10.1型スマートディスプレイ「Lenovo Smart Display M10」を実機レビュー

レノボ・ジャパンは、「Googleアシスタント」を搭載した10.1型スマートディスプレイ「Lenovo Smart Display M10(以下M10)」を7月8日に発表、7月19日に発売した。価格は24,624円。

Googleアシスタントを搭載したスマートディスプレイは、Googleが7型「Google Nest Hub」、レノボ・ジャパンも4型「Lenovo Smart Clock」を販売しているが、M10は10.1型という大画面を搭載している点と、縦置きできるという点が差別化ポイントとなっている。

ただし先にお伝えしておくが、M10で縦置き利用できるのはビデオ通話のみ。ほかのアプリケーションで縦置きにしても、画面は回転しない。

今回レノボ・ジャパンよりM10の実機を借用したので、スペックや外観などをチェックした上で、M10が単体でできること、対応製品と組み合わせることで可能になることなどについてレビューしていこう。

スマートスピーカーの上位互換、情報・コンテンツを画面に表示

M10はGoogleアシスタントを搭載したスマートディスプレイだ。Google純正のスマートディスプレイであるGoogle Nest Hubとアプリケーション上の互換性を備えており、スマートスピーカー「Google Home」、「Google Home Mini」などの上位互換に位置づけられる。

プロセッサは「Qualcomm Snapdragon 624」(8コア、1.80GHz)を採用。メモリは2GB、ストレージは4GBを搭載している。

ディスプレイは10.1型HD IPS液晶(1,280×800ドット、視野角85度、Air Bonding)、スピーカーは2インチフルレンジスピーカー(10W)、デュアルパッシブラジエータ、マイクはデュアルマイクロフォン、カメラは前面に500万画素(720p)を搭載。通信機能はIEEE 802.11ac(2×2、MIMO)、Bluetooth 4.2を備えている。

ここまでのスペックはまるでタブレット端末のようだが、バッテリは内蔵しておらず、動作させるためにはACアダプタ(入力100~240V/1.4A、出力20V/1.5A)が必須。Android端末用アプリはインストールできないが、Googleアシスタント公式サイトで紹介されているサービスやアクションを利用できる。

正面から見るとタブレット端末的、スピーカーはモノラル

本体サイズは約311.37×12.5~136.02×173.87mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.2kg。スピーカーはモノラルで、向かって左側に2インチフルレンジスピーカー(10W)、デュアルパッシブラジエータが内蔵されている。スピーカー部や側面はホワイト、背面はバンブー調の配色が採用されており、インテリアに自然と馴染むデザインだ。

前面右上には500万画素(720p)カメラ、前面右には光/近接センサー、上面にはマイクミュートスイッチ、ボリュームボタン、デュアルマイクロフォン、本体右側面にはプライバシーシャッタースイッチ、本体背面には電源コネクタが配置されている。なお本体底面には「保守ツールカバー」が存在するが、ここは保守点検時にのみ使用する。マニュアルに「開くと恒久的に損傷する恐れがあります」と警告されているのでふれないほうが無難だ。

仕様上少々不思議なのが横置き、縦置き可能な筐体だ。ビデオ通話のみ縦置きで利用できるが、そのたびに約1.2kgのM10をわざわざ回転させて置き直す人がいるとは思えない。元々Googleのスマートディスプレイには縦置きモードが想定されていたのかとか、今後縦置きモードが実装されるのかと勘ぐってしまいたくなる。

プライバシー的には、M10にマイクミュートスイッチとプライバシーシャッタースイッチが用意されている点を評価したい。Google Nest Hubはそもそもカメラを搭載しないという極端な仕様を採用したが、M10も物理的にカメラをふさぐので安心感が高い。今後スマートディスプレイにカメラが搭載されるさいに、プライバシーカバーは標準装備になると思われる。

セットアップにはスマートフォンが必須

M10は単独ではセットアップできない。AndroidまたはiOS端末が必須となる。インストールは、M10をACアダプタに接続、スマートフォンに「Google Home」アプリをインストール、スマートフォンからM10をセットアップデバイスとして選択……という流れで進める。

この後さらに、デバイスの統計情報と障害レポートの送信許可、利用場所の選択、デバイス名の作成、Wi-Fiネットワークの指定、Voice Match有効化への同意、住所の入力、音楽サービスの追加、デフォルト音楽サービスの指定、動画サービスの追加……と細かな設定が続く。

