“10倍ハイブリッドズーム”の定義にもやもやするが、超広角と望遠の撮影が楽しい「Reno 10x Zoom」

とうとう出た、10倍ハイブリッドズームカメラを搭載したOPPOのスマートフォン「Reno 10x Zoom」(リノ10倍ズーム)。10倍ハイブリッドズームとは何か、どのくらい実用的なのか。そもそも何で「ハイブリッドズーム」なのか。

ちょっとややこしいので、とにかくそこをチェックしたい。

Reno 10x Zoomは10倍なのかそうじゃないのか

背面を覆うガラスの中にカメラがあるデザインはいいけど、そのガラスによる光学的な影響が気になるところ。丸いポッチはカメラとは関係ないので気にしない

カメラは3連。端から順に、メインカメラ、超広角カメラ、望遠カメラとなっている。以下の発表会での図が分かりやすいのでそのまま引用したい。

超広角、メイン、望遠の3つ並んでいるのは珍しくないが、望遠カメラがちゃんと望遠である

望遠カメラだけ四角いのは、特殊な構造のレンズを使っているからだ。レンズは望遠になればなるほど奥行きが必要になるけど、かといってスマートフォンから出っ張らせるのはよくない。

そこで、プリズムを入れて光を直角に曲げ、横向きにレンズを入れているのだ。これをカメラの世界では「屈曲光学系」と呼んでいる。最初に採用したのがミノルタ(当時)の「Dimage X」だ(2002年発売)。

最近、スマートフォンの世界では「ペリスコープ型」と呼ぶことが多いが、ペリスコープ、つまり潜望鏡は2回プリズムで光軸を90度曲げているわけで、潜望鏡と言うにはちょっとアレかなと思うけど、屈曲光学系よりは潜望鏡の方が分かりやすいといえば分かりやすい。

望遠カメラだけ、プリズムを入れて横向きに入っているのが特徴。これで光学式手ブレ補正も搭載しているのがすごい

横向きにレンズを入れることで奥行きを確保しているのだ。ではこの3つのカメラを具体的な数値で見よう。分かりやすいように表にしてみた。焦点距離は35mm判換算でのものだ。

こんな感じで、超広角から望遠までまかなってくれる万能カメラなのである。細かいややこしい話は不要、という方はこの項は読み飛ばしてOK。「ん?」と思った人は次をどうぞ。

16mm相当、26mm相当、130mm相当の3つのカメラを持っていて、16~130mm……えっと、10x Zoomって名前が付いているけど「光学10倍」にはなってなくない?

そうなのである。メインカメラを「1x」と考えると、超広角カメラは約「0.6x」、望遠カメラは「5x」となる。超広角カメラを「1x」と考えれば、望遠カメラは約「9x」だ。10倍にちょっと足りない。

どうなっているんだ? そんなもやもやを抱えつつ使ってみよう。

例によって、ガスタンクで撮ってみる。他のスマートフォンと同様にカメラアプリの「1x」や「2x」と書いてあるところをタップすると、ステップズーム的に「倍率が順繰りに切り替わっていく」方式だ。その途中を使いたいときは、倍率表示部を左右どちらかにドラッグする。

でもまあ普通は、タップして切り替えるよね。その方が楽だし。

カメラアプリ。倍率が書いてあるところをタップすると、ズーム倍率が切り替わっていく

すると、「1x」→「2x」→「6x」→「10x」と変化するのだ。そのあとで「超広角」(アイコンで表示される)になる。5段階あるのである。

「1x」は分かる。26mm相当のメインカメラである。4800万画素という高画素のセンサーだが、そこから1200万画素相当の画像を作り出す。

さすがに、4800万画素から1200万画素を作っているだけあって写りはよし。ディテールもしっかりしている

「2x」も分かる。望遠カメラがメインカメラに対して「5x」のズームだけど、他社の望遠カメラ(iPhone X系やGalaxy S10やXperia 1など)と同じ52mm相当の画角は、やはり抑えておきたいよねってことで、メインカメラのデジタル2倍ズームを「2x」として入れたのはよい。

