話題の「Ryzen 5 3400G」と「DeskMini A300」でギャルゲー専用PCを組んだ

先日たまたま用事があってアスキー編集部を訪れたのですが、突然近づいてきた全ギ研(全日本ギャルゲー研究所)所長の南田さんから、「俺のギャルゲー専用PCを組むってバイトがあるんだけど、どう?」と挨拶代わりにワリと最低な仕事を持ち掛けられました。

即刻断ってやろうと思ったのですが、「組み立てる様子を記事化したら松野くんはお金が手に入る。自分はPCを組まなくてもギャルゲーがすぐに楽しめる。つまり、Win-Winな関係じゃない?」という極めてクレバーな提案があったため、二つ返事で引き受けてしまい現在に至ります。お金に目がくらむと駄目ですね。

南田さんが事前に用意していたのは、昨今世間を賑わせているAMD Ryzenの最新APU「Ryzen 5 3400G」と、今年初めごろから人気を集めているASRockの小型ベアボーンキット「DeskMini A300」という、流行りどころを的確に押さえたセットでした(編集部注:敏腕ライター松野さんの記事を見た日にポチりました)。

この組み合わせだと、設置スペースやコストを下げつつ中負荷程度のゲームが遊べるPCが完成するため、自室にPCの置き場がない、手ごろなセカンドPCが欲しいという人など、幅広い層のユーザーにおすすめできます。「PCはギャルゲー専用の動作環境」と盲信する南田さんにはやや過剰なスペックですが、魅力的なチョイスなわけですね。

オススメできるのは間違いないのですが、3000番台のAPUとDeskMini A300を使ったPC自作では、組み立て時に注意が必要な点がいくつかあります。以下にPCの構成や手順、気をつけるべきポイントを紹介していくので、同じようにDesk Miniでの自作にチャレンジする方の参考になれば幸いです。

用意したPCパーツ

①AMD「Ryzen 5 3400G」

7月7日に登場したばかりの第2世代Ryzen APUです。CPUおよび内蔵GPUの動作クロックが前世代から微増していて、性能的には第1世代Ryzen APUのマイナーチェンジ版に近い仕様と言えます。あらたに自動オーバークロック機能「Precision Boost Overdrive」に対応しつつ、従来より冷却を強化するためにソルダリングTIMの採用、同梱のCPUクーラーがTDP95Wまで対応の「Wraith Spire」に変更されるといった進化を果たしています。

②ASRcok「DeskMini A300」

著名マザーボードメーカーとして知られるASRockがリリースした小型PCのベアボーンキット。コンパクトな筐体を採用しながら、APUを組み合わせることでそこそこのゲーミング性能を実現できるのが大きな特徴です。余談ですが、ASRockの製品はそのユニークなコンセプトから“変態”の二つ名で呼ばれることも多いため、ナチュラルボーン変態の南田さんにはぴったりだと思います。

オプションのWi-FiキットやVESAマウントキットによる拡張性や取り回しの良さも魅力のひとつ。それほどのスペックを求めないのであれば、これ1台で満足という人も多いでしょう。

注意しなければいけないのが、本体のBIOSバージョンです。DeskMini A300で「Ryzen 5 3400G」を使用するためにはBIOSバージョンを「P3.50」以降に更新する必要があり、現時点では若干導入のハードルが高くなっています。現在販売されている製品は最新BIOSが適用されていないようなので、第1世代APUを所持している人は一度旧APUでVGAドライバーとBIOSの更新をかけてから、旧APUを持っていない人は購入時にBIOS更新を代行してくれる店舗を利用するなどして対応しましょう。

③Kingston「HyperX HX429S17IBK2/32」

ノートPCや小型PCで用いられるSODIMMタイプのDDR4メモリーです。DDR4-2933対応で、容量は16GB×2と大きめ。これだけ容量があれば、一般的な用途で困ることは基本的にないと思います。DeskMini用のメモリーを購入するときは、必ずSODIMMタイプの製品を購入するようにしましょう。

