い場所でもピントを合わせやすい「デュアルフォトダイオード」を採用しています。実際に撮影してみたところ、日中は明るく鮮やかなトーンで撮れる印象。夜景は、実際に見えるよりもコントラストを強調した、見栄えのよい写真に仕上がりました。

ソニーは映画撮影用のプロ向けのカメラも開発・製造していますが、そのチームが監修したというのが「Cinema Pro」。ユーザーが「Look」という撮影モードを選んで、映画のような趣きがある動画を撮影できる機能です。

これを試してみたところ、どこでも見かけるような風景でも、レトロっぽく撮れたり、やや冷たい雰囲気で撮れたりして、ただ動画を撮っているのではなく、作品を作っているような気分を味わえました。ですが、Lookを選択する以外に、画角やISO感度、ホワイトバランスなど、細かい設定が可能で、フォーカスも手動でコントロールできるようになっています。カメラの知識がある人には魅力的かもしれませんが、筆者はどのように設定すれば、どのように撮れるのかがわからず、使いこなせるようになるには時間を要するでしょう。

フロントカメラはF値2.0で約800万画素。シングルレンズですが、美顔補正ができて、背景をぼかせる「ポートレートセルフィー」という機能が付いています。

パフォーマンスは期待通りだが
改善を期待したいことも

CPUはSnapdragon 855(2.8GHz+1.7GHz/オクタコア)を搭載し、メモリーは6GB、内蔵ストレージは64GB。今夏に発売されたスマホの中では、トップクラスの仕様です。1週間ほど使ってみましたが、タッチ反応が遅くなったり、ゲーム中に画面が止まったりといったこともなく、快適に操作できました。

バッテリー容量は3200mAhで、標準的な使い方なら1日は持ちそうです。しかし、動画視聴やゲームに適している端末なので、存分に使い倒したい人はモバイルバッテリーを持ち歩くべきでしょう。

Xperia 1はソニーモバイルの今夏のフラッグシップで、なおかつドコモの夏モデルの中ででも注目度の高いモデルなので、おそらく「全部入り」だろうと思っていました。実際、防水・防塵、おサイフケータイ、ワンセグ・フルセグに対応しているのですが、残念ながらワイヤレス充電には対応していませんでした。

生体認証は指紋認証に対応し、右側面に指紋センサーを搭載しています。本体を右手で持った場合には、スムーズに親指を当てられるのですが、左手で持つ場合は、人差し指がやや当てにくいように感じました。次モデルでは、他メーカーが導入しているディスプレー内の指紋認証の採用を期待したいところ。個人的には顔認証も追加希望です。また、縦に長い画面なので、指紋センサーをなぞって、通知パネルを出せるような機能もあったら便利なのに……とも思いました。

【まとめ】高性能で使いやすい
Xperiaファンは買ってよし!

GalaxyやHUAWEIなど、グローバルで大きなシェアを持つメーカーに比べると、ここ数年、機能面で1周遅れている印象があったXperia。ですが、このXperia 1はトリプルカメラを搭載し、まだ他メーカーは採用していない21:9の4K HDR対応ディスプレーを搭載するなど、先進性が際立つモデルに仕上がっています。一見、ヘビーユーザー向けに思えますが、持ちやすく、ウェブやSNSが見やすく、カメラも簡単にキレイに撮れるなど、操作性は万人向けと言っていいでしょう。デザインの美しさも健在です。

XperiaのZシリーズを使っていたけど、最近は他メーカーに浮気をしていた人。約6.4型のXperia Z Ultraを愛用して、後継機を熱望していた人。そんな人には満足必至のモデルではないかと思います。筆者自身、Xperia Z5 Premium以来の「欲しい!」と思えるXperiaでした。