画素数に余裕があるので、「2x」くらいのデジタルズームならびくともしないし。

「2x」で撮った52mm相当のガスタンク。もうちょっとシャープにしてもよかったかなとは思う

問題は次。望遠カメラはメインカメラに対して「5x」の望遠なのだから次は「5x」かと思いきや、「6x」になるのだ。

なぜメインカメラから望遠カメラに切り替わる「5x」ではなく(手動でズーミングすると、ちゃんと「5x」から望遠カメラに切り替わるのが分かる)、それよりちょっと望遠の「6x」になるのか。

発表会で突っ込んでみたところ、「超広角レンズが『0.6x』なので、ちょうど10倍ズームになる『6x』にした」という答えでした。

確かに、超広角レンズを「1x」と考えると、ちょうどそこで「10x Zoom」になるのだ。なるほど。「10xズーム」にしたかったのだ。

考えてみたら、タップしてズームするときの倍率が「カメラが光学的に切り替わるタイミングと同一じゃなきゃいけない」なんてルールはないし。

で、望遠カメラは画素数が1300万画素ある。出力する画素数は1200万画素なのでちょっと余裕がある。画素数に余裕があるので「6x」までは十分なクオリティーだといいたいのだろう。超広角レンズを基準にすれば「10倍ズーム」になるので製品名的にもOKというわけだ。

「6x」で撮ったガスタンク。等倍でガン見すると「ちょっと盛っている」感はあるけど、普段使いなら十分いける

その先の「10x」はおまけかな。260mm相当の望遠だ。ここまで望遠にするとけっこうデジタルズームっぽい絵になる。

さらにタップすると「10x」に

さすがにここまで上げるとディテールがもやっとしてくるし、あまり望遠にすると撮りづらくなるので、まあ普段は「6x」までかな

この先、指でスライドさせると最大で「60x」までいけるが、そこまで無理することもないだろう。絵的にはちょっとアレだし。

こんな感じでぐんぐん望遠になる。撮りたいものをちゃんと構図におさめるのが大変になるので、あまり使わないかなと

さて、超広角カメラを使うには、さらにもう1回タップしなきゃいけない。超広角で撮るたびにそれではやってらんないから……というわけか、超広角カメラに切り替えるときだけは専用のアイコンが用意されている。覚えておくと瞬時に超広角に切り替わるので便利。

超広角カメラは800万画素なので、このときはちょっと画素数が落ちる。あんまり気にならないけど。

画面左の超広角アイコンをタップすると、瞬時に切り替わるのがうれしい

画素数が800万画素に落ちるけど、超広角を撮れるのは楽しいし便利

個人的には素直に「1x→2x→5x→10x」としてほしかったけど、日常のスナップ的な撮影に「1xと2x」、望遠撮るときに「6xと10x」、というメリハリがあるかなという気もする。

もやもやするところもあるけど、光学的な切り替わりを意識して使う、なんて発想の方が古いのかもしれない。

基本オンにしておきたい「幻惑色」

このReno 10x Zoomのカメラアプリ、なかなかユニークである。

10倍ズームの次はこれに注目。「幻惑色をオンにする」って何だ?

カメラアプリの簡単の解説をしてみた。気になる「幻惑色」!