正直、M10やGoogle Nest Hubの設定は、自力でスマートフォンやPCを設定できない方には困難。スマートディスプレイを使いたいと強く望みそうな層が、スムーズに設定できるように作られていないのはなんとも皮肉だ。両親などに贈呈すると非常に喜ばれるだろうが、宅配便でいきなり送りつけるのではなく、セットアップを済ませるところまで含めてプレゼントするべきだ。

M10が単体でできること、アクセサリと一緒にできること

M10(Google Nest Hub含む)でできることを大きく分類すると、音楽・動画プレーヤー、家電コントローラ、情報アシスタント、ビデオ通話などが挙げられる。

スマートディスプレイならではのヒキの強い機能はやはり動画プレーヤー。とくにYouTubeとの親和性は高く、検索キーワードさえ正しく入力すれば、つぎつぎに好みの動画を視聴できる。ただしYouTubeと「YouTube Music」の両方に同じタイトルのコンテンツがある場合、YouTube Musicが優先されるようだ。ミュージックビデオを観たい場合などは「<アーティスト名>の<曲名>の“動画”を再生して」などと、動画か音楽かを指定しよう。

ディスプレイ解像度が1,280×800ドットとPCやタブレットより低いことが心配な方がいるかもしれない。しかし今回試用しているときに解像度を物足りなく感じることはなかった。M10には元々小さな文字は表示されない。また画面を注視するときには、たいてい動画か写真が表示されている。コスパを考慮すれば、10.1型で1,280×800ドットという仕様は理に適った選択だ。

さてM10は、2インチフルレンジスピーカー(10W)、デュアルパッシブラジエータで構成されるモノラルスピーカー仕様だが、想像していたよりも伸びやかで、重厚感のあるサウンドを聴かせてくれる。もちろんステレオスピーカーのような広がりはないが、正面に座って聴かないのなら、個人的にはモノラルスピーカーでかまわないと思う。そしてもしさらに音にこだわるのであれば、オーディオシステムに接続すればいいだろう。

個人的には、スマートディスプレイとスマートスピーカーにおける本命機能が家電コントロール。現時点では赤外線リモコン対応機器は、まず「eRemote mini」などの「スマートリモコン」で機器を登録して、その後Google Homeアプリからも設定する必要があるが、一度セットアップを済ませてしまえばリモコンいらずの生活を送れるようになる。

しかし、スマートリモコンの設定はやはりハードルが高い。対応家電がもっと当たり前に発売されてほしいし、赤外線リモコンでコントロールする機器についても、もっと簡単なセットアップの仕組みが必要だと思う。

情報アシスタントとしてはまだ発展途上というのが率直な感想。たとえば「Lenovo Smart Displayについて教えて」と聞いても「すいません。よくわかりません」と返事する。いろんな固有名詞を試してみたが、どうもWikipediaに掲載されている場合にのみ結果を返しているようだ。

スケジュールの表示機能はそれなりに重宝するが、予定がたくさんあって1画面に収まらない場合でも、予定の読み上げと同時にスクロールされないのが不親切だ。また文字があまりにも大きすぎる。スケジュールの入力、管理はPCやスマートフォンで行なうので、予定を確認するための一覧性を高めてほしい。

M10は情報アシスタントとしてやれることは多いが、やれないことも意外に多く、その試行錯誤にちょっと疲れてしまう。急いでいるときは迷わずPCやスマートフォンを使って、余裕があるときにゲーム感覚で情報アシスタントとしての機能を探っていくというのが、現時点でストレスが少ない付き合い方なのかなと考えている。

同じく10.1型の「Nest Hub Max」の日本投入時期は未定

記事執筆時点でGoogle Nest Hubが通常価格15,120円、キャンペーン価格12,960円で販売されているが、M10はディスプレイが10.1型と大きく、ビデオ通話に必須の前面カメラが付属している。同じく10.1型ディスプレイを搭載し、前面カメラを搭載するGoogle純正スマートディスプレイ「Nest Hub Max」は、今夏に米国、英国、オーストラリアで発売される予定だが、日本での投入時期は未定だ。いますぐGoogleアシスタントを搭載した10.1型スマートディスプレイがほしいのなら、M10以外に選択肢はない。