より小さく、軽くなった定番2in1モバイル「ThinkPad X390 Yoga」

レノボ・ジャパン株式会社は、コンバーチブル型2in1 PC新モデル「ThinkPad X390 Yoga」を発売した。

従来モデルとなる「ThinkPad X380 Yoga」同様に360度開閉する13.3型液晶を搭載しつつ、筐体の小型化と軽量化を実現しており、モバイル性が大きく高められている。すでに発売中で、直販価格は168,480円から。

従来モデルから筐体の小型・軽量化を実現し、モバイル性が向上

「ThinkPad X390 Yoga」(以下、X390 Yoga)は、13.3型コンバーチブル型2in1 PCとして人気の「ThinkPadX380 Yoga」の後継として位置付けられている製品だ。

ディスプレイが360度開閉するコンバーチブルスタイルを採用する点は従来同様だが、X390 Yogaでは筐体の小型化と軽量化が突き詰められ、モバイル性が大きく高められている点が特徴となっている。

ディスプレイサイズは従来モデル同様に13.3型となっているが、ディスプレイまわりのベゼル幅が狭められており、フットプリントは約310.4×219mm(幅×奥行き)と、従来モデルの約313.5×222.2mm(同)と比べて、幅/奥行きともに短くなっている。また、高さは15.95mmと、従来モデルの18.2mmから2mm以上薄くなった。

数字を見るだけではそれほど大きな違いとは感じないかもしれないが、とくに薄型化の恩恵は大きく、鞄などへの収納性はかなり高まったと言える。

加えて重量も約1.29kgと、従来モデルから150gほどの軽量化も実現している。モバイルノートPCとして見ると、もう少し軽いと嬉しいのは事実で、じっさいに手にしてもややずっしり感じる。それでも、従来から150gの軽量化を実現しているのは大きな進化で、より軽快に持ち歩けるようになったのは間違いない。なお、今回の試用機の実測の重量は1,244gと、公称よりもさらに軽量だった。

また、筐体の薄型・軽量化を実現したからといって、ThinkPadシリーズの特徴でもある優れた堅牢性は失われていない。落下や圧力といった従来同様のさまざまな堅牢性試験をクリアしており、満員電車などの過酷な環境でも破損の心配はないだろう。

基本的な筐体デザインは、従来同様のフラットかつ直線的なThinkPadシリーズとしてオーソドックスなもの。筐体カラーはThinkPadシリーズとして象徴的なブラックを採用している。

フルHD表示対応の13.3型タッチ液晶を搭載

ディスプレイは、従来モデル同様の13.3型液晶を採用。表示解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、パネルの種類はIPS。ディスプレイ表面には10点マルチタッチ対応のタッチパネルを搭載する。

ディスプレイ表面は光沢仕様となっており、非光沢液晶に比べると発色が鮮やかな印象。デジカメ写真のレタッチ作業なども、鮮やかな色味を確認しながら行なえるだろう。

反面、外光の映り込みはやや気になる。光沢液晶にしては反射は少ない印象ではあるが、非光沢液晶に比べるとどうしても映り込みが気になってしまう。

コンバーチブル型2in1 PCといことで、ディスプレイは360度開閉し、クラムシェル、テント、スタンド、タブレットの4形状で利用可能となっている。

キーボードを利用した文字入力作業や、ペンを使った手書き入力など、用途に応じて扱いやすい形状に切り替えて利用することで、作業効率を大きく高められる。ディスプレイを大きく開いた状態で、タッチやペンを使って操作することで、対面でのプレゼン時などでも軽快な操作が可能だ。

本体収納可能な「ThinkPad Pen Pro」で軽快なペン入力が可能

ディスプレイは10点マルチタッチ対応のタッチパネルを備えるだけでなく、本体付属のアクティブペン「ThinkPad Pen Pro」を利用したペン入力もサポートしている。

このThinkPad Pen Proは、4,096段階の筆圧検知に対応するとともに、ペン先も細く、非常に繊細なペン入力が行なえる。じっさいに使ってみても、書き心地は非常になめらかで、ペン先への追従性も申し分ない。書類への指示を書き込んだりするのはもちろん、絵を描くなどのクリエイティブな用途にも柔軟に対応できるだろう。

また、ThinkPad Pen Proは本体右側面に収納できるようになっている点も大きな魅力だ。本体に収納し持ち歩けるため、ペンを携帯し忘れたり、紛失するリスクを軽減できる。

加えて、ペンを本体に収納すると内蔵バッテリの充電も行なえる。しかも、約15秒で80%の容量を充電できるという急速充電が可能で、バッテリ切れを心配することなく利用可能だ。

扱いやすいキーボードとポインティングデバイスはThinkPadシリーズの証

ThinkPadシリーズがビジネスユーザーを中心に根強い支持を集めている理由の1つが、扱いやすいキーボードとポインティングデバイスを搭載するという点だ。X390 Yogaにも、従来モデル同様のキーボードとポインティングデバイスを搭載している。

キーボードは、主要キーでキーピッチ約19mmのフルサイズが確保され、配列も標準的で非常にあつかいやすい。

Enterキー付近のキーピッチにも変化がなく、タッチタイプも問題ない。今回の試用機では英語キーボードが搭載されていたが、もちろん、日本語キーボードも従来モデル同様の標準配列キーボードとなっている。

ストロークは約1.8mmと十分に深いうえに、しっかりとしたクリック感もあり、打鍵感は良好。タッチはやや固めという印象もあるが、確実かつ軽快にタイピングできるという意味で、扱っていてほとんど不満がない。従来同様にキーボードバックライトも搭載しているので、暗い場所でのタイピングも軽快に行なえる。

