Kirinが作れなくなる。ARMもファーウェイとの取引を停止か

どうなっちゃうの、ファーウェイ。

トランプ政権が国家的セキュリティリスクをもたらすという理由でHuawei(ファーウェイ)を輸出規制リスト(U.S. Entity List)に入れましたが、これはファーウェイがGoogleやQualcomm、Intelといった企業の製品の購入を禁止されたことを意味します。そして、さらなる動きが…。

BBCが入手した内部のメモによると、半導体デザイン企業「ARM」が従業員に対して「(ファーウェイとの)すべての有効な契約、サポート資格、そして検討中の約束事を停止」するよう命じています。これは米政府の禁輸政策に応えるものです。メモの中でARMは、ARMの製品は米国由来のテクノロジーを含んでおり、Googleなどのほかの米テック企業と同じくファーウェイに対する販売禁止措置の対象となる、としています。

ARMの本社はケンブリッジ(英国)にありますが、いくつかのオフィスを米国にも抱えています。ファーウェイへの米国テクノロジーの購入禁止措置が世界最大のコンピュータチップデザイン企業のひとつにどう影響するかは不透明でした。

ファーウェイが生産しているチップ「Kirin」に影響

一連の動きが事実であれば、ファーウェイはARMの製品へのアクセスを失うことになりますが、それはAndroidの利用をやめることを強いられていることによる潜在的ダメージ以上にひどい影響を受けるかもしれません。というのも、ファーウェイはKirinという独自のモバイル向けプロセッサを生産していますが、そのコアアーキテクチャはARMベースのデザインに依存しているのです。Kirin 980(ファーウェイ製の最新ハイエンドプロセッサ、P30 ProやMate 20 Pro、Honor 20 Proといったフラッグシップ端末に搭載されている)を例にすると、CPUにはARMのCortex A76アーキテクチャとZ56アーキテクチャが用いられ、GPUにはARMのMali G76コアが用いられています。

これが意味するのは、将来的に、もしファーウェイがプロセッサの生産を続けたいなら、ARMに一切依存しない、完全に新しいアーキテクチャに切り替える必要があるということです。それは簡単な仕事ではありえません。Qualcommからチップを購入できないファーウェイには、選択肢はあまり残されていません。米GizmodoはARMにファーウェイとのパートナーシップ終了について問い合わせてみましたが、ARMはノーコメントと返してきただけでした。

China Media Groupのインタビューで、ファーウェイのCEO 任正非(じん せいひ)は「米テック企業との取引停止の90日間延期がなくとも、ファーウェイの“将来への備え”は万全であり、米国の禁輸措置がマイナス成長を引き起こすことはないだろう」と語り、平然とした様子に見えました。その発言が事実なのか、それともファーウェイに投げかけられた疑惑を払いのけるためのレトリックなのかは今後も見ていくべきところでしょう。

どうあれ、ARMがファーウェイとの取引停止を強いられる最後の大企業、ということにはならないでしょうね。