ワイヤレス充電で悪影響も?スマホバッテリー寿命のウソホント

みなさまから寄せられたテクノロジーのお悩みに答える「Tech 911」のコーナー。

先週もらった風邪をこじらせた筆者が、大量の風邪薬の影響で眠気と戦いながらこの記事を書いています。キーボードに倒れこんでしまう前に、今日の質問に移りましょう。

読者のVigneshさんからの質問です。

昨年の「テックに関する質問を送ってください」という記事からずいぶん日が経ってしまいましたが、まだ間に合うようなら、私の最新の(そしておそらくトレンディな)疑問を聞いてください。

スマホをワイヤレス充電器に置いたり持ったりを頻繁に繰り返していると、何か悪影響はありますか?

私は充電器のそばに座っているので、いつも充電器の上にスマホを置いています。

ひどいスマホ中毒なうえに通知も多いので、しょっちゅう手に取っては置いてを繰り返す毎日です。これって、スマホに悪いのでしょうか?

充電界隈には、多くの都市伝説がある

Vigneshさん、こんにちは! まず、まだこのコーナーは続いていますよ。何ごともなければ毎週金曜日に新しい記事が公開されるので、皆さんどんどんテックの問題をお寄せくださいね。

トラブルでもデバイス選びでも、どんな話題でも最善のアドバイスをさせていただきます。

大切な機器が壊れて泣きたい気分のあなたには、いつでも胸をお貸ししますので言ってください。

さて本題のワイヤレス充電ですが、実は私、スマホのエレクトロニクスのあれこれについてはそんなに詳しくありません。

特に、こと充電に関しては、何が効果的で安全で寿命を長持ちさせられるのか、数えきれないほどの都市伝説が存在しています。

エセ科学の伝道師にはなりたくないので、できるだけ引用元を明確にして意見を紹介したいと思います。

個人的には、ワイヤレス充電器に置いたり持ったりを繰り返したところで、スマホにはなんの影響もないと考えたいところです。

ワイヤレス充電とは、コイルで電磁場を作り、レシーバーコイルに電流を発生させてバッテリーを充電する方式です。

つまり、有線充電とテクノロジーが違うとはいえ、バッテリーに起こる結果は同じです。

ですから、有線の充電ケーブルを何度も挿すことに抵抗がない人は、ワイヤレス充電器をトランポリンのように使うことを心配する必要はなさそうです。

それほどの犠牲はない

とはいえ、もっと複雑なスマホの充電サイクルについて議論しなければならないでしょう。そのあたり、さまざまな意見があるようです。

まず、WIREDのMatt Reynolds氏の記事によると、ワイヤレス充電器の上に置きっぱなしにするのは、充電が少ない状態で放置するよりもバッテリーへの負担が重いのだとか。

100%のまま充電を続けるのはバッテリーによくありません。

ただしその理由は、許容量以上の電気が流れ込むからではありません。

現在のスマホは、それを防ぐための「トリクル充電」というメカニズムにより、100%から減った分の電力しか充電されないように制御されています。

問題は、以前から都市伝説的にいわれているように、100%の状態を保つことが、バッテリーにとって負担であることにあります。

とはいえ、ケンブリッジ大学の研究者Kent Griffith氏が書いた記事によると、スマホのバッテリーメーカーは、充電を続けてもバッテリーに害を与えないように制限をかけているそうです。

常にスマホを充電し続けることは、いいことではないが、デバイスに害を与えることもないとのこと。つまり、自己責任でやる分には構わないし、それほどの犠牲はないようです。

適度な充電がよい?