④ウエスタンデジタル「WD Blue SN500 WDS500G1B0C」

容量500GBのM.2 NVMe SSDです。DeskMini A300には基板の表と裏それぞれに1つずつ、計2つのM.2スロットが用意されており、この手の高速SSDも問題なく利用できるようになっています。今回の組み立てではストレージを2つ用意していますが、こちらをシステムドライブとして運用します。

④ウエスタンデジタル「WD Blue WD20SPZX」

データ保存用のドライブとして運用する2TBのHDDです。DeskMini A300には2.5インチ用のシャドウベイも2つあるため、計4つのストレージを運用できることになります。小型ながら、拡張性が高いのはうれしいポイントです。大量にゲームを保存しておくのであれば、最低でもこのぐらいの容量は欲しいところですね(編集部注:先日のPrime Now祭りでシーゲイト「ST2000LM015」(2.5インチ、2TB)が4429円だったので発作的に購入。RAID運用します)。

組み立て手順を解説

ここからは、実際にDeskMini A300の組み立て手順を紹介していきます。VGAドライバーやBIOS更新を自宅でする場合、まずは前世代のCPUを組み込む必要がありますが、CPUの付け替え自体はそれほど難しくありません。組み立て自体も、慣れている人なら15分前後、初めて触るという人でも1時間あれば終わると思います。DeskMiniにはイラスト付きのマニュアルも付属するため、困ったら確認するといいでしょう。

①DeskMini A300背面のネジを外し、内部にアクセス

まずは背面4隅のネジを外し、マザーボードが装着されたトレイを引き出します。ケースと繋がっているコネクターはいったん外してしまいましょう

取り出したトレイ。このままでも作業はできますが、2.5インチベイを使う場合はさらに四隅のネジを外し、マザーボードだけの状態にしたほうが作業性はいいと思います

②CPUをソケットに装着

マザーボード中央部分のCPUソケット。ここにRyzen 5 3400Gを装着します。実際に筆者が組み立てる際は、まずBIOSとドライバー更新をするため旧世代の「Ryzen 5 2400G」を装着して組みました。装着方法自体はどちらも一緒です

ソケット横のバーを持ち上げてから、向きに注意しつつCPUを装着。最後にバーを下ろして装着完了です。

CPUの取り付け方向にはくれぐれも注意してください

③CPUクーラーを装着

オプションのCPUクーラーを装着します。CPUソケット横の固定器具にあるツメにフックをひっかけ、最後にレバーを下げて固定

CPUファンのコネクターはマザーボード左下にあるので、ついでに挿しておきましょう

ちなみに、Ryzen 5 3400G付属の「Wraith Spire」を装着しようとするとこうなります。絶対入りません。冷却力を高めたい場合、別売の対応クーラーを購入するといいでしょう

④メモリーの装着

メモリースロットはマザーボードの下部に配置されています。スロットの両サイドにラッチがあるため、すべて起こしておきましょう

メモリーを正しい向きでスロットに挿しこみます。しっかり挿されば自動的にラッチが下りるので、きちんと奥まで挿しこみましょう

⑤Wi-Fiキットの装着

Wi-FiキットとSSDを装着するためのM.2スロットは、CPUクーラー右側にあります。両スロットが上下に重なっているため、Wi-Fiキットを利用する場合はSSDより先に装着する必要があります

モジュールをスロットの奥まで挿しこんでネジ止め

モジュールにアンテナケーブルを装着するのを忘れずに。最終的にアンテナはPCケースの外に出すため、ケーブルの取り回しには要注意です

⑥M.2 SSDの装着

Wi-Fiキットの上のスロットにSSDを装着し、ネジ止めします。もう1枚SSDを装着する場合は、マザーボードの裏にスロットがあるのでそちらを使いましょう

⑦2.5インチHDDの装着

2.5インチベイは、マザーボードが装着されていたトレイの裏側に2つあります。片方はネジ2点止め、もう片方はネジ4点止めです

今回は簡単な2点止めの方を使いました。HDD側面のネジ穴をトレイの爪に差し込み、もう片側をネジ止めします。これで固定完了です

固定後。HDDに付属のコネクターを装着します。これをマザーボード背面の端子に接続すればOK

⑧アンテナの装着

マザーボードを再びトレイにネジ止め。だいぶ完成が近づいてきました。ここで、バックパネルにアンテナのコネクターを通します

バックパネル上部にコネクターを出すための穴が用意されているのですが、プレートでふさがれているため、これを取り除きます。ペンチなどがあると楽です。取り除いたら、コネクター外へ出します

同梱のナットを装着して固定したら、アンテナを装着

⑨トレイをPCケースに戻してネジ止め

最後にトレイをPCケースに戻します。バックパネルから端子がしっかり見えているか、ずれていないかを確認しておきましょう

トレイをケースに戻して、ネジ止めします。ケース側のコネクタを元に戻すのも忘れずに

⑩完成!

