REALFORCE for Mac ハンズオン:Macユーザー待望の外付けキーボード、買ったら世界が変わった

Macをより完璧な存在に近づけるアクセサリー。

ついに出た、名キーボード「REALFORCE」のMac版! 長年Apple純正キーボードしか使ってこなかったMacユーザーの僕が、このREALFORCEを買うまでと、そして使ってみて感じたことをまとめます。

「Mac版」がいかに待望だったかという話

ライターの僕にとってPCや椅子に並び、キーボードは作業効率を大きく左右する大切な仕事道具です。

形状や構造によるさまざまな選択肢の中でも、静電容量無接点方式はとくに滑らかなキータッチで根強いファンがいるキーボード。その国内2大メーカーである東プレの「REALFORCE」とPFUの「Happy Hacking Keyboard」は、誰もが一度は購入を検討するであろう一級品です。しかしMacユーザーにとっての悲劇は、これまでそのどちらも「静電容量無接点方式・Mac・日本語配列」製品を販売していないことでした。

Windows配列のREALFORCEで妥協しようと思っても、Macキーボード慣れしているとまず「command」「alt」「control」の位置に混乱し、「英数」「かな」に至っては「半角/全角」「英数」「無変換」「変換」と散らばって配置されるWin配列を脳が拒絶します。Macユーザーあるあるですよね……。

住めば都の精神でWin配列を使うMacユーザーや、キー割り当てを変換している人、そしてMac・英語配列キーボードを使って快適なキータッチを満喫している強者もいます。ですが「そこまでするならApple純正のMagic Keyboardで充分だ」と諦める人も多かったわけです。

しかしこの4月、ついに……ついに東プレから「REALFORCE for Mac」が4機種発売されました。

4機種の大きな違い

今回発売されたのは、以下の4モデル。まず、このなかでどれを選ぶのか、とても重要です。

・Realforce SA for Mac / R2SA-JP3M-WH

・Realforce SA for Mac / R2SA-JP3M-BK

S=静音

A=APC(アクチュエーションポイントチェンジャー)機能付き:キーを押し込んだときに反応するポイントを調整できる

3=30gのキー荷重

WH=白モデル

BK=黒モデル

・Realforce for Mac / R2-JPVM-WH

・Realforce for Mac / R2-JPVM-BK

V=変荷重:キーボード全面のうち、打鍵が強い中央部キーの重さが45gで、外側に向かってキーの重さが30gに変荷重する方式

WH=白モデル

BK=黒モデル

共通のポイント

R2=REALFORCE第二世代

JP=日本語配列

M=Mac用

要するに、上が「静音・APCつき・30g均一」。下が「非静音・変荷重」ということ。それにそれぞれ白・黒モデルで計4機種。

店舗で実際に製品を触るまで、非常に悩ましい4択でした。Macユーザーが慣れ親しんでいる純正キーボード(Magic Keyboard)はキーストロークが非常に薄く、見た目に反してクリック感があり、スピードが乗るとタイピングの度にパチパチと音が鳴ります。うるさいという声もありますが、良くも悪くもこれに慣れているので、タイピングの質感がハッキリする非静音モデルを選びたい。非静音モデルはキーの重さが45gなので、30gの静音モデルより感触も強く得られます。

しかし非静音モデルは、場所によってキーの重さが変わる「変荷重」モデルでもあるので、不要にキーの重さが変わると気になりそう。贅沢を言えば55g均一の非静音くらいが欲しい……。

そう思いながら店頭で試してみたところ、変荷重方式・非静音モデルの白(Realforce for Mac / R2-JPVM-WH)をすぐに気に入り購入しました(上の写真)。そのとき僕のなかで基準になったのは、「押し心地」と「色」です。この2点は、MacユーザーがREALFORCEを選ぶ際にチェックすべきポイントです。

まずは押し心地

「静音&30g(R2SA-JP3M)」か、「非静音&変荷重(R2-JPVM)」かの2択で、私は後者を選びました。完全に好みの問題ですが、やはり非静音モデルのほうがキーが重いので指先に伝わるクリック感が強く、Macのキーボードから移行しやすいように感じます。