英語だと「Dazzle」。ダズルだと意味がよく分からない(まぶしくて目がくらむ的な感じ)し、幻惑色の方が面白いけど、残念ながらそこまで幻惑してくれるわけじゃない。

むしろ、常時オンにしていいんじゃないかというくらい、ちょっと彩度が高めでコッテリして見栄えのする写真を撮れる。

撮り比べ。オンの方が鮮やかで、きりっとしていて見栄えがするでしょ。

幻惑色オフ

幻惑色オン

これ、晴れていたらもっと差が出たんじゃないかと思う。その辺は天候の加減もあるので申し訳ない。まあ今回の作例はガスタンクと人物以外、幻惑色をオンにしたものがメインのはず。基本、オンにしちゃってよいかと思う。

なお、製品発売時、あるいはどこかの段階のファームアップで「幻惑色」が他の文言になる可能性はあると思うので、ご容赦を。

幻惑色の上にあるフィルターアイコンは、デジタルフィルター機能。それもちょっとレトロ気味のフィルターが多い。

アナログフィルムっぽい渋めのフィルターを用意してくれている

人を撮る インカメラもさすがのデキ

横向きで構えたとき、ロゴが正立するデザイン

ではあれこれ撮ってみよう。まずは人から。人を見つけると「縦位置」になる……え?

人物を認識して「縦位置」と表示された

これはありがちな誤訳。Portraitは「縦位置」という意味に使われることもあるけど(ちなみに横位置は「landscape」)、この場合は「人物」とするのが正しいわけで(単に「ポートレート」と片仮名にするだけでもいいし)、製品発売時には直っていることを期待。

で、「1x」と「6x」でどうぞ。美肌はオンにしてあります(右下の顔アイコンが黄色くなっている)。

「1x」で撮影

「6x」で撮影すると同じ位置でも顔のアップになる

同じ距離で撮っているけど、「6x」あると「望遠ポートレート」って感じがするよねえ。「1x」だとちょっと広角感が出るので、日常のスナップなら「2x」くらいがよいかと思う。

続いて「ポートレート」モード(こっちはさすがに「縦位置」にはなっていない)。ちなみに言語を英語にすると、どっちも「Portrait」、中文にするとどっちも「人像」。なぜ日本語だけが「縦位置」と「ポートレート」なのかは謎です。

人物以外をぼかすことができるポートレートモード

ポートレートモードで撮影してみた。いい感じに人物以外はぼけてくれた。この辺はさすが

続いて自撮り。前面は完全にモニターオンリーでカメラはなし。必要なときだけ自動的にせりあがってくる「ピボットライジング構造」のリトラクタブルカメラだ。おかげで画面にノッチがないのである。

同社の「Find X」はインカメラもアウトカメラもまとめてせり上がり式だったが、今回はインカメラとアウト側のLEDライトだけが飛び出る仕組み。

だから、インカメラでの撮影時、フォトライトを使った撮影時、顔認証を使うときのみ、うにっと出てくる。Find Xのときは「ムチャしおったなあ」と思ったけど、こっちの方が可動部分は最小限でいいと思う。ギミックとしても面白いし。このアイデアは続けてほしい。

インカメラに切り替えた途端に、すっとカメラが出てくる

前と後ろからその様子をどうぞ。

リア側を見ると、フォトライトが出てくるのが分かる

フロント側。この写真だと分かりにくいけど、インカメラが飛び出ているのだ

自撮りのときは、より細かく顔の調整が可能だ。

美肌、ほっそり顔、小顔、顎の5つのパラメーターを調整できる

いやあさすがOPPOですな。ちゃんと設定するといい感じに調整してくれる。

ポートレートモードにして背景をボカしつつ、彼女の好みのセッティングで撮ってもらった

超広角と望遠がめちゃ楽しくて便利

特徴的な機能を解説したりツッコんだりしたところで、ざくっといろんなシーンで撮ってみよう。

ポイントは「超広角」めちゃ楽しい。「6xの望遠」めちゃ便利の2つかな。何より、ボタン2つで超広角になることとゆがみがほとんどないこと。これを幻惑色オンで撮ると、けっこう風景によい。

