細かすぎて伝わらないiOS 13の変化

先週はiOS 13およびiPadOS 13のパブリックベータテストが始まった関係もあり、それに絡む記事の依頼がとても多かった。実際、分析しがいのあるOSで、様々な切り口がある。

一方で、「変わっていることが気になるんだけど、それを記事に盛り込んでいると盛りだくさんすぎるのでカット」という部分もたくさんある。

ここでは、そんな「細かすぎてカットした部分」をお蔵出ししたい。

さて、ここでお約束の一言を。ベータ版はテスト目的で公開されたものなので、深刻な不具合が潜んでいる可能性がある。アプリケーションの互換性も保証されていない。そのため、日常的な利用には向かない。インストールを推奨するものではない。また本記事は、取材に基づく特別な許可を得た上で制作している。

これはなにも「決まり事」だから言っているのではない。今回の新OSに細かな変化が多いのは、基盤としての改善部分が多いからでもある。一方でそのために、アプリケーションの互換性については、今まで以上に不安な部分が多々見受けられる。アプリデベロッパー側での確認・改修も必要だ。だからこそ、日常的な利用はお勧めしないのである。秋に正式版が公開される頃までには、デベロッパー側での対応方針も定まっているだろう。それまで待つことを推奨する。

その1:変換候補ウインドウが「角丸」に

まずはジャブから。

iOSでは、外付けキーボードを使って文字入力を行った場合と、ソフトウェアキーボードを使って入力した場合での「変換候補」の表示は異なっている。ソフトウェアキーボードだと、キーボードの上に表示されるが、外付けキーボードだと入力列のすぐ下になる。まあ、考えてみれば当たり前の仕様で、なんの疑問も抱かずに使っている人が大半のはずだ。

iOS 13及びiPadOS 13では、この外付けキーボードで入力する際の「変換候補ウインドウ」の角が、アールのついたものに変わっている。

……それがどうした、と思ってないだろうか? いや、確かに大した問題ではないのだ。操作にも拘わりはない。だが、「そうか」という感慨が筆者にはある。2018年モデルのiPad Proで画面の角を丸めているように、Appleは特にこういうところにこだわる。Appleはやっと、日本語入力ウインドウの角にまでこだわりだしたのである。いい悪いではなく、そういうことをするのがなんともAppleっぽい。

その2:日本語変換が賢くなった

日本語入力つながりで、変換効率についての変化にも触れておこう。iOS 13及びiPadOS 13では、日本語入力の変換効率がかなり良くなっている。何%アップとか、何が変換できるようになった、という風に解説するのは難しいのだが、iOS 12に比べると快適になった、と感じる。これは、複数のライターが同じように感じているので間違いないだろう。

分かりやすい変更点を挙げるとすれば、「日本語変換中の数字などの扱い」が挙げられる。例えば「2.5インチディスプレイ」と入力するとしよう。これがけっこう面倒くさい。正確にいえば、フリック入力ではいいけれど、QWERTYや外付けキーボードではわずらわしかった。

理由は、「.(ピリオド、小数点)」と「。(句点)」が同じキーに割り振られているからだ。「2.5インチディスプレイ」の場合、いままでは「2。5インチディスプレイ」となってしまった。ソフトウェアキーボードの場合、数字と英字・記号を切り替えて使うので、ピリオドの位置で一回「記号(#+=)」に切り替えて入力することになる。

PCやMacの場合、「半角変換」機能があるのでそこまで面倒でもない。だが、iOSにはその種の機能がないので、これを正しく変換し直すのはかなり面倒くさかった。だから、英数入力で「2.5」を入力したのち、日本語入力に切り替えて残りを入力する……というやり方になっていた。

だがiOS13及びiPadOS 13の場合には、画面でお分かりのように、「2。5」と入力しても、候補に「2.5」が出てくるようになっている。ソフトウェアキーボードの場合「記号」への切り替えが不要になる。

まあ真面目なところ、iOS・iPadOSの日本語変換については、「そろそろ、アドレス帳に登録されている人名を、候補に優先的に出すのを控える(指定するまで出さない、もしくは4番目あたりにする)」機能が欲しいと思うのだが。

このような、数字・アルファベット・記号が混ざる場合の挙動が改善されており、入力時のストレスが軽減された印象がある。原稿を実際に書いていて、これは特にありがたいと思う要素だった。