また、ポインティングデバイスも従来同様、スティック型の「TrackPoint」と、クリックボタン一体型タッチパッドの「ThinkPadクリックパッド」双方を搭載するとともに、独立したクリックボタンも用意される。

TrackPointはキーボードのホームポジションから手を動かさずにカーソル操作が行なえ、慣れれば非常に快適に操作できる。また、TrackPointとタッチパッド、ディスプレイのタッチ操作を利用場面に応じて使い分けることで、作業効率を高められる点も、ほかにはない大きな魅力となるはずだ。

Thunderbolt 3をはじめポートも充実

では、X390 Yogaのスペックを確認しよう。直販モデルでは、CPUやメモリ、内蔵ストレージ容量など、スペックを自由にカスタマイズできるが、今回は試用機をベースとして紹介する。

CPUは、Core i7-8665U、Core i7-8565UまたはCore i5-8265Uで、メモリはDDR4-2400を最大16GB搭載可能。内蔵ストレージはPCIe/NVMe SSDで、容量は256GBまたは512GBとなる。

試用機では、CPUがCore i5-8265U、メモリ容量は16GB、内蔵ストレージ容量は512GBとなっていた。

無線機能は、IEEE 802.11ac対応2×2無線LANとBluetooth 5.0を標準搭載。また、LTE対応のワイヤレスWAN機能も搭載可能となっているが、試用機ではワイヤレスWANは非搭載だった。

側面のポート類は、左側面にUSB 3.0 Type-C×1、Thunderbolt 3×1、Gigabit Ethernet専用ポート「イーサネット拡張コネクタ2」×1、USB 3.0×1、オーディオジャック。右側面に電源ボタン、microSDカードスロット、USB 3.0×1、HDMIの各ポートを用意。

試用機では、左側面にスマートカードリーダーも搭載していた。なお、イーサネット拡張コネクタ2に接続して利用する「ThinkPad イーサネット拡張ケーブル 2」はオプションとして用意され、製品には付属しない。

このほか、左側面のUSB Type-C、Thunderbolt 3、イーサネット拡張ポート2を同時利用する、オプションの「ThinkPadウルトラドッキングステーション」など、各種ドッキングステーションも利用可能だ。

生体認証機能は、Windows Hello対応の指紋認証センサーを右パームレストに標準搭載。合わせて、オプションとして同じくWindows Hello対応の顔認証カメラも搭載でき、双方の同時搭載にも対応する。

ディスプレイ上部に搭載するWebカメラは720p対応で、スライド式のシャッター「ThinkShutter」を利用することで物理的に撮影できない状態へと切り替えられる。このほか、TPMチップの搭載、パワーオンパスワードや内蔵ストレージの暗号化、パスワード保護も可能となっており、ビジネスシーンで求められるセキュリティ機能もしっかりカバーしている。

付属ACアダプタは、従来モデル同様にUSB Type-Cポートに接続して利用する、USB PD対応のものとなる。出力は65Wで、1時間で容量の約80%を充電できる急速充電機能にも対応する。ACアダプタは、出力が大きいこともありややサイズが大きく、重量も付属電源ケーブル込みで実測267gとやや重い。

実測11時間超の駆動を確認

では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。今回利用したベンチマークソフトは、ULの「PCMark 10 v2.0.2106」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.8.6572」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」の4種類。

比較用として、NECパーソナルコンピュータの「LAVIE Pro Mobile PC-PM750NA」の結果も併記している。

結果を見ると、上位CPU搭載のLAVIE Pro Mobileに対して多くのスコアが劣っているが、基本的にはスペック相応のスコアが得られていると言える。もちろん、上位のCore i7搭載モデルであれば、より高い性能が発揮されるはずで、性能を重視するのであればCore i7の搭載を検討すると良いだろう。

とはいえ、今回の試用機同様にCore i5-8265Uでも十分快適な性能が得られるため、文字入力などが中心のビジネス用途で利用するのであれば、安価となるCore i5-8265Uを選ぶのも十分アリだ。

続いてバッテリ駆動時間だ。X390 Yogaの公称のバッテリ駆動時間は、本体構成によってやや異なるものの、最大約15.1時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。

それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約11時間27分を記録した。

公称よりやや短いが、十分納得できる駆動時間で、これなら1日の外出時でもACアダプタ不要で乗りきれるはずだ。本体サイズの小型化や重量の軽量化と合わせて、この点でも携帯性は申し分ないと言える。

ビジネスシーンで利用する2in1モバイルPCとしてオススメ

X390 Yogaは、ThinkPadの良さを損なうことなく2in1仕様を実現したモデルとして、さまざまな進化を遂げている。

従来モデルでは、モバイル用途で利用するには重量がやや重いという印象だったが、X390 Yogaでは150gを上回る軽量化を実現し、魅力が高まっている。欲を言えば、さらなる軽量化の実現も目指してほしいところだが、2in1仕様を実現するには重量増が避けられず、ある程度は仕方がないだろう。

それでも、実測11時間超の長時間駆動や、安心して持ち運べる優れた堅牢性、扱いやすいキーボードとポインティングデバイスなど、競合製品を凌駕する魅力があり、完成度は十分に高い。

クラムシェルで良いというなら、兄弟機の「ThinkPad X390」を選択するのも1つの方法だが、一度タッチ操作やペン入力の快適さを体感すると、やはり2in1仕様のほうが良いと感じる場面が多い。

そのため、多少の重要増は我慢できるので、利便性を重視したモバイルPCが欲しいというのであれば、本機をオススメしたい。