問題の変荷重(基本は45gキー、端は30gキー)については、違和感はほぼ感じませんでした。なぜなら人差し指など「力の強い指で押す分には30gも45gもそこまで違いを感じない」んです。一方、小指で押すと確かに30gキーの方が軽く楽に感じる絶妙な加減。あっても邪魔ではなく、慣れれば身体に優しい機能です。

今回選ばなかった静音&30g(R2SA-JP3M)モデルのAPC機能(押し込み位置の調整)は、「パチパチと音を鳴らしながらタイピングをする人」には必要なさそうです。なぜならキーをパンチしがちな人にとってキーは「力が加わっていない状態」か「奥まで押し込んでいる状態」のどちらかしかなく、押し込みの深さを微調整する優先度は低いからです。

一方、流れるようにタイピングする人は、クリック感よりも「軽くキーを触っている状態」の誤入力を防ぐためAPC機能が欲しくなるかもしれませんね。

いずれにせよ、「静音&30g」にするか「非静音&変荷重」にするかの決断は、細かい機能を気にせず純粋に「打ち心地のみ」で決めてしまって良いと感じました。これで4機種のうち2機種に絞れます。

色(=キー刻印方式)がかなり重要

「あとは好みの色を選べばいいんでしょ?」と思うかも知れませんが、ここは慎重に考える必要があります。実は白モデルと黒モデルで「キー刻印」方法が違い、指で触れた感触が大きく変わってくるのです。

白は樹脂にインクを浸透させる「昇華印刷」、黒はレーザーで文字を焼き付ける「レーザー印刷」でキーの文字を印刷しています。昇華印刷はキーに凹凸はできませんが、レーザー印刷は文字部分がわずかに盛り上がります。更にキー表面の材質も違っていて、白(昇華印刷)はサラッと滑る感覚、黒(レーザー印刷)は指に吸い付く感覚です。

白をサラサラと心地よく感じるのかザラザラと不快に思うのか、黒をツルツルと心地よく感じるのかヌメヌメと不快に思うのか、これは完全に好みが分かれます。見た目の色も大事ですが、キーボードは目で見る時間よりも指で触れている時間のほうが長いもの。必ず売り場で、触って確認することをオススメします。

ちなみにWindows用のREALFORCEハードユーザーの間では、レーザー印刷(Mac用では黒モデル)のほうがが文字がはげやすいと言われています。

REALFORCE for Macの良かったところ

実際使ってみて、どうだったのか。「長年Apple純正キーボードだけ使っていた人間」が乗り換えて良かったこと・そうじゃないことをまとめてみます。

キーが判別しやすい

キートップが指に馴染むよう湾曲しており、Macの平べったいキーボードではあり得なかった指へのフィット感です。隣のキーとの境界がわかりやすく、ブラインドタッチも簡単です。間違って隣のキーを押すミスタイプはまず発生しません。

素晴らしい打鍵感

静電容量無接点方式のキーボードは本当に打っていて気持ち良いです。無接点は「スコスコという打鍵感」と言われますがまさにその通り。タイプしようと思ったときにはすでにタイプし終えているかのような軽やかさで打つことができます。Mac配列でタイピングの気持ちよさを求めるならば、今後REALFORCE for Macは筆頭に上がるでしょう。

キーが軽く、疲れにくい

「指が疲れにくい」は高級キーボードの定番売り文句なので、正直眉唾だと思っていたのですが本当でした。REALFORCEを取り外してApple純正キーボードに戻したとき「あれ? さっきより指に力が入っている……」と気付いたのです。キーの軽さだけでなく構造のお陰もあるかと思うのですが、少しの力と自然な動作でタイプすることができて快適です。

タイピングに気合いが入る

良い道具を使うと身が引き締まります。打鍵感と合わせてタイピングが楽しくなります。いつまでも文字を打っていたい。良い道具を求める一流の方、そして僕のように「とりあえず形から入ると気分も乗ってくる人」にはぴったりのキーボードだと思います。