これで完成です。手順さえ理解していればすんなり組み立てられるのは初心者にも嬉しいポイントです

正面には電源ボタンやインターフェース類が配置されています

側面にはオプションでUSBポートを2つ追加可能です

Ryzen 5 3400Gを使う場合、先にVGAドライバーとBIOS更新が必要

あとは購入したOSを入れれば完成なのですが、先に述べた通り、DeskMini A300で「Ryzen 5 3400G」を使用するためには、あらかじめVGAドライバーを更新した上でBIOSバージョンを「P3.50」以降に更新する必要があります。購入時に店舗でBIOS更新を頼んでいるような場合はいいものの、今回は筆者が自分でBIOS更新を行なったため、その手順も解説しておきます。参考にしていただければ幸いです。

まずは起動してみます。一般的なタワー型PCの横に置くと小ささがよく分かりますね

「Ryzen 5 2400G」で起動に成功した際のUEFI画面です。BIOSバージョンは「P3.40」なので、このままでは第2世代APUが使用できません

とりあえずOSをインストールしたら、先にVGAドライバーの更新を行います。ドライバー類は公式サイトからダウンロードできるため、必要なものはこの時点でインストールしてしまうほうがいいでしょう

ドライバをインストールし、最新のバージョンにしました

次にBIOSの更新です。公式サイトから「P3.50」をダウンロードし、展開してUSBデバイスにコピーします。一度PCの電源を切り、UEFI画面から「ツール」タブに進むことで「UEFI Update Utility」を利用できるので、「Install Flash」をクリック。「3.50」が選択されていることを確認できたら、「Update」をクリックしてBIOSを更新します。この間、絶対に本体の電源を切ったりしないよう気をつけて下さい。失敗すると、最悪の場合そのまま修理コース直行です。椅子の上で微動だにせず、成功を祈りましょう

こちらが更新後の画面。無事にバージョン「P3.50」がインストールされていることが分かります

ここでCPUを「Ryzen 5 3400G」に入れ替え。グリスは一度拭き取り、Thermal Grizzlyの「Kryonaut」を塗布しました。サービスです

CPU入れ替え後。無事に認識されているようで一安心です

普段使いや軽めのPCゲームであれば難なく動作!

実際に使ってみると、「Ryzen 5 3400G」の動作はなかなか快適です。GPUばかりが注目されがちですが、数年前までならハイエンド扱いだった4コア/8スレッド構成のCPUですし、インターネットの閲覧やOfficeスイートの使用、動画閲覧や多少の画像・動画編集など、一般的な用途なら困ることはほとんどないでしょう。

CPU-Zで取得したCPUとマザーボードの情報

ストレージやWi-Fiモジュールもしっかり認識されていました

ゲーム関係の性能検証はこちらの記事でも実施していますが、いかんせん用途が用途なので、念のため筆者のSteamのライブラリに入っていたギャルゲーっぽいゲームも起動してみました。結果、「Sakura Spirit」のようなビジュアルノベル系ゲームは当然何の問題もなく動作しますし、3Dで画面を描画する「閃乱カグラ ESTIVAL VERSUS -少女達の選択-」でも、おおむね40~50fps程度のフレームレートは出せていました。実売2万円前後のGPU内蔵CPUでこれだけプレイできるのであれば、満足度はかなり高いのではないかと思います。

ビジュアルノベルは当然快適ですし、3D系のゲームもある程度は動いてくれます

南田さんのような極めてニッチな用途に限らず幅広いユーザーにおすすめできる組み合わせなので、気になっている方は試してみてはいかがでしょうか。