一方、特に外付けキーボードの場合、変換候補を選ぶタイミングで、スペースが意図せず入力され、単語と単語の間に不要なスペースが入ってしまうこともある。これが「操作ミスを誘発しやすいが想定通りの挙動」なのか、ある種の不具合なのかよくわからない。なお、変換候補の選択には、スペースでなくタブを使った場合にはそうした問題が起きない。

その3:iPadOSのフローティングキーボード

キーボードの話題はまだ続く。特にiPadOSでは、アプリによる不具合に遭遇しやすいのがキーボード周りだった。描画が正しくない、位置が正しくなくて入力欄が隠れる、といったトラブルは少なくない。

なぜiPadOSでそういうことが起きるかというと、それだけキーボード周りに多くの変化が集中しているからである。

iPadOSでは新たに「フローティングキーボード」という機能が登場した。小さなキーボードを画面上の好きな位置に浮かせて使うもので、画面をあまり隠さず、片手で文字入力したい時に向いている。「iPadでもフリック入力したい」という人も、このモードを使うといいだろう。

普通のキーボードとフローティングのキーボードの切り替えは、キーボードの上で「ピンチイン」もしくは「ピンチアウト」。普通のキーボードの上でピンチインするとフローティングし、フローティングキーボードの上でピンチアウトすると通常のキーボードへと変わる。

その4:「共有」メニューはUIを刷新

iOSには「共有」メニューがある。□と↑を組み合わせたアイコンで表されているアレだ。AirDropを使ったり、ファイルやURLを他人にシェアしたりする時に使う。

アプリからアプリへとデータを受け渡す際や、「ファイル」アプリを介してデータをファイルとして保存する時にも使うので、もはや「アプリのデータをアプリの外へ受け渡す」ボタンになっている気がする。

この「共有」メニューがかなり変わった。従来はアイコンが3列並ぶような構成だったが、新しい共有メニューでは、「これまでに何かを送ったことのある相手」「データを送るアプリのアイコン」「データをアプリに送ってなにをするのか」という3つのゾーンに明確に分かれている。いままでのアイコンの列と同じなのだが、それぞれの表示が変わったため、扱いが大きく変わったように見える。

機能的に変わったのではなく表示が変わった、という感じなのだが、操作には大きな影響がある。筆者が一番戸惑ったのはこの部分、といってもいい。

その5:「ミュージック」アプリは操作が細かく変化

一見あまり変わっていないのに、使ってみると操作がけっこう違うのが「ミュージック」アプリ。特に変わっているのが再生画面だ。歌詞呼び出しボタンがわかりやすい位置に来て、ライブラリへの追加や「ラブ」などはメニューにまとめられた。どこを押せばなにが出てくるか、最初は戸惑いそうだ。

一方で、どのデバイスから音が再生されるのかは、表示がより分かりやすくなっている。Appleとして「どこを押すのがユーザーニーズにかなう」と評価しているのかが見えてくるような気がする。

その6:PS4とXbox Oneのコントローラーがそのまま使える

これまでiPhoneやiPadでは、ゲームコントローラーとして専用のものを使う必要があった。だが、iOS 13とiPadOS 13では変わる。PlayStation 4用の「DUALSHOCK 4」や、Xbox OneのBluetooth対応ワイヤレスコントローラーが使える。

というわけで、取り急ぎ手元にあるDUALSHOCK 4を使ってみたが、確かに問題なくペアリングし、使うことができる。PS4のリモートプレイでも使えるので、この点はとてもありがたい。もちろん、iPad専用ゲームで使えるのはいうまでもない。秋にスタートする「Apple Arcade」に備えた準備、と言えそうだ。

その7:正体不明な「省データモード」

iOS 13とiPadOS 13の変化点として最後に挙げるのがWi-Fi、特に「省データモード」だ。

Wi-Fiで接続する際、このモードをオンにしておくと、データ使用量を抑えてくれる「ようだ」。なぜ断定しないかというと、省データモードでどんなデータがどのくらい削減されるのが、まだよく分からないからだ。検証の時間も取れていないので、「データ使用量が削減されるらしい」としか言えない。

Web系経由での速度計測でスピードは落ちていないので、おそらくは、単にネットのスピードを絞るのではなく、アプリがバックグラウンドで使うデータ量を削減する(データ更新回数を減らしたり、止めたりする)のではないか、と予想できる。これは、今後の検証が必要な領域だろう。