他にも、キーひとつひとつの造形が良い、キートップのフチの鋭さが指に気持ち良い、音が良い、キーボード本体が重く安定感がある、あまり使わないかな入力の表記がなくてスタイリッシュ、細かいカスタマイズもできるなど、良さをあげればキリがありません。総じて「ずっと触っていたいキーボード」という感想でした。

懸念してたけど、意外と大丈夫だったところ

購入前、他に気になっていたポイントとして「非静音モデルはうるさくないのか」「有線モデルしかないのはどうなのか」という2点がありました。

非静音モデル、オフィスでも使えます

音については当然静音モデルのほうが静かですが、よっぽど「すぐ隣で寝ている子供を起こしたくない」というような状況ではない限り、オフィスや家庭で気になる程のタイプ音ではないと感じています。

むしろキートップに触れた際、普通のキーボードだとキーのガタつきから「カチャリ」と音がしますが、REALFORCEの場合その音は非常に小さいです。あくまでもキーを押しきったときに音が鳴るという感覚なので、無駄な音が発生することはかなり少ないです。

有線は邪魔じゃないときのほうが多い

PCと有線接続しなければいけない点は、Apple的美学には反するかもしれません。ただ、REALFORCEを使ってタイピングするのは、腰を据えて「さぁ一心不乱に仕事するぞ!」という状況かと思います。そういう場合キーボードの機動性もスタイリッシュさも不要です。

僕の場合MacBookをノートPCスタンドに乗せて使っているので全く邪魔ではありません。ケーブルは後方、左、右と3方向からとり出せるようになっているので最短経路で接続できますし、良い機材を有線でガチャリと接続する喜びを感じるのは、僕だけでしょうか。

REALFORCE for Macの良くないところ

純正キーボードから乗り換えた時に気になる点は以下の通りです。

commandキーの幅が広くない

Apple純正キーボードはcapsロック、altキーの幅が狭く、commandキーは幅広です。REALFORCEはこれらのキー幅が同じなため、多用するcommandキーの存在感の薄さに戸惑うかも知れません。が、すぐに慣れました。

Windows配列っぽいので脳が混乱する

BootCamp用にWin配列変換ボタンや「半角/全角」キーがついています。commandキーの幅が広くないことも含め全体の雰囲気がWindowsキーボードっぽいので一瞬混乱するんです。するとショートカットキー操作の際に「command」キーではなくWindows風に「control」キーを使った操作をしようとして、Win配列の「control」キーの場所にあるcapsロックキーを押していることがしばしばありました(ややこしくてすみません。)でも、すぐ慣れました。

厚みがある

Apple純正キーボードの平べったさになれていたので、REALFORCEの傾斜と厚みに慣れるまでは少し時間がかかりました。キー段差の加減は絶妙なのですが、指先を持ち上げなければいけない感覚に最初は手首が少し疲れます。キーボードマニアの友人に相談したところ、アームレストを使うと楽になるとのことで購入予定でしたが、背面のチルトスタンドをたたんで低く使っていたところ3日目でちょうど良く感じるようになりほぼ解決しました。

誰が買いか?

Magic Keyboard以外の選択肢を探しているMacユーザーなら間違いなく買いです。デメリットはどれも慣れれば済む部分ばかりで、ほぼ欠点なし。不快感ゼロの心地よいキーボードです。そもそも非常に少なかった「Mac・日本語配列」キーボードの選択肢が増えたのはとても喜ばしいことです。

ちなみに今回購入した家電量販店では非静音モデルよりも割高な「静音・APCつき・30g均一」モデルの白が人気で早くも売り切れていました。ひとまず高額なモデルを上位機種と判断し、更にキーがハゲにくいと言われる昇華印刷キーの白を選ぶ人が多いようです。

正直、このキーボードの魅力が劇的な業務効率化をもたらすことはありません。しかしREALFORCEを買ってからのこの数日間は、なんとなくキーボードに向かうのが嬉しいし、ちょっと文字を打っていて楽しい。キーボードを買い換えただけなのに、なんだか新しいMacを買い換えたときのような気持ちです。