Ryzen PRO搭載でGPU性能が強い13.3型ノート「ThinkPad X395」

12型クラスの筐体に13.3型のパネルを搭載したX390のAMD版

レノボ・ジャパンは6月4日、Ryzen PROを搭載する13.3型「ThinkPad X395」を発表した。今回その販売代理店モデル(型番 : 20NL0002JP)を紹介する。

販売代理店モデルには、20NL0001JP、20NL0002JP、20NL0003JP、20NL0004JPと4種類の型番があり、メモリ8GB、ストレージSSD 256GBは共通で、プロセッサ、ディスプレイ、価格がおもな違いとなる。外観などの仕様はIntelプロセッサを搭載しているX390と同じだ。

順にプロセッサはRyzen 7 PRO 3700U、Ryzen 5 PRO 3500U、同、Ryzen 3 PRO 3300U。ディスプレイは1,366×768ドット/TN、1,920×1,080ドット/IPS、1,366×768ドット/TN、同。税別価格は219,000円、214,000円、204,000円、179,000円。AMDだからと言って安価ではない。

冒頭から苦言になるが、上位モデルがなぜ1,366×768ドットなのかと思うと同時に、10万円をはるかに超えるノートPCが未だにTNパネルというのは少々納得がいかない。昨今ローエンドのスマートフォンでもIPS式だ。ThinkPadに関しては昔からファンであるが、直販モデルも含めTNパネルがあるのはそろそろなんとかしてほしいところ。

手元に届いたのは販売代理店モデルで唯一フルHD/IPS式を搭載した20NL0002JP。おもな仕様は以下のとおり。

プロセッサはRyzen 5 PRO 3500U。4コア8スレッドでクロックは2.1GHzから最大3.7GHz。キャッシュは4MBでTDPは15W。モバイル用のRyzen PROとしては、Ryzen 7 PRO 3700U(4コア8スレッド/2.3~4GHz/Radeon Vega 10 Graphics)に次ぐSKUとなる。メモリはDDR4-2400 8GB(4GB×2、PCMark 10 System Informationで確認)、ストレージはSSD 256GB。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載する。

グラフィックスはプロセッサ内蔵のRadeon Vega 8 Graphics。ディスプレイは非光沢でIPS式の13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)。外部出力用にHDMIとUSB Type-Cを備えており、両方とも最大4,096×2,160ドットで出力できる。

ネットワーク機能はIEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0を搭載。有線LANに関しては別途付属の変換アダプタを使用して、独自のイーサネット拡張コネクター2に接続する必要がある。

Gigabit Ethernetコントローラも外付けならこの仕掛けも理解できるが、本体内蔵で結局コネクタ形状の違いだけ。RJ45コネクタが邪魔になるほど筐体が薄いわけでもない。外付けのドッキングステーションを考慮した上のことなのだろうが、これもHD解像度とTNパネル同様、昨今のThinkPadで個人的に直してほしいところだ。

そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C×2、USB 3.1×1(常時給電)、720p対応Webカメラ、microSDカードスロット、指紋センサー、音声入出力。

本体サイズ約311.9×217.2×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.28kg。6セルリチウムイオン(48Wh)を内蔵し最大駆動時間は約12.4時間。税別価格は241,000円。内容を考えると高価だ。

直販モデルで一番仕様が近い価格のものだと、Ryzen 5 PRO 3500U/8GB/SSD 256GB/Windows 10 Home/フルHD(IPS)で207,360円のものがあり、量販モデルとあまり変わらないが、直販サイトのクーポン適応後は105,754円(税込・送料無料)と、かなりの価格差となる。カスタマイズでは、メモリ16GB、OS英語版(10 Proは選択項目にない)、1TBまでのSSD、フルHDタッチ液晶などにも対応している。なお、仕様上はLTEにも対応しているようだが、執筆時、販売代理店モデルにもカスタマイズの選択項目には見当たらなかった。

パネル中央上に720p対応Webカメラ。ThinkShutter搭載

ロゴはThinkPadのみ。iのドットが赤く光る。少しわかりにくいが、背面側面にmicroSDカードスロット

左側面は、USB 3.1 Type-C(電源と共用)、USB 3.1 Type-C、イーサネット拡張コネクター2、USB 3.1、HDMI、音声入出力

右側面は、ロックポート、USB 3.1(常時給電)

テンキーなしのアイソレーションタイプでキーボードバックライト付き。タッチパッドとTrackPointを装備。右側に指紋センサー

実測で約19mm。[Enter]キー左側や[変換][無変換]のピッチが少しせまいものの破綻するほどでもない

手前左右のスリットにスピーカー。バッテリは内蔵式で着脱できない

スリムと言えばスリムだがRJ45を変換式にするほど薄くない

付属のACアダプタは45Wタイプ。サイズ約93×40×30mm、重量194g、出力20V/2.25A 15V/3A 9V/2A 5V/2A。Ethernet変換アダプタは本体にコントローラがあるため単にRJ45への変換となる

重量は実測で1,290g

上からThinkPad X201i、X395、T440s。順に12.5型、13.3型、14型

筐体の色はThinkPadらしいマットブラックで、重量は実測1,290gと、X200系から比べると軽くなっている。ThinkPad X201i、X395、T440sを重ねている写真からもわかるように、12型クラス相当と言っても実際は12.5型と14型のちょうど間に入りそうなサイズ感だ。どちらかと言えば、ThinkPad 13に雰囲気は近いかもしれない。天板にはLenovoの文字はなくThinkPadのロゴのみ。もちろんiの点の部分が赤く点灯/点滅する。