ComputerworldのLucas Mearian氏の記事によると、スマホの充電、特にワイヤレス充電については、まだ多くの議論があるそうです。

その記事中で、ある専門家が「45から55%の充電を保つことがバッテリー寿命をもっとも長持ちさせる方法である」と述べていますが、私には滑稽に思えてしかたありません。

なぜって、それじゃあ普通、1日もバッテリーが持たないですよね。

ほかにも、ワイヤレス充電によってiPhoneが壊れたというテクノロジージャーナリストがいます。有線よりも早く充電サイクルを使い果たしてしまったというのがその主張です。

一方で、Wireless Power Consotiumの会長を務めるMenno Treffers氏はこう述べています。

ワイヤレス充電ならあるかもしれませんが、常に充電を続け、バッテリー残量を50%以下にしないことで、実はバッテリー寿命が延びるんです。

つまり、充電し過ぎてもいけないし、使い過ぎてもいけないようですね。

充電回数よりも重要なのは…

Digtal TrendsのSimon Hill氏の記事には、こう書かれていました。

Argonne LaboratoryのシニアサイエンティストであるDaniel Abraham博士は言います。

「充電時には電気エネルギーが化学エネルギーに変換され、放電時にはその逆が起こります」

また、バッテリーメーカーが電池に蓄えられるエネルギーの量を決めており、それによってユーザーが使用できるエネルギー量が決まります。

「メーカーが、上下のカットオフ電圧を決定します。これらは固定値であり、電池はその範囲内でサイクルを繰り返します。電圧範囲を適切に選べば、何千回も繰り返して電池を使うことができます」

ワイヤレス充電器の上に放置したまま、あるいは有線の充電ケーブルをつないだままにしても、これらの制限値を超えることはありません。

同様に、メーカーが決めた下限のカットオフ電圧を下回るまで電池を使うことはできません。これらの制限値が電力源によって変わることはありません。

「充電方式がワイヤレスか有線かは関係ありません。いずれにしても、電池の過充電や過放電は起こりえないのです」

同記事では、上述の充電サイクルの問題についても触れています。

これによると、限られた充電サイクルを有効に使うためには、何よりもデバイスのバックグラウンドで動いているアプリに気をつけること。ワイヤレス充電の回数よりも、その影響のほうが大きいそうです。

また、ワイヤレス充電器の置き場所にも要注意です。

たとえば、窓の前はやめましょう。熱は、スマホのバッテリー寿命に大きく影響します。ワイヤレス充電だけでも熱を持ちますが、さらに日が当たるような状況は避けてください。

バッテリーの寿命を保つためのポイント

ということで、ここまでの情報をまとめるとこうなります。

スマホのバッテリーにとって、充電残量50%から80%の間を保つのがベストである。

もっと高い状態を維持してもいいが、寿命に影響する可能性がある。もっと低い状態まで使ってもいいが、バッテリーの充電サイクルを多く消費してしまう。

スマホをワイヤレス充電器に置きっぱなしにしても、バッテリーを壊すことはない。寿命には多少の影響があるかもしれないが、もっと悪いことはほかにもある。

過熱状態の充電器(および過熱状態のデバイス)はバッテリー寿命に悪影響を及ぼす可能性があるので、Amazonなどに出ている怪しい模造品ではなく、評判のいい充電器を使うこと。

デスクだろうと長距離ドライブだろうと、日の当たる場所でスマホを充電しない。

不要なアプリは削除する。意味もなくバックグラウンドでアプリを走らせない。

以下は個人的な経験で恐縮ですが、私は過去2台のiPhoneでワイヤレス充電器を使ってきました。

寝ている間(6から8時間)ワイヤレス充電器に放置していますが、問題が起きたことはありません。

また、Pixel 3 XLについては、ほぼ1日中ワイヤレス充電器に載せたままですが、今のところ報告すべき悲劇的なバッテリーの問題はありません。

iPhone Xは中古で買いましたが、前のオーナーは有線でしか充電していなかったようです。

新品に比べてバッテリーが弱っていましたが、それは充電方法というよりも使い方のせいだと私は考えています。

それ以降、私はずっとワイヤレス充電をしていますが、持ちが一気に悪くなったことはありません。ある程度の劣化は否めませんが、急激な変化ではなく、徐々に劣化している感じです。

しかもその理由は、毎晩ワイヤレス充電器に置きっぱなしだからではなく、やはり使い方が原因でしょう。