12インチですれ違ったVAIOとMacBook

7月9日、ソニーから独立して5周年を迎えたVAIOがモバイルノートPCの新製品「VAIO SX12」を発表しました。従来の11インチモデルとほぼ同じサイズに12.5インチの画面を搭載し、「メインマシンの最小形」をうたっているのが特徴です。

しかしVAIOが新製品を発表した当日の夜、奇しくもアップルが12インチ「MacBook」の販売を終了。モバイルPC好きにとっては一喜一憂する日になりました。

■働き方改革でモバイルPCへの要求が変化

モバイルノートPCの画面サイズは世界的に14インチ前後がトレンドになっており、グローバルのPCメーカーはもちろん、VAIOも2019年1月に14インチの「VAIO SX14」を投入しました。

日本では小型のサブノートPCも人気があるものの、11インチの「VAIO S11」の販売台数は、13インチ「VAIO S13」の半分程度にとどまっていたといいます。本格的に使うには画面が小さく、キーピッチが狭いという不満がありました。

背景には、働き方の変化があります。

かつてはサブノートPCを持ち歩いていても、会社に戻ればデスクトップPCがありました。しかし働き方改革により、場所を問わず仕事をこなすことが求められ、会社でもフリーアドレスの座席でノートPCを使い続ける場面が増えています。

モバイルに適した小型軽量で、でも画面やキーボードは大きく、パワフルに動いてほしいという相反する要素の両立が、これまで以上に求められるようになっています。

■11インチクラスのボディに12インチPCを詰め込む

これを踏まえてVAIO SX12の進化ポイントを見てみると、画面サイズは11インチから12.5インチへと大きくなったものの、狭額縁設計により本体サイズはわずかに奥行きが増えた程度にとどまっています。

キーボードは、VAIO S11では本体の左右端に余白があり、キーピッチはやや狭い約17mmでした。これに対してVAIO SX12はフルサイズといわれる約19mmピッチを搭載しています。

従来のノートPCには本体側面にUSBやHDMIのポートがあり、キーボードとの干渉を避けるために余白を設けるのが一般的でした。しかしVAIO SX12ではキーボードと側面インターフェイスが重なるように実装することでこの課題をクリアしており、発表会場でも驚きの声が上がっていました。

上位モデルのプロセッサーには4コアの第8世代Coreプロセッサー(Uシリーズ)を搭載。LTE通信機能も搭載できるなど、たしかに小型でありながら「メインマシン」級のポテンシャルを備えているのは面白いところです。

■12インチMacBookは販売終了

VAIOが新製品を発表した7月9日には、アップルが世界各国で新型のMacBook AirとMacBook Proを発表。これまでより買いやすい価格になったものの、12インチのMacBookがアップルストアから消えたことが話題となりました。

2015年に登場した12インチのMacBookは、当時としては珍しい1基のUSB Type-Cとイヤホンジャックのみを備えた斬新なデザイン採用。2016年、2017年に新モデルが登場し、筆者も毎年買い換えてきました。

一方で、MacBookシリーズの製品ポートフォリオにおいてMacBookの存在感は薄れつつありました。日本のように小型PCの需要が高い市場ならともかく、グローバルでは売れていないとの指摘もありました。

今後はiPadOSの登場により、iPad Proがその役割の一部を担ってくれるとの期待はあります。ただ、macOSが必要な場面はまだまだあり、シリーズ最軽量の約920gという軽さはもちろん、196.5mmという奥行きは飛行機のエコノミークラスで使いやすく、個人的に重宝していただけに残念なところです。

同サイズのWindows PCは、LTE通信への対応やARMアーキテクチャの採用など進化が続いているだけに、これまでにない新機軸を備えた新生MacBookとして復活することを期待しています。