前面はパネル中央上に720p対応Webカメラ。ThinkShutterを搭載し、未使用時は目隠しできるようになっている。左側面はUSB 3.1 Type-C(電源と共用)、USB 3.1 Type-C、イーサネット拡張コネクター2、USB 3.1、HDMI、音声入出力。右側面はロックポート、USB 3.1(常時給電)。後ろ側面にはmicroSDカードスロットを配置。裏は4つのゴム足に加え、手前左右にスピーカー用のスリットがある。

付属のACアダプタは45Wタイプで、サイズ約93×40×30mm、重量194g、出力20V/2.25A 15V/3A 9V/2A 5V/2A。イーサネット拡張コネクター2をRJ45へ変換するケーブルも付属する。

13.3型のディスプレイは非光沢で長時間見ても目が疲れにくく、発色、コントラスト、視野角は良好。ただ最大輝度がこのクラスとしては低い。たとえば前面の物撮りのとき、多くは輝度を下げて撮影しないと、背景の白(グレー)をRGB230/230/230-245/245/245程度にしたとき、画面が露出オーバーしてしまうのだが、今回は最大輝度でちょうど良かった。

キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプ。トラックポイントもあり打鍵感なども含めThinkPadそのものだ。輝度が二段階のキーボードバックライトも搭載している。キーピッチは実測で約19mm。[Enter]キー左側や[変換]、[無変換]キーなど若干せまくなっているものの目くじら立てるほどでもない。タッチパッドはパームレストも含め結構面積があるため扱いやすい。

振動やノイズは試用した範囲で気にならなかったが問題は発熱。ベンチマークテストなど負荷をかけると右側がかなり熱くなる。当然パームレストまで熱も降りてきて、個人的には操作したくない熱さとなる。昨今のノートPCでこれだけ熱を出すのはゲーミング系以外では遭遇したことがなく、もう少しなんとかしてほしいところ。とは言え、製品のコンセプトからしてゲームで使用することはないだろうし、その多くはWebサイトの閲覧やOffice系アプリの操作になるだろうから、その場合は問題ないレベルにある。

サウンドはスピーカーが裏にあるので、机などに音が反射するタイプだ。もともとThinkPadの音は良くないが、結構改善されており、パワー不足気味とは言え、それなりに鳴るようになっている。

テストによってはIntel UHD Graphicsより数倍速いGPU性能

OSは64bit版のWindows 10 Pro。初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。LonovoグループのLenovo Vantageがプリインストールされている。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプル。

4コア8スレッドのRyzen 5 PRO 3500U、メモリ8GB、SSD 256GBなのでストレスなく快適に動作する。ハイパワーなデスクトップPCと持ち運び重視のノートPCと言ったように、複数台を用途に応じて持たずすべてを1台で済ませるならやはりこのクラスはほしいところ。

ストレージは「SAMSUNG MZNLN256HAJQ」。メーカーのデータシートによればM.2、SATA 6.0Gbps、Seq. Read 540 MB/s、Seq. Write 520 MB/s、Ran. Read 97K IOPS、Ran. Write 88K IOPSとある。C:ドライブのみの1パーティションで約237.23GBが割り当てられ空き215GB。

有線LANはRealtek製の「PCIe Gigabit Ethernet Family Controller」、Wi-Fi(AC 9260 160GHz)とBluetoothはIntel製だ。

おもなプリインストールのソフトウェアは同社おなじみ「Lenovo Vantage」のみ。ディスプレイやバッテリ、サウンドなどハードウェア系の設定、システム更新などまとめて行なえるので便利なツールだ。「アイケアモード」(ブルーライトカット)などもここに含まれている。

ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。参考までにパネルサイズは違うものの、Intelの対抗SKU搭載機として「ThinkPad T490s」(Core i5-8265U(4C/8T/1.6GHz-3.9GHz)/8GB/SSD 256GB)のスコアも掲載する。

Core i5-8265Uを搭載しているT490sとの比較を見ると、SSDの速度が大きく異なるため(X395のほうが遅い)、PCMark系はApp Start-upなどストレージの速度が影響しそうなスコアは劣るものの、全体的にはほぼ互角と見れる。3DMarkはSky Diverまでは数倍速く、Cloud Gate以降はほぼ互角。CINEBENCH R15はおうとつがありトータルだと互角だろうか。評判どおりの高性能プロセッサで、iGPUのRadeon Vega 8 Graphicsもなかなか良い。

バッテリ駆動時間は、キーボードバックライトオフ、ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能で残5%まで11時間50分51秒。12時間は越えなかったが13.3型クラスとしては悪くない性能だ。ただしバックライト最小では暗くて操作できないため、実際はもう少し短くなるだろう。

以上のようにLenovo「ThinkPad X395(20NL0002JP)」は、13.3型フルHD、Ryzen 5 PRO 3500U、メモリ8GB、ストレージSSD 256GBを搭載したThinkPad X390のAMDプロセッサ版だ。筐体やキーボードなどは変わらないThinkPad品質で安心感がある。

発熱や販売代理店モデルの価格が気になるものの、クーポンが配布されている直販モデルなら同クラスの製品を安く購入可能だ。昔ながらの12.5型は少し小さく、と言って14型のTシリーズは大き過ぎると思っているThinkPadファン、そしてAMDファンにおすすめしたい1台だ。