今回は晴れた日に恵まれなかったので、鮮やかなカットが少なくて申し訳ないけど。

高層ビル群は超広角っぷりが分かりやすい。ちゃんとゆがみ補正がされていて周辺部も真っすぐになった

雨交じりの天候だったけど、幻惑色オンのおかげでしっとりしつつ色もちゃんと出ていてよい

こちらは室内での撮影。HDRが自動的に掛かってよい感じに

やっぱいいですねえ超広角。これからのスマホに超広角レンズは欠かせません。

続いてメインカメラ編。AIが働いて「食べ物」。幻惑色はオンにして撮った。

取りあえず料理認識は基本です

めちゃこってり鮮やかに

お次はメインカメラの2xズーム。

あじさいを「2x」で。メインカメラが一番高性能なので、無理せず2倍ってのはよい。もうちょっとシャープにできそうな気はする

保護猫シェルターのハチワレ猫を。これは猫と認識してくれたけど顔がちゃんと見えてなくても猫と認識してくれるようになるとうれしい。

さらに、ウリの望遠カメラ。望遠カメラはF3.0とレンズが暗いので、ちょっとでも暗いとすぐ感度が上がってしまう。だから屋外向け。できれば晴れた方がいいけど、今回は残念ながら曇天が多かった。

OPPOの2019年のフラグシップモデル「Reno 10x Zoom」は何が新しいのか?

まずは動物園で「子犬」。いや違う、サイ。サイを子犬と判断したのはちょっと面白かったのでつい採用。

動物園でサイにカメラを向けたら「子犬」と認識された。子犬と書いてサイと読む。読まないけど

サイですな。動物園で望遠カメラが威力を発揮するけど、雨が降りそうな天気だったので、ISO感度が上がってしまった。その点、F3.0なのは不利

動物園シリーズってことでペンギン。

動物園といえばペンギン。望遠で縦位置撮影に向いている

猿山にて、10倍の望遠で狙ってみた。

10xを試そうと猿山へ。ここまでアップで撮れるのは感動的だ。拡大するとディテールはけっこうつぶれているけど、しょうがない。晴れた日に撮ってみたかった

10倍にするとさすがに画質は落ちるけど、6倍なら晴れていればかなり撮れるはず。「動物園に持っていけばこれ1台で済むスマートフォン」って思えばすごい。

ついでにカワウ(たぶん)。画質はともかく、ここまでさっと寄れるのは楽しい。

「6x」でカワウ

さらに「10x」

「5x」でロマンスカーのVSE。

手動ズームでちょうど望遠カメラに切り替わる「5x」で

望遠カメラの画質はそこまでよくはないけど、この全能感はすごいですな。

最後に「夜」と「動画」を。「夜」モードはメニューから選ぶべし。

通常の写真モードでも「夜」と認識してくれるが「夜モード」だと連写+合成で、明るい夜景を撮ってくれる

そうすると3枚連写して合成することでハイライト部は抑えられ、暗部は影にならずしっかり写った、イマドキの夜景っぽい夜景を撮ってくれる。

木々の緑は黒くつぶれず、明るい所は白トビを抑え、実に鮮やかな夜景。もはやきれいな夜景撮影はスマホカメラの必須機能になっていますね

「動画」は4Kまでいけて、まあイマドキのハイエンド端末なのだけど、注目は「3D録音」。これをオンにして録ると臨場感が違う。けっこう派手な音になるので好みはあるだろうけど。

動画モードの画面

こちら、音の臨場感がいい。ステレオで聞くべし

まあ、望遠カメラの画質は屈曲光学系を使っていることもあってか、やや無理している感もあるし、倍率を上げていくと絵画っぽくなるけど、それ以上に超広角から望遠まで一気にいけちゃうのが楽しいReno 10x Zoom。

何か細かいところであれこれツッコんだし、完成度をもっと上げられる気はするけど、スマートフォンでここまでの望遠撮影を楽しめるようになったのはすごいし面白いし、どんどん遊びたくなる。個性のつまった攻めのフラグシップ端末だね。

幻惑色はもうオンにしちゃって、くっきりした絵作りを楽しむのがおすすめ。やぼなことを言っていないで、楽しんだもん勝ちだ。