データセンターの冷やし方も“デル流”--冷却システムの取り組み

デルはこのほど、水冷をはじめとする同社が提案するデータセンター向け冷却システムについて説明した。同社の冷却システムは、複数のサードパーティーの製品を活用しているのが特徴で、それによって幅広い提案を可能にしているという。

インフラストラクチャー・ソリューション事業統括 システム周辺機器部 シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏は、「デルが提案する冷却システムは現在、利用している一般的なラックに水冷サーバーを搭載できる仕組みとなっている。そのため、演算処理の高速化が求められるAI(人工知能)や機械学習といった用途における、高熱化といった課題に対しても対策を図ることができ、アクセラレーテッドシステムの導入のハードルを低くすることができる。さらに、水冷システムの保守までを含めた安心できる提案にも強みがある」と話す。

同社で冷却システムを取り扱っているのは、インフラストラクチャー・ソリューション事業のシステム周辺機器部であり、自社製品だけでなく、他社とのパートナーシップにより、顧客に最適なトータルソリューションを提供する役割を果たしている。「グローバルでのパートナー契約に加えて、日本で必要とされるサードパーティー製ハードウェア、ソフトウェアについても独自にパートナーシップを結び、ローカルでの対応も図っている」という。

システム周辺機器部では、シュナイダー・エレクトロニクスやCool ITシステム、Motivairの冷却システム製品を取り扱っており、ユーザーの利用環境に最適化した冷却ソリューションを提供する。これによって、計算ノードとデータセンターの効率化を水冷で実現し、昨今注目を集めるアクセラレーティドコンピューティングについても、冷却技術の観点から優位性を発揮できると強調する。

例えば、4Uラックマウントが可能なCool IT製の水冷サーバー「CHx86」では、ラックに搭載したマニフォールドからサーバー向けの冷却水を供給する。発熱が多いCPU部に、ヒートシンクの代わりに配置した水が循環するコールドプレートを配置。コールドプレート上の冷却水分配回路、マイクロ冷却水回路、冷却水回路を冷却水が通り、高効率で冷却するという。

これにより、「CHx86」では80キロワットまでの冷却が可能だという。また、大規模システム向けのラックタイプ「CHx750」では、750キロワットまでの冷却が可能になる。「コールドプレートを工場出荷時点で組み込んでおり、1シャーシ・4ノードのPowerEdge C6420では、同サーバーの2059ワットの発熱量に対して、約60%近くとなる約1200ワットでの冷却ができる」とのことだ。

CHx750では、ポンプやポンプインバーターなどの主要な部分においては、冗長性に優れた構成としており、高い信頼性が求められるデータセンターなどでの利用にも対応する。「冗長化内部構成によって安定稼働を実現するとともに、保守サービス中もダウンタイムが発生しない」とする。さらに、「冷却水を供給するマニフォールドは、ラックに取り付けるだけで配管できるクイックコネクトシステムを採用する。作業のためにパイプを抜き差ししても、水が漏れない仕組みになっており、設置性やメンテナンス性が高い」としている。

また同社では、システム全体で共通の冷水が利用できる空調機としてシュナイダー・エレクトロニクスの「InRow Chilled Water ACRC301H」を提案する。一般的に水冷装置では、冷蔵庫で冷やした水よりも冷たい7度前後の冷水を使用するというが、同製品では15度の冷水で冷却。戻り空気が37度の時に33キロワットの冷却能力を発揮し、最大でも1.9キロワットの消費電力で済むという。「高い冷水温度で冷却できるため、他社製品よりも省エネ効果が大きい。競合他社の製品に比べても2.9倍の高効率を実現している」と胸を張る。

だが、全てを水冷でカバーしようとは考えていないという。

「競合他社は、水冷によって全てを冷却することを目指しているが、デルは、既に導入している空調システムを活用することを前提としている。必要なところだけを水冷にすることで、投資を無駄にしないという考え方がある」(水口氏)

メモリーやパワーサプライなどに対しては、最新の空冷システムによって冷却する。さらに、シュナイダー・エレクトロニクスが提案する、空気をコントロールするコンテインメントシステムによる効率化も図っているという。

水口氏は、「空冷の場合、サーバーに冷たい空気を送り込むというよりも、さらに重要なのが、熱い排熱を効率的に回収して、それを冷やして循環すること。サーバーの背面同士を組み合わせて、熱い排熱を吸ってそれを冷やしたり、ラック単位で熱を処理したりといった提案も可能になる。これによって、冷却に関するイニシャルコストやランニングコストを削減できる」と語る。

一方で冷却システムの提案、販売、保守体制でも、デルは優位性を発揮できることを強調する。

「配管工事を含めて、さまざまなパターンでフレキシブルな提案を行えるのが特徴。例えば、構成シミュレーションによって、サーバー台数に応じた最適な冷却システムを提案するほか、通常運転時の温度分布イメージを可視化するだけでなく、冷却システムが1台停止した際の温度分布も確認でき、冷却能力や風量の冗長性についても確認ができる」という。

デルでは、国内に法人を持つシュナイダー・エレクトロニクスとの連携強化だけでなく、国内に法人を持たないCool ITシステムの製品の販売、保守/サポート体制についても、デルと国内サービスプロハイダーとの連携によって独自に構築。水冷システムの保守についても、安心できる体制を整えているという。特にCool ITシステムは、米国における連携の実績を反映した取り組みも進めているところだと話す。

「専用のサーバーラックを必要とせずに、一般的なラックに水冷サーバーを搭載可能であるフレキシビリティー、コンポーネントの冗長化や競合他社を上回る最新技術の提案、さらには、各冷却システムの提案および保守を行える国内体制を整えているのがデルの特徴だ。データセンターにおいて注目を集めるアクセラレーテッドコンピューティングにおける冷却においても、デルは最適な冷却システムの提案と、万全の国内保守体制を実現する」と強調して見せた。